転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。   作:Othuyeg

8 / 12
メインキャラ大集合って感じ。


記録8 集結する戦士たち

 「行った……のか……?」

 

 哲郎さんが、へたり込みながらポツリと呟いた。

 晶は腰を抜かしてまだ立ち上がれず、茫然と俺を見上げている。

 

 「貴方は……一体……。なんで俺たちを助けてくれたんですか……?」

 

 助けた理由ねぇ。ここでガイバーⅠに一時的にでも退場されると、話の趨勢が分からなくなってしまうというのが一番の理由であるわけなのだが、それをわざわざ言って混乱させてもなぁという感じ。俺はヘイローの光を強め、空間の歪みを広げながら、去り際に一言だけ言葉を残すことにした。

 

 「強クナリナヨ、男ノ子。アイツ、次会ウ時ハモット厄介ニナッテルダロウカラサ」

 「あっ……待って!!」

 

 晶の手が届く前に、俺は重力制御を全開にして空へと躍り出た。超音速の飛行による衝撃波を残し、夕闇の空へと溶け込むように姿を消す。

 最後に「あの人は……一体……?」なんてセリフが聞こえた気がするが、まあ謎の存在として扱ってくれる分には問題ない……はずだ。

 

 セーフハウスの屋根に降り立った俺は、ヘイローの認識干渉を解除し、元の「未花」の姿へと戻った。

 

 「ふぅー! 初陣にしては上出来じゃないか? しかし、ちょっとカッコつけすぎたかもなぁ」

 

 ポンポンとスカートの塵を払い、完璧美少女の仮面を取り払って一人でニヤリと笑う※1

 制御球に傷の無い「完全体ガイバーⅡ」となったリスカー。彼の戦闘能力は予想通り凄まじかったが、俺の介入によって「完璧な力を持っていながら敗北した」という絶望的な挫折を味わうことになった。

 これにより、リスカーはガイバーⅠと俺に対して並々ならぬ執着を抱くことになるだろう。

 

 「敵側のガイバーなんて、こんな美味しいポジション、易々と居なくしちゃ楽しくないよな。アプトムとはまた違ったライバルキャラとして、ガイバーⅠを強くしてくれるだろうから」

 

 そう呟いた直後、ぎゅるると腹が鳴る。『食事』の直後とはいえ、戦闘をしてしまったから少しエネルギーが足りてないな。

 

 「『俺』としては別に構わないけど、『ミカ』としては食い意地張ってるのははしたなく感じるよなぁ……まあ、わざわざ食い意地を隠すような相手も、今はいないけど」

 

 

 


 

 

 

 「は、はい? 今、何と?」

 

 一方、日本支部に帰投したリスカーは、信じられないことを聞いた顔をしていた。相手は、極東総司令リヒャルト・ギュオー。

 

 「二度も言わせるな、リスカー監察官。『待機』だ。その『パテル』とかいう謎の調整体がガイバーを上回る瞬間出力をしているというのなら、ヤツの姿が確認された成沢高校付近に獣化兵を差し向けるのは得策ではない。(いたずら)に戦力を消耗するだけだ。それならば三つ目のユニットを探すのに戦力を割いた方がマシというものだろう? なに、急ぐことはない。幸いにも、お前という形で既にユニットは1つ確保されているのだからな。

 ガイバーⅡ、オズワルド・A・リスカー監察官は後方で部隊の指揮を執り、ガイバーⅠ及び『パテル』との接触が危惧される場合に限り現場に出ること。それと、巻島玄蔵は更迭だ。これより日本支部の総指揮はこの私、リヒャルト・ギュオーが執る」

 

 「下がりたまえ、リスカー監察官」と言って話を終わらせるギュオーに、リスカーは不満を抱きながらも従わざるを得ない。ついでのように更迭を宣言された巻島玄蔵が何やら喚いていたが、そんな声はもはや彼の耳には届いていなかった。

 

 (分かっていない。ギュオー閣下は分かっておられない! ガイバーⅠとパテルを放置すれば、我々クロノスにとってどれほどの脅威となるか……!

 確かに相手の戦力を考えれば、三つ目のユニットを探す方が安全ではある。だが、一時の安全と安心のために彼らを放置することは、長期的に見て決して上策とは言えないはずだ……! 何を考えておられるのだ閣下は!)

 

 リスカーは(ほぞ)を噛む。彼は知る由もない。ギュオーがユニットの秘密を知り、それを強奪する方法を知っていることなど。もちろん、リムーバーがあれば何とでもなると考えているのはギュオーの浅はかさだが、それを指摘できる存在はこの場には1人としていなかった。

 

 リスカーが部屋を辞し、巻島玄蔵が連行された後。ギュオーは日本支部の人員に宣言と指示を出した。

 

 「ガイバーⅠの監視に、遺跡基地(レリックス・ポイント)から損種実験体部隊(ロストナンバーズ・コマンド)を出す。お前たちは3つ目のユニットを探せ」

 「はっ。しかし、損種実験体部隊(ロストナンバーズ・コマンド)、ですか」

 

 「そうだ。正規の獣化兵(ゾアノイド)では、あの『パテル』とやらに無駄死にさせられるだけだ。データの取り終わった失敗作どもならばいくら失おうが惜しくはない」

 

 ギュオーは冷酷な笑みを浮かべ、グラスを傾ける。

 

 「アプトム、ソムルム、ダイムの三体に向かわせろ。奴らの特異な能力ならば、ガイバーⅠの監視と『パテル』のデータ収集の役に立つだろう。

 ガイバーⅠもろとも、我々の掌の上で踊らせておけばいい」

 「御意に」

 

 部下が恭しく一礼し、退室していく。残されたギュオーは、窓の外の夜景を見下ろしながら、自身の野望を滾らせていた。

 

 (ガイバー……そしてユニット。必ずやこの手中に収め、私が世界の覇者となるのだ。アルカンフェルに(かしず)く日々も、そう長くは続かん)

 

 

 


 

 

 

 一方、自室に戻ったリスカーは、暗がりのソファに深く腰掛けたまま、己の拳をじっと見つめていた。

 本来、オズワルド・A・リスカーという男は、極めて冷徹で計算高い監察官である。エリートとしての矜持は高くとも、組織の規律と合理的な判断を何よりも重んじてきた。だが今、彼の胸の奥底で燻っているのは、かつて経験したことのないどす黒い感情だった。

 

 (パテル……。あの女、私を本気で殺そうとはしなかった。完全に舐めきっていたのだ。この私を!)

 

 ギリッと、奥歯が鳴る。ガイバーⅡとしての圧倒的な力を手に入れたにもかかわらず、あの得体の知れない女に叩きのめされた屈辱。そして、自分の目の前で着実に成長の兆しを見せていたガイバーⅠの姿が、脳裏に焼き付いて離れない。

 ギュオーの言う「監視」や「待機」が、組織の戦略としては理にかなっていることは頭では理解している。しかし、どうしても納得できない自分がいた。

 

 (ギュオー閣下は、現場で相対した私だからこそ感じ取った『脅威』を軽視しておられる。あの二人は、放置すれば必ず我々の手に負えなくなる。……ならば)

 

 リスカーは立ち上がり、窓ガラスに映る己の鋭い双眸を睨みつけた。

 

 (クロノスの未来のためだ。組織の決定が誤っているというのなら、私が自らの手で……いや、これは違う。私はただ、あの屈辱を雪ぎたいだけなのか……?)

 

 一瞬、監察官としての理性が己の感情の暴走を警告したが、彼はそれを無理やり抑え込んだ。

 

 (いや、ヤツらを止めるためならば手段は選ばん。クロノスのため、いずれ必ず、私が奴らの息の根を止める)

 

 冷徹なエリートの仮面に、「私怨」という明確な亀裂が入った瞬間だった。

 

 

 


 

 

 

 同じ頃、竹代町の寂れた純喫茶。紫煙の漂う店内の隅で、黒いジャケットを椅子に掛けた長髪の男――村上征樹は、まだ湯気と香りのくゆるコーヒーを見つめながら、ひっそりと息を吐き出していた。

 

 「極東総司令、リヒャルト・ギュオー……。ついに日本支部へ現れたか」

 

 サングラスの奥の瞳が、鋭い光を放つ。彼の額に埋め込まれたダミークリスタルが、完成体であるギュオーのゾアクリスタルとの微かな共鳴によって、その強大な気配を確かに察知していた。だが、彼がこの町にやって来た理由は、それだけではない。

 

 昨日の夕刻。村上の超感覚は、成沢高校の方向から放たれた、信じがたいエネルギーの奔流を捉えていた。

 

 「ギュオーの重力制御の足元に及ぶほど……いや、瞬間的な破壊力においてはそれに匹敵するほどの空間圧潰。ガイバーでも獣神将でもない。全く別の、規格外のバケモノがこの町に潜んでいる」

 

 『パテル』と名乗ったという謎の存在。ルポライターとしての情報網と、試作獣神将(プロト・ゾアロード)としての能力を以てしても、その正体は全く掴めない。

 

 「クロノスの手先か、それとも第三の勢力か。……いずれにせよ、ガイバーⅠ――深町晶くんと接触する必要がある。このままでは、少年はあの化け物どもの思惑にすり潰されるだけだ」

 

 村上は静かに立ち上がると、ジャケットを肩に担ぎ、夜の街へと消えていった。

 

 

 


 

 

 

 翌朝。成沢高校、生徒会長室。

 優雅に紅茶のカップを傾けていた巻島顎人は、クロノスからひっそりと持ち出した報告書をデスクに放り投げた。

 

 「ガイバーⅠの未熟さは相変わらずだが……『パテル』か。思わぬイレギュラーが介入してきたものだ」

 

 顎人の口元に、冷笑が浮かぶ。日本支部がギュオーの直轄となったことで、養父である玄蔵が更迭されたことは、顎人にとってはどうでもいいことだった。重要なのは、自身の野望――クロノスを内側から食い破り、世界の覇者『ゼウス』となること――のための布石だ。

 

 「ギュオーもリスカーも、そしてパテルとかいう正体不明の女も。せいぜい私のために盤面を荒らしてくれたまえ。深町晶が立派な『駒』として育つまでの間、しばらくは高みの見物とさせてもらおう」

 

 ガイバーⅢとして暗躍する彼にとって、この混沌はむしろ歓迎すべき事態であった。

 

 

 


 

 

 

 そして、全てが交錯する中での、成沢高校ののどかな登校風景。

 

 「なあ晶、やっぱり昨日のあいつ……パテルって言ったか? 敵なのか味方なのか、さっぱり分からないよな」

 

 哲郎が、顎に手を当てながら唸っている。

 

 「ええ……。でも、あの人がいなかったら、多分俺と哲郎さんはリスカーにやられてました。それに……」

 

 晶は言葉を濁した。圧倒的な力を見せつけたあの人影に、どこか不思議な、ともすれば親近感とも形容できるような違和感を覚えていたからだ。

 

 「おはよう! 深町くん、それに哲郎先輩!」

 

 二人の会話を遮るように、背後から弾けるような明るい声が響いた。

 振り返ると、そこには編入してきたばかりの美少女――聖園未花が、完璧な笑顔を浮かべて立っていた。黒髪を揺らし、愛嬌たっぷりに手を振る彼女の姿は、昨日の地獄のような死闘とは対極にある「平和な日常」そのものだった。

 

 「あ、おはよう、聖園さん」

 

 晶はドギマギしながら挨拶を返す。やはり、見とれてしまうほどの美人だ。だが、なぜか心の奥底で、以前感じた「不気味の谷」のような違和感がチリチリと警鐘を鳴らす。

 

 (いや、気のせいだ……。聖園さんが、クロノスなんかと関係あるわけないじゃないか)

 

 晶がそんな風に己を納得させている一方で、完璧美少女の仮面を被ったミカの内心は、全く別のことで満たされていた。

 

 (あー、お腹すいたなー。昨日の夜はカロリー消費しすぎたし……また獣化兵つまみ食いしないとなぁ)

 

 各々の思惑と野心が交錯する中。運命の歯車は、ロストナンバーズという新たな部品を巻き込みながら、さらに激しく回り始めようとしていた。

※1
なお顔面はミカなので、表情としては魔女フェイス

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。