転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。 作:Othuyeg
あと、ガイバーって相手によって一人称変えるキャラ割といますよね(小田桐主任に対しての村上征樹や、村上征樹に対しての深町晶など)。妙なところでリアルさがあるなぁと思います。
「お疲れー。じゃ、また明日な!」
下校時刻。成沢高校の敷地の中に、密かに晶を観察する三つの影があった。
(あいつがガイバーⅠ……深町晶、か)
アプトムたち、
物陰から晶を監視するアプトムは、小さく冷ややかな笑みを浮かべる。
(呑気なことだ。自分たちが監視されていることも知らずにな)
彼がそんなことを考えていると、ギュオーからの思念波が届いた。
『
(はっ。現在、ガイバーⅠはこちらの接近には気づいておらず、呑気に下校している様子。また『パテル』なる調整体らしき人影は見当たらず、どうやらこの近くにはいないものと考えられます。どうなさいますか、ギュオー閣下)
アプトムが念じるようにしてギュオーに伝えると、狡猾な極東総司令は暫し考えた後、こう伝達した。
『……ふむ、好機かもしれんな。アプトム、ダイムはそのまま監視を続行し、ソムルムは瀬川兄妹が帰宅したところを狙って二人を攫え。陽動としてゼルブブスとパナダインを出す。上手くやれ』
(御意に)
アプトムからの短い応答を受け取ると、日本支部の研究区画で、ギュオーは邪悪な笑みを浮かべた。
「……? いかがなさいましたか、ギュオー総司令閣下」
「ふっ、いやなに、舞台が整ってきたなと思っただけだ」
ギュオーの視線の先にあるモニターには、これまでに収集された情報が羅列されていた。深町晶が殖装するガイバーⅠ、そして先の不慮の事故により誕生したリスカーのガイバーⅡ。そして、ガイバーⅡとその戦闘データから得られた情報を基に急ピッチで完成へと近づいている、対ガイバー分解
「さて……お前たちは三つ目のユニットの捜索を継続しろ。今ならガイバーにもパテルにも邪魔されん」
未だ行方知れずの3つ目のユニットが手に入れば、他のユニットなど惜しくはない。むしろ、他の神将に殖装されてしまう危険性を考えれば、破壊してしまった方が好都合と言える。そういう意味で言うならば、リスカーもいずれ邪魔になるだろうな、とギュオーは思考を巡らせた。
……と。そこに、硬質な靴音を響かせながら現れたのはリスカー。「噂をすれば影がさす」とはこの事かと、ギュオーは小さく笑う。
「随分と……回りくどいことをなさるのですね、閣下。ガイバーⅠを捕らえるならば、私が奇襲をかけ、
ふつふつと滾る不満を必死に押し込めながら、リスカーが言う。ギュオーは、彼の声音から焦りと不満を感じ取り、低い声で答える。
「リスカー監察官。ことはそう単純な話ではない。パテルの存在がある以上、大規模な戦力での軽率な攻撃はヤツの誘引を招きかねん。ならば今回のような作戦をとって、ガイバーⅠを牽制しておいた方が動きやすくなるだろう。幸い、お前のお陰でヤツは持久力に難があるということも分かっているわけだしな?」
「……なるほど。出過ぎた発言でした」
ギュオーの冷徹な言葉に、リスカーは一言謝罪を口にして押し黙った。自身の武勇と直感を軽んじられた不満はあるものの、総司令の権限と、謎のイレギュラー「パテル」の脅威を前にして、これ以上声を荒らげることは得策ではないと判断したからだ。
「構わん。パテルの情報が集まり次第、お前にも出てもらうことになるだろうしな」
ギュオーは言う。その言葉に、リスカーは密かに拳を握り締め、自らに言い聞かせる。
(まだ辛抱だ。いずれ、雪辱の機会は来る……。だが、その時は閣下。たとえ貴方であろうと、私を止めることは許さない)
その頃、街の一角では、ギュオーの描いた謀略が着々と実行に移されていた。
突然襲い来た異様な気配に、深町晶は背筋を凍らせていた。気配の直後、突如として姿を現した超獣化兵――ゼルブブスとパナダインが放つ圧倒的な殺気は、これまでの下級獣化兵とは比較にならない。
「ぐっ……なんだこいつら……! 今までのヤツらとは様子が違う……!」
反射的にユニットを召喚し、ガイバーⅠへと殖装を遂げた晶だったが、二体の猛攻の前に完全に押し込まれていた。溶解液と熱線砲が装甲をかすめ、爆発の衝撃が脳髄を揺らす。逃げ場を失い、文字通り絶体絶命の窮地に陥ったその時だった。
「無様だな、ガイバーⅠ」
――ギャオォッッ!
「がはぁっ!?」
「ゼルブブス!?」
ゼルブブスの背に突如として着弾したのは、プレッシャーカノン。その場にいた全員が、驚いて声のした方向を向く。
「見ていられんのでな、加勢しに来てやったぞ」
「お前は……ガイバー!?」
「ガイバー……Ⅲ、だと!? くっ……!」
監視しているアプトム越しに様子をモニターしていたギュオーは、その光景を目の当たりにして息を呑んだ。
「しまった……既に3つ目のユニットも起動されてしまっていたか」
誤算、というか予想外だ。ギュオーが顎に手を当て、計画を練り直そうと思考を巡らせていると、ソムルムから報告が届いた。
『ギュオー閣下、瀬川兄妹の確保が完了しました。いかがなさいますか?』
(……なるほど、そうか。よくやった、ソムルム。総員撤退し、日本支部に帰還しろ)
『はっ』
ソムルムの確保完了報告を聞き、ギュオーは素早く計画の再設計を始める。これだけの戦力が一箇所に集結している以上、中途半端な戦力での各個撃破をもはや狙うべきではない。むしろ、この状況そのものを逆手に取るべきだ。幸い、クロノス側にもリスカーという形でユニットはある。先刻は「いずれ邪魔になる」などと考えていたが、状況が変わった今はむしろ彼こそが鍵だ。
ギュオーは冷酷な笑みを浮かべ、全職員に号令を下した。
「日本支部全局員へ通達。直ちに防衛体制を再編、主要データの移送を開始せよ。――この日本支部を、奴らの墓場とする」
すべてのユニット・Gが回収不可能な形で起動し、うち二つは敵対勢力の手へと渡った。ギュオーは考える。ガイバーⅠとガイバーⅢ、ついでにパテルを抹殺し、隙を見てユニット・リムーバーでリスカーからユニットを引き剥がす。これが最も安全な策だろう。
(ガイバーⅠ、ガイバーⅢ、そして正体不明の規格外生命体『パテル』……。これらが連携を取って攻撃を開始する前に、一箇所へ集め、根こそぎ叩き潰す)
ギュオーは司令卓の通信回線を切り替えると、地下の特命調製室へとアクセスを繋いだ。
「エンザイムの調製速度を極限まで引き上げろ。未完成だろうと、ガイバーの体組織を分子レベルで溶解させるあの『酵素』さえ機能すれば、あとはどうでも構わん」
この日本支部は、最初から捨て駒だ。
主要な研究データと有用なサンプルさえ
「……随分と思い切った采配ですね、ギュオー閣下。防衛体制の再編はともかく、主要データの移送とはどういうことですか。まるでこの日本支部を放棄するかのような……」
背後から響いた冷ややかな声に、ギュオーは悠然と振り返った。リスカーはまだ、指令室に残って様子を見ていたようだ。
「聞こえていたか、リスカー監察官。なに、状況に合わせた迅速な作戦変更だよ」
リスカーの鋭い追及に対し、ギュオーは白々しい笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。
「言葉通りの意味だ、リスカー監察官。ソムルムが瀬川兄妹――ガイバーⅠの精神的な弱点となる者たちを確保した。ヤツらは必ずこの日本支部へ救出に現れる。それに加えて、予期せず現れたガイバーⅢ、そして謎の存在『パテル』も釣られてやってくる可能性が高い」
ギュオーはモニターに映る、防衛ラインを再構築しつつある
「奴ら全員をこの局舎に誘い込み、一網打尽にする。そのための巨大な『罠』として、この日本支部を使うのだ。もちろん、奴らが死に物狂いで抵抗すれば、施設は無事では済まん。ゆえのデータ移送だ」
「なるほど。あえて懐に飛び込ませ、退路を断つと。そして疲弊したところを、この私がガイバーⅡの力で確実に仕留める、という手筈ですね」
リスカーは納得したように頷きつつ、自らの両腕を高周波ソードのようになぞり、静かな闘志を燃やす。
「……そうだな、その通りだ。お前にはこの作戦の要として動いてもらう。来るべき決戦に備え、万全の態勢を整えておけ。ガイバーⅡ、オズワルド・A・リスカー監察官」
「承知いたしました」
リスカーは優雅に一礼すると、指令室を退出していく。その背を見送ったギュオーは、再び視線をモニターへと向けるのだった。
部屋を辞した後、リスカーは口元に手を当て、自室へ向かいながら思考を巡らせていた。
(おかしい……。単なる迎撃作戦のために、クロノスの重要拠点である支部を一つ丸ごと捨てるなど、あまりにも不自然だ)
通路を歩きながら、エリートとしての優れた直感がリスカーに警告を発していた。あの男は、自分に何かを隠している。
(瀬川兄妹を囮にするのはいい。だが、何か……例えば状況が変わった今、私のユニットすらも狙っている、と言うことはないか? あるいはいざとなれば私ごと……。
だが、ガイバー関連の作戦は総帥アルカンフェルやドクター・バルカスが直接管理しているはず。ユニットは遺跡宇宙船と並ぶクロノスの至宝、ギュオー閣下と言えど、それを一存で破棄するなど許されるわけが……)
無意識のうちに、リスカーの拳がギリッと強く握り込まれる。パテルに味わわされた屈辱を雪ぎ、ガイバーⅠの頭部制御球を己の手で抉り出すという悲願。それを他人に――ましてやギュオーの狡猾な罠に横取りされることなど、彼のエリートとしてのプライドが絶対に許さなかった。
(ギュオー閣下……貴方が何を企んでいようと、私の邪魔はさせない。ガイバーを狩り、クロノスにおける私の真の価値を証明するのは、この私だ)
疑念は確信に近い不信感へと変わり、リスカーの中で静かに、だが確実に、組織の規律に対する亀裂を広げていくのだった。