再開のテンションで始まったちょっとした戯れの数々が終わると、突然ルーカスが泣き始めた。
それから泣き続けるルーカスを眺めている。かれこれ一時間。そして俺はひたすらオロオロしている。これも一時間。
うーん。苦手だ。俺は泣いてる人間がとっても苦手だ。見てるだけで胃がチクチクして手がジャグリングを始めそうになる。
背中をさすってみる。ちょっと落ち着く。けど泣き続けてる。
やめてよぉ....俺は見知らぬガキが泣いてるだけで辛い男だぞ。とっても大事な友達に泣かれるとめっちゃ辛いんだぞ。
「おーい。ルーカスー?大丈夫かー?」
「うっ.......だいじょうぶ....う、うれしいだけ....だから....」
「そうかぁ....」
おかしいなぁ、俺の記憶の中のルーカスは義理堅くて寡黙、ちょっと色黒なイケメンくんなんだけど。
目の前の真っ白な鼻をグスグス言わせて泣いている美少年とは結びつかない。目と立ち方以外全然似てねえや。
「ルーカスー、俺はそろそろ腹減ったぞ。何喰いたい?」
「さかな....うぅ....」
「おっけー、ちょっと歩くことになるけど良いか?」
「だいじょぶ....」
あれかな、魂が体にちょっと引っ張られてんのかも。汚染された自分の腕引きちぎりながら足で剣ぶん回してた男がこんなに泣くのはちょっと違和感がある。
それともあれかな、俺の事大好き過ぎるだけとか??がはは!!
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「という事でマスター、俺の友達の為に魚料理よろしく。俺はステーキ」
「此処は!!酒場であって!!飯屋じゃねえって言ってんだろ!!クソガキ!!あと何時だと思ってんだ!!」
「そう言いながらサバを捌き始めるマスターが本当に好きだよ」
ふ、といつの間にか泣き止んだルーカスが笑みをこぼす。
「....馴染みの店なのだな、ここが」
「そうそう。常連。とっても仲良し」
「出禁だ馬鹿野郎。あそこのテーブル代金さっさと払え」
「そんな....壊したのはあの怖いオッサンなのに?!」
「正確にはお前が投げ飛ばしたオッサンの背中だ!!」
ぶつくさ言いながらも器用に両手で別々に料理の準備をするマスター。相変わらず人が良い。
「白ガキ。喰えないもんあるか」
「....白ガキというのはボクの事だろうか」
「お前以外に誰がいんだよ、服まで白くしてんのに」
「....香りの強い物は、ちょっと苦手だ」
「塩、黒胡椒、ニンニク、レモンハーブ。いけるか?」
「それで、頼む」
あれ?なんか俺よりも応対優しくない?絆を疑っちゃうぞ?
「クソガキじゃなきゃ優しいぞ俺は」
「えっ読心術....?!」
「世界一の表情筋をお持ちで」
「照れる///」
「褒めてねえぞ」
「君は昔から、全て顔に出ているよ」
知ってるよそんなこと。皆でたまにやってたトランプ全負けだもん。
セレスとルーカスは常に仏頂面。メルクリアは微笑みから顔が崩れなくて、唯一勝ち目の有るモチヅキも魔術で顔を偽装とかしやがる。ズルかったなあれ。
そこから弾んだちょっとした思い出話を二人でする内に、料理は完成したようだ。
「サバのバターソテー。牛モモのステーキ。バゲット二人前。頼むから二度とこんな時間にこんな注文すんじゃねえぞ」
「ほら、ちょっと朝日昇ってきたし新しいモーニングセットって事で」
「すごい、美味しそうだ。ありがとう、マスター」
「話聞いてくれ....礼は受け取るが....」
いつ喰ったってでけえ肉はうめえや。友達が隣にいるともっとうめえや。
「あ、今日泊めて。宿取るの忘れた」
「殺すぞ」
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俺は床。ルーカスはソファという事に決まった。正直マスターが心配になってくる。大丈夫?押し売りとかちゃんと断れてる?
「なあマスター、詐欺とか気を付けてね?」
「黙れクソガキ。あと煩くしたら速攻で追い出すからな」
「はーい」
「了解した。気を付ける」
「....おやすみ、ガキ共」
マズイ、ここまで良い人だと若干申し訳無さが湧いてくるぜ....ちゃんと銀貨は払ったが、起きたら出来るだけの家事くらいはしておこう。
まあいいや、取り敢えず寝よう。流石にちょっと疲れたし。
「おやすみ、ルーカス」
「ああ、マスクス」
「マスクス」
「何?」
「ごめん」
「ずっと、長い間、言いたかった。謝罪を」
「....何が?まさか会計俺持ちなの気にしてる?それともあの時昼食ルーレットで逆イカサマしたこと?それとも....」
「誤魔化さないでくれ」
「さあ、そんな事言われても」
「あの時」
「君が死ぬことを知っていて、ボクは君を送り出した。君はそれを知っていた筈だ」
「...........」
「生きたかった。ずっと辛かったけど、それでも生きたかった。けど、そう思わせてくれた君をボクは」
「寝ていいか?」
「.....え?」
「一切気にしてない。マジで。後悔も一切してない。なんならちょっと忘れかけてた。はい閉廷」
「ず....ずるいぞ、なんかそれは」
「そんな事言われましても。事実だし」
「君はいつも....ズルい。ずっと格好良いままだ」
「何処がだよ。今世でも顔が良い奴に言われると腹立つな、今の発言の方が謝ってほしいわ」
「....ご、ごめん?」
「はい、許そう。じゃ、もう一度おやすみ」
「.....おやすみ」
マスター
もう色々と諦めている。29歳独身。この前恋人にフラれた。