ルーカスと出会って、ざっと一ヶ月は経ったか。
昨夜も泊めてくれたマスターの家を一緒に掃除している途中。
ふと思う。
「なあ、やっぱりお前がいるってことは他の皆もいるのかなぁ?」
「....今気付いたのか?」
「うん」
「命のみならず知能まで落としてきたか?」
「無いものは落とせないよ、ルーカス」
はぁー、とデカい溜息を落とす。へへ、俺の減らず口に勝てるかな?
「おそらく居るだろう。神はほんのりと匂わせていたからな。だが、目覚めているかまでは分からん」
「....目覚め?何の?」
「.......何の??記憶に決まっているだろう」
「俺生まれた時からあったけど???」
「????」
えっ急に目覚めたの?!めっちゃ気持ち悪くないそれ?!
「じゃあお前は意識のあるまま母親から、その、アレを受けたのか....?流石にボクと言えども引くが....」
「最初から森の中でひとりぼっちだったけど」
「は?」
「え?」
沈黙。
何?俺そんなマズイ事言った?
「....ちょっと待て、どうしてそんな事になる。神は特典を付けると言ったはずで....まさか直接魔王討伐に参加していないから渡されなかったのか?いや、だが...」
「くれるって言ったけど断った」
「.....そうか」
おお、前世含めて人生で見たこと無いタイプの顔をしている。なんで?
「お前らが転生するならその分贈っといてってお願いしたんだぜ、感謝しろ~?」
「..........」
もっと見たこと無い顔をしている。どういう感情?それ。
十分前はあんなに笑顔だったのに。なんか悪い事したかな、俺。
まさかハードモード希望だったか?あんまオススメしないぞ、飯不味かったし寂しいし、寒いわ暑いわで。お気に入りの動物は五割くらい死ぬしな!!
「マスクス。こっちに来い」
「その変な顔辞めてくれたらいいよー」
「これはお願いじゃない。命令だ。寄れ」
「やだ」
マジで何なんだよその変な顔。長い付き合いだけど知らないぞ、それ。
泣きと怒りと苦しみを大さじ一杯ずつ、それに物体Xを大さじ4くらい加えた顔だ。
くだらない事を考えていると、瞬きの間に距離を詰めたルーカスにガシッと肩を掴まれた。いつも通りの極まった歩法。お見事。それにしても速くない?
「マスクス」
「なんだよ。あと二十分もしたらマスター昼休憩で帰ってくんぞ」
「それまでには済ます」
「じゃあいいよ」
うーん、不思議だ。昔から俺はこういう謎の現象に巻き込まれる。
「なあ、何故だ?」
「何故って何が」
「貰わなかった理由だ」
「だっていらないしなぁ、特典で強くなっても虚しいじゃん、モテても悲しいし。いいトコに産まれても、そこに産まれる筈だった赤ちゃんが可哀想だし」
「.....」
おお、無言で抱きしめられた。あったけえ。
俺の善良さに感動したのか?褒めてくれたって良いんだぜ。
「キミは、いつまで」
めっちゃ声が震えている。普段はとっても理性的な男が。そんな感動した....?俺は大道芸を辞めて劇でもやるべきなのかもしれない。
「いつまで....他人の為に動くんだ」
そんな事言われましても。
「俺は誰かの為に動いた事なんてねえぞ」
「じゃあ、なんで....なんで、僕達に、贈った。それが他人の為じゃなくて、なんだって言うんだ」
「俺が貰うよりお前らが貰ったほうが嬉しいからだけど....?」
「.......」
ちょっとだけ髪が湿る感覚。
「なんで泣いてんの」
「ぼくは、じゃあ。キミになにが、なにができるんだよ」
「えー」
ぽたぽたと髪に落ちてくる水滴が、嫌な感じだ。少なくともそれを止めてくれるだけで助かるが。
「ずっと、ぜんぶ、もらってばっかで、さいごまで」
「ずっと美味い飯作ってくれたじゃん。決戦前は奢ってくれたし。ご馳走様」
めっちゃ喰った気がする。流石に大人気なかったかな、あれ。美味かったぞ。
「じゃ、じゃあ、ごはんぜんぶぼくがおごれば、いいの?」
「それはそれで嫌だ。多分一週間で申し訳無いが勝つかなあ」
全部奢らせてる男、外面が悪すぎる。心折れるわ。
「というかなんで何かしようとしてんの?別にいいのに」
「ぼくがよくないのぉ!」
幼児退行してない?
「えー、会えたし。一緒にご飯食べてくれるし。よく笑うし。十分だと思うんだけど」
「なにがだよぉ....」
面倒臭いなコイツ。説明してる以上の事は無いのだが。
「お前が嬉しそうだと、俺が嬉しい。多分、お前よりも。
お前が幸せだと俺も幸せ。絶対、お前よりも」
「.......」
腕の締め付けがキツくなったが、どうやら泣き止んでくれたらしい。あっちょっと肋の骨がっ。
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「助けてマスター。ルーカスが人間の形をした縄になった」
「どういう体勢してるんだそれ????」
マスクス
ケーキは一番デカいのを選ぶタイプ。分けやすいから。