ああ、恋人が欲しい。
一悶着が終わり、疲れのあまり。つい口から漏れ出たその言葉に。
すぐ隣で本を読むルーカスは意味不明な物を見るような視線を向けてきた。酷くない?
「あ゛?何だその目は俺に彼女が出来ないって言いてえのか」
「いや....その....出来ると思ってないというか....?」
「一切躊躇無くライン越えてくるじゃん....」
「違うんだ、お前が....恋人を作って良い人間だと思っているのか?」
「もっと深めにライン越えてくるじゃん????」
え、何?俺恋人にはめっちゃ尽くすタイプだよ?....出来たことないから分かんないけど。けどほら、浮気とかしないよ?多分。
おかしいな、14年強、たっっっぷりと絆を深めた友人なんですけど。そんな人間性に問題有りと思われてる?
「マスクス、僕はさっき話したよな、彼女達もこの世界にいるんだぞ....?」
「おう」
「.....いるんだぞ.....?」
「お、おう」
「..........い、いるんだぞ?」
「だから....?」
「.....寝よう。うん。僕には無理だ、モチヅキ辺りが適任だ。おやすみマスクス」
「おいちょっと待て、気になる所で止めるなよ?!」
「うるさい、馬に蹴られて....いやドラゴンに踏まれて死ね」
「死因の半分実際にそれだった俺に言うかそのネタ?!」
「ああ、どうりで」
「世界一嫌な納得の仕方を見た....」
まあ気術で誤魔化しただけで、辿り着く頃には綺麗に半身吹っ飛んでたからな、上から下まで。珍しいだろあの死に方。
--------------------------------------------------
「マスター、恋人ってどうやれば出来ると思う?」
「それを俺に言うのか....?」
あ、そういえばちょっと前に別れてたね。
「なんで振られたの?」
「少なくともそのデリカシーの無さを改善しろガキ」
「なるほど、で、なんで?」
「改善しろ?」
気になるじゃん。いい男なのにさ、マスター。
顔も悪くない。いや、悪くないどころか結構なハンサムフェイス。声もちょっと使い過ぎなせいかしゃがれているが、それもまた顔と噛み合って味がある。
言わずと知れた人間性に、お客さんからの信頼も厚い。欠点何処....?
深く溜息を吐きながらも、ぽつぽつとマスターが語り始める。
「....不安になったんだとさ、俺の事が」
「え?病気?それとも金?何がいる?」
「ちげえよ。あともしそうだったとしても、ガキが解決する必要はねえよそんな事」
「何度も言ってるけど俺は三十七ですぅ~マスターより歳上です~あといい加減呑ませろ~?」
「うるせえな、ガキはガキだろ」
うーん好き。俺が女だったらベタ惚れだったね。
「マスターってさぁ、落ち着いて見ると欠点無いのにね。口が悪い以外」
「....それが....ダメなんだとさ」
「え?」
「....言っちゃあ悪いが、俺は、まあ、モテる」
あー、なる、ほど。
それは....
「....マスター、一杯奢るよ」
金貨を一枚財布から弾き出す。綺麗にマスターの掌に着地。
「最初から最後まで俺の酒だけどな?....はあ、乾杯」
「かんぱーい」
俺にはオレンジジュースと何かしらの香草?のカクテル。
マスターはお高そうなワインを空けてる、開けてるじゃなくて空けてる。バカみたいなデカさのグラスにドバドバと注いでる。
「それはもう直飲みで良いのでは....」
「っくはぁ゛ぁ゛、風情がねえよそりゃ。いい酒には敬意を払わないとな」
「バカデカグラス一口飲みに敬意が....?」
「味わえば敬意だ」
「じゃあ直飲みでいいじゃん?!」
「「がはは!!!!!!!」」
まあ世話になってるんだ、ちょっと長めに付き合うくらいはしてやろう。
にしても。
「モテるってのも辛いんだねぇ、俺には縁が無いから知らなかったわ」
まあルーカスが行く先々で惚れられたり、たまに寄る王都で三人が貴族に散々ラブコールを送られていたのは見てたけど。
俺はなぁ、ぜんっっっっぜん女の子と縁が無かった。
大抵の子は硬派イケメンなルーカスに寄っていくし、ちょっと良い感じになってもすーぐ離れていく。あれは絶対三人の俺に対するゴミを見るような目線のせいだ。
俺がアレすぎて離れていった、とは思いたくない。現実は見ないほうが幸せな事もある。多分それは、今のマスターも同じだから。
ということで!!!
「一発芸しまーす、分身」
「どうなってんだそれぇ?!?!」
マスター
女性常連客の目線が最近怖い