一ヶ月くらい森を彷徨ってたら、しわくちゃの爺さんに拾ってもらったぜ!!最高!!ラッキボーイ!!
いや~、人間の優しさってやっぱ神だわ。あったけえスープ飲んでるとしみじみと感じる。
「爺さん、おかわりある?」
「.......」
さてさて。そもそも言葉が通じてないのか、それともこの爺さんが何らかの理由で喋れないのか。
あ、おかわりあるっぽい。デカ目の鍋から謎激ウマスープを注いでくれた。かたじけねえ。パンも追加。太っ腹だ。
かなりの間毒は無い雑草と焼いただけの肉で暮らしてたからなー、文明を感じる食事が美味すぎる。
入れてもらった小屋?を見渡しても、文字が刻まれている物は無い。本とは言わないからちょっとした道具の持ち手に刻印でもありゃいいが、どうにも自作っぽいんだよな。
爺さんが持ってるお玉は丁寧だが所々面が荒くて手作りっぽい。靴は獣の皮に木型を通した推定手作り。服もボロ布のツギハギって感じでなあ。
丸見えの梁から針金で肉が吊るされていたり、スープにはそこそこ塩味が効いている辺り、文明との交流はある人間....だと思う。もしかしたら滅茶苦茶ハイスペックなジジイで全部自作の可能性もちょっと有るが。
「爺さん、なんかやってほしいこととかない?なんでもするよ~」
「.....」
うーん、気まずい。食い物を提供してくれるし、目も穏やか。悪意を持ってる感じではねえんだけど。
取り敢えず肩揉んどくか、年寄りは肩揉んどけばいいんだよ。前世で会った老人の八割は肩揉んだら喜んだ。残りの二割は年寄り扱いすんなってキレられた。理不尽だったなぁ、アレ。
おー、固まってた顔がちょっと緩んだ。喜んでくれたようで何より。
ふふ、長年鍛えた俺の揉みほぐしテクを喰らうが良い-------!!
-------------------------------------
途中からノリノリになって寝転がり始めた爺さんの全身を揉み解した。流石にちょっと疲れる。身体じゃなくて心の方がね、気遣いとかそういうので。
気術で生命力を流し込む俺のとんでもマッサージにより、心なしか爺さんもつやっつやしている。ぐへへ、若さと技術のマリアージュを体験してみろ、飛ぶぞ。
言葉が通じるのか分かんないので取り敢えず力こぶを作ってマッスルアピールをしてみると、笑顔で返してくれた。やさしいせかい。
「爺さん、えーっと。近くの街への行き方とか....知ってる?」
ダメ元で頼んでみた。そしたらなんと。
「知っとるよ」
「いや喋れるんかい....」
というか言葉通じるのね、やっぱり同じ世界か。
「あんたのお陰で潰れとった喉が今治ったんじゃ」
「ほなしゃーないかぁ」
いぇーい善行。取り敢えずドヤ顔しておく。
「いやあ、捨て子か迷子かと思うて拾ってみたら。まさかこんなことになるとはのぉ」
「見捨てなくて良かっただろ?爺さん」
「おう。長生きはするもんじゃな、こんな奇天烈な体験、したこと無いわ」
「そりゃ良かった。マッサージついでに体の中の悪いもん適当に消しといたからな、多分寿命伸びたぜ」
そう言うとちょっとビックリした表情をされる。まあ普通の人にはそうなるか。
前線、基本的に何かしらの毒素で汚染されっぱなしだったからなー、こんくらいは誰でも出来た。毒素消そうとも関係なく死ぬ場所だったとしてもね。
「あと二週間したら、ワシの知り合いの行商人が近くに来る。そいつに頼み込んで、街に送ってやろう」
「助かる。その間雑用するから泊まらせてくれ」
「....恩人を野に放る程、人の心を捨ててはおらんよ。逆に今からワシが『いや、出ていけ』と言ったら人でなしが過ぎるじゃろて」
「それはそれとしてちゃんと頼むのは大事じゃん、分かっていたとしてもだよ」
「お前さん....何歳じゃ?どうにも見た目通りには思えんのじゃが、ずっと」
「2....28歳と8歳、かなぁ?」
隠したってしょうがねえから正直に言う。もう色々やっちゃってるしなー。
「....事情を聞くのは、無粋じゃな。まあええわ。何処で寝たい?すまんが年寄りはベッドじゃないと寝られん、死ぬ」
「このソファでいいよ、デカいし。かなり良いやつでしょ」
「そうじゃの、これはワシの友人が------」
喋れるとなったらめっちゃ喋るな、この爺さん。良いけど。
-------------------------------------
それから二週間、かなーり楽しく過ごせた。爺さんは人恋しかったのかやりたい事(つっても釣りと虫相撲くらい)に付き合ってくれたし、飯も中々に美味い。俺は作れないから尊敬するぜ。
代わりに毎日肉は採ってきたし、マッサージも毎晩してやった。今の爺さんは70と思えないほどツルツルの肌をしている。
揉んでる最中、爺さんが商人引退した理由とか、ここで暮らしている事情。
若い頃のやらかしに、孫の魔術の才能自慢。他愛もないが、中々に聞き応えのある話をしてくれた。
たまに俺も前世の出来事を話すと、苦笑いしながらも聞いてくれた。信じてくれたかまでは分かんないけどね。
やっぱり年寄りの話は蘊蓄があって嫌いじゃない。
男二人、楽しく過ごしてると時間なんてのはあっという間に過ぎるもんで。
「大旦那、じゃあ、この坊主を送り届けたらいいんで?あんたは久々に帰らんですか」
「帰ってもマリーに詰められて辛くなるだけじゃ。冬にはいつも通り帰るわい」
「じゃあねー、爺さん。暇になったらまた来るから」
「おう、待っとる。春から秋はずっといるからの」
いやー、ワクワクするなあ。果たして、久しぶりに見る街はどれだけ楽しいことか。
あ、ちなみに。ちゃんと同じ世界だったよ。
時代を聞いたら俺が死んでから300年ちょい経ってたし魔王は根絶してた。ガハハ!!!!
.....マ??
爺さん
元は結構な大商人。運送中の事故で悪辣な呪いに罹患するが、知らんガキに解除された模様。
そのおかげか、最近趣味が増えてホクホク。
少年(?)
割とジジババキラー。人の話を聞くのが好き。
基本ハイテンションだが落ち着いてるのも嫌いじゃない。
爺さんからお礼に名刺と紹介状を貰った。