異世界でのΨ難   作:小魚猫

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第1話

僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ。

テレパシー、サイコキネシス、瞬間移動、透視、予知──その他諸々。挙げればきりがない能力を生まれつき持っている。普通なら人生を謳歌できそうなものだが、現実は違う。超能力というものは、厄介事を引き寄せる。

だから僕は、できる限り目立たず、平穏に暮らすことを人生最大の目標としている。

 

……していた。

 

「楠雄、新しい転移装置が完成したよ」

兄である空助の、その一言を聞くまでは。

 

嫌な予感はしていた。というより、あいつが笑顔で近づいてくる時点で、ろくなことが起きないのは確定している。

 

結果から言おう。

僕は今、見知らぬ森の中に立っている。周囲には巨大な木々。見たこともない生物。一瞬、「僕が知らないだけで地球にはこんな生物が存在していたのか」と現実逃避しかけたが、こんな生物が本当に地球にいたら、人類はとっくに絶滅している。

 

どうやら、面倒な世界に飛ばされたらしい。

 

……頼むから、平穏に暮らさせてくれ。

 

 

 

 

 

「いやー楠雄、これは新発明だよ。平行世界と異世界の境界面って、実は高次元空間では隣り合ってるんだ。だから境界の位相を一瞬だけ同期させれば、理論上は行き来できる。あ、簡単に言えば異世界転移装置だね。……ということで、試運転も兼ねて被験者になってほしいんだ。ほら、楠雄って超能力が使えるし、多分どこへ行っても死なないでしょ?」

 

満面の笑みを浮かべた空助にそんな説明を一方的にされた直後、僕の返事を待つことなく装置を起動させられた。その瞬間目の前が真っ暗になり、気が付けば今の状況だ。

本当に頭が痛くなる。……いや、痛くなるだけならまだいい。

とりあえず瞬間移動で家へ帰ることにした。もしかしたら次元という壁すら超えられるかもしれない。そう思って能力を発動する。

 

……発動しない。

 

何度試しても結果は同じだった。超能力が使えなくなっただけと考えたくて試しに足元の石をサイコキネシスで浮かせる。浮いた。

他の超能力も一通り試したが、すべて問題なく発動した。つまり、超能力が使えなくなったわけではない。それに数百メートル先までならしっかり瞬間移動は使える。嫌な予感がした。瞬間移動だけが失敗する理由は一つ。おそらく、次元を越えた移動は僕の能力では不可能ということだ。

 

……。

 

…………。

 

超能力でも不可能な転移装置を空助が開発したという事実が、一番恐ろしい。

 

あいつ、本当に何者なんだ。

……超能力でも不可能な転移装置を開発する兄を持つと、本当にろくなことがない。

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