義務レットは自由に生きてみる   作:RGN

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冒険者登録

 翌日、復讐の剣(ヴァーリ)一党に続いて、俺は彼らの拠点である街に移動した。

 フェグズの領地の隣の、更にその隣の領地だ。

 随分と発展している、かなり大きな街だった。

 

「いやぁ……それにしても、随分と活気がありますね」

「だろう?」

 

 他の三人と別れ、フロットさんと一緒に街を歩く。

 すると街のあちこちから、客を呼び込む声や誰かに指示を出す声が聞こえて来た。

 どうやらここの領地は商業に力を入れているようだ。

 基本的に農民ばっかりで、ウチの家だけが騎士として金を稼いでいるフェグズの領とは大違いである。

 いやまぁウチも収穫祭の季節は賑わうが……それよりも活気ある状態がデフォルトとは、何ともまぁ素晴らしい。

 

「で、アレが冒険者ギルドだ」

「へぇ……デカいですね」

 

 少なくとも、一般的な民家とは比べ物にならない大きさだ。

 具体的なサイズで言うと、ちょっと大きめのホテルって言ったところか。

 とは言ってもそれは幅の話で、縦は二階建てなのだが。

 

「入るぞ」

 

 中に入ると、存外に綺麗であるという印象を受けた。

 床に敷かれた石畳こそ、多少の泥や血の跡で汚れてはいたが、基本的に汚れはあまり無い。

 漆喰で塗り固められた壁は未だに新しい白さを保っているし、机や椅子の類は滑らかに光を反射している。

 もっと汚れていたり使い込まれた雰囲気を感じさせるものを想像していたから、意外だった。

 

「聞いたかよ、またワイバーンだってさ」

「悪魔絡みかよ、嫌な気しかしねぇー」

「巨人~? うーん、パスだな!」

 

 そこらに居る冒険者たちは、国籍も装備もバラバラなようだ。

 この国出身っぽい戦士もいれば、西の方からやって来たらしい槍使い、北の方の蛮族もいる。

 成程、こんな感じに多様な人々が入り乱れるのならば、戦争参加の禁止というのも頷ける。

 特に北方の蛮族はマジ蛮族で、戦争になると絶対に略奪を働くと聞く。

 敵にも味方にもあんまりいて欲しくない人間だ。

 

「レット、こっちだ」

「はいはい」

 

 フロットさんに呼ばれて奥の方へ行くと、カウンターがあり、その奥では複数の女性が働いていた。受付嬢というヤツだろう。

 

「ここが受付。基本的に面倒なことの大体はここで済ませる」

「面倒なこと」

「あー……まぁ、色々だ。正直何をやってるのかは俺達にゃようわからん。知る機会ってのがまずねぇし……知っても意味が無い」

「成程」

 

 まぁ、そりゃあそうという話か。

 文字の読み書きができるってだけで相当優秀な部類に分けられるのがこの世界だ。

 そんな連中にちょっとでも手続きとかを処理させるよりも、自分たちで全部やった方がいいと、そう言う事なのだろう。

 

「次の方ー」

「おっと、俺の番だ。すまんが、お前は次で頼む」

「わかりました」

 

 フロットさんはそう言うと、空いた受付嬢さんの方へ歩いてゆく。

 俺は列の先頭でポツンと取り残された。

 俺の後ろに並んでいる弓使いらしい人に怪奇の視線を向けられるので、軽く微笑むくらいしておく。

 

「次の方ー」

 

 弓使いの人の怪訝な表情がより深まったところで、また別の受付嬢さんに呼ばれる。

 顔や髪色を見るに、貴族出身の人だろうか。

 下級の貴族の三女とかは嫁ぎ相手が見つからないので、どこかの名家のメイドとして仕えさせたり文官として使ったりすると聞いたことがあるが、彼女もその類なのだろうか。

 

「こんにちは、ギルド利用は初めてのようですが、本日はどういったご用件でしょうか」

「冒険者登録……ってやつですかね? お願いします」

「かしこまりました。文字の読み書きは可能でしょうか?」

「できますね」

 

 まぁ、そうだろうな、と。

 声にこそ出さないものの態度でそう示す受付嬢さん。

 俺ってば見た目からして、客観視しても金髪イケメン高身長のナイスガイだからな。

 貴族の血がバリバリに入っていることに疑いの余地はないだろう。

 

「えーっと……」

 

 用紙とペンを受付嬢さんから手渡される。

 成程、読み書きができるんなら自分でやれ、と言う事らしい。

 名前はレットで、年齢は15。出身……フェグズでいいや。嘘ついて後で面倒になっても嫌だし。

 

「…………」

 

 俺が用紙にフェグズと書いた瞬間、受付嬢さんは『あー』っと何か察したような表情をした。

 まぁ、育ち良さそうだし、ここから領地も近い方だし、そりゃ分かるというものか。

 ちょっとしくじったかも知れん。……が、まぁいいや。どうせいつかバレるだろうし。

 で、職業(ジョブ)が……自己申告制なのか。このリストの中にある職業で、自分が出来そうなものを選べと。じゃあ俺なら……剣士と魔法使いと癒術師と……騎手でもあるか。馬にも死ぬほど乗せられたし。

 

「はい、これで大丈夫でしょうか?」

「……問題ありません。ようこそ、冒険者ギルドへ。早速ですが、冒険者として活動するにあたって注意すべき事項を今から説明させていただきます」

「よろしくお願いします」

 

 と、そうして受付嬢さんの説明が始まった。

 注意されたことをまとめると。犯罪はするな、他人に迷惑をかけるな、喧嘩を起こすな、依頼は受けた以上は全力で遂行せよ、依頼は個人間で行わず必ずギルドを通せ、依頼先で死んでもギルドは責任を負わない、依頼失敗で発生した問題は死んでいない限り当人が負え、政治には絶対に関わるな、戦争には何があっても参加するな。

 大体これらのことにさえ注意すればいいらしい。

 まぁ、総合すれば、『問題行動だけは起こすな』って感じだった。

 しかしこんなに注意するって事は、そんなに冒険者ってのは問題を起こすものなのか?

 

「出は注意事項は以上です。次に、依頼受注のシステムと等級のシステム、一党(パーティ)結成について説明します」

「あぁ、お願いします」

「まず依頼受注ですが、基本的にはこの受付で行います。依頼はそこの掲示板に張り出されているものを剥すものと、依頼者から名指しで指名されたものをギルド側で預かっているものがあります。前者の場合は剥した依頼書をここへ持ってきてください。後者の場合はこちらから声をかけますので、受注の是非を答えてください」

「成程」

 

 まぁ、暫くは……というか、有名になるまでは、掲示板に貼られている依頼をこなすことになりそうだな。

 

「等級のシステムですが、これは依頼受注の許可をギルドが下すための、大まかな指標となるものです。そして現在、冒険者には8つの等級がありまして、下から粘土、黒曜石、鋼、銅、銀、金、白金、宝石です。宝石はいわゆる英雄と呼ばれる人間が特別に認定されるもので、白金はいわゆるギルドナイト、つまりギルドからの依頼のみを遂行する特殊階級ですので、通常最高位は金等級とされます」

「ほう」

 

 となると、銀等級ってことは滅茶苦茶すごいんだな、彼ら。

 と、そんなことを思いながらフロットさんの方を見ると、『どうだ、すごいだろ』と言わんばかりにドヤ顔を決めていた。

 どうやら俺達の話を聞いていたらしい。

 

「全ての冒険者は粘土等級から始まり、戦闘力、依頼遂行能力、信頼度、人徳など、様々な観点から評価を行って昇格を行います。試験の類はありません」

「成程?」

 

 人徳も評価に含まれるのか。

 ……まぁ、高位の冒険者には税が無くなったり関所が簡単に通れたりする特典があるそうなので、そう言った特典を悪用して無茶苦茶する輩がいないようにとか、そういう配慮なのだろう。

 宿が無料で使えるからって宿で好き勝手する奴が出ても嫌だしな。

 

一党(パーティ)ですが、こちらに申請をすることで、一党(パーティ)を結成することが出来ます。依頼を共同で行う分には個人間の協力関係でも構いませんが、こちらで正式に登録することで、職種(ジョブ)の構成や人数に応じて一党(パーティ)等級が設定され、より高い難度の依頼の受注も可能になります」

「成程?」

「例えばですが、あちらに居るフロットさん率いる一党(パーティ)は構成員の全員が銅等級ですが、職種(ジョブ)構成、結成からの依頼達成回数などから、全員が同時に揃った時のみ銀等級の依頼の受注が可能なものとして扱われます」

「はぁー……」

 

 結構重要なシステムっぽいな、そうなると。

 俺も俺のパーティを結成することとか考えた方がいいのか?

 

「では、説明は以上になります。今後はこちらを首から下げておいてください」

 

 と、手渡されるのは、赤く焼けた硬い粘土板。

 表面には、先程俺が記入した内容が転写してある……が。

 

「……あの、これ、壊れたりは……」

「しますよ。特に粘土は壊れやすいので、壊れたら都度申請してくださいね」

「あ、はい」

 

 つまりはそう言う事らしい。

 どうやら等級によって、このプレートの材質が変わるようだ。

 となると、最上級の宝石等級であれば宝石で出来た板をぶら下げることになるわけである。

 実に頑丈そうだ。

 それに比べて……粘土版の如何に軽く、頼りない事だろうか。

 気付いたら割れてそうである。服の中が粘土まみれになりそうだ。

 

「……早急に黒曜石等級に上がろう、うん」

「大丈夫だよ、お前の実力なら直ぐに上がれる。粘土等級はマジの最下層というか、冒険者として適格かの試験期間みたいなモンだからな」

「はぁ、成程」

 

 俺が受付から外れて呟くと、フロットさんがそんなことを言ってくれた。

 

「ただまぁ、暫くは金稼ぎがメインになるだろうが、それもいい経験だ、頑張れ」

「はい、ありがとうございます。復讐の剣(ヴァーリ)はこれからどうするので?」

「また遠征になるかね。銀ともなると、引っ張りだこなのさ」

「はぁー……」

「まぁ、そんなわけだ。生憎と連れてってはやれねぇが……」

「いえいえ、むしろここまでしてくださり、ありがとうございました。あの時声をかけていただかなければ、マジで死んでたかも知れません」

「そこに関しては、俺達も悪かったからな、うん。そこはいいとしよう。……何にせよ、暫くお別れだ」

「はい、お元気で」

「そっちもな」

 

 と、フロットさんはギルドの外へと出ていく。

 きっと仲間たちの待つ方へ行ったのだろう。

 

「さて」

 

 早速だが、俺も行動しなくては。

 まずはこの見るからに貴族ですって感じの服をどこかに売って、装備を整えようか。

 あとは宿も見つけねば……はは、楽しくなって来たぞ。

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