「なんか、フワフワしてる」
ある日、アーディは自身の体の違和感に気づいた。
肉体的には不調は無い、傷も無ければ痣一つ無い、何時になく平和の為に闇派閥の制圧に尽力しふと気付いた。
「ケレブリンボール、私、どれだけ戦ってた?」
『4日だ』
4日、食事も睡眠も取らず走り回った肉体は絶好調のままだった。僅かの眠気も無く空腹も無く疲労も無い
正確にはスタミナと言う面で言えば間違いなく疲労はあるのだがそれが蓄積している気配が無い。
『死者には存在しない物だからだ、空腹も睡眠も疲労も』
「でも生きてるんだよね?」
『出来ない訳では無い、必要無いだけだ、それらは生者にのみ許された贅沢、死者には与えられない、代わりに死後の安らぎがあるが私達にはそれすら無い』
「……………………完全に人を辞めてるね」
『だが良い面もある』
「……………………そうだね」
アーディはそう言うと1度【ガネーシャ・ファミリア】の本拠に戻りステイタスの更新を行った、結果は以前と同じく全く成長していなかった。
『成長もまた生者にのみ許された贅沢だ、我々には代わりに目的を遂げるまでの無限の生がある』
「私達は何をすれば解放されるの?」
『ひとまずは全ての指輪を回収する事だ、そこから先は分からない』
そう言うとケレブリンボールは消えガネーシャはアーディの肩にそっと手を置いた。
「あまり気負いすぎるなアーディ、少なくとも俺達はお前が生きていてくれる事が嬉しい」
「……………………そうだね、ありがとうガネーシャ様」
それからのアーディは闇派閥の制圧に奔走した。その機動力はどのファミリアよりも早くどこかしらのファミリアが着く頃には制圧が終わっておりそれが朝も夜も関係なく続きオラリオは間違いなく平和に近付いていた。
しかしそんなある日アーディの耳にアストレアがオラリオを出たと言う話が届き慌てて【アストレア・ファミリア】の本拠に向かったがそこにはアストレアの姿もリューの姿も無かった。
アーディはその場に崩れ落ち大声で泣いた。
散々泣いた後気が付けばアーディは雨の降る街を歩いていた。
そんな中とある建物の前を通った時、自身の姿が映し出される。
ボロボロの装備に泣き腫らした目、美しかった顔は酷く汚れている。
こんな時こそ笑わなければと笑顔を作ろうとする。
(あれ?)
しかし口元がピクピクと動くばかりでそれ以上動こうとしない。
(私、どうやって笑ってたっけ?)
「ハハ」
乾いた笑いが溢れるがやはり顔が動く事はなく両の目から涙が流れる。
「ハ、ハハ、ハハハハハハハハハハハハ」
ザアザアと雨が強まる中、オラリオの一角でアーディは自身の心が壊れるのを自覚した。