女の子の魂を封印したカードって凄い高値付きそう 作:好みのタイプはエルフェンノーツ
「俺の先攻! 『冥府の案内人』を召喚! 山札から『冥府の番犬』を墓地に送らせてもらう!」
おどろおどろしい、黒い外套をまとった人型が現れる。多分死神とかそういうやつ。鎌は持ってないけど。
というか、先攻後攻をノリで決めるの辞めようよ、コイントスとかしようよ。私のデッキ先攻番長みたいなところあるし……って思ってたけど、相手のデッキタイプが分かったらそんな気持ちも消えてなくなった。相性最悪だ。向こうにとって、だけど。
【冥府】テーマは平たく言うと墓地利用のテーマ。山札とか場から墓地に送って、次のターンには蘇生するみたいなコンセプト。『冥府の番犬』も墓地から蘇生して後続を呼んでくる効果持ちだったと思う。
「おい姉ちゃん、そっちのターンだぜ?」
「あ、失礼。ドローしてメインへ。手札から永続魔法『第一戒律──死者は眠るべし──』を発動します」
背後にでっかい石版が出てきて、1行目が光る。なんて書いてあるのかは読めません。そもそも実在する言語じゃないと思う。
「バトルは放棄してターンエンドです。どうぞ」
「は? 手札事故か? まあいい、俺のターン! ドロー! ……そして、俺の墓地から『冥府の番犬』が──」
何も起こらない。勿論機械の故障とかじゃないし、見えないモンスターとかそういう訳でもない。
「『第一の戒律』の効果です。墓地からの蘇生、墓地での効果発動……まあ、平たく言うと墓地への干渉を封じます」
観客……野次馬? 含めて「は?」って雰囲気になる。だからこのデッキ使うの嫌なんだよ。ロックとかライブラリアウトはやっぱり販促アニメな世界観だと嫌われ者みたいです。バーンはギリギリ許されてるっぽい。今度ロックバーンにでもしてみるか……? でもバーンカード持ってないからな……
「そちらのターンですよ? どうぞ?」
「……クソッ! バトルだ! 案内人で直接攻撃! そのままエンドだ」
「エンド時に第一戒律の効果でデッキから『第二戒律──定めを受け入れよ──』を場に起きます」
こっちの効果は平たく言うとサーチカード封じ。どっちかと言うとこっちが第一であって欲しかった気はする。まあカードの効果に文句を言っても仕方ない。
「私のターンですね。戒律カードが2枚ある為手札から『戒律の執行者』を特殊召喚します。何も無ければそのままバトルへ」
白髪の、白い法衣を着た男性が姿を現す。おら女性観客喜べ、イケメンモンスターだぞ。
「破壊された案内人の効果を──」
「第一戒律があるので無理ですね。まだ何かあります?」
「……サレンダーだ」
うーん盛り上がりに欠ける勝利。周りも「え? これで終わり?」って感じ。まだウチのラムネちゃんと家庭科裁縫ドラゴンイグニスの戦闘の方が盛り上がってた。まあ初動モンスターと繋ぎモンスターが1回戦闘しただけの対戦だったからしょうがないけどさ。つくづくロックデッキとは盛り上がらないのである。私が店長に、普段使いのデッキじゃ子供が泣くか癇癪起こすって言ったのも理解して貰えたと思う。
「てんちょー、もう終わり?」
「そうよ? 強いでしょ、私のカノンちゃん」
「よく分かんねえ!」
「あらら」
「誰が店長のですか誰が」
膨大なカードプール故の制限規定の緩さのおかげで何とかなってるデッキだしなぁ、これ。強いかって言われると、現実だったらすぐに規制入るかエラッタされると思う。それか高速環境になってついていけなくなると思う。FTKに後攻とかなったら何も出来ないしね。
「それよか店長、疲れたんでなんかオマケください。現金でもいいですけど」
「しょうがないわねぇ……お高いスリーブをあげましょう。紫外線99%カットらしいわよ?」
「こういう数字ってどこまで信じていいんですかね……?」
それはもう日傘じゃない? とはいえ普通に有難いので貰っておく。二重スリーブでファイルに入れるのが基本だよね。ローダーは見た目がカッコよくなるからあれも好きだけど。
「じゃあ私はこれで帰りますね。また変なの来たら請け負いますよ、有償で」
「強い子が守ってくれることを喜ぶべきか、お金の為な事を叱るべきか迷うわね……」
「子って歳じゃないですよもう」
言ってて悲しくなってくるけども。というかやっぱり店長割と歳上だな? この口ぶり。
「おい! 待て女!」
「え? あー……さっきの冥府デッキの……噛ませ犬三太夫さん……?」
「訳わかんないこと言ってんじゃねぇ! もう一度ソウルバウトだ! 本気の勝負でな!」
「さっきも本気だったんじゃ……?」
「うるせえ!」
うーん困ったな。でも変に断ってストーカーになられるのももっと困る。店に迷惑かけに連日来られるのも更に困る。まあ、相手するしかないよなぁ……
「はぁ……分かりましたよ。本気の勝負、言い出したのはそっちですからね? 後悔しないでくださいよ?」
最新技術の塊の腕輪──モンスターのARを投影してるもの。ソウルバウトやってる人は大体付けてる。子供には店の貸し出しを借りたりもする──に黒い縁取りがされた1枚のカードを通す。すると……
「は? なんだよこれ? 手品かなにかか……?」
闇が広がる──なんてカッコつけて言ったみたけれど、まあ領域魔法で暗くした時と光景は一緒だ。違いがあるとするならば。
「本気の勝負、ですよ。闇のソウルバトラーの噂、聞いたことありません?」
曰く敗者は魂を抜かれる、曰くデッキを全て奪われる、曰く強いソウルバトラーほど狙われやすい、曰く美少女が狙われやすい……なんか噂が色々あるけど……要は販促アニメにありがちな命を賭けたゲームである。ちなみにこの世界において正しくは、敗者はカードに魂を封印される、である。
「では、始めましょうか。先攻は……」
「お、俺が先攻だ! いいな!」
だからコイントスとかで決めようよ……まあ別にいいんだけどさ。負ける気せーへん、闇のバトルやし。あとメタデッキだし。
そんなわけで。
「あの……リベンジマッチ挑んだぐらいなんですから、他に何かあるんですよね……? まさかバック除去すれば勝てるなんて安直な考えだけだったんじゃ……」
私の【戒律】デッキは魔法ゾーンで相手の行動を封殺していく。だからそこを除去すれば簡単に対策できる……なんてのは私も知ってるのだから、当然対策の対策もしているわけで。
「……何も無ければエンド時に『第五戒律──執着を捨てよ──』を場に起きます。効果はエンド時に手札を全て捨てさせる強制効果。当然今適用されます」
顔面蒼白意気消沈って感じ。まあ第五までわざわざ長引かせる意味も正直無いんだけど……このチンピラA、第一だけで実質終わるし。
「私のターン、ドローしてメイン。第一から第五までの戒律が場に揃っているのでデッキからモンスターを召喚します。おいで、
石版に刻まれた五つの戒律が淡い光を放ち、その光は天へ昇り、一つの巨大な輪を描く。
そしてその中心から、白い法衣を纏った”何か”がゆっくりと降りてくる。
六枚の翼。錆びた鎖を垂らす天秤。そして、黒い布に覆われた瞳。
当然カードゲームのモンスターが人を認識することなんてあるはずが無いのだけど、後でカードになった対戦相手に尋ねると全員決まって『見られていた』と返してくる。目も覆われてるのにね、この子。間違いなく厄モノ……まあ闇のバトラーなんかやってる私の言えた話じゃないか。私からしたら頼れるメカクレ美人な相棒だし。
「では直接攻撃をしてエンドです。そして貴方のターンですが、【裁きの天使】がいる間、貴方のドローフェイズ時にカードを引く事を無効にします」
まあロックデッキの極地というか、最終盤面というか。ドローロックの上位版というか。第五戒律で手札を全て捨てる以上、この子が出たらもう相手が出来ること無いんだよね基本。
「……あの、エンド宣言ぐらいして欲しいんですけど……まあ私のターン、再び直接攻撃です。では貴方のターンですが……」
「……お、俺は……! ドローを放棄してソウルカードを手札に加える!」
「あー、はい、どうぞ」
ソウルカード。この世界のカードゲーム名と同じそれは、一言で言うなら右手が光ったとか、デッキトップ解決とかをルールで定めたもの。対戦開始前にソウルカードとして指定したカードはピンチの時にドローを放棄して手札に加えることが出来る。これはルールであってサーチとかじゃないから戒律でも止められないんだよね。でもまあ……
「それで? 何を引いたんです?」
一応見ておきたいんだよね、ソウルカード。某もう1人の僕でいう黒魔術師、某社長の白い龍みたいに、各々の魂と結び付いたカードが基本指定されるから。ここまで勝負を長引かせた理由でもある。大型モンスターを見てあげるのは礼儀じゃない? これが彼の生涯最後のカードゲームなわけだし。
「……俺は! 墓地の冥府モンスターを全てデッキに戻し、手札から【冥府王】──」
「……なんかすいません。第一戒律があるので無理ですね。他に無ければエンド時にそれを捨ててください」
まあ仮に出されても別に脅威でもなんでもないんだけどさ。ウチの子は最強なので。
「では【裁きの天使】で直接攻撃して終わりですね。グッドゲーム……でもないか」
「く、クソがぁぁあ!!」
「それじゃ……闇のバウトで負けた罰です。魂……いただきますね?」
敗者はソウルカードに魂を封じられる。今回の場合は【冥府王】のカード。そのイラストがほんのりさっきのチンピラ風味になったものを拾い上げる。
「うーん……別に男は要らないんだよね……買い取ってくれるかなこれ……この人弱かったし……」
私が闇のソウルバトラーなんてやってるのは、こうして闇のゲームで勝って『世界に一枚だけのカード』を作り出してコレクションしたいから、なのだけど……男は要りません。美少女テーマを使う可愛い女の子が理想です。【ひつじ雲】使いの女の子とかも良かったけどさ。子供相手にも可愛くてちょうどいいし。【ラムネ】ちゃんは結構お気に入りだったりするのです。美少女イラストじゃないのがちょっと残念だけど。
「まあ聞くだけ聞いてみるか……デッキは買い取ってくれるだろうし……ついでに可愛い子の情報も聞けるかもしれないし」
店長とは別の行きつけの店に行きましょう……アレは店と呼んでいいのかな……? 商品無いし……なんか人を封じたカードを生贄がどうこうだから……祭壇……? 神殿……?
ダイレクトアタックヤタねぇ…