女の子の魂を封印したカードって凄い高値付きそう   作:好みのタイプはエルフェンノーツ

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サ店に行くぜ!

「よかったらなんだけど、今度一緒にカードショップでも行ってみない?」

 

 私がそう提案した時の彼女……ミオの顔は、お手本のようなぽかんとした顔だった。距離感ミスったかな……? 

 

「あー……迷惑だったら──」

 

「い、いえ! むしろ嬉しいです! 一人で行くのもなぁって思って、行ったこと無かったですし」

 

「あれ、友達とかと行かないの?」

 

「あはは……お見舞いを優先してたら、『そういうやつ』って認識になったみたいで……中々遊びに誘える人とか居ないんですよねぇ」

 

 友達が居ないわけじゃないんですけど、と言う彼女は少し寂しそうな笑顔。まあそうもなるか。あと一人でカドショ行く人は結構いると思うよ。この世界なら余計に。

 

「じゃあ色々遊びに行く? まあ友達って言うにはちょっと歳離れてるかもしれないけど」

 

「いいんですか? ご迷惑じゃ……」

 

「プライベートならいいでしょ。仕事中にやってたら怒られるだろうけど」

 

 という感じで、今度お互いの休日が重なる日にデートをしようと約束を取り付けることに成功した。向こうも人付き合いに飢えてたっぽいね。ありがたい。

 

 

 

 

 

 そして、約束の日。

 

 待ち合わせに使った駅の前では今日も今日とて投影されたモンスターが暴れている。つまりは野良デュエルが行われているということだ。流石にイベントとかじゃない……と思う。とち狂った企業がスタンプラリーの代わりに各駅でバトル! みたいなこと言い出してもおかしくない世界だからさ……

 

「カノンさん!」

 

 そんな風にぼんやり過ごしていたところに、私服姿のミオちゃんがやってきた。病院では制服姿しか見ていなかったから少し新鮮だ。白いブラウスに淡い水色のカーディガン、膝丈のスカートという、年相応の飾り気のない服装。制服もいいけど私服もいいね。

 

「待たせちゃいました?」

 

「ふふ、今来たとこだよ。……一回言ってみたかったんだよね、これ」

 

 一応デートだし。まあ仮に実際待たされたとしても答えは変わらなかっただろうけど。待ち合わせした時にやる儀式みたいなもんだよね。

 

「いいね、私服。やっぱ若いうちにオシャレは楽しまないと」

 

「あ、ありがとうございます……なんか恥ずかしいですね。カノンさんも、かっこよくていいと思いますよ?」

 

「可愛い系が似合う歳でもないからねぇ」

 

 私は大体マネキン買いです。その時の流行りを適当に買っても何とかなるのは、アニメ世界の顔面偏差値の高さ故かな。ありがたいね。

 

「──さて、今更だけどどこか行きたいとことかある?」

 

「うーん……いざ遊びに来てみると中々思いつかないですね……そもそも遊びに行く、っていうのも久しぶりで」

 

「なるほど、じゃあ決まり。ノープランで行こう。カードショップも行けたら行くぐらいで」

 

「それは決まったって言っていいんですか!?」

 

「いいのいいの。別にどっか予約してるわけでもないしね」

 

 

 

 基本的にこの世界の文化も前世とほぼ変わりない。ただカードゲームが何よりも人気なだけで、他の娯楽もちゃんとある。……とはいえ、大体ソウルカードとコラボしてたりするんだけど。カードがもらえたりとかそういうんじゃなくて、商品がモンスターモチーフになってたりするやつ。あとモンスターの格好するコンカフェみたいなのもある。私は時々行ってたりもする。可愛い子が好きだから……

 

「ここって……」

 

「ゲーセン。お金を浪費して弱いアームにぶち切れながらドーパミン出すとこ」

 

「それって楽しいんですか……?」

 

「まあ一度やってみなって。ほら、【聖煌竜セラフィム】のフィギュアだよ」

 

「あ、世界チャンピオンのエースさん」

 

 多分世界で一番有名なモンスター。某ヒトデみたいな髪型の決闘者の黒魔術師みたいな。

 

「やり方教えてもらってもいいですか?」

 

「勿論。その前に両替しようか……数千円ぐらい」

 

「一回百円ですよ?」

 

 どうやらこの子は沼ったクレーンゲームの恐ろしさを知らないらしい。天井を義務付けて欲しいよね……

 

「──取れました!」

 

「うーん、やっぱり負けず嫌いなんだねぇ……」

 

 まあカードゲーマーなんてみんなそんなもんだろうけど。というかまあ、こういうのってどうしても取れるまでやっちゃうよね。それで結局直接買った方が安かったりする。フィギュアとかはソウルカード関連でも普通なお値段だからね。今回いくら費やしたか? それは聞かないで……

 

「さて、じゃあ気分の良いところでお昼食べよっか。なんか希望ある? ファストフード?」

 

「むぅ、子供扱いしてません?」

 

「でも学生ってよくああいうとこ集まってない?」

 

「まあそれは否定できませんけど……」

 

 結局ファミレスに行くことになった。まあ大人も子供も行くところだしセーフでしょ。高校生のデートなんて土手で十分みたいなことどっかのカードゲームの公式も言ってたし。多分土手よりはファミレスの方がマシ。まあ特に面白いことも無かったので省略。食事中に面白いことが起きても困るけどさ。

 

「──さて、それじゃ私の趣味に付き合ってもらおうかな」

 

「いいですよ。どこ行きます?」

 

「プラネタリウム」

 

 チケットを二枚買って、指定された座席に寝転ぶ。始まるまでは少し時間があるらしい。ちょっと早かったかな? 

 

「……私、プラネタリウムって小さい頃以来久々に来ました」

 

「そうなの? 【星詠み】なんて使ってるからこういうとこ好きかなって思ったんだけど」

 

「あ、もちろん嫌いじゃないですよ? おばあちゃんに連れてきてもらったこともありますし……でも」

 

 そう言って、ミオちゃんはどこか懐かしそうに微笑んでいた。

 

「その頃は星座なんて全然覚えられなかったし、『無理矢理すぎる』って文句ばっかり言ってました」

 

「夢のない子供だねぇ。気持ちは分かるけど。小犬座とか」

 

 ちなみに小犬座は星二つを線で結ぶだけである。子犬どころか何にも見えなくない……? 

 

「まあでも──」

 

 何か言いかけたところで上映開始を告げるアナウンス。話の続きはこれが終わってからだね。

 

 

 

「……綺麗でしたね」

 

「だねぇ……やっぱこの辺だと本物の星空って見えないからなぁ……」

 

「昔……」

 

「ん?」

 

「もう十年以上前になるんですかね。おばあちゃんが元気で田舎で暮らしてた頃、毎年遊びに行ってたんです。夜遅くなっても月と星の明かりで外を歩けるような田舎で。そこでおばあちゃんに教わったんです。『昔から人は星に道案内してもらってたんだよ』って」

 

 北極星とかそういう話だろうか。まあ私は知識が無いから夜空を見上げても方角も何も分からないのだけど……流石にそんなことを言うのが野暮だということぐらいは分かる。

 

「だから【星詠み】?」

 

「はい。未来がが不安でも、星空を見上げれば少しだけ前を向いて歩ける……なんて。ちょっとカッコつけすぎですかね?」

 

「ふふ、いいんじゃない? 若いなぁとは思うけど」

 

「あ、馬鹿にしましたね?」

 

「ごめんごめん。そんなつもりじゃないんだけど」

 

 きっとこれが彼女の心の核。あえて言語化するなら『未来への不安と乗り越える相棒』かな。いや、【星詠み】だし相棒っていうよりおまじないぐらいかな? こうすれば大丈夫って自分に言い聞かせるみたいな。可愛らしいことだ。流石に自制も利かなくなってくるというもの。

 

「……ねぇ、よかったら今日の締めくくりにソウルカードでもやらない?」

 

「あ、いいですね! どうしましょう、どこかカードショップでも入ります?」

 

「うーん、元々はカードショップ行く予定だったしそれでもいいんだけど……折角だから星空の下でやろうよ。【星詠み】が映えそうだし」

 

「……カノンさんも、結構ロマンチストだったりします?」

 

 

 

 ということで電車で揺られて都会からちょっと離れた駅へ。繁華街の明かりが無いだけでも随分と違うものだ。まあもっと山とかまで行けばもっと綺麗な星空が見られるのだろうけど……流石にそこは妥協点だね。

 

「──それじゃやろうか。折角だし、思い出に残るようなバウトを」

 

「ええ! 全力でやりましょう!」

 

 デッキを取り出す……前に、黒い縁取りのカードを手に取る。コレクションが増える前というのはどうしようもなく胸が高鳴るものだ。負けたら? 多分死ぬかそれより酷い目に遭うだろうし考える必要もないでしょう。『やる前に負けることを考える馬鹿が居るか』って、かのアン・サリバンはヘレン・ケラーにそう説いたらしいし。

 

 胸の高鳴りのおかげかな。さっきより星空が綺麗に見える。

 

「始めようか。忘れられない一日にしようね」

 

「はい!」

 

 闇のバウト、開始。




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