女の子の魂を封印したカードって凄い高値付きそう 作:好みのタイプはエルフェンノーツ
「……まさか本当に勤務終わりまで待ってるとは……」
「す、すいません……?」
「や、別に怒っては無いんだけど……」
勤務終わって着替えて、さあ帰ろうという所で所在無さげに佇んでいるこの子を見た時は心臓が止まるかと思った。というか事務の人も帰らせなよ。私の事待ってるって言い張ったのかな……?
「ええと……それで、なんだっけ。朝比奈ミオちゃん? 似たような名前の患者さんは居たけど、君ぐらいの歳の子となるとなぁ……」
「毎週面会に来てたはずなんですけど……見てませんか?」
「と言われてもここしばらく面会なんて誰も見てないよ。来てたなら面会簿に記録残ってるはずだしね」
「記録とかは消えちゃうんです……なんて言っても信じられないですよね……」
うーん、この子もしかして結構情報把握してるのかな? まあ主人公だったらそんなもんかもしれないけど。精霊から色々教えてもらってるとかありがちだし……この猫っぽいのが喋れるのかは分からないけど。
「……じゃあ百歩譲って私が知らない…というかおぼえてないだけでそんな子がここに来てたとして。なんでそれを私に?」
「精霊が力を貸してるみたいだったので。だから抵抗力があるかと思ったんですけど……ほんとに心当たりありませんか?」
否定しすぎるのも不自然? 少なくともこの子の中では私に精霊が憑いているのは確定事項っぽいし。そのために訪ねてくるぐらいには。多分ミカちゃんのことだと思うんだけど、あの子って精霊なんだ……
「あー……まあ心当たりはなくも無いんだけど……来てくれるか分かんないって言うか……あっちからの一方通行が多いって言うか……お店で忙しいって言うか……」
「お店?」
余計なこと言ったかも。でも近くに居ないことを説明するにはこれ言わないとだからなぁ。というか実際呼んだら来てくれるのかな。
「……聞こえる?
『ええ。私はいつでも貴女の傍に居ますよ』
「それはなんか怖いんだけど……カード的な意味でだよね……? で、ユウキちゃんだっけ。どう、この子のこと視える?」
「目隠しをした、羽のある女の人、ですよね? 視えてますし声も聞こえてますよ。天使さんですか?」
「おお……当たり」
特徴を言い当てたからには本当に視えているのだろう。流石に当てずっぽうで言うには特殊過ぎるし。カード名と絵柄を知ってたら別だけど、多分【裁きの天使】って世界に一枚だろうしなぁ……いや、分霊的な感じで何枚かあったりする?
「……というか私には逆にミカちゃん視えな……あー……今見えた。切り替えられるの? それ」
『普段は邪魔かと思いまして』
気遣いのできる天使だったらしい。まあ確かに視界に他の人に見えないものが映ってるっていうのは大いに邪魔だろうけども。正気を疑われかねないし。
「カノンさんの精霊さんは喋れるんですね。いいなぁ……」
「その猫ちゃん? は喋んないの?」
「鳴き声は聞いたことあるんですけどね。人の言葉は全く」
二足歩行の猫だから喋るかと思った。ケット・シーって人語を喋る妖精だったよね? なんかのゲームで関西弁で喋ってた気がするし。ただの立ってる猫ちゃんなのだろうか。
「えーっと……それで、何の話だっけ。精霊が力をどうこう?」
「あ、はい。──闇のソウルバトラーって聞いたことあります?」
聞いたことは無いよ。だってそのバトラー、私だもん。……なんて言うわけにはいかないからそれっぽい返答だけしとかないとだね。
「なんか負けるとデッキと魂を奪われるってヤツだっけ? 都市伝説みたいな」
「はい。そして私はそれと戦ったことがあるんです」
「え」
私はこんな子と戦った覚えは無いんだけど。ということは私以外にも闇のバトラーが居るってことになる。ミカちゃんが増やしてるのか他にも邪悪な精霊みたいな存在が居るのか……後でミカちゃんに聞いてみるとしよう。答えてくれるか分かんないけど。
「負けたら魂を頂くって言われて……まあそれには勝ったんですけど……そしたら、デッキだけを残して消えちゃって」
「逃げられたってこと?」
「かと思ったんですけど……見てください、このカード」
唐突だが、ソウルカードではカードの種類によって色分けされている。まあTCGならよくあるやつ。モンスターは茶色で、魔法は緑、罠は紫、みたいなやつね。そして闇のバウト起動用のカードはどれにも当てはまらない黒いカードなのだけど……
「『邪神への生贄』? 聞いたこと無いけど……なんかそういうテーマのカード? いや、真っ白のカードなんて無いよね?」
「はい。それとこのカードのイラスト……その時の対戦相手そのままなんです」
「へえ……」
私が勝つとその人のソウルカードに魂が封印されるけど、若干違うね。私とは別口なのかな。それとも仕掛けた側が負けるとこうなるのかな。
「私の精霊も凄い興奮してて……色々調べてたんですけど、一人じゃあんまり成果も出ず……」
「その間に知り合いが被害に遭ったから、助けになってくれそうな人に声をかけた?」
「そういうことになりますね……」
「……ちなみに、精霊が……視える人? 力を貸してる人? ってのはどうやって分かるの?」
「あ、それはこの子が。精霊同士は見えるみたいで」
「へえ……じゃあ最初に言ってた抵抗力ってのは? 闇のバウトで負けても精霊が守ってくれるとか?」
「うーん……なんて言ったらいいんでしょう……超常現象への耐性というか……負けたらどうなるかは私も知らないんですけど、そもそも闇のバウトを覚えているための資格というか……」
「なんか抽象的な話になってきたね」
まあ負けるつもりは無いから別にそこはどうでもいいんだけど、資格ってなんだろう。
「記録の改竄とか、記憶喪失とか。そういうのに気付けるのが精霊が力を貸してる人だけみたいで」
「……その口ぶり、君以外にも似たような人が居るってこと?」
「私にソウルカードを教えてくれた人がそうなんですけど、今どこに居るのかが……」
「え、旅人か何か?」
「闇のソウルバトラーを探しに行くって言って以来音沙汰無くて。負けてない……とは信じたいんですけど」
どこかで私とかち合ってたりしないよね……? 少なくともコレクションにした中には闇のソウルバトラーを噂程度以上に知っていた相手は居なかったはずだけど……興味ない相手は本当に覚えられないからな、私。
「まあ、それならその人のことは一旦置いとくとして。結局私に会いに来た理由は何? 精霊が憑いてそうだから、ってのは分かったけど」
「その……闇のソウルバトラーについて一緒に調べてもらえないかと思いまして」
だろうなぁ、とは思ってたけどやっぱりそれかぁ……でもまぁ、とりあえず闇のソウルバトラー! お命頂戴! って主人公(推定)がいきなり襲い掛かってこなかっただけよしとした方が良いのかな? まあそもそもそんな直情的な子には見えな──いや、こういう子はバトル開始すると人格変わるかもしれないしな……
「ちなみにそれ、私に得ある?」
「無い……かもしれないです……」
うーん素直。正義感とかでゴリ押ししてこないところは好印象かも。まあ子供ならこんなもんかなって感じの返答。むしろしっかりメリットとか用意して交渉してくるような人だったらどうにかこの場で消すことを考えなくちゃいけなかったかも。
「……そんな泣きそうな顔しないでよ、罪悪感が凄いから。……そうだなぁ、じゃあ──」
まあ別に罪悪感なんて欠片も無いけど、私以外の闇のソウルバトラーについて調べるのは私にとってメリットではあるのだ。もしかしたらスケープゴートに出来るかもしれないし、そうじゃなくとも私の知らない闇のソウルバウトの仕様とか聞けるかもしれない。ついでに主人公っぽい子に恩を売れるというのも悪くない。だから。
「協力するのは私の予定が合う時だけ。君が調べたことも私に共有する。あと闇のソウルバトラーと戦うことがあってデッキが手に入ったら私にくれる。これが約束出来るなら手伝うよ?」
「いいんですか!? ……ちなみに、最後の条件って……?」
「私、カードコレクターなんだよね。まあ趣味に合うカードだけだけどさ」
まあ大体ミカちゃんに聞けば分かるだろうし? だったら引き受けてもそんな労力は無いはず。カードはあわよくばぐらいだ。それより主人公との繋がりが切れる方が困る。主人公と仲良くなっておけば案外闇のソウルバトラーバレしてもなんとかなるかもしれないし。
「……うん、ということで改めてよろしく。天城ユウキさん?」
「こ、こちらこそです、カノンさん」
「もう知ってるみたいだけど、神崎カノン。まあフルネームで呼ばれることなんてそうそうないんだけどさ。」
そんなわけで推定主人公が仲間に加わったぞ! 調査? さっきも言ったけどミカちゃんに聞けば一発だろうし。
ということで闇のソウルバトラー調査同盟が結成されました。メンバーは主人公(推定)と闇のバトラー! マッチポンプかな?
まあでも媚びを売っておいて損はないでしょう。気弱そうな性格はともかくとして、この子も少なくとも見た目はかなり可愛いし。
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