いかにして小鳥は獣足り得たか   作:どんぶらっこ

1 / 2
サンデー女性化+ピノコニーIFです。

趣味全開で書いていますので、解釈違いの可能性があります。
大丈夫そうな方だけお付き合いください。
ピノコニーの終盤からなので一部原作のネタバレありです。すでにご存じの方向けです。

個人的に満足いくとこまで書いてるので次回は明日投稿予定です。


第一幕:いかにして小鳥は獣たり得たか

 

二羽の小鳥がいた

石の上で身を寄せ合い、風の冷たさにも日差しの暑さにも負けずにそこにいた

 

けれど一羽は飛び立った

ぐんぐんと勇ましくはばたいて気付けば見えなくなっていった

幼き頃の思い出を辿っていた彼女はそっと瞳を開いた

 

「なぜ人は弱者を虐げるのか」

「なぜ弱者にはこんなにも選択がないのか」

 

誰に問うでもなくサンデーと呼ばれた女はステンドグラスを見上げながら言葉を落とす

あの日のように日差しが眩しくてすっと目を細める

 

またいつかの記憶が浮かび上がる

 

『姉様、姉様、』

 

安息日の子ども(サンデー)は存在しない

代わりにいたのは水曜日の女の子(ウェンズデー)

 

『姉様は、兄様になるの?』

 

それって必要なこと?と不思議そうに尋ねてきた少女に、

女は自分がなんと答えたかもう思い出せない

きっと崇高な使命を果たすために必要なことだと、そう答えたはずだ

 

ほんの少し前まで彼女の全てであったから

ああ、でも小鳥を救うのにはいささか足りない覚悟だったのだけれど

 

終わりを告げた回想の余韻を

ほほ笑みでかき消して

彼女は彼らにようやく向き合った

 

開拓者とカンパニーからの客人は、妹のロビンは、

何も損なわずにサンデーの前に立ちはだかっている

 

「ままならないですね、」

「おや、君からそんな言葉を聞くことになるなんてね」

 

こちらのつぶやきを勝手に拾い上げて笑う砂金石に皮肉を言うなと柄にもなく吠えたくなった

自身の命すら賭け金としか思っていない男のくせに

 

それを無視し、彼らと共にいる少女へと目を向ける

意思の揺るがぬ強い瞳がサンデーを見つめ返した

 

「お前もそちらにつきますか、ロビン」

「兄様たちの考えは素晴らしいわ、けれど、このやり方は間違っている」

「そうですか……ええ、そうですね」

 

はっきりとした言葉

その姿に心のどこかが柔らかく綻ぶ

ああ、よかった、この子はもう大丈夫

 

かわいそうなクック・ロビン(妹役)

本当の安息日(快活で明るい兄役)を知らぬままで

水曜日(悲嘆に暮れる姉役)なんて、誰も求めていないのに

 

されど、

 

『あの子の、たった一つの望み』

 

兄と呼ばれた女は強く思う

 

そう全ては、

 

───ねえさま、あのね

 

露わにされる無垢な願い、愛着

 

───あの小鳥が、どこまでも飛んでいけますように

 

幼き少女の瞳から光が弾ける

祈りの力が込められた小さな手のひら

歌うように紡がれたそれに

出来損ないの彼女もまた、望みを得た

 

───この子の祈りがどうか、届きますように

 

しかし、利他的すぎる望みは運命たり得ない

彼女の他人ごとの祈りに瞳なき星神は、一瞥すらよこさない

そんなことわかっていた

 

秩序を歩む資格など初めからなかった

調和すら望みを叶えるには足りなかった

 

足りない、足りないと、頭のどこかで子どもが泣き叫ぶ

 

「実に残念だよ」

 

演目は多少の掛け違いを残したまま粛々と進んでいく

双子の問答を見守っていたカラスは緩やかに首を振った

 

「その選択は、歓迎されていない」 

 

夢の主からの否定に動じず

今から起こる戦いに対して誰もが身構えた

 

「君がやるのか?サンデー」

「ええ、そうです……よろしいですか?」

「全く、誰に似たのだか」

 

夢の主の、ゴフェルの言葉に

薄く笑みを返して、鳥の首に指を這わせた

くるりと指先を丸めればなんとまあ簡単に覆えること

ぎちりぎちりとしまる指先にカラスの震えが伝わる

……痛覚を、この人は最後まで残したのだろうか

 

「穏やかな明日を、奪われぬ日々を望むことは罪ですか?」

 

『──いいや、罪ではない』

 

ぱきん、

 

乾いた音にかぶさるように、鐘が鳴る

 

「サンデー!?君は一体何を…!?」

「構えろ、様子がおかしい」

 

一部始終を見ていた彼らが目を丸くしている

脳裏に描かれるそれを求めて彼女は強く目を閉じた

 

──"一つ目の問い"

 

『足りないのなら、どうすればいいと思う?』

 

ゴーンゴーンと鐘が鳴る

 

オーク家の意思(107,336人])では足りない」

 

カラスの目から光が消え、手から滑り落ちる

彼女の白い翼が音もなく広がった

舞台に残ったただ1人が誰かを示すように

 

すでに儀式は完了し、

その時が来るのを待ち構えている

 

「ゴフェルさん?!」

 

力無く横たわったカラスの姿にロビンが悲鳴をあげる

 

「彼は夢の主ですよ、姿を変えただけです」

 

そう、物言わぬ力となってサンデーに飲まれていった

動揺するロビンに安心させるように微笑むも

彼女の顔色はすぐれぬまま

 

その様子を見ながらもサンデーはさらに続けた

 

「開拓者の皆さん、」

 

──"二つ目の問い"

 

「答えは変わりませんか?」

 

その問いに返されるのは、沈黙と揺るがぬ眼差しだった

 

かつて見た夜半の星を思い出す

瞬きの間に消えてしまいそうで

それでも脳裏に焼きつき、今なお輝く星

 

ああ、その強さが、眩さが、

なぜ万人に届かないのか

 

だからこそ、光を誰かが注ぎ続ける必要がある

 

秩序の星神を取り戻すべく紡がれるはずだった一節は、

しかし脚本にない結末へと駆け出した

 

自然と両の手の指先が重なり祈りの形をとる

 

「コマドリを殺したのは誰だったのでしょう」

 

歌うような──"三つ目の問い"

 

今度は誰も答えない

サンデーも開拓者たちも

 

それでいい

目に余るほどみっともない

決まりきった物語のおしまいはもう目の前だから

 

答えなど、最初からわかっていた

 

「ああ、それはきっとワタシのせい」

 

耳元で囁き続ける声

お前の無力ゆえに、無知ゆえに

今もまたどこかで羽がむしられるのだと

 

「ワタシは望みます」

 

ああ、ほらこんなにもワタシは欲深い

 

「罪なき明日を、終わらぬ安息を望みます」

 

調和の運命が閉ざされ、星々の隙間を縫って

何かの気配が近づいてくる

深淵がこちらを見つめ返す

 

望んでしまった、ウェンズデー。

星核よ、お前の力を、ワタシの命をどう量る

足りないのなら補えばいい

 

ワタシが賭けたのは、ここからだ

 

「だから、よこしなさい」

 

 

星々の隙間から、何かがワタシの魂を撫ぜた

 

 

“──以上の渇望を以って、彼女のクラスは決定された。”

 

「やめてください、やめて…っ」

 

鐘の音が、途絶える

 

誰かの息の飲んだ音は彼女の翼のはためきにかき消された

凄まじい突風が彼女を中心に巻き起こり、

黒の羽と白の羽に紛れて姿が見えなくなる

 

「───"姉様"!!」

 

咄嗟に叫んだロビン、姉と呼ばれたことに

開拓者とアベンチュリンが驚きの表情を浮かべる

 

しかしその呼び声にも、もう彼女は答えない

必ず振り向いてくれたロビンの庇護者はもういない

 

風が止む

開拓者たちの前に現れたのは無数の羽で出来た

繭のような何かだった

白と時折黒が混じった羽は一枚の壁のように何かを包み、守っている

 

誰もがその様子に息を呑んだ

風に煽られ高く舞い上がった羽が

等しく、等しく降り注ぎ

 

「サンデー!!!!」

 

開拓者の声を合図に、静まり返っていた舞台に音が戻る

そこにいる人間は神経を尖らして眼前の異物に対して構えた

 

そう彼らに相対するのは、もはや人間ではなかった

 

閉じ込めていた羽の繭を切り裂くように

するりと裂け目より現れたるは、星神の使令ですらなく

 

天の輪は割れ、2本の角のように頭上に漂う

両翼は朽ち、その瞳は羽で覆われ何も写さない

唯一見える口元は、死人のように青く、薄く

 

調和の担い手という繭を破り

美しく歌う夢見の管理者が君臨する

 

全てを享受するかの如く両腕は高く天に伸ばされ、

そして其れは産声を上げた

 

「ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド」

 

歌う、眠りを覚まさぬように

朽ちた羽を振るう、二度と立ち上がれぬように

 

石に残され一人きり、

彼女を止めるコマドリはもういない

願いを等しく抱きしめ、命を慈しむ虚偽を被った獣のみ

 

“───人類悪、開演。”

 

終わりに至るまで、

ただ演じる




発端となったネタ文
ラスボスっぽくしたくてェ

“──以上の渇望を以って、彼女のクラスは決定された。”

“調和の担い手など偽りの役目
其は、平等を謳い、自由を奪い、夢の地の名の下に
全てを等しく抱擁(支配)する虚構の管理者

民衆の願いによって模られ、銀河の生命を巻き込み滅ぼす人類史を最も慈しんだ大災害”
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。