このあたりBGMにあの曲流してながらだとすごい盛り上がってました。自己満で。
何かが軋む音が空間に反響する
向かい合うのはサンデーと現在の姿になったロビン
スクリーンの映像は途切れ
静まり返った劇場で二人きり
ロビンはサンデーの手を離すまいと掴んだ指先にさらに力を込めた
「サンデー、起きましょう」
その言葉に彼女は首を横に振る
「だめです、ロビン……それはいけない」
「どうして?」
「ワタシには役目があります、果たすべき使命が」
これだけは譲れないのだと告げる
「それは貴方がこんなになってまでなすべき事なの?」
ロビンからの問いにも彼女は目を逸らさない
だってようやくサンデーは辿り着いたから
長きにわたる問答の末──その意味に
「ピノコニーの人々を巻き込んで」
「はい」
「星々を飲み込んで」
「ええ」
こくりと唾を飲み込みロビンは一瞬ためらい、
けれど迷いを振り払い、再び姉に尋ねる
「誰かの明日を奪ってでも?」
サンデーは、答えに躊躇わない
「───もちろん、そうです」
そうだろうと、ロビンはわかっていた
けれど、だからこそ彼女に伝える必要があった
「姉様、あのね」
唇が震える、体がこわばる
怯えているの?
姿を変えてまで使命を果たそうとする兄に
そのためなら命すら惜しくないと思っている姉に
──いいえ、とロビンは否定する
「私は、そうは思わないの」
心が、魂が、震えていたのは、
「なぜ?」
「だって、」
優しく聞き返され、繋ぐ指先を確かめるように掴み直した
今までと変わらない優しい人の声、ぬくもりに
震えたそれは、ついに溢れた
「だってね」
そう始まりは、無知ゆえだった
この世界の残酷さも理不尽も知らずに願ってしまった少女の言葉
だって誇らしかったから、
他人のために尽くす姉が、誰かのために祈る兄が
だから、
「その望みがどんなに綺麗でも、真っ直ぐでも」
貴方が
私の歌は、こんなにも独りよがりな祈りになってしまった
それが、あんまりにも嬉しくて、苦しくて、
こぼれ落ちる
「───
あなたが歩いた旅の終末を聴いて
コマドリだけが、涙を流す
ぴしりぴしりと罅がはいる、
彼女の揺籠に、獣の羽の繭に
微睡む人々の意識に何かが差し込む
忌まわしき、光
その光が、平等に、
サンデーにも明日を嘆く誰かにも降り注ぐ
「……貴方の手は、誰かを祈るためでも、」
固く捧げられた願いから剥がすように
ロビンは女の指に自身の指を絡ませる
「誰かを裁くものでもなく」
重ね合わせた手をサンデーはぼんやりと見下ろす
小さいと思っていた手のひら、
もう自分と同じくらいになっていた
「貴方の手は、誰かと繋ぐためのものなのです」
ぎゅっと今度こそ握りしめられる
離さないように、解けないように
「姉様、帰りましょう……ここはあまりに寂しすぎる」
足りないと、満たされないと泣く女の子がいた
泣き続ける憂鬱な日々を過ごしてきた
それでも、
その苦難を背負ってでも、
彼女が歩き続けられていたのは
───あの小鳥がどこまでも飛んでいけますように
妹の願いがあまりに健気だったから
彼女越しの世界がとても広く、美しく見えたから
妹を通してみる
「ああ、そうか」
サンデーは、ロビンの手を握り返す
確かめるように、応えるように
ずっと、ずっと探さなくてはと思っていた
導かなくてはと思っていたのに
答えは、すぐ傍に
「あなた、ずっとそこにいてくれたんですね」
その言葉に、
照れたように、自慢げに羽を広げて
小鳥は笑った
「やっと気づいたのね、お寝坊さん!」
その口調が、いつかの誰かと同じで女は小さく笑う
私はずっと、貴方を見つめていたのよ!
──ぱきぱきと、
今度こそ、無視できない崩壊の音が響く
二人を支えていた床が崩れていく
次第に音は大きくなり、
ごおん、ごおんと響き渡るそれは、まるで鐘のようで
崩れていく壁が、床が、羽根へと姿を変え、宙に溶けていく
「ロビン!!」
「みなさん!!」
突如、振り下ろされた開拓者のバットを
サンデーは手を離して避ける
「姉様!まって!」
「サンデー?!」
離れたサンデーの姿が、獣の姿が蜃気楼のように揺らぐ
そして、それらは重なって一つになった
朽ちた両翼、割れた天の輪は変わらず
けれど覆われた羽が消え、見えた眼差しは
開拓者の前に立ちはだかり、問いを投げかけたサンデーのものだった
サンデーが静かに口を開く
旋律ではなく言葉で語りかける
「ワタシは、ようやく得ることができました」
ボロボロの羽根を広げ、降り注ぐ銀河の光を浴びる
旋律は黄金に染まり、波うちながら周囲に広がる
「歩き続けた先に、道標となることができました」
安息日を迎え、夢境に彼らを沈め、
夢を繰り返させることで望みを叶えてみせた
今もなおサンデーの耳には、
名も知れぬ彼らが祈る声が聞こえ続ける
───こんな日がいつまでも続きますように
だからこそ、サンデーは彼らに再び問う
「さぁ、問いを、もう一度答えを」
獣が歌う、高らかに清々しく
音が外れてもいい、調子がずれたって構わない
ああそれでもワタシの望みは、祈りは、
間違いなどでは決してないと今なら理解した
足りないワタシでも、成し遂げることができたから
だからこそ教えて欲しい、
異郷の人、遠く見果てぬ夢を歩く人々よ
"なんでもない日"から生まれてきた貴方たちは、
「穏やかな明日を、奪われぬ日々を望むことは罪ですか?」
「ううん、それは罪じゃない」
間髪入れずに開拓者は答える
誰もがそうだと強く頷く
その願いはそもそも罪悪の彼方にいる
調和でもなく秩序でもない
他人の安息を求めた願いに応える神がいなかっただけ
もう仕方のない、変えようのない事実
運命とは、残酷だった
「でも、アンタはやっぱり間違ってる」
同じ言葉、同じ眼差し
違うのは道のりだけ
何度問答を重ねようが
その
調和の脚光を浴び、開拓者たちもまた舞台で踊り歌う
脚本なんか関係ない即興劇
壊滅の力が、存護の輝き、獣の旋律が入り乱れて弾ける
そう、なぜなら、その結末は、
開拓者──星は、バットを振りかぶり走り出す
一直線に獣の元へ
迫り来る旋律も、羽根すら踏み台にして駆け上がり
獣の眼前で答えを出した
「それは……!妹を泣かせていい理由じゃない!!」
バットが振り下ろされる
獣自身には届かずとも、その歪なツノへは届く間合い
そしてその言葉はサンデーへと届いた
「───反省しろ、シスコン!!」
ごぉぉん!と音が鳴る
天の輪が割れ、羽根となって溶けていく
「さすが開拓者だ、歯に衣着せないね」
「あちゃー言っちゃった」
「姉様、自覚ないんです」
「あれでか?」
「ええ、あれで」
ツノが割れた衝撃で後退りながらも
それでも獣はそこにいた
拍子抜けた、意外そうに目を丸くした表情で
消えていった天の輪を気にもせずに彼らを見つめる
しばらくの黙考のあと、獣は小さく口角を上げた
「いい友達ができましたね、ロビン」
「協力者です、姉様」
「何をそんな強がって」
「ウチらもう友達じゃん!」
「……貴方たち、静かに」
肩の力を抜いて笑い合う開拓者と妹を見て、目を細めて言う
「貴方たちが、ロビンと出会って本当に良かった」
これで自覚ないの?と開拓者たちは
黙ってロビンを見た
ええ、これでもですと妹も黙って深くうなづいた
獣は再び朽ちた羽を広げ、彼らの前に立ちはだかる
「正気かい?まだやるつもりだ」
「当たり前でしょう、
アベンチュリンからのからかい混じりの苦言にも
当然のように応えた
始まりの願い
三つの問答
コマドリの歌
荊の冠がなくとも、
それらを抱えて歩いてきた
これからもサンデーは問い続ける
獣になってもなお愚直に、ひたむきに
「──貴方たちを再び夢へと浸らせましょう」
今度はより深く、刺激的な日々を用意しましょう、と言葉をそえて
獣の宣告に合わせるべく黄金も輝きを増す
この瞬間が正念場だと、誰もが理解した
再び獣を形どったサンデーが、
大きく両翼を広げ、手をかざし宙を掴む
宙を待っていた羽根もその動きに合わせ
獣の眼前へと吸い込まれていく
「貴方たちの
この祈りの果てが、安息でないのなら
「──どうか、この夜を越えてみせて」
ピリッとほおを走る痛み、
夢見を覆った大権が一点へと収束しているのがわかった
それでも開拓者たちは明るく笑う
「寝過ぎて寝れないかも」
「それよりお風呂入ってないってこと!?」
「いや体感時間と現実との時間は......」
「君たちそれは今気にするこのとなのかい!?」
軽快なやり取りは、連戦のダメージなど忘れたかのようで
歌姫の旋律に合わせ、
誰からともなく体を揺らし、リズムに身を任せた
彼らもまた、最後の力を振り絞る
繰り広げられる群像劇
歌姫の歌唱に引き寄せられ、人々はその舞台へと近づく
頭の硬い姉とワガママな妹の星々すら巻き込んだ姉妹喧嘩、その一部始終
夢境の人々は戸惑い、泣き、時に驚き、最後には笑う
描かれる物語の結末を見届けることを、彼らの決着を願い
そして、まだ来ぬ夜明けに期待を寄せていく
──きっと、明日も良い日になると
歌姫は、救世主は杖を掲げた
それが道標であると示すように
最後のパフォーマンスを魅せるべく舞台に立つ
届いた無数の明日への期待を力に
貴方が教えてくれた歌を、羽ばたきへと変えて
ルーティンのように息を吸い、目を閉じる
暗闇の中で、光が見えた
彼女を常に導いてきた眼差しが変わらずあった
ああ、だから大丈夫
明日が来たって、私たちは何も変わりはしないのよ
旋律は、軽やかにけれど美しさを損なわず銀色の光を帯びて静かに降り注ぐ
この歌は喜びの歌、前へと向かう意思の歌
その名は、希望
「さぁ、顔を上げて!!」
ラストステージが、開幕する
読んでくださりありがとうございます。