ザ・ワールド・ザ・サバイバル   作:きゅぼ

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謎解き

俺は死を運ぶ者(デス・ブリンガー)と戦っていた。近くには麗馨と敦と薫の姿が確認できるが、他のみんなの姿はない。状況判断をしているうちに、魔物の口が大きく開いた。俺は直感した。これはビームの準備動作だ。向いている方向からして、狙っているのは俺だろう。俺は右にダッシュし、建物の陰に隠れた。その直後、ビームが放たれ、建物が一瞬で壊される!ビームというよりは火の玉に近いものが放たれたらしく、建物は炎上している。

「湊!」

麗馨が叫んだ。まぁそうだろう。麗馨の視点から見れば、俺は燃やされたようにしか見えない。

「俺なら無事だ!また戦闘に戻ってくれ!」

ちなみにどうして俺が無事だったかというと、建物の陰に隠れたように見せかけて、その横にあった瓦礫の山の陰に隠れていたからだ。偶然が功を奏してよかった。

魔物は、次のターゲットを麗馨に定めた。狙いを定めるように麗馨をじっと見ている。口を開けて、火球を放つ準備態勢に入ると思ったら、なんとそのまま火球を放った!麗馨も先ほどの俺を見たためか反応が遅れ、そのまま火球に飲み込まれる!

「麗馨!」

俺は叫んだ。当たるな当たるな当たるな!しかし無情にも火球は麗馨の場所へ近づいていく。「当たる!」と思い、目を伏せた瞬間、

「あーーー!」

俺は叫んで目を覚ました。隣では麗馨がスヤスヤと寝息を立てている。よかった、夢か…俺は一安心した。だが…あの夢はリアルすぎだ。まさか、俺はあの薬で、予知能力を持つという能力を手に入れたのか…?不意に不安感を感じ、俺は麗馨の手をぎゅっと握った。

「…んぅ…うんっ…あんっ…はぁー…あ、湊…もう起きてたのか…おはよ…今何時…?」

俺が手を握ったせいで、麗馨が起きてしまった。それにしても、こいつの寝起きは無駄にエロい。もとい、魅力的だ。胸元結構はだけてるし…

「起こしちゃったな、ごめん。まだ五時過ぎだよ」

「そっか…私も起きないとな」

「いや、まだ寝てればいいよ」

「いや、目が覚めちゃったし…起きるよ」

「無理すんなよ?」

「大丈夫、無理…してないよ」

「でも、睡眠不足は集中力切れやすくなるし、よくないぞ?」

「それは…湊も同じでしょ…?」

「そうだけど…」

しかし麗馨は、言葉とは裏腹にどんどん眠そうになっていった。やはり、疲れているのだろう。俺は麗馨の背中をさすってやった。

「あっ…だめっ…だめだよ…眠くなっちゃう…」

だめ、という声にも力がない。こいつはまだ寝かせとかないとだめだ。俺はそう判断し、麗馨を寝かせてやる事にした。

ーーー5分後ーーー

麗馨はまた規則正しく寝息を立て始めた。

「もう少し、寝ててくれな」

俺は眠っている麗馨にそう言葉をかけ、ベッドから出た。麗馨との会話の途中で思い出したが、昨日の朝、料理の腕を競う約束をしたんだった。昨日は麗馨が朝ご飯を作ってくれたんだし、今日は俺が作るべきだ。材料を探すため、冷蔵庫を開ける。

「って、殆ど何もねぇし…」

どうやら坂田が言っていた食糧の支給は、一食分だけだったらしい。食糧が支給される時間まで待つのか…そんな事を考えていると、放送が入った。

「みなさーん、食糧の支給を始めまーす。今日は諸事情で、こんな早い時間になってすみませーん。六時にもう一度同じ放送をするので、その放送がされた時には絶対に来てくださーい。場所は食堂でーす」

お、きたきた。俺は食堂へ向かう事にした。

ーーー10分後ーーー

「よし、始めるか」

ジャガイモとか人参とかあるし、今日はポテトサラダにしよう。作る過程で、俺は半熟卵の黄身と、醤油を隠し味として入れた。

ーーー1時間後ーーー

「よし、これで完成」

「わぁー、美味しそー」

「おう、自信作だ…ってお前なんでいるんだよ⁈」

「いや、なんでも何も…湊が料理に集中してるから気付かなかっただけじゃない?私、結構前からあなたのそばにいたよ」

「まじか…全く気づかなかった…って事は、サラダの隠し味も知ってるのか⁉︎」

「え…そんな事までしてくれたの?ありがと〜」

そう言いながら麗馨は俺に抱きついてきた。隠し味など言わなければよかった…口が災いを呼んだ。

ーーー20分後ーーー

「いやぁ、美味しかったねー」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「これじゃあ決着つかないね」

「いや、俺的には麗馨が作ってくれたやつの方が好きだが…」

「いや、あれは料理の腕云々(うんぬん)より、サプライズ性があったからだと思うよ。湊もそんな事してくれるはずだったんだろうけど、私が気付いちゃったから…ごめんね」

舌を出して謝る麗馨。どうでもいいが、可愛すぎだ。

「いや、いいよ。取り敢えず今回は引き分けって事で!また今度やろうぜ」

「うん!」

 

俺たちは、一階のロビーにいた。今日も戦わなくてはならない。今日の朝見た夢の事を思い出して不安になったが、起こりもしない事を心配しても仕方がない。

「なぁ…どうするよこれ…」

傍(かたわら)にいた敦が話しかけてきた。

「私たち完全に避けられてるよね…」

薫も苦虫を噛み潰したような顔をしている。俺たちの周りに円を描くようにして人がいない。ここまで露骨とは、日本人の団結力は大したものである。

「もしかしたらあいつらはあいつらでリーダー的な奴がいるのかもしれねぇよ?」

「だからそれが麗馨のドッペルゲンガーであり、俺のドッペルゲンガーなんだろが!」

俺の頓珍漢(とんちんかん)な言葉に、敦は小声ながら声を荒げた。

「じゃあ、あいつらは不思議に思わないのか?俺たちに逆らえって言ってる奴と俺たちに従えって言ってる奴が一緒にいるんだぜ?変な話だろ」

「それもドッペルゲンガー共が他の奴らに上手く言ったんだろ。俺のドッペルゲンガーとか、考える事は俺と同じなんだから無駄に聡いだろうし」

「そうか…」

「はーい、みなさん、戦場に行きますよー。今日も逃げずに戦って来てくださーい」

俺たちは、今日も戦場に赴(おもむ)くのであった。

 

戦場の状況は最悪だった。敦と麗馨が魔物を拘束して攻撃のチャンスを作るものの、俺と薫以外は動こうとしない。俺たち四人以外はみんな、自分の身を守る事に徹しているようだった。そのうち、敦が俺たちを集めてこう言った。

「これ以上やっても無駄だ。今日は俺たちも身を守る事に徹しよう」

「俺たちもあいつらと同じ事するのか?」

「だから、無駄な事しててもしょうがねぇだろうが。今は何をしようがあいつらの心には響かねーよ。ドッペルゲンガー共に洗脳されてるようなもんだからな」

「…」

「大丈夫だ。打開策は絶対見つかるさ。つーか、俺が見つける」

恐らく敦にもいい考えなどない。それでも敦からは、ひしひしと燃える闘志が感じられた。

「解った。俺も格好悪いけど逃げるよ」

「攻撃が来るよ!」

麗馨の一言で俺たちは弾かれたように動き出した。

そのまま俺たちは一日中逃げ切り、息も絶え絶えにホテルに戻った。

 

夕食も昨日のように俺たちの周りには誰もおらず、本格的に避けられている感じだった。四人だけの寂しい夕食を済ませ、部屋に戻った。

 

「今日も大変だったね…」

「あぁ…毎日こんなんじゃあ身体より心が持たねぇよ…」

「ってゆーか、私と敦のドッペルゲンガーの権力すごくない⁈どんだけ徹底してるのさ…」

「逆に言えば、お前だってみんなをまとめる力かあるって事だな。表に出してないだけで」

「いや、私は…」

「そうネガティブになるなって。俺が告った時にお前言ってたじゃん」

「…」

「まぁ大丈夫だって。ドッペルゲンガーの事は明日ちゃんと解決すればそれでいいじゃん。お尻とお尻ごっつんしてさ」

「んー、そうだね」

「よし、んじゃ今日は少し早いが寝るか。明日はドッペルゲンガーを元に戻す!」

「おう!」

ノリノリで応えてくれた麗馨に感謝しつつ、俺たちは例のごとく同じベッドに入って寝た。

 

目を覚ますと、隣で麗馨がすやすやと寝息を立てていた。昨日は早起きして、早く寝たせいか、いつの間にか早寝早起きの生活リズムができている。時刻は五時半だ。さすがに昨日と今日の連続で食料が早く支給されるなんて事はないだろう。ずっと部屋にいるのも暇だし、麗馨を起こす訳にもいかないので、"その辺で散歩してくる"という旨の書き置きを残し、そっと部屋を出た。

散歩するという名目ではあるが、ドッペルゲンガーが見つかるかもしれないというのが一番大きかった。出来る事なら早く決着をつけたい。俺は麗馨と敦のドッペルゲンガーを見つけたテラスを覗き、監視室、会議室など色々な場所を巡ったが、ドッペルゲンガーは見つからなかった。

「やっぱ、そう簡単には見つからないよな…」

俺は独り言を呟き、傍らのベンチに腰掛けた。ところで、俺が立ち止まる場所に必ずベンチがあるのはどうしてだろう。知らない。

「どーなってるんだろうなー」

そもそも、解決への手がかりが少な過ぎだ。ドッペルゲンガーが存在する事自体は事実だとしても、そいつらを消す方法なんて分からない。お尻とお尻をごっつん、などというのは正直ギャグの世界だ。

「困ったなー」

ところで、どうして俺がこんな独り言ばかり言っているのかというと、麗馨のドッペルゲンガーなら出てきそうだと思ったからだ。ドッペルゲンガーとはいえ、元は麗馨なんだから好奇心旺盛なところは変わらないはずだ。

「お?湊?こんな所でどうしたの?」

聞き慣れた声が俺にかけられた。その瞬間、俺は確信した。こいつは麗馨のドッペルゲンガーだ。俺は散歩すると書き置きしてきたんだから、『こんな所で"どうしたの"?』と聞くのはおかしい。『こんな所まで来たんだ』とか、『もう部屋に戻ろう』と声をかけてくるはずだ。

「いや、散歩してただけだよ」

「そっか」

「いやぁ〜それにしても、一昨日、麗馨が作ってくれた朝ご飯は"和風"で美味しかったなぁ」

「あー、でしょでしょ?私頑張ったんだよ〜」

可愛い受け答えで巧みに話を合わせてくるが、こいつはやはりドッペルゲンガーだ。俺はそう確信した。

「んで、お前誰だよ?」

「え?いや、何年も幼馴染やっててそれはないでしょ。私だよ?桐山麗馨」

「確かに、お前の姿形は麗馨そのものだろうな。でも違うんだよ。お前は麗馨じゃない」

「いや、湊、どうしたのさ?気がおかしくなった?」

「そろそろ認めたらどうだ?麗馨のドッペルゲンガーさんよ」

一瞬、麗馨の顔が引きつったが、流石なもので、すぐ態勢を立て直してくる。

「やだなぁ〜もう。それは湊の思い込みだって」

「じゃあ今から思い込みじゃない事を証明してやるよ。まず、俺は部屋から出る時に"散歩する"って書き置きしといたのに、お前は俺に会った時、『こんな所でどうしたの?』と聞いてきた。散歩するって言ってあるのにおかしいよな。もう一つ。お前が作ってくれた朝食は、和風じゃなくて洋風だったよ。パンとかサラダとかな」

その瞬間、麗馨の顔つきが変わった。

「ドッペルゲンガーと本体の間で、記憶の共有はねーのな。案外簡単に判別できそうだ」

麗馨のドッペルゲンガーは、観念したように口を開いた。

「どうして私がドッペルゲンガーだって疑ったのよ?」

「お前、俺たちを動揺させようと思って敦とラブラブしてたのは分かるけどさ、俺たちが不審がらない程度にやれよな。二人ともそんな事するような奴らじゃないんだからドッペルゲンガーと疑うのも普通だろ」

「でも、ドッペルゲンガーなんて非現実的な発想は出てこないでしょ普通」

「俺は普通じゃないんだよ。…んで、今度は俺の質問に答えてもらおうか」

「何よ?」

「お前の目的は何なんだ?坂田と手を組んで俺たちを邪魔をしようとしてるけどさ、そもそもなんで邪魔する必要がある?死を運ぶ者(デス・ブリンガー)を倒すのを妨げるって事は、お前の本体である麗馨の命が危険に晒される時間も長くなる訳だろ?お前自身の存続にも関わるぞ」

「そうねぇ…私、壊したくなったの。何もかも、全部」

「⁉︎」

「だから、あんたにも消えてもらおうかしら」

麗馨のドッペルゲンガーはそう言いながら拳銃を取り出し、俺に照準を当てた。

「お、おいやめろ」

「死ぬ前に一つだけいい事教えてあげる。敦のドッペルゲンガーもあんた達を本気で潰すつもりよ。私が持ってる拳銃なんかより遥かに危険な物を持ってるだろうから注意するのね」

くっそ…何か打開策はないのか…俺が歯噛みした、その時。

向こうの角に、敦と麗馨の姿が見えた。たった今来たようで、肩で息をしている。一瞬だけでいいから、このドッペルゲンガーの注意を違う方向へ向けられれば…いや、ちょっと待て。俺が見た敦がドッペルゲンガーだという可能性はないだろうか。姿形は全く同じなのだから、俺たちに溶け込むのは容易な訳で…

「八方塞がり、だな」

「観念したか、湊さんよ…」

そのまま麗馨のドッペルゲンガーは、容赦無く引き金を引いた!俺は一か八か、左へローリングした。弾丸は俺の肩すれすれを通り過ぎていった。

しかし、ほっとしたのも束の間。またすぐ攻撃してくるに違いない。竦む足を何とか励まし、俺は再び立った。

すると。

「観念するのはそっちの方だぜ?麗馨さんよ」

「はっ、離して!」

「嫌だね。これ以上俺達の邪魔をされたら困る。さっさと自分の本体へ戻るんだな」

敦がいつの間にか角から出て来ていて、麗馨のドッペルゲンガーを羽交い締めにしていた。

「麗馨!来い!」

麗馨は敦の声だけを頼りに後ろ向きに走ってそのままドッペルゲンガーに向かって飛び込んだ!二人が触れた瞬間、辺り一帯を閃光が包んだ。

ーーー5分後ーーー

「ちょっと敦、離してー」

「あ、わり」

羽交い締めにされているのだから無理もない。

「ドッペルゲンガーはどこだ?」

「見た感じ、周りには何もいないけど…」

「つーことは、やっぱ麗馨の中に戻っていったのか」

「だね」

因みに、この会話は全て敦と麗馨のものである。頼むから俺に気付いてくれよ二人とも。俺、弾丸避けたのに…

「湊、お疲れ様」

麗馨がやっと声をかけてくれた。

「おう…勝手に部屋から出てごめん」

「いや、書き置き見たから大丈夫だよ。ってか、湊すごかったねー!弾丸避けたじゃん!」

「勘で左に飛んだだけだけどな」

「にしてもすごいじゃんか!私、湊が死んじゃうのかと思って本当に泣きそうだったよ…」

そう言いながら、麗馨は俺を抱きしめ、そのまま顔を俺の胸に埋(うず)めた。

「怖かったよ…怖かったし、心配もしたけど…」

俺の胸の中でそれだけ呟いた後、俺から離れ、天使のような笑顔で一言。

「かっこ、よかったよ」

だめだ。可愛すぎ。

その時、向こうから敦がすすり泣く声が聞こえた。

「お前なんで泣いてるの⁈」

「いや、お前らのラブラブ見て感動した…」

「あのなぁ、ドッペルゲンガーの事が一つ解決した事に感動したなら分かるけど、俺達のラブラブ見て泣くって…」

「お前らも成長したな、って…」

「私達の親じゃないんだから」

麗馨も笑いながらツッコミを入れている。

「いつまでもその純粋な愛を貫けよ」

敦は遠くを見るような目で言った。

「…はい」

見事にハモった。




物語は漸く佳境に入ります。
ここからどんどん動きがあるので、読んでくださると嬉しいです。
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