ザ・ワールド・ザ・サバイバル   作:きゅぼ

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第7話

「おぉー戻ってきた。お帰りー」

部屋に戻ると、薫が朝食を作ってくれていた。

「すまん、四人分も朝食作らせて」

「いやいや、いいよ。私を戦わせたくなかったから、わざと私に言わずに部屋を出たんでしょ?」

「まぁ…な。危険なことはあまりさせたくないし」

「じゃあ私を守ってくれたんじゃん。ありがと」

「…」

薫の笑顔もかなり魅力的だ。敦が赤面して黙ってしまっている。

「もうご飯出来てるし、食べよ?麗馨と湊も」

「いいのか?」

「いいよいいよ。長年付き合ってきた私達の仲じゃないか!あ、付き合ってきたって、恋愛じゃないよ!」

そこまで声を大にして言われると若干傷つく。麗馨がいるからいいけど。

「ありがと、んじゃお言葉に甘えます」

麗馨もお礼を言ったところで、全員で合掌をして、薫の手料理に舌鼓を打った。

ーーー30分後ーーー

「いやぁー美味しかった!」

「最高だな」

「流石、薫だ」

因みに今の台詞は順に、麗馨、俺、敦だ。どーでもいい解説Part2終わり。

「今日は…戦いもないし、何しようか?」

一段落ついたところで、薫が喋り出す。

「俺のドッペルゲンガーを始末するのが一番よくないか?」

「その通りだろうな…」

「でも、作戦とか立ててからやった方がよくない?敦のドッペルゲンガーなんだから絶対頭いいよ。麗馨のドッペルゲンガーみたいに簡単にはいかない気がする」

いや、薫…簡単にって言うけど、俺は寿命が縮まるような思いで弾丸を避けたんだぜ…?全く、俺の事もちょっとは労(ねぎら)ってほしいものだ。後から麗馨に思いっきり甘えよう。

「そうだな。作戦は俺が立てるよ。ただ…俺は直接あいつとは戦えないからな?みんなの働きが大事になるぞ?」

「そこは任せろ」

俺も男だし、それくらいの覚悟はある。

「ちょっと心配な気がしてきたが…まぁ大丈夫か。んじゃ俺は頭使うから暫く待っててくれ」

敦の言葉に三人とも頷いた。

ーーー5分後ーーー

「よし、出来た」

敦が唐突に喋り出した。

「どんな作戦?」

真っ先に反応したのは薫だ。

「まぁ、作戦と呼べる程のものでもないけど…まず、四人バラバラで行動して俺のドッペルゲンガーを探す。見つけたらLIMEで報告な。んで、見つけた奴が、俺のドッペルゲンガーをテラスまで誘導して欲しい」

「どんな言葉をかけたらいいとか、そんなのはある?」

麗馨が質問した。

「まぁ、俺の考える事だしな…本当の俺であると信じ切ってるような演技をしてれば、普通に大丈夫だと思うが…」

「つまり、いつも俺たちが敦に接してるようにしろって事だろ?」

「まぁ要約するとそうなるな」

「んで、誘導したらどうするの?」

今度は薫が聞いた。

「ここからが大事になるぞ。麗馨、お前が一番重要な」

「え?私⁈」

麗馨が狼狽している。

「湊が守ってくれるから心配するな。で、お前には…ドッペルゲンガーのフリをして俺に話しかけて欲しい」

「私のドッペルゲンガーはもういなくなっちゃってるけど、大丈夫?」

「多分そこまではあいつも知らねぇだろうさ。心配するな。仮にそれが相手に知られてるとしても湊が倒してくれるさ」

さっきからこいつ、なんで俺ばっかりアテにするんだ…?身体能力は並以上あるとはいえ、あんな危険なものを相手にするなど無理だ。

「あのぉー、非常に申し上げにくいのですが…私も超人ではないので、その…敦のドッペルゲンガーは拳銃なんかより遥かに物騒な武器持ってるって言ってたし、なかなかにキツい気がするんですけど…」

気が付いたら、俺はそんな弱気な発言をしてしまっていた。

「じゃあ諦めるか?」

「いや、諦めたくはねぇけど…」

「んじゃやるしかねぇだろ。大丈夫だって、お前は能力あるから、そして何より、俺の一番の親友だからこんな事言えるんだぜ?」

敦の言葉を聞いていて、もう一つ思い出した。ドッペルゲンガーを放っておくと、時間の経過と共に、本体も死んでしまうんだった。その事に関しては敦は言及していないが、彼自身、死にたくないという思いも強いだろう。俺も、敦を殺したくはないし、ここは一つ、やってやるか。

「おう、分かった。やってやるよ。んで…作戦の続きは?」

「おう、続きは…麗馨が俺のドッペルゲンガーにドッペルゲンガーのフリをして話しかけるところからだよな。麗馨は、あいつがもし武器を持ってたらその武器を仕舞わせて欲しいんだ。すぐには戦い始められないように、完全に仕舞わせてくれ」

「おっけー。そしたら?」

「俺のドッペルゲンガーの注意をずっとお前に向けさせてくれ。俺の事だから頬にキスでもすりゃ一瞬で舞い上がるだろ」

「私、湊じゃなくて敦にキスするのか〜。まぁ敦の偽物だし、ノーカンかな」

麗馨は少し複雑そうな顔をしたが、やってくれるようだった。

「敦、私以外の人にほっぺにちゅーされるだけで舞い上がっちゃうのか…」

気付けば、薫が明後日の方向を向いて独り言を呟いていた。

「いや、その…ごめん」

言い訳をしようとしたが、諦めた敦である。

「ん、いいよ。謝ってくれるんなら、私を好きって事だもんね〜」

そう言って、薫は敦に抱きついた。意味のわからない納得の仕方だが、まぁいいだろう。

「敦〜顔を真っ赤にして喜ぶのはいいけど作戦の続きは〜?」

麗馨が茶化している。

「あ、いや、うん、って薫それはやめろ!脇の下くすぐるのはダメだわぁーーーー」

敦、暫しの失神。

ーーー2分後ーーー

「よし、作戦の続きだ」

さっきまでのはっちゃけた感じはどこへやら。

「んで、俺のドッペルゲンガーは麗馨に夢中になってるから、その隙に俺がお尻とお尻ごっつんしてしゅーりょー、って手筈(てはず)だ」

「それじゃあ俺と薫の役目はないのか?」

「いや、無いわけじゃない。相手は俺のドッペルゲンガーなんだし、もしかしたら俺の接近に気付くかもしれない。俺はあいつを直接見たら死んじまうから、ある程度近づくまでは湊にそばにいて欲しいんだ。気付かれても、俺があいつを直視しないように」

俺は敦の護衛か…

「んで、気付かれたらどうするんだよ?俺が敦のドッペルゲンガーと戦うのか?」

「まぁ、そういう事になるな…」

「んじゃ、私の役目は?」

薫が聞いた。

「お前は…湊がキツそうだったら俺のドッペルゲンガーに奇襲をかけてくれ。最後の切り札、ってヤツな。つーかお前、右手に触れた物の大きさを自由に変えられる能力持ってたよな?俺のドッペルゲンガーを小さくしちまえばいいんじゃねぇか?」

「あ、そうだった。死を運ぶ者(デス・ブリンガー)は危険過ぎて近づく事も出来なかったからそんな事考えられなかったけど、敦のドッペルゲンガーくらいだったら近付くのも簡単だし、出来るね!」

「それなら私も、敦のドッペルゲンガーが暴れ出したら止めるよ。ちゃんと能力持ってるからね〜」

「お前、人もそれごと動かせるのか?俺の場合、そんなに大きい物は動かせないから、死を運ぶ者(デス・ブリンガー)を拘束してた時はあいつの一部分だけを微妙に動かす事で動きを止めてたんだが」

「私はあの魔物の時も、身体全体が動かないようにバッチリホールドしてたつもりだけど…じゃあ試しに、湊を動かしてみる?」

「いや、なんで俺⁈」

「大丈夫、怪我はさせないから」

麗馨はそう言って、俺の身体を操り始めた。敦が感嘆の声を漏らす。

「おぉー、本当に動いてるな」

「ね?言ったでしょ?このまま空中に浮かせる事も出来るんだよ?」

そう言いつつ、麗馨は俺を空中に浮かせた。

「うわぁぁあ」

俺は驚く事しか出来ない。

「ちょっとだけ、じっとしててね?」

麗馨はそう言って、俺を高速回転させ始めた!

「ぎゃーーー」

最初のうちは悲鳴を上げる事が出来たものの、目が回ってきてそれすら出来なくなり、意識が朦朧(もうろう)としてきた。

「麗馨、遊ぶのはいいけどそろそろやめてやれ。湊がぐったりしてる」

「え、嘘⁈やばい!やり過ぎちゃった?ごめん湊!」

麗馨は慌てて俺の回転を止めた。

「あー、死ぬかと思った…」

「本当にごめん湊!やり過ぎた…」

「いや、いいよ。これで麗馨は人も動かせるって事が証明出来たし」

「よし、んじゃまとめるぞ。俺のドッペルゲンガーを見つけた者は、皆に報告。麗馨がテラスまでそいつをおびき出し、注意を麗馨の方に向ける。その隙に薫が俺のドッペルゲンガーに触れて限界まで小さくして、俺が踏んづける勢いでそいつの上に乗っかれば作戦完了…と。まぁこんな具合な。みんな大丈夫か?」

敦の言葉に全員が頷く。

「じゃあみんな、頼んだぞ」

「おう」

「うん!」

「任せて!」

俺、麗馨、薫がそれぞれ思い思いの返事をし、ドッペルゲンガーを探す事になった。

ーーー20分後ーーー

携帯が鳴った。麗馨からだ。

"ドッペルゲンガーみつけたよ!"

これは恐らくグループで発言したものなので、薫も敦もこの知らせを受け取っただろう。するとまた携帯が鳴った。敦からだ。

"みんな、携帯はマナーモードな!麗馨はドッペルゲンガーのフリしてそいつに近付いてくれ!んであくまでも自然に声かけてテラスまで誘導だ!他の二人はテラスに先回りな!俺も行くから!"

自分のドッペルゲンガーともなると、やはり強敵と思えるのか、敦は用意周到だ。俺もテラスへ向かう事にした。

ーーー10分後ーーー

テラスに着くと、敦と薫が既にいた。

「お、湊も来たか。あ、薫、麗馨はどこにいる?」

「もう結構近いよ。あと数分でここに着くんじゃない?」

薫がどうして麗馨の位置を把握できるかというと、薫の携帯にはちょっとした追跡機能があるからだ。随分と進化したものである。

「じゃあ薫はあそこの柱の陰に隠れてくれ。俺と湊はここで隠れてるから」

「おっけー、了解」

薫は向こうの柱まで走って行った。

待つこと数十秒…

「ヤツが来たぞ!」

俺はドッペルゲンガーに気付かれないよう、小さな声で敦に言った。少し離れた場所では、麗馨と敦のドッペルゲンガーが楽しそうに話をしている。

「あのさぁ、私、敦の事好きになっちゃったんだよね」

麗馨がかなり真剣な表情でそんな事を言った。俺は一瞬ショックだったが、これも作戦遂行の為、文句は言えない。

「どうした急に?まぁ俺も好きだけどさ」

敦のドッペルゲンガーも満更でもない。

「そっかー、ありがと。じゃあさ、あの…想いが通じ合った証にっていうか、その…」

麗馨が言葉を言い終わる前に、敦のドッペルゲンガーは自分から、麗馨にキスをした。

「んっ…」

麗馨は一瞬身体を硬くしたが、これも作戦のうちだ。敦をしっかり受け入れた。よし、薫が今行けば…

薫も今がチャンスだと分かったようで、静かに、それでも迅速に二人に近づいた。よし、イケる!と思った、その刹那。

「誰だ!」

ヤツに気付かれてしまった。それでも薫は無理矢理近付こうとするが、やはり彼のスピードには追い付けない。

「一体、何の真似だ…?」

ヤツが、薫に問うた。

「さぁ、何だろうねぇ」

薫はあくまでも挑戦的だ。

「どんな奴でも、俺の邪魔をする奴は容赦無く排除するぞ」

「やれるものならやってみな」

薫が不敵に笑った。

「そうやって笑えるのもいつまでかな?」

ヤツはそう言って、動き出そうとして…見事に拘束された。

「ごめん、敦。騙した私が悪い」

そう言う麗馨は無表情だった。

「クッソ…みんなグルだったのかよ…!クソ野郎ーーーー!!」

ヤツは冷静さを完全に失っていた。そう暴れたところで拘束が解ける訳がない…はずだった。

「えっ…?」

「うぉおおおおーーー!」

拘束が…解けた⁈

「へっ、これくらい甘いぜ?麗馨さんよ」

麗馨は恐れをなして、声を出すことも出来ない。

「さぁ、どうやって料理してやろうかなー?取り敢えず服を脱がすか」

「やめろ」

「誰だ今度は?」

俺は我慢出来なくなって、柱の陰から出て来てしまった。

「七木湊…なんて言わなくても分かるよな?紛い物(まがいもの)の敦め」

「面倒くさい奴だなお前も。さっさと俺の前に跪(ひざまず)け!」

「ところが、そうはいかねーんだな。そこのお嬢二人を料理するのは、俺を倒してからにしてもらおうか」

俺は、麗馨と薫を庇(かば)うように立った。

「まぁいいだろう。地獄の苦しみを味わうがよい!」

そう言って、敦はスナイパーライフルを俺の心臓に向けて構えた!

「これでお別れだな、ナイトさんよ…」

ヤツは容赦無く引き金を引いた。その瞬間、俺は勘で右に跳んだ。弾丸は俺の腕を掠め、薫が先程まで隠れていた柱に穴を穿った。

「ちっ…外したか…」

「お前、狙いは確かにいいけど、一点を狙うだけだから避けるのも簡単だぜ?思いの外ヌルいんだな、ドッペルゲンガーって」

「くっ、巫山戯(ふざけ)た事を抜かして…今度こそ殺してやるぞ!」

ヤツはまたスナイパーライフルを構え、俺の心臓を狙ってきた。先程のように右に跳んだだけでは、恐らく命はない。何か…いい方法はないのか…

その時。

「今度こそ残念だったね、ドッペルゲンガーさん」

麗馨が急に喋り出した。

「あばよ、偽物の俺」

敦の上から、敦が降ってきた⁉︎その瞬間、辺りが閃光で包まれ、気が付くとそこには、敦が一人いただけだった。

 




ドッペルゲンガーの件が一気に解決しました。
そもそも何故僕がドッペルゲンガーっていうアイディアを思いついたかというと、『銀の十字架とドラキュリア』という小説に出ていたからです。僕の発想力じゃこのアイディアもなかなかいかせないんですけどね(笑)
何はともあれ、まだまだ話は続きますので、応援よろしくお願いします。
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