ザ・ワールド・ザ・サバイバル   作:きゅぼ

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現状打破

「いやぁー今日は本当にすごい日だね!ドッペルゲンガーは二人とも倒せちゃったしさ!」

麗馨がとても陽気に喋っている。

「俺は本気で死ぬかと思ったがな」

今日、俺は弾丸を二発も避けたのだ。逆に言えば、二回も銃で狙われた。心も身体もボロボロだ。

「湊は素直にすごいと思うよ。能力持ってないのに、色々な危険を乗り越えてさ、頼りがいのある男になったねー」

よしよし、と麗馨が頭を撫でてくれた。

「そう言えば、最後は一体どうなってたんだ?俺の目にはドッペルゲンガーの上にいきなり敦が降ってきたように見えたんだが」

「あぁ、あれね。ドッペルゲンガーさんが、湊に夢中になってるから、私が隠れてた敦をドッペルゲンガーの上に移動させたの。そしたら見事に私の思惑通り、元に戻ってくれたって訳さ」

「そっか。ナイス判断だな」

今度は俺が麗馨を撫でてやった。

あ、状況を説明するのを忘れていた。俺たちはドッペルゲンガーを本体に戻した後、誰もいない食堂で寂しく昼食を摂り、それぞれの部屋に戻って現在に至る。ドッペルゲンガーがいなくなったのだから、今からみんなに働きかけれは協力を得られるかもしれないのだが、俺たちが弱ってしまったので一旦休む事になった。

「ドッペルゲンガーを元に戻したのはいいけど、状況が根本的に変わった訳ではないんだよな…」

俺は独り言のように呟いた。依然として皆の協力は得られないままなのである。

「でも、今から変えていけばいいんじゃない?諸悪の根源だったドッペルゲンガーはもういなくなったんだし、かなりやり易くなったと思うけど」

「確かに、やり易くはなったんだけどさ…一度みんなに植え付けられた先入観を取り除けるかどうか…」

「そこはやってみないと分からないね」

「ああ」

そこで、俺の携帯と麗馨の携帯が同時に鳴った。確認してみると、敦からのLIMEが来ている。

"ついさっきの事なんだが、トイレから戻って来る時、誰かに襲われた。パンチ一発食らっただけだから大した事はないけど、俺が迎撃しようとしたらあり得ん反応速度で避けたから恐らくあれは坂田だと思う。背格好とかも似てたし。とにかく、みんなも気を付けてくれ"

「坂田は一体何を考えてるんだ?魔物を倒すのを妨げるような事しても何の意味もないだろ。あいつ政府の人間だろ?」

俺は思った事をそのまま口にした。

「今思うと、坂田って私のドッペルゲンガーとも絡んでたみたいだし、立ち位置が何かと悪役だよね」

麗馨もそんな事を言っている。坂田には一体何が隠されているというのだろうか…

 

結局、その後何か異常な事が起こった訳でもなく、いつの間にか日が暮れて夕食の時間になった。

夕食の会場にはやはり人はおらず、俺たちはまだ避けられているんだと改めて実感した。

「ドッペルゲンガーの事は解決しても、これじゃあなー…」

敦がお手上げ、といった面持ちで喋り出す。

「結局、振り出しに戻っちまったな」

俺も敦の言葉に反応する。

「俺たちじゃない誰かがみんなを団結させて戦ってくれたらいいんだけどな」

敦は最早、人任せになっていた。そんな敦に、薫が話しかける。

「でも、やってくれそうな人なんかいないし、仮にいたとしてもあの人達をまとめるのは、正直な話、無理っぽいじゃん?」

「そうだろうな」

「じゃあ私達がやるしかないよ。誰もやってくれないんだから」

「俺だって努力はしてきたつもりだ!でも、もう…」

その先は、言葉にならなかった。敦自身、自分一人だけで背負い込んでいる部分が大きかったんだろう。こんな状況で希望を持てというのも、なかなか酷な話かもしれない。

「ごめん!変な事っていうか酷い事言っちゃったよね私!本当ごめん!」

先程までのシリアスな雰囲気はどこへやら。薫は明るい声でそう言った。

「変な事ついでに、さっき薫がした話、最後まで聞かせてくれないか?」

敦は急にそんな事を言い出した。

「別にいいけど…大した事じゃないよ?それに私が敦に説教なんて、釈迦に説法もいいとこだと思うけど」

「いいんだよ。俺も弱くなっちゃってるからさ…聞かせてくれ」

「んじゃ、今から私は敦に説教しまーす」

薫は妙な宣言をしてから話し出した。

「確かにみんなをまとめるのは不可能な事かもしれないけど、物事っていうのは、不可能って証明されて初めて不可能になるんだよ。それが証明されない限り、可能なんだ。もし不可能って証明されても、現時点では不可能ってだけでいずれ可能になるかもしれない」

そこで薫は、ふぅ、と一息ついた。そしてまた話し出す。

「だからさ、諦めちゃいけないんだよ。私が言いたいのはこれだけ。どう?何か変わった?」

「おう、変わったよ。そうだな、やらないとな。まだ出来ないって決まった訳じゃねぇ」

敦は元気を出してくれたようだった。そう言えば、麗馨や薫はこうやってたまに哲学的な事を口にするけど、どこでこんな事を考えているんだろう。今度聞いてみよう。

 

所変わって、舞台は部屋。夕食後に皆の部屋へ行ったが、皆は俺たちが食事を済ませた後に食事をしに行く訳だから、誰もいないのは当然である。今日は取りやめになった。

「明日もまた戦わなきゃいけないのかー」

「だな。つーか今思ったんだけどさ、なんで死を運ぶ者(デス・ブリンガー)とかいう魔物は、俺たちが起きてる時にしか現れないんだ?地球を本気で滅ぼそうと思うならさ、みんなが寝静まった深夜に地球に来て、街をぶっ壊せばそれまでじゃん。しかもどうして東京以外の場所は攻撃しない?別に大阪とか名古屋を破壊したっていいと思うんだが」

「んー、後者に関しては、東京にワープポイントがあるってネットで見た事があるから分かるけど、前者に関しては確かに全く分からないね」

あの魔物に関しては、やはり分からない所が多い。

「分からない事は多いけど、今は課せられた事を全力でやろう。謎解きはその後でもいいじゃん」

「おう、そうだな」

この時、俺も麗馨も、俺が感じた疑問の重大さには気付けなかった。

その後は他愛のない話をし、俺たちは床に就いた。

 

目が覚めると、隣に麗馨の姿は…無かった。

「やっべぇ寝過ごしたな…」

「お、起きたか湊。おはよー」

「おう、おはよ。今何時?」

「んー、今七時半」

「麗馨はいつから起きてたんだ?」

「私は六時くらいかなー。湊起こそうかなとか思ったけどさ、幸せそうに寝てるし、ドッペルゲンガーの事で精神削られてるだろうから起こさないでおいてあげたの」

「そっか…何から何までありがとな」

「いいんだって。私は、あなたの彼女だよ?」

少しはにかみながらそう言う麗馨は、天使のように可愛かった。

「はい、ご飯出来たよ」

「おう、ありがと」

俺のためにここまでしてくれる麗馨に、俺も応えなくちゃな…今日の戦闘も頑張るか。そう決意を固める俺であった。

麗馨の作る料理は美味しかった。




今回はとっても少ないです。
この次から一気に話が進んでいくので、
キリのいいここで一旦切ることにしました。
次の話からもよろしくお願いします。
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