もう一人のハミダシ者   作:琴葉(Kotoha)

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※今回の心情的なセリフは和泉智宏視点でお送りします







隠す必要はどこにありますか?

 

 

 

ミリ先生、話すだけ話して職員室に戻っちゃったよ。まあ昨日は羽月のことを聞けなかったし試しに聞いてみよう

 

 

 

 

智宏「そういえば羽月ってミリ先生に何か秘密とか握られてるのか?なんかそんな感じに見えたんだけど」

 

月夜「そう見えました…?はぁ…僕って隠し事するのが下手ですからね…」

 

あすみ「え、いいんですか?秘密をここで言っちゃっても」

 

月夜「別にバラして僕に損がないわけではありませんからね。昨日は用事があったとはいえ親睦会を蹴って先に帰っちゃいましたし」

 

詩桜「ほう、羽月くんの秘密か。私も先に帰ろうとしたが面白いものが聞けそうだから残っておいて正解だった」

 

やっぱりそっち目的で残ってましたか詩桜先輩。ミリ先生が羽月のことを話そうとしたとき、顔がニヤけてましたのを俺でなくても見逃しませんでしたよ

 

 

 

月夜「まず僕の秘密を教える前に、皆さんに一つ質問があります。RTAという言葉は知ってますか?」

 

柑凪「RTA?何ですかそれ?伊々奈ちゃんは知ってる?」

 

伊々奈「私も知らないかな…英語は少しだけならわかるけど単語じゃなさそうだし」

 

妃愛「私も知りませんなあ。そんな言葉とは無縁の存在だったし」

 

詩桜「ふむ、ひよりんが知らないとなると私も知らないかもしれないな。お手上げだ」

 

詩桜先輩、折れるの早いです。ポッキン並みに早いです

 

あすみ「RTAって…リアルタイムアタックのことですか?動画でちょっと見たことありますので。」

 

華乃「えっ、嘘。錦さんがいの一番にRTAのことを理解してる。ってちょっと待って、わたしも心当たりあるかも…」

 

智宏「俺はVtuberの動画ばかり見てるからそういうのには疎い…それで錦さん、RTAって何かな?」

 

あすみ「簡単に説明すると、ゲームを始めて特定の区間までのクリアの時間を競うタイムアタックってことです。例えばRPGとかだったらゲームを始めてエンディングが流れ終わるところまでの速さを競い合うんです。」

 

智宏「ようするに、どれだけ時間をかけずにクリアするってことなのか」

 

月夜「簡単に言えばそういうことになりますね。」

 

智宏「あれ?そういえばこの間シキちゃんがRTAらしき動画の視聴者みたいなポジションで話してたのを見たことあるような…確か動画のタイトルが…」

 

華乃「『進撃の小人RTA』よね?それで解説の人の名前が…」

 

月夜「…はい。僕がそのRTA走者で雪景シキさんに視聴者ポジションをお願いしました『ゆったりムーンナイツ』です」

 

天梨「えーっ!?ツッキーってゆったり動画投稿者なの!?あっ、他にも色んなVtuberさんに視聴者ポジションをお願いして解説してる!それで昨日も動画上がってる!あれ?でもこの動画、解説だけになってる?」

 

月夜「昨日はどなたの都合も合わなくて一人で解説動画になってしまいましたので…」

 

詩桜「しかしなぜだ?解説をするだけなら羽月くん一人でもできるだろう。ましてや他のVtuberにお願いしてまでする理由は何だ?」

 

月夜「…僕は昔から人との接触を避けていたんです。それで、ゆったり実況の動画を見てこれならできるって思ったので独学で始めてみたら再生数が鰻登りになり、チャンネル登録者もどんどん増えていきました。

それから年月が経ち、ある日フォローしていたVtuberさんからコラボしてみたいってDMが度々来てたんです。『僕(私)もこの動画に出れたりしますか?』って。Vtuberさんなら人と接触しないまま自分のことをさらけ出せる、そう思ってコラボの話に次々と返事をしました。あっ、もちろん全員が全員ではないですよ。人選はしてましたので。それで、最初に声をかけられたのが…」

 

あすみ「雪景シキちゃん、ですね」

 

月夜「はい。僕が最初に知ったのは雪景シキさんです。それから雨野葉レマさん、サクヤさん…色んなVtuberさんが声をかけてくれてました。

ただそれでも学校には行ってなかったですが…その理由が動画投稿のためです。」

 

柑凪「私も伊々奈ちゃんも羽月さんが時々登校してきてるのは見かけたけど、それでもほんの数日くらいだったかも…」

 

月夜「夏休みや土日祝は学校で補習を受けてその分の出席日数は確保していたので。ただこれ以上不登校気味なのが続くと進級どころか卒業すら怪しいって和泉先生に強引に生徒会に入れられた、というわけです。」

 

華乃「あー、すっごいわかる…自分がやりたいことに専念してたらいつの間にかそうなっちゃうよねー。わたしもやりたいことに専念しすぎたら出席日数が危ないって聞いたから生徒会に入ったって感じだったし」

 

妃愛「私も自分の都合上、不登校なことが多いから前期では生徒会副会長だったからね。」

 

柑凪「ん?んんん?ってことはすみちゃんも不登校の時期があったってこと?」

 

あすみ「う、うん…そこは和泉先輩やひよりんには説明してあるよ。でもやっぱり他の人には聞かせにくい…」

 

智宏「うん、気持ちはわかるよ。飯田さんと神田さん以外みんな不登校の時期が長かったからね」

 

伊々奈「あれ?ってことは天梨先輩も?」

 

天梨「う、うん…読モの仕事が多くって…あ、でもそこまで不登校じゃなかったんだよ?私からかいちょーにお手伝いをお願いしてたってだけ!今回は立候補してなかったけど…」

 

みんなそれぞれ事情があるんだよな。…あれ?さっき聞き捨てならない名前が聞こえたような?『雪景シキ』って…

 

あすみ「あの、羽月さん…」

 

月夜「はい?どうかしましたか?」

 

あすみ「えっと、その…私が雪景シキ、です。その時はコラボしていただきありがとうございました」

 

月夜「…え?」

 

間の抜けたような声が羽月から聞こえた…気がする。気持ちはわかるよ。俺だってカミングアウトされた時は素っ頓狂な声も出たし

 

 

月夜「えぇぇぇぇぇ…!?」

 

柑凪「えーっ!?あの雪景シキちゃんがすみちゃん!?」

 

伊々奈「初めて知っちゃった…今日は寝れなさそう…」

 

月夜「え、ちょっと待ってください。本当に雪景シキさんなんですか?」

 

あすみ「はい…雪景シキの魂、錦あすみです…」

 

華乃「うわぁ…衝撃のあまりに羽月くんが言葉を失ってる…」

 

月夜「あ、でも確かRTA動画の途中に支援絵としていただいたイラストの中に…そうです、この絵です。」

 

そう言って羽月が見せたのは、戦デレの北条氏康ちゃんのイラストだった。確かにアクションゲームなら戦国武将のイラストを支援絵としてもらえたのは嬉しいだろう。

…あれ、北条氏康ちゃんのイラストを描いてるのって確か…

 

月夜「僕もまさかツブヤッキーのDMでVtuberさんだけでなく絵師さんから支援絵をいただくなんて思いもよりませんでした。時々見かけるんですが、『ののかさん』という方のイラストはどれも好きで…」

 

華乃「…ゎたしゎょ」

 

月夜「常盤先輩?」

 

華乃「わたしが!ののかわよ!」

 

月夜「うえい…?」

 

詩桜「それと、応援コメントを送った『星しをん』は私だ。」

 

妃愛「あ、私も微力ながら応援ボイスを送らせていただきました。小泉妃愛、ひよりんです」

 

天梨「私はインちゅたに『超オススメ!』ってコメント付きで動画のURLをコピペくらいかな?」

 

月夜「はい…?」

 

あっこれヤバいやつだ。錦さんが常盤に『ののかは自分』って聞かされた時以上に驚いてキャパオーバーするパターンだ…

 

月夜「まさかこんな身近に僕を支援してくれる人が5人もいるなんて…感無量で枕がびしょ濡れになりますよ今日の夜…」

 

あれ?意外と普通に持ち直した…すごいメンタルしてるな羽月…俺が羽月の立場だったら立ったまま気絶するよ間違いなく

 

紺凪「それで、進撃の小人でしたっけ?それってどのくらい時間をかけたんですか?」

 

月夜「えーっと…4時間29分くらいだったかと」

 

伊々奈「えぇっ!?あれって操作性が難しいアクションゲームですよね!?」

 

華乃「わたしもイラストの参考にしようかなってちょっとプレイしてみたけど1時間くらいで折れたわよ…それを約4時間半で…」

 

智宏「それだけでもすごいのに他のゲームでもRTAしてるんだよな…それをちゃんと解説までしてるし」

 

月夜「とまあ、こんな感じで昨日はRTAの解説動画のために親睦会を蹴ってしまったというわけです。改めて、すみませんでした」

 

詩桜「いや、謝る必要はないだろう。むしろ尊敬までしてる」

 

月夜「尊敬、ですか?そのようなことは・・・」

 

天梨「ううん、されていいんだよ!私だったらかのちん以上に持たないだろうし、それだけ集中力もあるんだもん!」

 

智宏「それに、事情があったとはいえVtuberにコラボを持ち掛けられてそれを承諾するのだって滅多にないんだからそこは誇っていいと思う。」

 

月夜「そうですか…そう言ってもらえてすごく嬉しいです…!最初は引かれるんじゃないかって思ってたけど、こんな事でも褒めてもらえるなんて…!」

 

華乃「わたしだってしょっちゅうイラスト書いてるけど、いくつもボツにしちゃうからね…似た者同士じゃない?わたしたち」

 

天梨「うんうん!みんなで共有できる話題が増えてむしろ嬉しい!」

 

柑凪「私はついていけるか心配ですけど…色んな動画を見てみようかなって思いました」

 

伊々奈「私も柑凪ちゃんのお家で一緒に見てみようかな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで駄弁るというよりは羽月のことを知る会になったのだった。

帰り際に羽月が『今後は月夜と呼んでほしい』と声をかけられ、今後はそう呼ぶことに決めた。

あ、もちろんLIMEの生徒会グループに招待して、今後のスケジュールに関しては個別で教えてもらうことにした。今後も生徒会メンバーから多大なる支援をされるんだろうなぁ月夜…

 

 

 

え、というかツブヤッキーのフォロワー数がちらっと見えたけど9万人ってすごくない?

 

 

 

 

 

 

 






羽月月夜うづきつくよ
クリエイティブポイント:ゲームのRTAゆったり実況(解説付き)投稿者。

千玉学園1年生。極力面倒事は避けたいがために存在感は薄めだがけっして陰キャとかではない(陰と陽の中間あたり)。 千玉学園内に知人がいるらしいが、当の本人はまったく気付かずに過ごしている模様
その正体は知る人ぞ知るゆったり実況(解説付き)投稿者。
数々の記録を保持してるが事実上のゲームオタク。




※進撃の小人:進撃の巨人のパロディ。ゲーム内容はほぼ一緒

※ゆったり実況:ゆっくり実況のパロディ。音声ソフトなどはなく、本人の声を加工して音声入力するため本人以外は気づかない

ちなみに投稿主はRTAどころか動画投稿すらしたことがありません、完全に見る専門です

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