シャニマスの世界で、色の見えない彼女はアイドルの脳を焼く 作:ヒナまつり
Pの車に乗ってレッスン室に向かう最中も駆けていった、虹色の光は僕の中をまだ巡る…。深海の中すらも、照らし続けながら─。
そのお陰で、僕はこの暗闇すらも愛せた。この、寒さも─アイドルですら僕だって、信じることが出来た。
理想は、目に浮かぶ。星のように耀いて─。願いも、まだ消えてはない…ルカの隣に自信をもって立てる特別になるという願いも…。
でも、一つだけ─僕には怖いことがあった。それは、にちかの濁り…。
あの、暗い絶望のように変わってしまったルカのようになってしまうんじゃないか─。ただ見守るだけじゃ、守りきれないんじゃないかって…そんな不安が駆け回る。
でも、そこに…何時もみたいに太陽の光が差した。
「─不安、なのか?決勝が…」
「─ううん。変化が、怖いの…。逆らえない、時間と変化が」
「─かさねは、変わり続けてる。アイドルになったその日から、ずっとな。それは、にちかも美琴にも言えるよな…。確かに、変化が絶対に成長に繋がるわけじゃない、時には自分すら見失う変化がある」
染々と、まるで見たことがあるみたいにPは言葉を続ける。真摯に、真っ直ぐ…だから僕の心にそのままその声は入り込む。
「それでも、SHHisは踏み出した。憧れのために、皆が似ていて少し違う先にある未来のために…。だからな、信じてほしい。二人は、きっと変わるけどその見ている先が変わらない限り三人で無くなることはないって─それに、その為に俺がいるんだからな…?」
日向のように優しい熱を受け取って、僕は答えを返した。
「─うん。信じて、みる。この、音と…皆を─」
どくん、どくん…心臓の音は鳴り響く。消えやしないこの音が、嫌いだった─でも、今は誰にも存在するこの音が大好きでここから、溢れた熱が大きく見えていた壁へ僕の身体を先に進ませるから。
見上げた空は、昨日とは違かった。いや、これまでとは違かった。色んな、色がある。一つだけじゃない、定義なんかされない─輝き。
それが雲なんかも、通り抜けて─僕の瞳に写り込む。でもそれすらも、僕はかさねて僕にした。
その色を試したくて、僕は暑いぐらいの熱のままレッスン室に駆け出した。
そこには、二人がいた。僕を、待っていてくれた─。
「─かさね…さん?」
「─うん、やろうか」
二人の世界に音が流れる、そこで踊って僕の跳び跳ねる汗すらも世界を彩る色に変わる…声も、そこに変化を加えて絵を描く。そして輝きが、それを照らして僕にする。
「─あは…っ!」
今なら、一人なら何処にだって飛んでいけてしまいそう─。空へだって、星にだって─その先にだって…っ!
でも、そんな何処にも飛んでいってしまいそうな僕を彼女達が止めてくれる…傍にいさせてくれる。
濁ってもまだ綺麗な色で…張り詰めて切れてしまいそうな色で─。隣に立ってくれる二人が、だけど僕の目の前に重なったその時、光は目に映らなくなる。
それは、あの日のルカのような絶望の暗闇で…寒さで僕を包む。身体は軋んで、視界が無色に染まる。でも、そこには二人の色と燃え盛る炎があった。似ているようで違う、二人だけの色が…。
それは、僕の壊れたガラスのような身体に乱反射して全身に光を反射する。僕すらも飲み込んでしまいそうな程に─。
だけど、僕はそこで溶け込むんじゃなく…耀いた。二人のもつ暑いぐらいの光と色で僕らしく─。
「─っ、また…」
小さく、にちかの声が聞こえた。それには、色んな色を含めていた…嫉妬、切望…それでも彼女は手を伸ばしてくれた。
色は、少しだけシェードのように…混ざり合い僕は僕らになった。少しだけ、乱暴な形で…。
美琴さんも、その変化に気が付く。誰よりも、僕らの先頭で憧れとして体現していた星が、姿を変える。
ただ、貪欲に僕らの色を貪るように─。
そこでやっと三人の、手が触れた。にちかの必死と美琴さんの完璧…そして、僕の…はるきちゃんが言う太陽が重なった。
生まれた色は、見たこともない…でも正真正銘の僕らの新たな景色だった。
それは、燃え盛るように僕らに纏ってもう、光を隠してしまうことなんてなかった…。
世界に、光が満ちて…僕らは僕らのままそこで自由に憧れのままに耀く。
一人じゃ、耀けない。二人なら、耀ける。なら、三人だって耀ける筈だった。
それなのに、僕はそこで足を止めていた。二人は、僕よりもずっと先へ走っているからもう追いかけても追い付けないって決めつけて、差し出された期待すら蹴っていた。
ただ、アイドルになれたらそれでいいって隠して…憧れを殺していた。
でも、それじゃあ駄目だったんだ。僕は、誰かの輝きで耀きたかったんだから。
追うだけじゃ、駄目なんだ。誰よりも、先へそれでいて傍にいなければ行けなかった。いや、きっとこれすらも正解なんかじゃない─。
それでも…今は、この新しく得れた色の傍で耀いていたい。
立ち止まることなく走り抜ける二人の、その傍で…僕も歩み続けていたい。これで、止まらずに─また、新たな景色へ…。
だから、僕らはWingで羽ばたかないといけない。雲すらも、飛び越えて─。
「─今さっきの、もう一回やろう」
「は、はいっ─かさねさん…やりますよ?」
「─うん。もう一回、何回でも…」
一つの靴の擦れる音が響き続ける、決勝のその日まで…。
かさねさんは、何処までもアイドルだった。初めてあったその日から、ずっと。
才能があって、努力も欠かさなくて…私なんかじゃ追い付けない程に、走り続けていた。それなのに、かさねさんはずっと私と対等であろうとした。
私よりも、ずっと特別になれているのに。
でも、そう言えば…初めて会ったあの日に私が失言して帰る背を見た時に、それが特別だからなんかじゃなく足りないからなんだって、知った…知っていた。
それなのに、私はそれを見ない振りをした。だって、あの子はなみちゃんを越えるぐらい凄いアイドルなんだって思いたかったから─。
それからのかさねさんは想像の通り…いや想像よりも輝いていた。私なんかに、目を止める必要なんかないくらいに。
それなのに、その瞳が何度も…何度も私を見てくる度こわい気持ちが巡って私の色を褒めてくるあの言葉に、何て返せば良いのか分からなかった。
だけど、かさねさんと美琴さんと三人で本戦前最後のレッスンをしたあの日、私に隣に来てと叫ぶあの手を取ってしまった。初めて、レッスンをしたときのような私になり変わるようなパフォーマンスのそれでいて、かさねさんらしさを引き立たせた煽りに─乗っかってしまった。
必死で、立ってることすらあやふやな私なんかにその期待は、重くてとても背負えない。
それなのに、私は掴んでしまったんだ。あの、今にも消えそうなのに光り輝いている、妖精のような手を。
そして、それに返ってきたかさねさんの色と笑顔にまた、私は見惚れた。
なみちゃんの悲しさじゃないのに、同じようなかさねさんの感嘆に─。
…決勝の日も─。
「─シーズのお三方、決勝戦の意気込みについて聞かせて貰ってもよろしいでしょうか!」
インタビューアの、熱に溢れた言葉が僕らへ投げ掛けられる。それに、僕はもう恐れることなく答えられた。
「あとはもうやる、だけです」
「必ず完璧なパフォーマンスをお見せします」
「─僕らにもらった光で色を皆へ…届けます」
似ているようで、違う答え。それが、僕達の色なんだと分かったから色が一つじゃないことに違和感なんて持たなかった。
そして、僕らは光り輝くステージの上に立った。
ペンライト、歓声─熱に溢れた世界で僕はそれに答えるように耀いた。
僕らの声や踊りは、世界中に響いて魅了する。そうさせてやるって、気持ちを込めて色を放つ。
そのまま、僕らは何時もよりも綺麗で僕ららしいライブをしていた。美琴さんの、綺麗すぎるダンスもにちかの力強い声も全部、練習通り…いやそれ以上で─これなら、そう思った心の隙間に、落ちサビのフェイクが訪れた。
美琴さんの、叫びから繋がるそこで、にちかの手からマイクが飛んだ。
一瞬の出来事、それでも集中していた僕にはそのマイクが地面に落ちるまでとても長い時間が流れた。
カバー、しないと。そう思っても、身体は全然動いてくれなくて─でも…燃えるような翠の煌めきが視界に走った。
そして、声が響く。諦めたくないって叫ぶみたいに、にちからしい色で─。
その叫びは、世界に響いた。僕の心にも…だから僕はにちかに手を差し伸ばして合わせた。僕とにちかの色を混ぜて、煌めきとして。
にちかは、何処までも歓声が響く中で僕のその手を嬉しそうに…悲しそうに取った。
光り輝くステージから暗闇へと向かう僕は、にちかの今までで一番綺麗だった光が目に焼き付いて…周りが見えない程だった。
きっと、美琴さんもそうで──でも、にちかだけはそうじゃなかったみたい。
それを知ったのは、やっと焼かれた瞳が普通に戻ってきた283プロダクションの事務所だった。もう、遅いのに。
「─へ?にちかが、脱走…?あの、僕も探しに」
「…いや、俺が行ってくるからここで待っていてくれ。もう、こんな時間だからな」
「─でも…!」
手を伸ばしても、Pは僕の手を取ってくれることはなかった。それはにちかのことを、見守るって決めていたのに─僕は気が付けなかったから─?
変な、考えが頭に余儀って…僕の身体は勝手に動き出していた。幸い、僕にはにちかの色を見ることが出来るから見つけることは簡単だから─。
暗闇の中、にちかの濁っても輝く色を追って僕は疲れ果てた身体で走り出した。
住宅街、商店街…色んな道を通って─僕は馴染み深い其処へたどり着いた。
それは、にちかと初めてあった公園。そこで─にちかは耀きながら涙を流して踊っていた。
にちかが真似をしていたなみちゃんとは、違う色で─。
そんなにちかに僕は手を伸ばそうとした、だけど…遠くから近づいてくる暖かな色を見て、僕は雑木林に潜り込んだ。
─きっと、僕にはPのようにも…今来ている主人公にもなれないから…。
奈落の底から、眺めた。にちかと、はづきさんの蓋をし続けてきた心の言葉を。
二人の、綺麗でやっと真っ直ぐに繋がれた色を──。
気が付いたら…僕は、それに手を伸ばしていた。何でかは分からない─。でも、それは僕が失ってしまった一つの色のように見えて…貪欲にその色を求めてしまったんだ。
「─かさねさん、なんでそんなところにいるんですか~?」
「─えっ、かさねさん…っ!?あぁ、もう汚れてますよ、服っ!」
そんな僕に、二人は気が付いてしまった。そのせいで、二人の世界は水が入ったように膨らんでしまって…見えなくなった。
「─あ、ごめん…なさ─。邪魔、した」
「い、いや…邪魔なんかじゃ─。その、帰りましょう?もう、夜ですから─」
「─えぇ、にちかのことを心配してくれたんですから~。ありがとうございます~」
それでも、にちかとはづきさんは僕の手を取った。壊れ物を扱うように優しく、包み込むように。
その手には今さっきの色が含まれていて─光ではないそれが何なのか、僕にはまだ分からなかった。
けれど、この温もりに安心感を覚えたことだけは確かだった。
それから僕は二人に連れられながら事務所に戻って─そして、そこで謝るにちかと受けいる美琴さんの間を結ぶ新たな色が芽吹いていることに気が付いて…またそれが僕にはないことを知った。
何処かで見たことのある、でも見覚えのない色─。その先に、僕の眼前にまた新たな景色が広がると信じて─そう思って…僕は新たな壁に出会った。
それを、壊して進むも避けて進むも僕の自由で─でも先に進むために、僕はその壁を探ることにした。僕にはない、誰もにあるその色を──。