シャニマスの世界で、色の見えない彼女はアイドルの脳を焼く 作:ヒナまつり
空の色、青と赤と黄色によって彩られるそれは常にグラデーションのように時と共に生きていた。
でも、今の僕には空にある色がそれよりも多いように見える。紫や、緑…虹みたいに色んな色がある。でも、それも意識をしていない白と黒になって見えない。
そして、もう一つ…僕の目には新たな色が見えた。
それは、人と人を結ぶ色。初めて見えたのはにちかと、はづきさんで─ぐにゃぐにゃに、曲がっていた跡の残っている真っ直ぐのその色は…二人ともの色と混ざり合っている色がある。
にちかから離れるほど、はづきさんの色になって逆にはづきさんから離れるほどにちかの色になりグラデーションのようになっていて…綺麗だった。
それが、今度は違う形の色が美琴さんとにちかとの間にも出来て…でも僕にはなかった。
だから欲しいと思った…。僕にはないその色を─。
その願いを叶えるべく僕は283プロでその色が一番濃い人の前で色を眺めていた。
お互いがお互いを結ぶ色は青とピンク…黄色とピンク─そして、青と黄色…。
三角形のように結ばれたその色達は、穏やかに楽しそうに笑っていた。
綺麗、見惚れてしまう程に─お星さまみたいに…。
「─あれ?かさねちゃんだー!どうしたの?」
眩しい、眩しい黄色が…僕の目の前にやって来た。目を細めてしまいそうな、逸らしてしまいそうな─でも優しいその光に照らされながら僕は答えた。
「色、見てたの。三人の結ぶ色─綺麗だったから」
「結ぶ色─?それ、どんな感じ?」
「─皆の、色。それが途中で混ざって…星のように輝いてる。青、ピンク、黄色…色んな色」
「ほわっ─そ…そうなんだ。お星さま、みたいに─。ふふっ…」
嬉しそうに、星が笑う。それを見て、他の星も笑う─。繋がる色が、それによって混ざり合っていく…。
「─どうして、混ざるんだろう。皆の色、それぞれでも綺麗なのに…」
「─うーん、混ざりたいからかも?わたしは、真乃と灯織と…それにかさねちゃんともー!」
「─わっ、もうめぐる…」
「─ふふっ、うん私も…。一緒だね─?」
「──えっ、僕も…?」
暖かな、その光の中で伸びてきた色は─でも僕には繋がらなかった。それでも、その色がくもりガラスの僕の目から見ても何なのか少しだけ─分かった気がした。
「─みんなは、皆のこと。──好きなんだね…」
「うんっ!大好きだよ…?かさねちゃんはー?」
「僕、は─ぼくは……皆のこと、大好き」
口に出したその言葉に、僕は入っていなかった。きっと、めぐるは自分のことも入っているのに─。
「─私は、かさねちゃんのこと…大好き、だよ?」
真乃の柔らかな優しさの色が、僕を包む。きっと、僕の考えていることが─いや…滲み出た痛みが、彼女には見えていたんだろう…。
それでも、僕はその色を取ることが出来なかった─。大好きで、綺麗な色…だからこそ、触れることが─掴むことが怖い。
いつか、その色が見えなくなるかもしれない。濁って、黒くなって消えてしまうかもしれない─それを、見たことがあるから…。
眺めるだけで─いいってそう思っちゃう…。
「─ほら、二人ともそろそろ行かないと…。かさね、またね?」
「─あ、うん…。また、ね」
それなのに─ふりふり、振られる手に…手を伸ばそうとしてしまう。─欲張りに…なっちゃった。色を、見ているだけで…満足していたのに─。
「─欲しいなぁ…。僕も、あの─結ばれた色」
触れられた熱が、まだじんじんと残っているから…そんな言葉が漏れた。
あの色は─星座のように切れない綺麗な色だったから…。
揺れる葉っぱ、木々の青々しさを時間にしてキャンバスに描く。変わり行く季節を、時間を一つの絵の中で表すという課題のために─。
そんな、静寂の中での作業は自由な風に吹き飛ばされた。
「あー!かさねちゃん!色探ししに行くっすよ!」
「─えっ?」
「あ、あさひさーんっ!お散歩、行くんじゃないんですかー!?」
「果穂ちゃん!ついでに面白いものを見に行こ?かさねちゃんとなら見つけやすいから!」
「──えっ?」
困惑している間に、僕はあさひの手に連れられていつの間にか外へ駆け出されていた。
手を引くあさひの色と、申し訳なさそうに僕らを追う果穂の色に染められた木々の色は窓から眺めていただけじゃ分からなかった色があった。
葉を食べる虫達、木に止まり何かを見つめている鳥達…それはきっと動いて、探してみないと見つけれないものだった。
だから、僕もあさひに引っ張られるだけじゃなく果穂の手を取って三人で駆け出した。
「─あさひ、果穂。あれ…いい色してる。見に行こ」
「─!わぁ、ほんとです!綺麗なお花さんですね!」
「本当っす!なんか、この子だけ他と違う感じがするっす!なんでなんすかね?」
幾つもの同じ花の中で、一番花弁の小さなその花は赤い赤い、憧れを映し出していた。
「─この子は、他の花に大きさで負けてるけど…綺麗に咲き誇ってやるって思いがあるのかも」
「へぇ、だから小さいのに綺麗なんすね?じゃ、あれはどうっすか?」
あさひが指を指した花は、他に何も生えてない大木の影に覆われた小さな花だった。
僕一人じゃ、色の見えなかったその花はあさひの興味という光に染められて色を写し出した。
ターコイズカラーのその花は一人で咲き誇る自由を象徴しながら、周りで覆い繁っている木々や花達に花弁を向け─羨ましそうに眺めていた。
「わぁ、あの子も小さいですけど今さっきのお花さんとは違いますね?なんだか少し、寂しそうな感じがします…」
「─うん。この子は、きっと自由を謳歌しているけど…他の子みたいに色んな花と咲き誇りたいって思っているのかも」
「─じゃあ、他の花と同じところに植えてあげるっすか?」
「ううん、このままで居させてあげて。ほら、ここ。もう少しで芽が出る子がいるから─」
まるで、救いを垂らす糸のようにその花の周りで葉が咲かそうになる幼い子が二人いた。
きっと、この子たちが咲き誇る時にはこの花は枯れかけているだろうけど…それでも、夢を見られる時間が与えられる筈で…その時になってこの花がどんな色を写し出すのか僕は気になった。
でも、果穂は違った。明るく元気に…頑張れっている芽に応援を叫んでいた。
「それじゃあ、早く咲けるように応援しましょう!そうしたら、このお花さんももう悲しくなくなりますもんねっ!」
その明るさはこのターコイズカラーの花に隠されていた色を写し出した。
それは、今一人という自由への不安と恐怖に覆われながらも隠せない好奇心。
あそこで、群衆の中で咲けたらどうなるんだろう。大木のように大きくなれたら、どんな感じなんだろう。そんな、好奇心。僕が、羨ましいから他を眺めているんじゃないかと決めつけていた花弁は、好奇心から向けているものかもしれない。
それは、少しだけあさひに似ているところがあるのかもしれない。だからこそ、あさひの光によって僕の目に色が写ったのかも。そして、その隠れた色を僕が果穂の光によって見えたのは、僕とは違う見方を果穂がしたからで─。
一人じゃ、きっと見つけれなかった。あさひと二人だけだと悲しいだけのものと決めつけていた…。色も、色んな人によって見え方が変わるという基本的な事を僕は忘れていたんだ。
だから、僕は二人の手を取った。僕とは違う色と輝きを持つ同じアイドルの二人の手を。
「─かさねちゃん、どうしたっすか?」
「─二人と居れて…良かったって、そう思ったから。手、繋いじゃった…」
「─!はい、私もかさねさんとあさひさんとお散歩できて楽しかったですっ!また、三人でお散歩に行きましょう!」
「そうっすね!でも、今日でもまだ色探しやりにいけるっすよ!」
夕焼けの中でまた、自由な風に連れ去れそうな時あさひの携帯から着信音が響いた。
「─わっ、冬優子ちゃんからっす。どうしたっすか?」
『どうしたじゃないわよ!今日レッスンがあるって言ったわよね!?』
「あ、そうだったっすね。じゃあ、今から向かうっす!─果穂ちゃん、かさねちゃん…またねー!」
プツリと電話を切ってあさひは、誰よりも早く駆け抜けて行った。手を伸ばしても繋がれない流れ星のように─。
でも、そんな早いあさひの背中に結ばれた色があった。そして、それは僕の手に繋がっていた。
勝手に─。僕の事なんか気にせず、いや気にはしているんだろうけど…相変わらず、自由だ。
だけど、だからこそ僕も自分の心の通り動いてにその色を掴んだ。今まできっと見えていなかっただけの、色を。
果穂とあさひ…いや、色んな人との繋がりから見えたこの色を。優しく、優しく─抱き締めた。
「─かさねさん、なにか良いことあったんですか?」
「─分かる?」
「はいっ!すっごく、幸せそうに笑ってますからっ!」
「─そっか。ふふっ、果穂も幸せそう。よし、僕達も事務所に帰ろう?手、繋ぐ?」
「わー!はいっ、繋ぎたいです!」
嬉しそうに、笑う果穂と結んだ手にまた別の色が見えて─それもまた、僕は離さないように握った。
いつまでも、いつまでも─消えないように。暖かな太陽の元で…変わり行く色と世界に、好奇心を乗せて走り出した─。
「シーズ、緋田美琴です。」
「な、七草にちかです!」
「えと、かさね…樒かさねです」
「なみちゃんの『そうだよ』完コピします!!」
スクロールした画面の中で、大好きなママの音楽が流される。でも、聞こえる声は違って─。
「なん、で…かさね、が─?なんでだよ…なんで─美琴と、ソイツと一緒に……っ!─まれ、黙れよ……っ!テメェが─っ」
割れて、散ったガラスから…まだ音は流れ続けた。耳を塞いでも、目を閉じても─ずっと、ずぅっと──。
遅くなり申し訳ございません。はるきのガチャで大爆死して気絶していました。まだ傷は治っていませんがゆっくりと書いていくので次の続きは少しだけお待ちを。