シャニマスの世界で、色の見えない彼女はアイドルの脳を焼く 作:ヒナまつり
Wingが終わり、アイドルとしての活動に拍車がかかり忙しくなってきた頃、あるお仕事が僕の元に届いた。
それは、アイドルについて語るバラエティトーク番組のお仕事で…番組内でシーズについて語ってほしいというもの。
けれど、不安があった…そもそも基本的に僕に来るお仕事はモデルやダンス等のパフォーマンス的なものが多くて、お話をするのはインタビューとかでちょろっとしたことがある程度だったから。
「にちか、このお仕事…一緒にしない?」
だから恐る恐る、僕は最近会えていなかったにちかにそう聞いてみた。
にちかならバラエティ番組に良く出ているし、アイドルについて語るのも得意だし適任だと思ったから。
「えっ、わ…私です?ほ─他の人とかは…?」
けれど、にちかは少し不安そうにそう聞き返してきた。自分の色を少しだけ黒く滲ませながら─。
「うん。にちかに、お願いしたいの。にちか、お話得意だし─僕、にちかと一緒なら…心強いから」
「─そう、ですか。あの、でもでもプロデューサーにも相談しないとです。確か、その日はスケジュール空いていた筈ですけど、万が一がありますから」
「─っ!うん、分かった…。にちか、ありがと。じゃ、Pに聞いてくるね─」
にちかとの交渉の結果をPに早く伝えるために、僕は部屋を飛び出して階段を駆け上がった。
「うわっ、どうしたんだ?かさね、そんなに嬉しそうな顔して─」
「─?P、にちかがあの仕事一緒に出てくれるって。だからスケジュール大丈夫か、聞きにきたの」
「あぁ、だから…。そうだな、うん…大丈夫だぞ」
「─ほんと?そっか、良かった…。その、美琴さんは?」
嬉しくて、舞い上がった心で僕は欲張ってそう聞いてみた。シーズとして仕事が出来るのなら、そっちの方が嬉しいと思ったから。
「うーん、聞いてはみるよ。今日もレッスンしてるみたいだからな?だけど─」
けれど、帰ってきた言葉と見える色で…きっと無理なんだろうと分かった。だから、少し悲しいけれどPには気付かれないように隠しながら、僕は期待せずにお家に帰った。
─それにそもそも、美琴さんはバラエティー番組とか…あんまり出ないから。予定空いてて誘えても、やってくれないかもしれないし。
そうやって、寝る前に少しだけいじけるように考えに耽っていると携帯が光った。
一体なんだろうと、画面を覗き込んでみたらCHAINのシーズグループで美琴さんがメッセージを送っていたみたいで簡潔な言葉がそこには乗っていた。
『バラエティー番組のこと、いいよ』
『え、え…美琴さんも出るんですか?あの、あのプロデューサーさん?』
『ほんと?やった、にちかと美琴さんと一緒なら安心。ありがとう、P』
『あぁ、三人とも頑張れ』
『あのー、プロデューサーさん?後で、お話とパンチです』
『なんでだ!?』
「ふふっ、やった。皆で、出れるんだ…久しぶりだ、ね」
そう呟いて夢のような幸せのまま、僕は眠気に引き込まれて瞳を閉じた。
けれど、そんな幸せは収録本番には緊張によって掻き消された。だって、生放送だなんて聞いてなかったから。
「─うぅ、緊張してきた…」
「えっと、お水でも貰ってきます?」
「うん、私貰ってくるね」
「いやいや、私が行きますから!美琴さんはかさねさんのこと見ててくださいー!」
「─大丈夫?でも、何だか意外。かさねちゃん、緊張するんだね」
心配そうに覗き込む美琴さんは、少し不思議そうにそう僕に問いかけて来た。…でも、確かに生放送ってライブと変わらない筈なのに─なんでこんなに緊張するんだろう…?
「僕もです。ライブとか、平気なのに…美琴さんはなんで平気なんですか?」
「─最高の姿を見せる。それは、変わらないから」
その言葉通りに燃えるような、美琴さんの色はその勢いを失っていなかった。けれど、擦りきれてしまいそうなピンと張っているようではなくて少しだけ余裕を持っていた。
それが、何でかなんて分からない。けれど─その変化は少しだけ僕の心を落ち着かせてくれた。だから─僕の心臓の音も少しだけ小さくなってくれたんだ。
「そう、ですね。うん、僕も─そう思います。ふふっ、変に難しく考えてたのかも。ありがとうございます、美琴さん」
「─?そう、落ち着いたなら良かった」
「はい。その、ありがとうございます」
「─うん」
その返事のあと少しだけ、静寂が部屋に流れた。でも、心地悪さは無くて、暖かな美琴さんの色に包まれているようにも感じられた。
それと共にその色の中には、鋭すぎて今まで見えなかった美琴さんのアイドルに対する心向きが覗けてその熱意に、僕は燃やされているみたいだった。
─そういえば、僕まだ美琴さんがなんでアイドルをしているのか、知らない…。まだ、この色に触れたこと…ない。交じったことはあるけど─。そっか、だから…結ばれないんだ。
そう結論つけて、手を伸ばした。燃え尽きてもそれでも─触れあいたいと…そう思ったから。
「─美琴さん、美琴さんは…アイドルになんで、なったの?」
「パフォーマンスでみんなに感動を与えたかったから」
淡々と、返ってきた答えと目をつぶっていたい赤の眩しさに僕は、返す言葉を探すことなく言葉を発した。
「─そっか。だから、美琴さんは綺麗…なんだね。ねぇ、美琴さん。僕も、そこに─居てもいい?」
少し、震えた声で僕は聞いた。だって、僕は僕のためにアイドルをしているから─美琴さんみたいに、なれてなかったから。
「─?もう、いるよ。かさねちゃんもにちかちゃんも」
そうやって無垢な瞳で、僕を見ながら…美琴さんはそう答えた。
その時にやっと、僕の色が伸びて美琴さんの色と結ばれて─また新たな色を美琴さんの中に見つけて眺めた。
その時、ガチャと勢いよくドアが空いてにちかが帰ってきた。
「お水貰ってきましたー!あれ、かさねさんもう平気そうです?あ、えーっとお水要ります?ってもう要りませんよねー」
「ううん。いる。にちか、ありがと。喉、渇いてたから…ね?」
答えながら、僕はまた少し濁ったにちかの色を覗いた。けれど、そこには僕の色はまだ繋がって無くて─美琴さんの色だけがあった。
それが、何でなのか…僕は今日とあの日で知ったから僕は離れそうになったにちかの近くに座った。
「うん。私も、貰うね。ありがとう、にちかちゃん」
「あ、なら良かったですー!その、今日は私頑張りますね?」
「うん、僕も。いつも通り…最高を」
「うん、そうだね」
久しぶりに見た、シーズとしての僕らの色がこの小さな部屋を埋め尽くして─僕らは何時ものように暗い奈落のような袖から足を踏み出した。
「さぁ、今日も始まりました!そこのアイドル、ちょっといい?の時間です!今回の特別ゲストはー!?」
「うわ、うわー…名前ダサくないですー?あ、シーズのにちかですー」
「ちょっ、初っ端から飛ばすなぁ?これでも長いんだからー!おっとコホンッ、そして?」
にちかの弄りに司会の芸人さんはわざとらしく眉間に皺を寄せながらツッコミをする。それは、やっぱりにちかのバラエティ慣れから来るもので…思わず僕は笑いながら自己紹介をした。
「ふふっ…ちょっとなら、いいですよ?シーズの、かさねです。そしてー?」
「えっと、シーズの美琴です。よろしくね」
「な、なんと!シーズの三人ですっ!いやー、基本ゲスト一人だから新鮮だねー!」
「えー、基本ゲスト一人ってマジです?それじゃ、今回は番組乗っ取れちゃいますー?」
「いやいや、勘弁してよー!ほら、今日はシーズの紹介して上げるからさ!」
「あは、でも元々僕らの紹介してーって声かけて来たのそっちですよ?」
パチパチ、スタッフの方たちの方から笑い声と拍手の音が鳴り響いて…それが少しだけライブと同じ雰囲気を感じさせてくれる。だから、にちかのフリと司会のツッコミに合わせて僕も、ボケてみた。
「ちょっ、ちょっ!メタいって!というか、かさねちゃんは癒し枠だと思ってたんだけど!?」
すると、ぎょっとした顔で司会の芸人さんはそんなことを叫んだ。
─癒し枠?僕ってそんな風に見られてるの…?
でも、そんな疑問は続いたにちかのツッコミで流れていった。
「えー?それって美琴さんと私が癒し枠じゃないって言ってますー?失礼なんですけどー?」
「いやいや、そういうわけじゃないから!というか、ほらオープニングからこんなに喋ってるせいでスタッフから早く次に行ってって催促されてるから!巻くよ!」
「うわ、話反らしたー!で、なに話すんですー?」
「それはもう、惜しくもwing優勝を逃したシーズの魅力とはだよ!」
「それ、煽りです?まぁ、事実ですけどー!」
「いやいや、煽りじゃないよ!ほんと、俺は優勝シーズだって思ってたし!」
「わぁ、そうなんですか?ちなみに僕たちのどんなところで優勝だって思ったんですか?」
「そりゃ─って!逆逆っ!俺から質問するからそっちが魅力を答えて!?コンセプト壊れちゃうよ!」
「えー?じゃあ早く質問してくださいー!ねぇ、美琴さん!」
「うん、そうだね」
「うわー、味方いねぇ!よし、じゃあまずこれこそシーズの魅力だってものはなに?」
「そりゃ、美琴さんの天使の彫刻みたいなダンスとかさねさんの人を惹き付けるカリスマですねー!」
「うーん、にちかの力強い歌と美琴さんの完璧なダンス…だと思います」
「完璧なパフォーマンス、かな」
「うわ、なんか全員ビミョーに違うしー!じゃあ、まずはにちかさんから詳しく聞きましょう!」
「はいはいー!先ずですね?美琴さんの十年以上磨いたダンスの域を越えた技術ですねー!もうほんと────」
そう話し始めたにちかの語りは止まることを知らなくて、早口で息をつく間もなく続いていった。
「ちょっ!ストップストップ!にちかちゃん、あんた番組の時間全部使う気かー!?」
「ふふっ、にちか…楽しそう」
久々に、見れたにちかの笑顔に僕も釣られて笑ってしまう。だって、にちかの色が曇らずに輝いているから─。
「うん、そうだね」
「そこ和んでないで早くにちかちゃんのこと止めてっ!?はぁもう!ほら次行くよ次!」
「えー?」
にちかの不満そうな声と共に、番組はまた続いていった。その手応えは上出来だと自負出来るぐらいだった。
けれど、帰りの支度をしてお手洗いから戻る途中に聞こえてきたにちかとPの話に僕は耳を疑った。
「プロデューサーさん、本当に今回の仕事良かったって思っているんですか?…まぁそうですよね!私はアイドルなんかじゃなく芸人みたいなものですもんねー!バラエティにしか誘われないですから!」
「─にちか…でも、最近は歌やダンスの仕事も─」
「それは、かさねさんのお陰じゃないですかっ!かさねさんが、凄いから─だから…」
途切れ途切れ、でもずっとにちかの苦しそうな声が聞こえる。濁りが、部屋から溢れる。
その、原因が─きっと僕なんだって聞こえてきた言葉が伝えてくる。
耳を塞いでも、囁くように僕を攻める声が鳴り響く。
痛くて、苦しくて─それでも、僕はその扉を開いた。ゆっくりと着実に…。
見ないフリも、聞こえないフリも─眺めるだけももうしたくなんてなかったから。触れなきゃ、きっといつか消えていってしまうものだと─僕は知ったから。
「─にちか」
「─え、かさね…さん──」
サッと、青ざめるにちかの顔が見えた。苦しくて、泣き出しそうなにちかの顔が、見えた。
「─P。二人で、話したい。─だから、美琴さんと車で待ってて?」
「─あぁ、分かった。ごめんな、かさね」
去り際、Pは小さな声で謝った。何でかは分からない、けれどその一言で僕は少しだけ落ち着けた。
だから、また美琴さんにしたみたいににちかの色をちゃんと見れた。
濁った中で、まだ輝いている僕の大好きなその色を。
「─その、かさねさん…どこから、聞いてましたか?」
「本当に、この仕事良かったって思ってますかってとこから」
「─あははっ、そうですかー。終わったなー」
誤魔化すように、にちかは笑って─僕はそんなにちかに触れるために距離を詰めた。
「─終わってなんか、ないよ。ねぇ、にちか?僕はね、にちかと美琴さんと…この仕事出来て良かった。色んな、勉強にもなった。にちかの、お陰で」
「─私のお陰?違いますよ、全然…今日だってかさねさんは上手くやってたじゃないですかっ!私なんか居なくても、全然っ!」
自分の首を絞めるように、にちかはそう叫ぶ。その色はやっぱり濁りきって覗けなくて─。
でも、にちかのその間違いだけは正そうと僕も声を出した。
「─にちかが居たから、僕はどんなことを言えばいいのか…分かったの。にちかが居てくれたから、僕は安心できたの。ライブの時、美琴さんが居てくれるから安心して踊れるみたいに。」
「僕はにちかが居たから、今日頑張れた。それにね、ライブの時も─にちかの声に…励まされてる」
息が続かなくて、呼吸を挟んで僕はそう答えた。にちかの見えない色を探すことはせず、今ある思いをただ伝えた。
それが、にちかの隠していた色を引き出すことになったのは…偶然だった。
けれど、必然だったのかもしれない。
「──っ!かさねさんは、自分勝手ですよねー!何時だって、自分のしたいことばっかりしてっ!その癖、なんでも出来て!いいですよね!私が、どんな想いをしてるかなんてちっとも気になんかしないで!」
にちかの言葉が、叫びが…僕を刺してくる。でも、だからこそ僕はそのにちかの抱えていた色に気付けた。
不安、嫉妬─どろどろとしたその色は止めどなく僕だけに向けられていた。
「─うん。僕は、自分勝手。でも、なんでも出来るわけじゃない…。誰かの、力を借りないと立てない。歌も、ダンスも。誰かのお陰で、出来るようになった」
「そこに、にちかもいるの。美琴さんも。だって、僕達は、三人でシーズだから。だから、ね。教えてほしい。どんなこと考えているのか、ぜんぶ。僕は、分からないから─」
声が震えて、視界が薄れて─でも僕は、想いをこぼし続ける。だって、にちかと一緒に居たいから。まだ、まだ三人で一緒に居たいから─そう、思わされたから。
あの日、初めてにちかと会ったその日から…あの、Wingのにちかの叫びでその想いはもっと強くなったから。
だから─
「僕は、にちかが居ないと─ダメなの。だから、ね…?」
手を伸ばした。にちかの、意思でこの手を取ってほしいから。
渋々なんかじゃなく、衝動的なんかじゃなく…にちかの意思で。
「─なんで、なんでそんな私のこと…」
「あの日、初めてあった日。言ったよ、僕はにちかの笑顔が大好き。にちかの優しくて、綺麗な色が─大好き。だから、だよ」
「─っ、私は大嫌いですー!かさねさんのそういうところ!でも、私だって…あの日言いましたから、かさねさんの笑顔が好きって。だから見逃して上げますー」
キラキラ光る雫を貯めながら、僕の大好きな笑顔を浮かべてにちかは僕の手を取って…それに伴うようににちかの色が伸びて僕の色と結ばれた。
「それにその、私だって─かさねさんの傍に居れるのは嬉しいって言うか…って、私なに口走ってるですかねー」
それに、感動していたからにちかが小さく呟いていた言葉を聞き逃してしまって─僕はもう一回言ってと聞いて…。
「言いませーんっ!絶対ですー!ほんと、かさねさんってそういうところありますよねー!プロデューサーさんと同じタイプですー」
そんな、褒め言葉か分からない答えだけが返ってきた。
それでも、そこに浮かぶ色は濁った色なんかじゃなく…僕の大好きなにちからしい色で─今は、それだけでいいやってそう思えた。
コメティックの新コミュ良すぎたので復活しました。ついでに多分過去最長の文です。
これからちょっと軌跡を辿るのではなくオリジナル軸でストーリーを進めてみようと思いますので、皆様がここでしかない色を楽しめれるように、より励みたいと考えております。
なので、お気に入り等じゃんじゃんお願いします。感想も、貰えると嬉しいです。
では、また少し先で。