シャニマスの世界で、色の見えない彼女はアイドルの脳を焼く   作:ヒナまつり

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偽物と平凡と…

 

 にちかに連れ込まれたアパートの中で、光り輝く映像から色を掬って僕はその色に染まり真似をする。

 

 「─こう、して…グッ─。どう?」

 

 「─凄いっ!凄いですー!かさねさん、そこ私が一番好きなとこなんです!ほんと、なみちゃんそっくり─っ!ね、ね!どうやるんですか!?というか、私にもそれ出来ますー?!」

 

 そんな僕を見てにちかは心底楽しそうに笑って、自分にも出来るかやれるならどうすればいいのか─それを聞いてくる。

 

 こんなの、ただの真似事でしかなくて…にちかの色を濁らせてしまうだけかもしれないのに─。

 

 でも、にちかはそうしたいから─ぐっと堪えて僕はそれを教えてみた。

 

 彼女と、僕の…なみさんの色を感覚で一番鮮やかな色にして自分の中に重ねて溶かす。

 

 そして、そのままにちかのお手本になるように目の前で踊ってみた。

 

 「─わん、つー…グッ。こんな、感じ?やってみて」

 

 「─凄い、どうやったんです?あ、えと…こ、こうですか?」

 

 そう言いながら、僕の真似をして踊るにちかの色はやっぱりくすんで…なみさんの色を、いや色に頼りすぎている。自分自身に自信がないって直ぐに分かっちゃうぐらいに。

 

 「─違う。それじゃ、なみさんを真似しすぎ。…にちかには色があるから─」

 

 「─色、色ってなんです…?あぁ…む、難しいなぁ。かさねさんは、出来てるのに…。えっと、こう?いや…違うなぁ」

 

 そう言いながら笑うにちかの色はすりガラスの向こう側みたいに見えなくなった。

 

 綺麗で、直ぐに好きになれるぐらい素敵な笑顔が。僕の、せいで─。

 

 流れる涙に、視界が歪んでもにちかの色が何処にもなくて…何て言えば良いのかも分からないけれど言葉が漏れた。

 

 「─にちか。僕は、にちかが好き。なみさんじゃない、にちかが。だから、だからね…そんな─」

 

 「わ、私は─っ。ちょっ…な、泣かないでくださいよ。私が悪者みたいじゃないですか…。というかその、そんな風に…かさねさんを傷つけるつもりじゃ。あの、その…」

 

 おどおどと、僕の涙にどうすればいいのか分からないと立っているにちかは、やっぱり綺麗で…だから、僕は…僕の秘密を口走った。

 

 ─嫌われるかもしれないのに…。

 

 「─にちかは、にちか。色は変わらない。僕みたいに──空っぽじゃなかったら…変われない」

 

 「─空っぽ…?かさねさんが?─何、言ってるんですか…?私なんかより、ずっとアイドルに…なみちゃんに近いくせにっ!─っあ、違…違います、こんなこと言うつもりじゃ─」

 

 怒りが見えた、にちかの穏やかで無邪気な色に。直ぐに消えたけれど、それが事実で僕の心を突き刺した。

 

 ─やっぱり、嫌われた。

 

 「─あはっ、大丈夫。もう、帰るから─。じゃあ、ね」

 

 なんて、言ったんだろう。僕は、何を溢したんだろう。色も、何もかも空っぽで染まることしか出来ない僕が、色のある彼女に。

 

 それすらも分からない程に、心から感情が溢れた。足が勝手に動いた。

 

 ─あぁ、寒い。寒いよ─ルカ。何処にいるの?どうして、消えてしまったの─?

 

 …やっぱり、僕のことにちかみたいに──嫌いになったの?

 

 白黒の世界に、僕は溶けていく。天才でも、平凡でもない…偽物にしかなれない空っぽだから。

 

 でも、そんな僕の光の変化でしか物を見れない世界で、視界の隅に白黒でも耀いているものが見えた。

 

 それは、小さな小さな…アイドルのライブ。ルカやあさひは絶対しないような、洞穴の中でのライブ。

 

 それなのに、それを…アイドルを見ている少ない人たちから向けられる光で、その人は耀いていた。色はなくとも、確かに…応援する人たちの何者かであった。

 

 今の僕のような、全てに嫌われるものじゃなく。愛されて、応援されて─手を伸ばされてる。翼なんてなくても飛び立っている。

 

 あぁ、なんて…綺麗なんだろう。そう、なれるのかな…僕も、空っぽな僕でも…。

 

 そう思って、取り出したのは失礼で…でも色を生かすプロデューサーの名刺だった。

 

 「─283プロダクション。場所は、あれ…ここ?」

 

 宛もなく歩いていたのに、僕は…運命のように事務所の前に居た。だから、そのまま中に入ってみた。何となく、そうした方がいいかと思って。

 

 ─でも、そんな感は外れだったかもしれない─!

 

 「…迷子?どうして事務所に入ってきたの」

 

 入って一番に目に入ったのは繊細な赤の色と背の大きな女性で…目があった。

 

 ─こわ、怖いっ!なんか、人殺してそうな目してる…!あさひといい、特別な人は全員何処か変なの─!?

 

 「─あぅ、あの…これ、これ─プロデューサーに、貰ったの…」

 

 「─?名刺…。もしかして、アイドルに誘われた?」

 

 僕の手にある名刺を見てから、繊細な赤の色が濁った。不機嫌?怒ってる?僕の…せい?なんでぇ…。

 

 「─ひゃ、ひゃい。その、やってみないか…って。あの、その─」

 

 「…そう。プロデューサー、呼んでくるから待ってて」

 

 「─あ、はい。あの、ありがとうございます─」

 

 そう言って、見送ろうと目を上げたら優しい笑顔が見えた。繊細な赤も、優しく僕を照らしてくれて…でも直ぐに消えて何処か怒っているみたいな赤で階段を登っていった。

 

 ─優しい、人なの?いや、でも一番始め…すっごく怖かった。油断しない、僕は…大人だから…世辞も分かる!

 

 そう思いながら息を整えて、待って少しだけ後にプロデューサーが降りてきた。

 

 相変わらず、世界の色をそのまま生かして。

 

 「─っ、プロデューサー…改めて失礼ズ1号さん。──僕を、アイドルにしてください。…出来ないとは、言わせません。貴方から、誘ったんですから…ね?」

 

 今まで出会ってきた色を重ねて、僕は笑ってそう指を指しながら言った。言ってしまった。

 

 ─アイドルについて分かっていることなんてほんの少しなのに…。

 

 「──あぁ、当たり前だ。俺は君をアイドルにする。誘った手前、その約束を破る訳にはいかないからな」

 

 「─へぇ、ミスター不純物。こんな、子供でもアイドルにするんですね」

 

 じとっと、赤が黒く濁ってプロデューサーを眺めた。─というか、また小学生…っ!僕そんなに、勘違いされやすい─?

 

 「…えっ?不純物─?あの、プロデューサーさん…って不純物なの?…やっぱり、止めとこうかな」

 

 「─いや、ちがっ!円香…なんでここに」 

 

 「小学生をアイドルにしようとしているのが、本当のことなのか確認しにきたんです。─まぁ、この子が嘘をつくようには見えなかったですけど」

 

 ─褒められてるのか貶されているのかどっち!?まぁ、嘘はつきたくないってのは当たってるけど─。

 

 「─あのー!僕、こう見えても…もう少しで高校生!おねーさん、程ではないですけど─大人です!」

 

 「─あぁ、かさねの言う通り。円香、彼女は高校生だ。だから、俺は不純物なんかじゃないっ!」

 

 「─気にするのそっち?はぁ、ごめん。かさね、小学生何て言って。それじゃ」

 

 「─え?は、はい。いってらっしゃい!─で良いんですか?プロデューサーさん」

 

 「ああ、多分大丈夫だ。それで、かさね…なんで急にアイドルになるって決めてくれたんだ?…今さっきまで、逃げていたが」

 

 プロデューサーは、そう言いながら不思議そうに僕を見る。そのせいで、窓ガラスに反射した僕の姿に色が生まれた。

 

 全ての色がすり抜ける、無色透明の…空のような僕の姿が。

 

 ─あはは、やっぱり…僕は空っぽなんだ。

 

 「─空っぽでも、耀けるって…見たんです。そこら辺の、アイドルの小さなライブで。それに、会いたい人が…居ます。その為に、アイドルに…誰かの何者かになりたい。…これはダメ─?」

 

 「─いや、いい理由だな。分かった、かさね。これから、よろしく。何時の日か、君が何者かになれるのを君の側で支えさせてもらう」

 

 「──うん。頼りにする…だから───嫌いにならないで」

 

 小さく、小さく…僕の言葉が世界を揺らした。その言葉がこの人に届いたかは分からない。でも、それでもこの言葉だけは口に出したかった。

 

 無垢でも、金でも自由でも…なんでもない広がるだけの染まるだけの空を、僕を─きっとこの人は一番側で見るだろうから。

 

 「─それで、これから…どうすればいいの?」

 

 「─あぁ、先ずは手続きと写真を撮ろう。それに、自己PRとかも書かないとな?やることは沢山だぞ~?」

 

 僕の緊張を見透かしたかのように、おどけたようにプロデューサーは答える。その、優しさが僕に見えない筈の世界の色を写し出しているんだろう。

 

 ─あ、というか…携帯─!

 

 「─そっか。あ、ねぇプロデューサーさん。携帯あの時壊れたままなんだけど─連絡どうする?」

 

 「─えっ!?あぁ、そうかぁ…よし!先ずは新しい携帯を買おう!流石に連絡手段はないと困るからなぁ」

 

 「─お金…ない。僕、お年玉…もう使っちゃったよ」

 

 ─キャンバス、絵の具や筆とか高くて…貯めてた分使いきっちゃったんだよね…特に絵の具は凝ると高いから─。

 

 「─あぁ、まぁうん。安いものなら経費で落とすよ。壊してしまったのは俺のせいみたいな所あるからな」

 

 「─やった!…あ、ねぇプロデューサーさん?データ?ってどうやって戻すの?買い換えたら消えちゃうんだよね…」

 

 ─そうしたら、ルカの写真もメッセージも消えちゃう。それは、それだけは嫌だ…。あの時の、ルカの色を忘れたくない。

 

 「─じゃあ、それも一緒に頼んでみよう。よし、アイドルとしての初めての仕事は携帯の購入ということで!」

 

 「─わぁ、初仕事は難しそう…!店員さん、変なこといっぱい言うから─」

 

 メモリー?とかストレージ?とか日本語じゃないことしか言わないんだよね。もう少し、分からない人に優しくして欲しい…!僕の首がただ頷くだけの機械になっちゃうから…。

 

 「─そうか、誰かについていって貰うべきか?子供だと思われて変なの買わされる可能性も…」

 

 「やはー♡プロデューサーが小学生を誑かしてる~!ひなな、見ちゃいけないの見ちゃった~?」

 

 うわ…急に色の濃い人が来た…。ふわふわして、でもどしってしてる…どうしよう─?プロデューサーなら、何とかしてくれる─?

 

 「─雛菜、丁度いいところに来てくれた!なぁ、この子の携帯の買い換えに付き合ってくれないか?確か、今日はもうレッスンも終わりだよな?」

 

 「え~?なんでーー?雛菜が付き合わないといけないの~?プロデューサーが行けば~?」

 

 ─色、少し濁ってる。それに、僕のこと…全然見てないもん。こんなに近くで話してるのに…そんなの僕なんかには興味ないって言ってるようなもんだよ…。

 

 「─そ、そうです!雛菜さんの、言う通りです!あ、でも雛菜さん!僕は、もう少しで高校生ですっ!─ほら、プロデューサーさん?いこ!」

 

 「─あはー?かさねさん?それ、ユアクマちゃんの服だ~~それも、もう売ってないやつ~」

 

 「─え…あの、その子供の頃買って、背延びなかったので。それに、これ着てると大人って感じするから─」

 

 「─まぁ、うん。感じ方は人それぞれだからな…」

 

 ─えっ?も、もしかしてこれ大人っぽくないの?おかしい、ユアクマは他と違って大人って感じするのに─!

 

 「雛菜、携帯買うの着いて行ってもいいよ~?それ、見せてくれたお礼~」

 

 「よし、じゃあ頼む。雛菜、かさねが子供用の携帯買わされないように守ってくれ!」

 

 そう言いながら、プロデューサーはそそくさと事務所に戻っていってしまった。くそぅ、ユアクマの大人って感じも分からない失礼ズ1号め…!逃げたな─!

 

 「なっ!そんなこと、ない…とは言いきれないっ!─うぅ、世界がもっと、低身長に優しくあればいいのに…」

 

 「それじゃ、雛菜がしあわせ~♡じゃなくなるからだめ~!あ、ストラップもユアクマちゃんだ~♡」

 

 「─っはい!これも、です。かっこいいですよ─このユアクマ…!あの、雛菜さん?…これ、僕が描いたんです。どうですか─?」

 

 ─初めて、ユアクマ好きの同士に会った…!羽那にも、あんまり好かれなかったのに…っ!この縁は大切にしないと─!

 

 それにユアクマを見せた瞬間、色がもっとほわってなったから…ユアクマがより輝いて見える…!

 

 「あは~♡かわいい~!雛菜のユアクマちゃんも見せてあげる~~~」

 

 雛菜さんは、携帯のカバーのユアクマとストラップのユアクマを見せ、僕も色んなユアクマを見せながら夕日を背に携帯ショップへ歩を進めた。

 

 ついでに、雛菜さんは僕の描いたユアクマの絵の写真を僕が抱えているところを撮って誰かにメッセージを送っていたから、絵をあげたらあは~♡しあわせ~♡とか言って更に色を膨らませていた…。

 

 これが、アイドル─。僕も、こうなれるのかな…そんな思いを抱えながら雛菜さんのアドバイス通りに携帯を買い換えた。

 

 でも、どうやら写真以外のデータを移すのは難しいらしい。だから、写真だけ残して貰って真っ白な携帯を貰った。

 

 それは、前のよりも何処か光り輝いているようで…最後に雛菜さんが絵のお返しとしてくれたカバーでユアクマもついたから何だか特別感が高まった…。

 

 「─ふふっ、こんなにしあわせだと…怖くなっちゃいます。忘れるのも、離れちゃうのも─壊れちゃうのも…」

 

 ポツリと溢した僕の声を雛菜さんはしっかり聞き取ってくれて、僕の身体を抱えてからこう口にした。

 

 「じゃあ、忘れないように~写真撮ろ~~♡ほら、笑って~?」

 

 その、雛菜さんの色は初めてあった時よりもポカポカでその熱に当てられて、僕の顔もふわりとユアクマみたいに笑顔になった。

 

 「─ふふっ、僕…ユアクマぐらい雛菜さんのこと、好きです。少し、似てますし…かっこよくて、かわいいところとか」

 

 「やはー?雛菜かっこいい?初めて言われた~」

 

 「─えぇ!?おねーさんって感じして…かっこいいのに─」

 

 ─あれ?女性にかっこいいはもしかしてよくない?でも、色は穏やかだから大丈夫…かな?

 

 不安になって見上げても雛菜さんは笑顔で、それにつられて僕もまた笑顔になって…また寒さが隠れた。

 

 これを、しあわせって言うのかな。この、色も…忘れないように重ねないと。

 

 ─アイドルとしての、初めての仕事は雛菜さんのお陰で直ぐに終わって、雛菜さんと別れて家へ帰ってそれを日記とキャンバスに描いた。

 

 パステルカラーで、揺れる桜のような幸せな日を。その頃にはもう、にちかとの…あの喧嘩のようなものについて忘れられていたのに─。

 

 次の日の朝、僕が事務所に着いた時…プロデューサーから聞いた言葉に僕は、頭が真っ白になった。

 

 「─よし、三人集まったな…!じゃあ、こほん。─この三人でユニットを組んで貰うことにした。美琴、にちか…そしてかさね─って2人共どうした?」

 

 「─あ、あいどるって…一人でやるものじゃないの─?!」

 

 「─み、美琴さん…それに、かさねさん──!?」

 

 「─?ここ、アイドル事務所であってる?」

 

 ─アイドル、ユニット、あとで雛菜さんに教えて貰おう…。

 

 ひっくり返ってるにちかを眺めながら、そんなことを思って目を閉じた…。





この物語のストーリー的には事務的光空記録を参考にしつつシャニマスのコミュも参考にしています。その為、少しだけ改編があるかもしれません。

*裏話
かさねは、ファッションセンスゼロの上…服の色も見えてないので親が買ってきてくれた服を疑っていません。例え、全てが女児用の物だとしても…!
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