第十二話 椎茸栽培始動
永禄四年(一五六一年)晩秋
織田勢との小競り合いも終わり、黒川領には再び穏やかな日々が戻っていた。
戦支度のため中断していた椎茸栽培も、ようやく再開される。
朝。
新九郎は山口源蔵、柴田甚八を伴い、以前選定した栽培地へやって来ていた。
晩秋の山はすでに葉を落とし、冷たい風が吹き抜けていた。
源蔵が周囲を見回し、小さく頷いた。
「若様、この辺りは変わりなく湿り気もあり、風通しも良うございます」
新九郎も辺りへ視線を向ける。
「では始めます」
「承知いたしました」
◇
一行は椚や楢を探しながら山を歩く。
新九郎は一本の椚へ手を添えた。
(鑑定)
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名称:椚
状態:良好
用途:椎茸栽培・薪・木炭
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さらに数本を調べる。
虫食いのある木。
幹に傷のある木。
状態の悪いものは避け、健全な木だけを選び出していく。
「この木を伐ってください」
「はっ」
源蔵と甚八は斧を振るい始めた。
乾いた音が山へ響き、やがて一本目の椚がゆっくりと倒れる。
枝を払い、扱いやすい長さへ切り揃えていく。
源蔵は作業の手を止め、新九郎へ尋ねた。
「若様、本当にこれで椎茸が育つのでしょうか」
新九郎は頷いた。
「だからこそ、まずは少数で試します」
「結果を確かめてから広げればよいのです」
源蔵は感心したように笑う。
「慎重に進めるのですな」
「はい」
「失敗してもやり直せる規模で始めます」
◇
切り揃えられた原木を見つめ、新九郎は静かに思考支援を発動した。
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【思考支援】
消費MP:3
『椎茸栽培』
解析中……
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成功確率(推定):72%
成功率向上
・椎茸が生えた古い原木を近くへ配置 +18%
成功確率(推定):90%
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(本来なら、いくつもの方法を試しながら最適なやり方を探すべきだ)
(だが、思考支援は今ある情報から最善の答えを導き出してくれる)
(成功率90%、なら十分に可能性がある)
(それでも焦らない)
(まずは試し、結果を見て次へ進む)
新九郎は静かに画面を閉じた。
「源蔵」
「はっ」
「この山で椎茸が生えている倒木を見たことはありますか」
源蔵は少し考えた後、頷いた。
「ございます」
「谷の奥で時折見かけます」
「食べる分だけ採っておりました」
「その倒木を一本、この場所へ運んでください」
源蔵は不思議そうな表情を浮かべる。
「何か意味がおありで」
「あります」
「まずは私の考えを試します」
「うまくいけば、人の手で椎茸を増やせるかもしれません」
「承知いたしました」
◇
源蔵に案内され、一行は谷の奥へ向かう。
やがて、倒木の前で源蔵が足を止めた。
「若様、この倒木にございます」
倒木には、晩秋を迎えたいまも幾つもの椎茸が実っていた。
「これを栽培地へ運びましょう」
三人は慎重に倒木を運び、栽培地へ戻る。
新九郎は原木を並べながら指示を出した。
「原木同士は少し間隔を空けてください」
「椎茸の生えた倒木はこちらへ置きます」
「湿気を保ちながら様子を見ましょう」
すべての作業を終えると、源蔵は満足そうに頷いた。
「ひとまず、ここまで終わりましたな」
「はい」
「ここから先は山の力を借ります」
◇
館へ戻ると、宗久が書院で待っていた。
「どうだった」
新九郎は今日の作業を順に報告した。
「原木の伐採を始めました」
「さらに、源蔵の案内で倒木を見つけましたので、栽培地へ運びました」
宗久は興味深そうに頷く。
「それにも考えがあるのだな」
「はい」
「まずは結果を確かめます」
宗久は静かに笑みを浮かべた。
「よい」
「焦らず、一歩ずつ進めよ」
「内政とは、その積み重ねだからな」
「はっ」
◇
その夜。
新九郎は寝所で静かにステータスを開いた。
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【イベント進行】
『椎茸栽培計画』
原木の伐採 完了
椎茸菌の定着 開始
進捗 40%
EXP +40
政治 +1
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画面を閉じた新九郎は、小さく息を吐いた。
人の力でできることは、すべてやった。
あとは、この山が応えてくれるのを待つだけだ。
新九郎は静かに栽培地のある山へ目を向ける。
春を越えたその先で、この挑戦の答えが明らかになる。