第十七話 将器の芽生え
永禄五年(一五六二年)秋。
収穫を間近に控えた黒川領では、黄金色へ染まり始めた稲穂が風に揺れていた。
その一方、館の裏手にある調練場には、多くの兵が集められている。
槍を携えた足軽。
弓を背負った弓足軽。
総勢百名余りの兵が、整然と隊列を組んでいた。
今日は黒川家の秋の調練である。
◇
宗久は兵たちの前へ進み、ゆっくりと口を開いた。
「今年も秋の調練を始める」
「日頃の鍛錬の成果を存分に見せよ」
「はっ!」
兵たちの力強い返事が調練場へ響く。
宗久はそのまま新九郎へ視線を向けた。
「新九郎」
「はい、父上」
「今日はお前にも兵を預ける」
新九郎はわずかに目を見開く。
「兵を……」
「三十名だ」
「武芸だけでは将にはなれぬ」
「兵を率い、人を動かすことも学べ」
新九郎は静かに頭を下げた。
「承知いたしました」
◇
兵庫が一歩前へ出る。
「第三隊、前へ!」
三十名の足軽が新九郎の前へ整列した。
皆、新九郎より遥かに年長である。
それでも誰一人として不満を口にする者はいなかった。
野盗討伐や日頃の働きは、すでに家中へ広まっていた。
新九郎は兵たちをゆっくり見渡した。
「本日の調練、よろしく頼みます」
「はっ!」
三十人の声が揃う。
宗久は静かに頷いた。
「兵は命令一つで生きも死にもする」
「今日のお前は、その重みを学ぶのだ」
「はい」
◇
兵庫が木太鼓を打ち鳴らした。
「演習開始!」
敵役となる別隊三十名が前進を始める。
新九郎は槍隊と弓隊、そして敵の動きを静かに見渡した。
(思考支援)
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【思考支援】
戦況解析中……
味方 30
敵 30
正面突破成功率 34%
右翼展開成功率 82%
推奨行動
・槍隊で敵を引き付ける
・弓隊を右翼へ展開
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画面は一瞬で消えた。
新九郎は迷うことなく声を張る。
「槍隊、前進!」
「敵を正面で受け止めてください!」
「弓隊は右翼へ!」
「敵の側面を押さえます!」
三十名の兵は一斉に動き始めた。
宗久と兵庫、そして家臣たちは何も言わず、その動きを静かに見守っていた。
槍隊が整然と前へ出る。
弓隊は足並みを揃えながら右翼へ展開を始めた。
敵役の三十名もまた、新九郎の号令を聞き逃さない。
「右翼へ回るぞ!」
敵側の指揮役も兵へ声を飛ばす。
だが、一歩遅い。
新九郎は敵の動きを見ながら、すぐに次の命令を下した。
「槍隊、そのまま前へ!」
「深追いは不要です!」
「隊列を保ってください!」
「はっ!」
槍隊は乱れることなく前進し、敵を正面へ引きつける。
その間に右翼へ回った弓隊が、敵の横を押さえた。
(思考支援)
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敵側面確保。
現在勝率 72%
推奨行動
・現状維持
・敵後退を誘導
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新九郎は画面を一瞥すると、小さく頷いた。
「槍隊、止まれ!」
「弓隊、その場を維持!」
兵たちは命令どおりに動きを止める。
兵庫は木太鼓を打ち鳴らした。
「そこまで!」
調練場が静まり返る。
◇
敵役を務めていた足軽たちは顔を見合わせた。
「若様は命令が早いな」
「それでいて無駄がない」
「慌てて次々と命じられぬから動きやすい」
味方の足軽たちも頷く。
「声もよく通る」
「何をすればよいか迷わなんだ」
新九郎は兵たちへ一礼した。
「皆が落ち着いて動いてくださったおかげです」
「ありがとうございました」
◇
少し離れた場所で見守っていた宗久は、小さく頷いた。
「初めて兵を率いたにしては上出来だ」
兵庫も静かに口を開く。
「三十人ともなると、一人乱れるだけで全体へ影響いたします」
「しかし若様の隊は最後まで隊列を崩しませなんだ」
重蔵は満足そうに笑う。
「槍の間合いだけでなく、兵同士の間合いまで見ておられましたな」
又兵衛も続けた。
「周囲を見る目は、馬上でも必ず役に立ちましょう」
宗久は新九郎へ歩み寄る。
「よく務めた」
「だが、これは始まりに過ぎぬ」
「兵が百、二百となれば、さらに広い視野が必要になる」
新九郎は力強く頷いた。
「はい、父上」
武芸を極めるだけでは将にはなれない。
兵を動かし、人を生かしてこそ武将。
新九郎は、その第一歩を確かに踏み出していた。
◇
調練はその後も続いた。
槍隊と弓隊の連携。
隊列を組んでの前進。
後退からの立て直し。
新九郎は宗久や兵庫の指示も聞きながら、一つひとつを吸収していく。
兵を率いることは、武芸とはまったく異なる難しさがあった。
◇
日が傾き始めた頃。
宗久は調練の終了を告げた。
「本日の調練はこれまでとする」
「皆、ご苦労であった」
「はっ!」
兵たちは一斉に頭を下げ、それぞれ持ち場へ戻っていく。
◇
帰り道。
宗久は新九郎を連れて調練場を歩いていた。
「今日の調練、どう感じた」
新九郎は少し考えてから答える。
「一人で戦うより、ずっと難しゅうございました」
「兵それぞれに動きがあり、全体を見なければ隊が乱れます」
宗久は静かに頷く。
「その通りだ」
「将とは、自ら敵を斬る者ではない」
「兵を生かし、勝たせる者だ」
「忘れるな」
「はい」
それ以降、新九郎は狩猟でも兵の指揮を任されるようになり、将としての経験を積み重ねていた。
◇
その時、兵庫が足早に近づいてきた。
「宗久様」
「尾張境の見張りより新たな報せにございます」
宗久は書状を受け取る。
目を通した表情は変わらない。
しかし、その視線は鋭くなった。
「また信長か」
兵庫は頷く。
「織田家では兵の調練が以前にも増して盛んになっております」
「鉄砲の数も徐々に増えているとのこと」
宗久は腕を組む。
「やはり備えを怠ってはならぬな」
◇
新九郎は二人の会話を静かに聞いていた。
(信長は着実に力を蓄えている)
桶狭間から二年。
織田家は尾張統一へ向けて歩みを進めていた。
そして美濃では――。
(龍興……)
斎藤龍興は若くして家督を継いだが、重臣たちとの間には少しずつ溝が生まれ始めている。
今はまだ表面化していない。
だが、このままでは美濃は内側から揺らぎ始める。
信長がそこを見逃すはずがない。
(備えられる時間は、それほど長くない)
◇
その夜。
新九郎は静かに自室で目を閉じた。
今日一日を思い返す。
三十人の兵を率いたこと。
兵を動かす難しさ。
そして、尾張と美濃を巡る情勢。
そのすべてが、自分を次の段階へ進ませているように感じられた。
「ステータス」
青白い光が静かに浮かび上がる。
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【新スキル習得】
・将器 Lv1
・号令 Lv1
・統制 Lv1
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【将器 Lv1】
武将としての資質。
兵を率いる際、統率能力が上昇する。
兵数が多いほど効果が発揮されやすい。
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【号令 Lv1】
味方への命令が素早く正確に伝わる。
部隊行動速度・反応速度がわずかに上昇する。
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【統制 Lv1】
部隊の規律を維持する能力。
隊列が乱れにくくなり、混乱・動揺を抑えやすくなる。
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新九郎は小さく笑みを浮かべた。
武を磨くだけではなく、人を率いる力もまた成長している。
やがて訪れる乱世に備え、その歩みは止まることはなかった。
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名前:黒川 新九郎
年齢:8
レベル:22
EXP:400/2400
HP:120/120
MP:505/505
筋力:69
耐久:66
敏捷:71
知恵:101
統率:63
政治:56
魅力:50
器用:73
運:43
SP:0
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【固有スキル】
・鑑定 Lv5(MP消費なし)
・言語理解 LvMAX
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【スキル】
・観察 Lv5
・学問 Lv6
・兵法 Lv6
・礼法 Lv5
・剣術 Lv6
・弓術 Lv5
・槍術 Lv2
・馬術 Lv2
・将器 Lv1
・号令 Lv1
・統制 Lv1
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【アクティブスキル】
・知識庫
・思考支援
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【称号】
・転生者
・唯一の成長者
・黒川の神童
・野盗討伐者
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