レベルアップする戦国武将   作:沙耶王

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桶狭間の衝撃

第六話 桶狭間の衝撃

 

 永禄三年(一五六〇年)五月。

 

 六歳となった黒川新九郎は、鍛錬の日々を送っていた。

 

 朝は学問。

 

 昼は兵法。

 

 午後は剣術と弓術。

 

 夕刻には父・宗久や家老・佐久間兵庫から領地経営や人の使い方を学ぶ。

 

 三歳から積み重ねた努力は、誰の目にも明らかな成果となって表れていた。

 

 剣術師範・小島源八は、新九郎と木刀を交えるたびに驚かされる。

 

 「若様、お見事にございます。」

 

源八は木刀を下ろし、感嘆の息を漏らした。

 

「若様は、すでに基礎を修められました。」

 

「これより先は、応用の技、そして実戦を見据えた稽古が必要にございます」

 

 新九郎は深く頭を下げた。

 

 「源八殿のお教えがあったからこそです。」

 

 その謙虚な態度に、源八は満足そうに頷いた。

 

 庭先で稽古を見守っていた宗久も静かに口を開く。

 

 「力だけでは武将にはなれぬ。」

 

 「どれほど武芸に秀でようとも、驕れば人は離れる。」

 

 「肝に銘じます。」

 

 新九郎は真っ直ぐに答えた。

 

 ◇

 

 その日の昼過ぎ。

 

 館の外が急に騒がしくなった。

 

 「早馬だ!」

 

 「道を開けよ!」

 

 馬の蹄が石畳を打ち鳴らし、一騎の使者が門をくぐる。

 

 泥だらけのまま馬を降りると、息を切らしながら書院へ駆け込んできた。

 

 「ご注進!」

 

「駿河の今川義元が大軍を率いて尾張へ侵攻したとの報にございます!」

 

宗久は静かに問い返した。

 

「兵数は。」

 

「およそ二万から二万五千。」

 

「織田勢は三千ほどと伝わっております。」

 

広間がどよめいた。

 

「七倍以上か……。」

 

「勝負にならぬ。」

 

「尾張もこれまでか。」

 

宗久も険しい表情で腕を組む。

 

「常に兵数が勝敗を決めるわけではない。だが、この兵力差では織田が不利であることに違いはない。」

 

新九郎は黙って話を聞いていた。

 

(確かに普通なら織田は敗れる。)

 

(だが、歴史はそうはならない。)

 

(信長は、この圧倒的な戦力差を覆す――。)

 

 ◇

 

 それから数日後。

 

 再び早馬が黒川館へ駆け込んできた。

 

 「ご注進!」

 

 「今川義元、桶狭間にて討死にございます!」

 

 広間が静まり返る。

 

 宗久は思わず立ち上がった。

 

 「……何だと。」

 

 使者は息を整えながら続ける。

 

 「織田信長は、およそ三千の兵を率いて今川本陣へ奇襲を仕掛けました。」

 

 「混乱の中、総大将・今川義元を討ち取り、今川勢は総崩れとなったとのことにございます。」

 

 広間にどよめきが走る。

 

 「三千で二万余の今川勢へ攻め込んだというのか……。」

 

 「常識では考えられませぬ。」

 

 「兵数では到底及ばぬ。」

 

 「ゆえに勝つ道があるとすれば、総大将を討つほかない。」

 

 「……だが、それを実際に成し遂げる者がいるとは。」

 

 宗久は腕を組み、静かに呟いた。

 

 「敵の兵力に惑わされず、ただ勝機のみを見て本陣を衝いたか。」

 

 「まさに命懸けの一手。」

 

 「織田信長……噂以上の人物やもしれぬ。」

 

 新九郎は静かに目を閉じた。

 

 (これが桶狭間。)

 

 (二万を超える大軍を、三千ほどの兵で打ち破る。)

 

 (誰もが無謀と思う一手を成功させたからこそ、織田信長は歴史に名を刻んだ。)

 

 前世では教科書の一頁だった戦い。

 

 だが、この世界では、一人の武将が乱世の常識を覆した瞬間だった。

 ◇

 

 その夜。

 

 新九郎は一人、書庫で美濃・尾張・三河の絵図を広げていた。

 

 街道の位置。

 

 川の流れ。

 

 山々の連なり。

 

 一つひとつを見比べながら、前世の記憶を重ね合わせる。

 

 (信長は、やがて美濃を狙う。)

 

 それはまだ数年先の話だ。

 

 しかし、その日までに備えなければならない。

 

 黒川家を守るため。

 

 家族を守るため。

 

 そして、この乱世を生き抜くために。

 

 「もっと強くならなければ。」

 

 武も。

 

 知も。

 

 人を率いる力も。

 

 すべてを磨き続ける。

 

 それだけが、自分に与えられた力を生かす道だった。

 

 ◇

 

 寝所へ戻った新九郎は、小さく呟く。

 

 「ステータス。」

 

 青白い画面が静かに浮かび上がる。

 

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 【歴史イベント確認】

 

 『桶狭間の戦い』

 

 EXP +20

 

 知恵 +1

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 新九郎は静かに画面を見つめた。

 

 「SPか……。」

 

 鍛錬を重ね、戦を学び、経験を積んできたことで、多くのSPが蓄えられていた。

 

 (力や敏捷は、鍛錬を続ければ伸びていく。)

 

 (だが、知恵だけは違う。)

 

 (人を動かし、戦の流れを読み、この乱世を生き抜くには知恵こそが何よりの武器になる。)

 

 迷いはなかった。

 

 新九郎は知恵を最優先に、統率、政治、器用、そして運へSPを振り分けていく。

 

 青白い画面の数字が、静かに書き換わっていった。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 【SPを使用しました】

 

 知恵 +20

 

 統率 +10

 

 政治 +5

 

 器用 +5

 

 運  +2

 

 SP 42 → 0

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 名前:黒川 新九郎

 

年齢:6

 

レベル:15

 

EXP:180/1600

 

HP:80/80

 

MP:80/80

 

筋力:54

 

耐久:52

 

敏捷:55

 

知恵:87

 

統率:59

 

政治:43

 

魅力:36

 

器用:63

 

運:28

 

SP:0

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【スキル】

■鑑定 Lv4
熟練度:85/500

効果
・名前
・年齢
・状態(健康・負傷・病気・疲労)
・能力値の閲覧
・スキルの一部を確認
・動植物・鉱物・道具の鑑定

恩恵
・情報収集能力大幅向上
・人物の力量を見抜きやすくなる
・罠や毒など危険の察知率上昇

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■言語理解 LvMAX

効果
・あらゆる言語・文字を理解
・古文書・漢籍・異国の文字も読解可能

恩恵
・学問系スキル熟練度獲得量+50%
・知識習得速度大幅上昇
・外交時の会話補正

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■観察 Lv3
熟練度:120/500

効果
・周囲の変化を敏感に察知
・人物の癖や心理を読み取る
・索敵能力向上

恩恵
・伏兵・罠の発見率上昇
・敵の隙を見抜きやすい
・弓術命中率+10%

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■学問 Lv4
熟練度:150/500

効果
・読み書き
・算術
・歴史
・地理
・漢籍
・軍記物の理解

恩恵
・知恵成長率+20%
・政治成長率+15%
・兵法熟練度獲得量+10%

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■兵法 Lv3
熟練度:140/500

効果
・戦術
・陣形
・用兵
・補給
・地形判断

恩恵
・統率成長率+15%
・味方部隊能力+5%
・戦場で冷静さを維持しやすい

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■礼法 Lv3
熟練度:110/500

効果
・武家礼法
・作法
・言葉遣い
・接遇

恩恵
・魅力補正+15%
・政治補正+15%
・目上からの評価が上がりやすい

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■剣術 Lv4
熟練度:180/500

効果
・基本剣術修得
・応用剣術修得
・連撃技術向上

恩恵
・筋力補正+20%
・敏捷補正+20%
・器用補正+15%
・近接戦闘能力大幅向上

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■弓術 Lv3
熟練度:145/500

効果
・基本弓術修得
・移動目標への射撃
・長距離射撃技術

恩恵
・器用補正+15%
・観察能力補正+10%
・命中率+15%
・遠距離攻撃力向上

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 【称号】

 

 ・転生者

 

 ・唯一の成長者

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 新九郎は静かに画面を閉じた。

 

 歴史は動き始めた。

 

 だが、それは終わりではない。

 

 乱世は、これから本格的に幕を開ける。

 

 その時、自らの力で運命を切り開くため、新九郎は明日もまた鍛錬を積み重ねるのだった。

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