レベルアップする戦国武将   作:沙耶王

9 / 9
稲葉山城への招き

第八話 稲葉山城への招き

 

 神童の噂が広まってから十日ほどが過ぎた。

 

 ある朝、黒川館へ一騎の使者が駆け込んできた。

 

 「斎藤家より使者にございます!」

 

 書院へ通された使者は、宗久へ恭しく書状を差し出す。

 

 「義龍様よりのお召しにございます。」

 

 宗久は書状を開き、静かに目を通した。

 

 やがて新九郎へ視線を向ける。

 

 「新九郎。」

 

 「はい、父上。」

 

 「義龍様より、次の登城にはお前を伴うよう仰せつかった。」

 

 新九郎はわずかに目を見開く。

 

 (やはり、あの一件か。)

 

 噂になっていることは聞いていた。

 

 しかし、美濃国主自らが自分を召すとは思ってもみなかった。

 

 「相手は美濃の主君だ。」

 

 「礼を失することは許されぬ。」

 

 「心得ております。」

 

 ◇

 

 三日後。

 

 宗久と新九郎は稲葉山城へ登城した。

 

 険しい山上に築かれた城は、以前訪れた時と変わらぬ威容を誇っている。

 

 だが、今回は控えの間で待つためではない。

 

 義龍との謁見が目的だった。

 

 近習に案内され、二人は広間へ進む。

 

 上座には、美濃国主・斎藤義龍が静かに座していた。

 

 宗久と新九郎は進み出ると、深く頭を下げる。

 

 「黒川宗久にございます。」

 

 「嫡男、新九郎にございます。」

 

 義龍は静かに頷いた。

 

 「面を上げよ。」

 

 二人はゆっくりと顔を上げる。

 

 義龍の鋭い眼差しが新九郎を見据えた。

 

 「其方が新九郎か。」

 

 「はい。」

 

 「伏兵を見抜いたと聞く。」

 

 「身に余る評判にございます。」

 

 新九郎は静かに答えた。

 

 「私は、父や家臣方から教わったことを思い返し、お伝えしただけにございます。」

 

 義龍は表情を変えずに続ける。

 

 「申してみよ。」

 

 「何を見て、そのように考えた。」

 

 新九郎は一呼吸置いて答えた。

 

 「鳥の声が途絶えておりました。」

 

 「林へ続く新しい草履の跡があり、折れた枝や踏まれた草も見受けられました。」

 

 「さらに、人の汗の匂いも風に乗ってまいりました。」

 

 「それぞれ単独では、まだ判断の決め手にはなりませぬ。」

 

 「ですが、すべてが重なれば、人が潜んでいる可能性が高いと考えました。」

 

 広間は静まり返る。

 

 義龍は新九郎を見つめたまま、小さく頷いた。

 

 「なるほど。」

 

 「目だけではなく、耳や鼻までも使っておるか。」

 

 「見事な見立てだ」

 

 宗久は深く頭を下げた。

 

 「身に余るお言葉にございます。」

 

 ◇

 

 義龍は近習へ命じた。

 

 「地図を。」

 

 ほどなく、美濃国の絵図が運ばれてくる。

 

 義龍はその一角を指した。

 

 「黒川領から稲葉山へ至る街道だ。」

 

 「敵が美濃へ攻め入るとすれば、どこを警戒する。」

 

 新九郎は絵図へ目を落とした。

 

 街道だけではなく、川幅や山並みまで見比べる。

 

 やがて一か所を指し示した。

 

 「この谷間にございます。」

 

 「ここは道幅が狭く、少数でも足止めが可能です。」

 

 「反対に、この地を失えば、黒川領からの援軍は遅れるでしょう。」

 

 義龍は満足そうに頷いた。

 

 「地形を読む力もあるか。」

 

 「七歳とは思えぬな。」

 

 新九郎は頭を下げる。

 

 「父や家臣方のお教えのおかげにございます。」

 

 義龍は穏やかに笑みを浮かべた。

 

 「驕らぬことも武将には大切だ。」

 

 ◇

 

 帰り際。

 

 義龍は宗久へ言った。

 

 「宗久。」

 

 「はっ。」

 

 「この子を大切に育てよ。」

 

 「武だけではなく、人と地を見抜く目を持っている。」

 

 「よく磨けば、必ずや大器となる。」

 

 「恐悦至極にございます。」

 

 宗久は深々と頭を下げた。

 

 ◇

 

 その夜。

 

 館へ戻った新九郎は静かにステータスを開く。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 【イベント達成】

 

 『斎藤義龍との謁見』

 

 EXP +25

 

 兵法熟練度 +20

 

 礼法熟練度 +15

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 【イベント達成】

 

 『美濃国主に認められし者』

 

 観察熟練度 +20

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 【称号効果発動】

 

 『黒川の神童』

 

 美濃国内での知名度が上昇しました。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 新九郎は静かに画面を閉じた。

 

 美濃国主に認められたことは、一つの終わりではない。

 

 黒川家を背負う武将として歩む、新たな始まりだった。

 

その日、美濃国主・斎藤義龍は、一人の童の才をその目に刻んだ。

 

 そして新九郎もまた、知らぬうちに乱世の表舞台へと、一歩足を踏み出していた。

 

 

 それから数か月後。

 

 初夏のある日。

 

 一騎の早馬が黒川館へ駆け込んできた。

 

 「ご注進!」

 

 「義龍様、御病により御逝去なされたとの報にございます!」

 

 書院に重苦しい空気が流れる。

 

 宗久は静かに目を閉じた。

 

 「……そうか。」

 

 「美濃をよくまとめられたお方であった。」

 

 家老・佐久間兵庫も深くうなずく。

 

 「これより斎藤家は、嫡男・龍興様が家督を継がれますな。」

 

 「若き御当主ゆえ、家中も何かと落ち着かぬやもしれませぬ。」

 

 宗久は静かに立ち上がる。

 

 「我らは国人として、これまで以上に領内を固めねばならぬ。」

 

 「美濃の行く末は、これまでとは違う流れになるやもしれん。」

 

 そのやり取りを、新九郎は黙って聞いていた。

 

 (義龍が亡くなった……。)

 

 (歴史は、また一つ動いた。)

 

 前世の記憶では、義龍亡き後、美濃は若き斎藤龍興が継ぐ。

 

 そして、その数年後には織田信長による美濃攻略が本格化していく。

 

 まだ時間はある。

 

 だが、決して多くはない。

 

 新九郎は静かに拳を握った。

 

 (その日までに、もっと強くならなければならない。)

 

 乱世の歯車は、静かに、そして確実に回り始めていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【史実イベント】

 

『斎藤義龍、病没』

 

EXP +80

 

知恵 +2

 

統率 +2

 

政治 +2

 

兵法熟練度 +30

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生者がfate世界でノッブの家臣になって英霊になるまで(作者:ゼロさん)(原作:Fate/)

織田信長の家臣『有須浦 増麻(アスラ ゾウマ)』は転生者である。型月特有のYAMAで体を鍛えたアスラは身長2m60cmの巨大な体と転生する際に貰ったチート。そしてガバガバな知識チートと倫理観でノッブに擦り寄り出世を目論むのだ!▼転生者「あなや〜!凶弾(チャカ)をいっぱい撃てば人が死ぬなり〜!」▼ノッブ「コイツ拾ったの間違いだったか⋯?」▼作中で薬物に関する描…


総合評価:1399/評価:7.48/完結:10話/更新日時:2026年06月17日(水) 14:53 小説情報

死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件(作者:雨天)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦のファンだったオリ主が平安時代に転生し、生まれ持った強さから両面宿儺討伐に参加することになり、仲間達がやられても戦い続けたら宿儺に親友と呼ばれるようになった話。▼ 活動報告はXで行っています。▼ → https://x.com/uten80▼タグは随時追加


総合評価:2001/評価:7.59/連載:5話/更新日時:2026年07月18日(土) 12:29 小説情報

心配性の実力者は今日も鍛え続ける(作者:大気圏突破)(原作:魔法少女リリカルなのは)

 青信号で横断歩道を渡っている時に上級国民が運転する暴走車に轢かれてしまい彼は命を落とした。本来ならもう67年ほど生きる予定だったが天国に来てしまった。定員オーバーなので神は二次創作特有のアニメ作品内に彼を転生させる▼ 部屋で目を覚ました彼は9歳の姿になっていた。そして机の上置かれていた手紙に▼「その世界は実力が無いと死んじゃうから頑張って鍛えてね♡ byゴ…


総合評価:3465/評価:7.15/完結:63話/更新日時:2026年05月02日(土) 20:55 小説情報

戦国転生 4歳から始める十種影法術(作者:匿名希望)(原作:呪術廻戦)

R08.06.19完結しました。▼今後日談的なエピソードを更新していきます、3エピソード予定でしたが、長くなりそうです。▼つまみ食いのような感じなので期待せずお待ちください。▼慶長に行われる御前試合から逃げ切りたい転生者くんの話です。▼10〜14歳のどこかの影久のイメージです。AIくんありがとう・・・。▼【挿絵表示】▼下の画像はネタバレあるので気をつけてくだ…


総合評価:3973/評価:8.16/完結:65話/更新日時:2026年07月09日(木) 12:28 小説情報

孫悟空成り代わりオリ主(作者:雨曝し)(原作:ドラゴンボール)

▼ 孫悟空に成り代わったオリ主が可愛い子を求めて冒険する話。▼タグは随時追加


総合評価:4094/評価:8.04/連載:6話/更新日時:2026年03月30日(月) 13:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>