「視聴者の皆さんこんにちわ! 私達、今日も頑張ってダンジョン育てていきます!」   作:rikka

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第二話:(準備の)始まり

「そもそも、ダンジョン作るには資格が必要なんだよ~? リコちゃん」

「ぐぬ……っ」

 

 そうだった。まずそもそもその問題があった……っ!

 

「ふむ……。今ネットでさらっと調べているんだが、規定を満たしたかなり小規模なダンジョンならば、計5回の講習を受けて受講修了書をもらえば一応可能らしい」

 

 ピザを平らげ、ポテトにソースを付けずそのままの味を堪能したながらスマホを操作しているトウが助け舟を出してくれる。

 

「小規模ってどれくらい?」

「階層は一つのみ、かつ面積や基礎区画というものに制限が付く上に、内部に生息させる神秘生物もごく一部に限られるみたいだ。いわゆる五等級ダンジョンという物だね」

「神秘に制限って……ここらへんだと何がOKなの?」

「少し待ってくれ……えぇと、ここらだと……」

 

 そういえば、神秘的な物なんてこの町の近辺だとあんま見ないな。

 ギリギリでレイカのお母さんくらいか。今の世なら、雪女とかだとそれをどう扱うかで議論炎上しまくるだろうけど。

 

「講習のみで可能なのは、精霊に分類される物の一部に下級スライム類くらいだね」

「ぱ、パッとしないのばかり……っ。ユニコーンとかは!? 前に動画で新宿の地下ダンジョンに群れが住み着いたのが目撃されたって!」

「彼らは三種一類に相当する特定外来神秘生物。管理には市役所とか県庁飛ばして国の許可取らないと無理だし、当然上位資格必須。今は仕方ないさ」

 

 いや仕方ないのは分かるけど!

 もっとこう……動画としてコンテンツを飾れる奴はいないのか!?

 

 こう、可愛らしく動いたり、あるいは格好良くキビキビ動いたりして動画を盛り上げる最高のマスコット的な――

 

「なるほどアタシか」

「どういう思考の果ての何の答えかは分からないけど多分違うよ、リコ君。ほら、県庁の該当ページだ」

「ど~~~れどれふむふむ~?」

 

 アタシの辿り着いた絶対の解をバッサリ切ったトウが、県庁のホームページを開いたスマホをレイカに渡す。

 

「……ん~~、お役所さんのホームページ見る限り、ギリッギリでいけそうなのは河童とか垢舐め位だねぇ~。ウィル・オー・ウィスプとかシルフは管理が意外と簡単って聞くけど……あ~~~、でも確か特別指定外来の扱いだから要免許だねぇ」

「まぁ、これはダンジョン運営の基本を学ぶための実習的な意味合いが強いのだろう。ダンジョンを一定期間運営させたという認定をもらえれば、運営に必要な資格試験の際に一部が免除されるって仕組みのようだ」

「……ちなみに一定期間って?」

「大体一か月」

「長いわ!」

「いや短いだろう。君の都合に合わないというだけで」

 

 コーラを飲む姿すら絵になるトウは、一通り調べ終わったのかスマホを置いて再びポテトをつまみ始める。

 

「一月でそこそこ伸ばすという意味では十分じゃないかい? 夏休みの間だけの活動にするのならば、小規模ダンジョンなら閉めやすいし、その後も活動を続けるのならば資格試験と講習をパスして拡張すればいい。最初から完璧に、しかもド派手な動画を撮ろうとしても息切れしてしまうのが目に見えているしね」

 

 ぐぬぬぬぬぬぬぬ……ぅ。

 

 いや、仕方ない……っ。トウが言う事はもっともだ。

 

 巻き込んで二人の時間を使わせてもらう側である以上、二人のコンディションや都合に配慮した上でのスケジュール管理は絶対!

 

 となれば、確かにトウが言う通りいきなりかっ飛ばすわけにはいかない。

 

 だが、むぅ。

 

 思っていた所まで辿り着くのに思ったより時間かかりそうだな。

 

 ……私も神秘管理関連の資格試験をやる必要は出てくるだろうし、試験対策の勉強動画も並行して撮るか?

 

 となると予習がいるな。後で参考書見に行こう。

 

「というか~その前に~」

「ん?」

「ダンジョンを作るってどこに作るの~?」

 

 …………。

 

 

 あ。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「すみません、お店の一角占領してしまって」

「いいのよいいのよ~。貴女達は常連みたいなものだし、喋りながら調べものするにはちょっと広い所が必要でしょう?」

 

 思い付きで話してみたが、考えてみたら基礎知識が何もなかった。

 とりあえずネットで役所のホームページから初めてアレコレネットで情報収集して使えそうな所をノートにまとめ中である。

 

「割と狭くてもいいんだね。といっても小さい部屋二つ分くらいのサイズは必要だけど」

「本当に練習というか実習みたいなものだからだろうね。ただ、後々の事を考えると拡張できるように広く使える場所を探すのがベストだ」

 

 調べてみた所、ダンジョンを運営するには面積十平方メートル、高さに関しては二メートル五十センチからの空間で一応は可能という事であった。

 

 それだけの面積の穴のも一苦労だが、それだけの労力かけても出来ることがなさすぎる。せいぜいが目当ての精霊を集めて、その効果でその周囲の土地を肥やしたりちょっと気温を調整させるくらいがせいぜいである。

 

 本当にキチンとしたダンジョンならば、それこそ綺麗でそのまま飲める水を半永久的に湧かせるどころか凄い所だとお酒が湧く泉を作ったり、一年中季節が固定されている地域を作ってあれこれ作物作ったりと、まぁ色々出来るらしい。

 

 管理は難しいし、万が一野生化や暴走したら役所に通達しなきゃいけないし、しかも民間のダンジョン対策会社のお世話になるので対策費用やら影響のあった地域への賠償金やらそのための保険やらでお金が滅茶苦茶かかるらしいが。

 

「万が一の事を考えると、確かに影響の大きい物は出来ないか」

「そりゃねぇ~。前も蝦夷(えぞ)の酪農家さんが、気候を安定させてた牧場地下のダンジョン暴走させちゃって大騒ぎになってたしねぇ~」

「……まぁ、まずはボク達学生に土地を貸してくれる奇特な人がいるかどうかなんだけど」

「……廃墟とか使えない? 廃病院とか廃遊園地がダンジョン化してたって話聞いた覚えあるけど」

「さすがにそんな土地は貸してくれないだろうし、そもそもそれって野良ダンジョンじゃないか」

 

 ぐぬぬぬぬ。

 市町村とか企業のダンジョン運営体験とかに参加して動画にするのもなんか違うよなぁ。

 許可取れるかどうかも分からないし。

 土地、土地かぁ……。

 

「が――」

「が?」

 

 

 

「学校の一部とか……使わせてもらえないかなぁ」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「ダメに決まっているだろう」

「ですよね」

 

 翌日、そういうことが出来るやもと担任――トウとはまた違った意味合いで男っぽいウチの女教師はとりつく島もなかった。

 

「どうしてダンジョンに興味を持ったかは知らんが、ダンジョンは基本的に寝泊まり可能な管理棟が傍にない限り、街中には作れん。それくらいはお前の事だから調べ上げただろう」

 

 そりゃ調べましたよ。

 何事も大事なのは準備と最後の締めなんですから。

 

「ただ、研究や教育目的なら条件の緩和がありますよね?」

「学年やクラス全体という形なら申請してやってもいいが、生徒数名だけではさすがに無理だ。絶対に通らん」

「……いっそ本当にクラスでの活動として――」

「断る。お前が主導という事はバカ騒ぎをやるつもりだろう。なまじ統率力があるお前の好きにさせるわけがないだろう。クラスの連中、何人かはお前に乗っかりそうだからな。下手に大義名分を渡したらクラスを乗っ取りかねん」

「ぐぬぅっ!!」

 

 ちくしょう、この無駄に顔の良い教師め。

 考えてみたらコイツもアタシの敵だ。

 

 男子共が裏でこっそり開催されていたミスコン投票で、学生たちのほとんどを押さえて二位にランクインしていた時は死ぬほど悔しかったぞこの野郎。

 

 ちなみに一位がトウで二位がこの久須美先生、三位に三年と二年の人が一人ずつ同票で入ってアタシはレイカと同数で五位だった。

 思えば、それがあったからやりすぎない程度の化粧のやり方とか滅茶苦茶練習したなぁ。

 

「ぐぬぬぬぬ」

「加えて、凝り性のお前の事だから一度活動を始めたら必ず拡張しようとするだろう? 校内にそれだけの広さを使える場所はない。地下に掘り進めるならば更に資格がいるし、そもそも学校でそれは出来ない」

「なら、借りられるような土地は……ないですかね」

「どこそこをこういうダンジョンにしてくれという依頼もあると耳にはしているが、そのどれもがなるべく短期間で実用化させたい企業や自治体だ」

「……まぁ、やっぱりそうなりますよね」

「加えて、そういうものは湧き上がる効果もおおよそ指定される。お前の思うようには出来んだろうな」

「ついでに、そういうのはそもそも資格が取れたとして実績ある人じゃないと無理ですよね?」

「当たり前だ馬鹿者。大抵はダンジョン運営を専門とする会社に電話して終わりだ」

 

 人の頭をバインダーでペシペシ叩くんじゃないこの『くーるびゅーてぃー』め!

 

「……待て。そういえばそろそろ市がやってるダンジョン運営の講習会が開かれる時期だが、まさかお前……」

「私とトウとレイカの三人で申し込んでいます。締め切りがギリギリだったので、昨日直接市役所に行ってきて手続き済ませました。出来るだけ早く活動できるように日程も相談に乗ってもらって、夏休み始まってすぐにとはいきませんでしたが、七月中には……予定では二十五日には修了証明書がもらえる予定です」

 

 ぶいサインと共に抜かりの無い用意を報告する。

 どうだ先生、アタシってば出来る優秀な生徒でしょう!?

 

 …………。

 

 なぜ頭を押さえてため息を吐く!?

 

「……お前は、その目立ちたがりな点以外は隙がないのがかえって厄介だな」

「先生、教師なんですからもうちょっと生徒の心を大切にケアしてください」

「お前の唯一の欠点を指摘してやっているんだ。感謝しろ」

 

 目立って褒められる事はアタシによって呼吸や食事のようなものなので勘弁してください。

 

「だが、ふむ……そうか……」

「? 先生?」

「少し待っていろ」

 

 

 

「心当たりがある」

 

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