雄英高校入試試験当日、校門には二人の男女。その特徴は、本来ならば個性で挑む雄英高校の試験に、刀と両手剣を持参したことである。
少年は、刀を腰に指すことはせず、左手に持って。
少女の方は、添え等の腕力を要する両手剣を背中に背負っている。
「ここで、見つかればいいんだけどな」
「そうだねぇ〜」
落ち着いて、目的を静かに確認する少年の名前は、
雄英高校入試試験に参加する。
「今日は俺のライブへようこそ!エヴィバディセイヘイ!」
自由が売りな雄英高校の実技説明会、プロヒーローによる、ライブ演出によって始まった。因幡と来栖はそれに対してはつよい反応を示さない、説明会は、できることを聞く場という認識が強かった。
「こいつぁシヴィ―――!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」
やはり、倍率300を超える学校の入試では、コール&レスポンスに応えられる受験生はいなかった。
それを少し気にした程度で、説明を担当するプレゼント・マイクはそのまま続ける。
「入試要項通り!リスナーにはこの後!30分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!O.K?」
「演習場には”仮想敵”を
「三種か、」
「そうだねぇ〜多分大丈夫かなぁ」
「気絶しなきゃいい」
「大丈夫よぉ〜♡」
自分達が落ちることなど考えていない、落ち着きすぎた二人は、やはり異質だった。
そんな中で一人の少年が手を挙げる。
「質問よろしいでしょうか?プリントには
「ついでにそこの縮毛の君!!先ほどからボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」
「す、すいません」
厳粛で厳格、道からそれることを嫌うタイプの人間だ。因幡と来栖からすれば、あまり気にならないものであったが、人によっては気に障るようで、独り言でルールを反復していた少年は注意された。
「オーケーオーケー。受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつはいわば
「有難うございます!!失礼しました!」
「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校の”校訓“をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ポナパルドは言った!真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者と!!
実技試験の説明は終わった。ならば、あとは狂った刃を持つ二人の独壇場である。
同じ学校の生徒が協力をできないようにと、試験会場は二人とも別である。
「いくか、」
「はぁ〜い♡」
因幡は、試験会場へと運んでくれるバスの中で、目を閉じて瞑想していた。心を落ち着け、対象を確実に穿つために。
「……一つ聞いていいかな?」
「なんだ、」
「持ち込み自由でも刀はどうなんだい?」
「直接的な攻撃力は持たないからな。俺は剣術を主として戦う」
「そ、そうか」
会話を終えてまた、目を閉じる。
バスが会場につくと、肩を回し、筋を伸ばして準備運動を始める。
「ふぅ……」
『はい、スタート』
「?!」
「え?消えた?」
軽い、それが始まりの合図とは誰も思わないような雰囲気で放送された試験開始を伝える合図に一拍、遅れて駆け出す因幡。それは薬丸自顕流の不可視の魔剣、雲耀の技が一つ。高速移動術、縮地法、
ほかの生徒の視界から消えるように駆け出して、ロボットを一体きり伏せる。
そこでほかの生徒は改めて動きをとめる。スタートの合図はいつ言われたのか、先ほどの合図はあまりにも淡泊すぎると、フライングなのではと考え始める。そこに新たな放送が。
『どうしたどうしたァ!?実戦にゃカウントダウンなんざねェんだよ!走れ走れェ!賽はとうに投げられてんぞォ!?』
遅れてほかの生徒も駆け出すが、既にゲートの入り口付近には仮想敵、ロボットはいなかった。あるのは斬り伏せられたロボットの残骸のみ、2撃、3撃と言うものは見当たらず一太刀でロボットの機能を停止したことが見て取れる。
「ふぅ……
納刀した刀を腰に指し、一つため息、だがその瞬間に姿が消える。人の眼より遥かに物事を捉えるロボットのカメラからも姿が消える。
ロボットは崩れ落ち、破壊され、対する因幡は左上段に刀を切り上げた姿勢で止まっていた。抜刀をきり上げに使った場合、相手の右腰から左肩へと斬り上げるため、張り上げた刀は右上段で止まるのだが、全くの反対で止まった。
理由は一つ、抜刀よりロボットに向けた剣撃は3回、斬り上げ、唐竹割り、斬り上げ。この三斬を一瞬で行ったのである。
「ふぅ……」
ため息一つ、既に試験が始まってから二十五分、残り五分となって、お邪魔虫、試験会場の避けることを推奨された障害物。ゼロポイントの仮想敵である。
「デカいな、だが、動きは鈍重、巨体ゆえにどんな攻撃も大振りに、更には慣性の法則により突発的なことには反応も難しい。遠距離攻撃機能は無いな」
ゼロポイントを一瞥して、逃げ惑うほかの受験生とは別に、仮想敵を詳しく分析する因幡は、もう一度刀をしまう。
狙うは一つ、その巨体をささえる足である、キャタピラである。そこを破壊すれば動きは止まる。何もすべて破壊する必要は無い。
「瞬光」
キャタピラの片側に、一瞬三斬刻まれて、星型の跡が残る。
左上段に上がった刀を下ろさずにこんどは右上段に構える。刀を握った右拳を耳の高さに上げ、左手を添えて左肘は胸につける、自顕流の蜻蛉の構えである。
「迅雷」
左手を右肩に押し込むようにして、右手は前に突き出す、テコの原理で、雷と思し召し正確無比な唐竹割りの一撃が叩き込まれる。雲耀が一つ迅雷である。
だが、迅雷はその性質上、地面含めて最後まできり下ろす技故に、使用後は武器が耐えられず折れてしまう。
瞬光によって作られたヒビに叩き込まれた迅雷はキャタピラをロボットから外すことはできなくて、因幡は改めて、ロボットの上に立ち、両足を接地する。
掌を二度の剣撃によって脆くなった場所にあて、内旋、内側に回転させる。
雲耀は腰から足に衝撃、推進力を乗せるが、因幡が使用したものは、足ではなく、腰から肩、肩から腕、更には掌、そして掌を当てた攻撃箇所へと、螺旋状に衝撃を貫通させる、因幡が独自に開発した発勁、その名は
「魔弾」
3度の衝撃でロボットとをささえるキャタピラは根本から外れ、ゼロポイントはその場から動けなくなった。
『終ー了ー』
「ロボット相手に時間をかけすぎたな」
因幡は、ロボットから降りて会場の出口へと向かう。
誰よりも早く、誰よりも先へ、そんな想いが込められた鍛錬の先に在りし極地、薬丸自顕流、雲耀である。