炊飯器と冷蔵庫   作:すりーみにっつ

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入隊の動機はなあに?

-入隊の動機- 1教群3大隊3区隊3班

建徳6年3月28日 加勢瑞奈

 

わたしが自衛隊にはいろうと思ったのは、お父さんがきっかけです。

わたしはお父さんの笑顔しか知りません。お父さんは優しかったです。でも笑顔しか知らないのは、お父さんがわたしが10歳のときになくなったからです。

南海トラフ地震で仕事からかえってきませんでした。わたしは避難所でお母さんとないていました。

灰色のめいさい服を着た自衛隊の人がお父さんの遺体をみつけてくれました。

わたしはお父さんの笑顔もすきだけど、怒った顔や、悲しんだ顔、さみしそうな顔もみたかったです。

だからわたしたちのように困っている人を助けてあげたいと思って自衛隊に入ろうと思いました。いろんなひとがいろんな表情をみられるようになりたいです。

 

 

 

-入隊の動機- 第1教育群第1大隊第1区隊第1班

建徳8年3月31日 川路昇平

 

自分が自衛隊に入ろうと思ったのは宇宙に憧れたためである。宇宙は人類のフロンティア最前線であり、ひとりの男としてそれに携わりたいと強く思ったのが直接の動機である。

防衛局地域課の方から航空宇宙自衛隊なら宇宙で勤務できると聞き、迷わず応募した。自分は学生時代柔道やワンダーフォーゲルをやっており、今もそれなりに体力を維持しているため、この能力を最大限自衛隊で活かし、宇宙で活躍したい。

その勤務を通じて国に貢献もしたい。

 

 

 

-入隊の動機- 2教1大2区隊3班

建徳4年7月22日 津志田妃美

 

私は今までつねに人の後を追っていたことに後ろめたさを感じていました。

自分からいろいろチャレンジすることがあまりなかったように思えます。

駅前で自衛隊の地域課の方から声をかけられたときに、私は変わりました。

高校を卒業してアルバイトで生活をしていましたが、これからはちゃんと自分で十分に生活できる仕事について自分の人生を歩むんだと思いました。

おさえていた自分の心を自衛隊に入って爆発させてやろうと思いました。

班長の方達、よろしくお願いします。

 

 

-入隊の動機- 1教群2教大3区隊1班

令和25年3月19日 大谷 連星 

 

私は、自分の人生を楽しみたいと思っています。

どうすれば、人生を充実させることができるか。その一つの答えを子供ながらにずっと考えていましたが、完全燃焼するのが一番だと、思っています。

自衛隊は完全燃焼できるところだと思います。

最近、ネットで自衛隊が宇宙に派遣されるというニュースを見ました。

できれば宇宙で完全燃焼したいと思います。

 

 

 

-入隊の動機- 防大1年第3生徒大隊第2中隊第1小隊

令和17年3月24日 岩倉 樹人

 

先年発生した首都直下大地震が多くの人命を奪っていったことは記憶に新しい。当時私は故郷の和歌山にいて、受験勉強をしていたが、飛び込んできたニュースに驚いた。狼狽し、いてもたってもいられなかったが、父母に心を落ち着けるよう言われ、自省した。

そして自分の進路は本当に東京の大学でよいのか再三思案し、真に行くべきは防衛大学校であろうと決意した。

災害のみならず我が国は様々な脅威に晒されている。その物理的な脅威に対し、この身を鍛え、対抗の一助となりたい。先の大地震でそう強く願った次第である。

 

 

 

-入隊の動機- 54普連教育中隊第2区隊5班

平成31年4月2日 桜野 拓海

 

自分は災害派遣で頑張る自衛隊の方々をみて入隊を決意しましたが、地本の方のお話を聞くにつれ、自衛隊の本来の任務は国防なのだと強く感じるようになりました。

災害派遣も大切な仕事ですが、なにより自衛隊は日本を守ることが仕事なのだと思います。

日本を侵略する敵を寄せ付けない。そして攻めてきた場合は直ちに(消しゴムがかけられているが、あきらかに「ぶち殺す」と書かれているのがわかる跡)追い返す。

自分はその最前線で働きたいと強く思いました。

 

 

-シャックルトン基地東側の永久影地区-

ぱ ぱ 

真っ暗闇。遠くに閃光がはしる。

「次弾、撃て」

ぱ ぱ ちかちか

筒先が光るや、遥か彼方に光と煙らしきものがあがる。

 

47式30mm自走無反動砲Mと47式46mm自走迫撃砲Mの射撃訓練である。

この二つは陸上自衛隊月派遣隊の主力武器で、陸自混成シャックルトン派遣隊は自走無反動砲を4台、自走迫撃砲を6台持ってきている。

陸自では太陽光の当たる面での訓練を陽面訓練。永久影での訓練を陰面訓練と呼んでいる。

戦闘はもっぱら陽面で発生すると言われているため、陰面訓練は後回しにされていたが、敵が迂回する場合は陰面であろうという理屈から最近重視されてきている。

 

陰面は真っ暗闇であるが、気密服ヘルメットのデジタルグラスが光量調整をしており、活動に大きな支障がない程度には周囲が見えるようになっている。

またデジタルグラスは、視界内の気密服の隊員の顔を合成し、デジタルグラス内があたかも見えるように表示している。よって、真の姿は真っ暗なヘルメットだが、デジタルグラスを通して見ると相手の顔がわかるようになっている。

 

自走無反動砲と自走迫撃砲が敵陣地を攻撃したのちは装甲人員輸送車に乗車した普通科隊員が突入する。

命令や指示はデジタルグラスに表示されるほか、詳しい情報はアームモニタで確認ができる。

小隊長や分隊長はグローブ内の切り替えスイッチで味方に情報を伝達しながら、突入の経路、時間を決定し、突っ込むのだ。

 

航空宇宙自衛隊は45式3.5mm超電磁自動小銃を装備しているが、陸上自衛隊は45式5.3mm低反動自動小銃Mを装備している。銃口付近には伝統の二脚がついており、45式銃剣Mを着剣することができる。

45式銃剣Mは刺突することもできるが、手元操作で飛び出させることも可能だ。

その勢いで相手の船外活動服を破損させることができる。

しっかりと腰を据えて刺突ができない低・無重力環境では飛び出し銃剣は有効とされていた。

 

「小隊下車」

小隊長の号令で各分隊が人員輸送車から下車、散開する。

各分隊は無反動と迫撃砲が破壊した仮設的(敵車両の形にくりぬいた鉄板やベニヤ板)を通りすぎ、その奥の小高い土盛りの上にある敵兵の形をした柔レゴリートの円筒に射撃をする。

「ぱん、ぱん、ぱん!」

月面でも実弾を使うまでもない訓練ではやはり、射撃音は口で発する。

 

分隊長の「突っ込め!」の号令で隊員は柔レゴリート円筒にむかって全速力で走る。

月面なので、ぴょんぴょん跳ねながらの移動だ。

レゴリート円筒に到達するや、銃剣を突き刺す。

が、やはりどうにも力が入らず、刺さるのは刺さるのだが、浅い。

もっとも、その威力は敵の船外活動服を破損させるに十分とされた。

 

「状況終了」

中隊長の声で隊員たちは銃剣を抜き、あるいは銃を点検しながら、元来た道を戻っていく。

 

隊員たちはマイクを切り、独り言ちながら歩く。

「こんな訓練やって通用するんかな。」

「第二次世界大戦みたいな攻撃なんだが、はたしていったい。」

「高マイクロ熱線とか持ってんだろ。中国。横一線になって進んだら蒸滅されちゃうんじゃないか。」

 

月面で戦争が始まったらいったいどんな野戦が繰り広げられるのか。

 

確かに一見、時代遅れの旧態依然とした戦闘法に見える。

しかし月面には地球にあるようなインフラも戦闘用器材も、そのほとんどがない。

航空戦力もいまのところ、せいぜいがホッパーだけだ。

 

米軍も、こういった地上でやるような古臭い戦闘法を試しているらしい。

人類は月面での殺し合いを模索していた。

始まって見なければ、なにが起こるのか。誰にもわからない。

 

-広寒基地南端-

中立地帯に幾筋もの閃光が走り、基地前面の交通壕に砲弾が落ちてくる。

単壕はことごとく破砕されていく。位置情報が完全にばれていたのだ。

マイクロ有線ミサイルはやがて基地内にも飛び込んできた。

人民解放軍の応戦は統制を欠いていた。

 

劉「八一大楼とも中南海とも連絡が取れんのか。」

通信兵「電子ジャックされています。対抗AIも死んでいます。」

趙「上海と大連からノイズがひどいですが、指示らしきものが!」

 

上海と大連からしか指示がない。そうだとすれば、考えにくいが日米が台湾方面から中国に攻め入ったか?いや。なんの兆候もなかった。

 

戦闘旅団本部は論外。北京や他の戦区からすらなんの連絡もない。

アメリカが核を使った可能性も考えられる。

 

趙「東方リムから日本軍地上部隊が来ています。」

通信兵が大モニタに投影する。

 

リムから攻め寄せてるのは自走無反動砲・・・

いや、あれは106mm軌道戦闘車。随伴しているのが軌道工兵の装甲整地車両

日本陸軍の軌道部隊。

あれが同時に来ているならば月面の障害は役に立たない。

日本軍はいつの間に車両連携に習熟したのか。

 

まきあがるレゴリスの爆煙。その下でわが軍将兵が次々と倒れていく。

ただやられるだけではだめだ。

データを送らねば。

負傷部位。致命部位。月面で爆風にあえばどうなるのか。

敵の射撃はわが兵士のどこをとらえるのか。

いかにして兵士は死んでいくのか。または生きながらえるのか。

 

電子ジャックされている。

趙にデータを持たせて放たねばならない。インド基地に逃すか。

友好国とはいいがたいが、本国の交渉次第では帰国させられるかもしれない。

 

俺たちはやはり捨て駒だったのだ。ならば。

捨て駒らしく生きたデータくらいは。

 

一瞬柳沢るり子の顔がよぎったが即座に振り払った。

 

趙「南方からは日本空軍の警備隊が突っ込んできます。」

劉「ええい、陸軍はともかく空軍の警備隊は王と洪の2個中隊で撃退できるだろう。」

 

「機甲歩行戦闘車が突っ込んできます!」

通信兵が絶叫した。

 

日米共同開発中と噂されていた2足歩行兵器。106mm超電磁砲を装備し、ローラで高速走行しながら、ホッパーのようなジャンプと長時間滞空が可能。

そう、本国から送られてきた機密文書にはあった。

 

どおおおおん

基地が揺れる。

劉「今度は何だ!」

「ひ、飛行機。いや爆撃機です!」

モニタは翼に「航空宇宙自衛隊」と書かれた巨大な月面飛行物体が過ぎ去る様が映されていた。

劉「でたらめだ!そんな馬鹿な!月面航空機を実用化しただと。」

 

ありえない。大気のない月面であのような物体を安定して高高度飛行させる技術は米国にすらないはずだ。

 

モニタに映る機甲歩行戦闘車は、巧みに障害物を右に左に避けて走る。突起は飛び越え、信じられないことに高マイクロ熱線を見えているかのように避け、ぐんぐんと迫ってくる。

 

人民解放軍の武装ホッパーが飛び出る。

「あれは、王宇軒のホッパーです。」

劉「やつならあの2足をやれるかもしれん。」

 

王のホッパーは機歩車を翻弄し、距離をとり、射撃戦に持ち込む。

巧みなホッパー操作。人機一体とはまさにこのことであろう。

 

趙「あの機歩車さえ押さえれば日本空軍の警備隊はなんとでもなります。」

 

しかし

機甲歩行戦闘車はまたしても信じられないことに、ジャンプするとともに射撃の反動を利用し反転。体をひねり、ありえない角度から王のホッパーを射抜く。

ホッパーの残骸が月面に散らばる。

 

ぱらぱらと雪のように舞う破片を劉は不覚にも美しいと思ってしまった。

 

機甲歩行戦闘車はついに基地内に侵入してきた。

趙「劉大校、もはやここまで。いかにしますか。」

 

クソ。あっという間だ。月面の野戦がここまでの速度で進むとは。

俺が油断したのか。

 

ががががん!

 

振動とともに天井がめくれ上がる。

機甲歩行戦闘車のマニュピレータが強引に屋根を破壊したのだ。

機歩車のメインカメラの光が覗く。

気圧が急激に下がる。劉たちはあわててヘルメットの気密をオンにした。

 

「抵抗は無駄だ。降伏しろ。」

AI翻訳とおぼしき声。その声は若い女性のものだった。

永久影から響いてくるような冷たい声。一切の慈悲がない。

 

機歩車の重機関銃が一連射をすると通信兵や秘書達が船外活動服ごと弾け飛び、四散五裂する。破片、肉片、赤黒い液体がゆっくりと壁にぶつかり、床にへばりつく。

 

建物の亀裂から、日本軍の兵士が侵入してくる。

 

もはや劉達にできることはない。

 

機甲歩行戦闘車の操縦席のハッチが開き、中からパイロットが現れる。

子供のようなパイロットだ。それだけに邪悪さが浮きだつ。

 

劉「あいつは。」

趙「いつぞや友誼戦で見た日本軍の宇宙1級ですな。」

趙はうずくまり、すでに戦意を失っている。

 

片足をハッチに乗せたパイロットは劉と趙を見下ろす。

見下ろす?ちがう。見下しているのだ。下等生物を。

およそ人間が差せるとは思えない冷酷な目つき。

そしていつの間にいたのか、傍らには従兵の巨人がいた。

 

完全な敗北

 

劉は拳銃を腰のホルダから取り出す。

 

自決以外あるまい・・・

 

趙「劉大校!大校!」

劉「趙上尉。お前も進退を決めるのだ。」

劉大校、劉大校!!

 

劉大校!!

 

劉大校!

 

はっ!

 

劉が目を覚ます。

傍らには趙がいた。

「劉大校。お疲れのところですが、八一大楼がこのあと遠隔会議をするとのことです。」

劉は執務室の椅子で寝落ちしていた。

目が覚めてみればなんということはない。殺風景な執務室がそこにあった。

時間は昼の3時20分。

昼食の香辛料がどうも眠気を誘ったようだ。

しかしろくでもない夢を見た。

 

劉「趙。わが軍の野外戦闘訓練はどうだ。」

趙「年初の計画通りに進めております。部隊交代が近々ありますので、そこで一度練度が落ちるかもしれませんが、現在の仕上がりは上々と言ってよいでしょう。」

 

劉「警備は。」

趙「これも計画通りで今のところ異状は認められません。アメリカも日本も、インドにも怪しい動きは見られません。先日の会談で決まった中立地帯でも異状は報告されておりません。」

「そうか。そうだな。」

趙「だいぶお疲れのご様子。遠隔会議は延期してもらいますか?」

劉「いや、それは無理な相談だろう。会議は大丈夫だ。増派計画が議題に含まれる重要な会議だ。」

 

趙「そうそう。一つ報告が。連絡将校を交換する件ですが、許少尉を充てたいと思います。」

劉「そうか、そうしてくれ。」

 

劉はゆっくりと体を起こし、覗き窓から地球を眺めた。

 

人民解放軍に入ったのはなんでだったかな。

共産党の軍隊ではあるが、国と人民を守るんだ。などと若いころは思っていた。

その国と人民は、38万キロ先にある。

一体俺はなにをどう守っているのだろうな。

 

ふん

劉は鼻を鳴らした。

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