炊飯器と冷蔵庫   作:すりーみにっつ

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状況開始

宇宙で銃は撃てるのか。撃てるかどうかで言えば撃てるが、当たらない。まあ、一発目は当たるかもしれないが射手が反動をおさえられないから、二発目以降は全く期待できない。

あと、やはり1G環境前提で作られているため、おもわぬところでジャムが起きたり、不発になったりと不安定この上ない。

 

宇宙用の銃は各国がいろいろと試作しているが、今のところ日米中国、ヨーロッパくらいしか実用的なものはできていない。

まあ、いかに宇宙がぐっと身近になったとはいえ、宇宙用の銃なんてニッチもニッチ。需要がなさすぎる。

 

衛星軌道上で歩兵が撃ち合うのならともかく、その実用はステーションなどの宇宙施設の取り合いになるだろう。

幸い未だ宇宙戦争は起きていないが、起きるとすればそういった戦場が予想された。

 

しかし、そうなると、小銃の使用はステーションを破壊してしまうので、敵味方ともに禁忌となる。

船外活動服、船内活動服を着用した兵員を十分に撃ち倒す威力となると、どうしてもステーションの内装を破壊してしまう。

 

そもそもステーションを破壊していいならミサイルでもなんでも撃ち込めば事足りる。

 

そんなわけで、歩兵には威力が低めの拳銃や、テーザーガン、色物としては投網など、それはもう様々なものが試された。

 

今のところ航空宇宙自衛隊は隊員に低重力下徒手格闘、39式低重力下用自動拳銃、39式低重力下用自動小銃による戦闘を訓練させている。

これらの銃は反動を抑制する機構を備えているためかなり重い。

 

ちなみに月面はまた別の話

 

なかでも、低重力下徒手格闘訓練は、隊員の基本的体操法も含むため力を入れていた。

その格闘の中に刺撃と言われる技がある。

難しいことではない。

30センチほどの刺突棒で相手を突き殺す技だ。

ただの刺突棒ではない。

突いたときにAIが判定し、必要とあらば瞬発的な電撃や熱撃を施して、相手の活動服を破壊できる。

 

これは自衛隊体育学校で研究され、航空宇宙自衛隊の宇宙教育を担任する第6術科学校で普及されている。

 

「刺撃、でいきましょう。なに、フニャ棒使うから誰も怪我はしませんよ。」

桜野はフニャ棒を片手に持ち、もう一方のたなごころをぺちぺちとたたきながら言った。

 

ステーション長「ここなら電荷バトラーも使えますし、第四区画が空いているのでお貸しできます。」

タカマガハラステーション長が桜野を横目にチラチラみながら3中隊に説明をする。

JAXAのステーション長もなにやら桜野に頭が上がらないらしい。

 

「アメリカの大統領もヤツに忖度しかねんな。」

大谷が同僚の3曹に小声で言う。

 

徳田「しかし、桜野曹長。そちらは曹長を入れて10人。我々は66名。どういったやり方を考えておりますか?」

 

桜野「階級をあわせてやりましょう。ウチが3曹2人。士長が5人。1士が2人。9人だすので、そちらも階級をあわせて9人。」

 

加勢が、ハイ!と右手を挙げる。

桜野が加勢に顔を向ける。

「へえ、空自さんも手はグーなんだな。で、君。なに?」

「桜野曹長はご参加なさらないのでしょうか。」

徳田の尻が浮いた。もともと、浮いているが。

 

岩倉「加勢士長!良い質問だと思うが、こういう時はだね!階級あわせもあることだし!今回はご遠慮願おう!」

 

桜野が大爆笑する。

「アッハハハ。イッヒヒ!すまない。私も参加してみたいが、今回はあくまで若者の意気込みと技量をみたいと思いましてね。アハハ!」

 

徳田の肩が下がった。命拾いしたという表情だ。

 

質問をした加勢をキッと睨む陸自の隊員がいた。

ネームには吉川とある。階級は1士。

おそらく川路と入隊時期は同期だろう。

加勢はなんだか面白くないから舌を出してべーを返した。

 

第四区画は居室と倉庫からなり、四角いキューブがいくつか連結するかたちになっている。

双方対角の区画からスタートして相手の旗を取ったら勝ち。というルール。

 

参加者は電荷バトラーを施される。

(バトラーとは、当たり判定が付与される訓練用装置)

特殊な電荷を体に帯びると、「フニャ棒」が触れたときに中央管制モニタに判定が出る仕組みだ。

べつに「フニャ棒」だけでなく、AIが攻撃と判定したものは全て判定される。

 

一応、殴る蹴る、組付きなどは禁止。あくまで「フニャ棒」だけで戦うことになっている。

川路は、内心ちょっとガッカリした。

 

防護ゴーグルと訓練防具をつけた54連隊田中3曹が仲間に指示を出す。

「兎内、勝俣、ヒロシは右から。金澤と洋平、田代は左から。俺は吉川と佐々木で旗を守る。」

「おい、吉川聞いてんのか!」

「はい!」

「いいか、空自だからって油断すんなよ。無重力慣れはアイツらの方が上だ。」

 

 

一方、同じく防具に身を包んだ3中隊は大谷が指示をする。

「村田と原田は上から、津志田と由利、笹嶋、ミヤコは下から。俺は一人であっち、右から行く。フラッグは加勢と川路で守れ。」

「え、班長行っちゃうんですか。」

「俺、刺撃得意やけん。ぶっちゃけ一人で旗とっってくるわ。」

「ええー!」

 

 

「状況開始」

桜野が区画放送を流した。

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