猫又のにじさんじ日和   作:ひよこ大福

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第8話 盤面を読む猫又

@白妙ミコト

今日の20時から『Pokémon Champions』をします。

ダブルバトルのランクバトルです。

パーティーはもう作ってあります。

好きなポケモンだけで戦うわけじゃないので、僕の選出に文句を言わないでください。

#ミコト観察中

 

↪︎ポケモンきた!

↪︎対戦やってるの意外

↪︎初見じゃないの?

↪︎どんなパーティーか楽しみ

↪︎猫ポケモンだけで戦って

↪︎ニャオハは絶対入ってるよね?

↪︎ミコトなら対戦も強そう

↪︎スト6みたいにランク上位なのかな

 

↪︎@白妙ミコト

猫だけでパーティーを組むとは言ってません。

ちゃんと勝つために考えました。

ニャオハはかわいいですが、今回はいません。

 

↪︎かわいいって認めた

↪︎ミコトも猫だから仲間?

↪︎好きなポケモンは?

 

↪︎@白妙ミコト

配信で見せます。

予想して待っていてください。

 

午後8時。

 

配信が始まると、ゲーム画面の横に制服姿の白妙ミコトが現れた。いつも通り猫耳と二本の尻尾を出しているが、尻尾の片方には見慣れない黄色いリボンが結ばれている。

 

「こんばんは。聞こえてる?」

 

▶聞こえてる!

▶待ってた!

▶尻尾にリボン付いてる

▶ピカチュウカラー?

▶かわいい

 

「リボンは今日のゲームに合わせただけ。かわいいは余計です。ポケモンの配信だから、少し雰囲気を変えようと思って付けました」

 

ミコトは片方の尻尾を持ち上げ、結ばれたリボンを画面へ見せる。

 

「本当は両方に付けようと思ったんだけど、同じ位置に結ぶのが難しかったから片方だけにした。鏡で見ると左右が分からなくなるんだよね。片方を直してる間に、もう片方がほどけるし。だから途中で諦めました」

 

▶十分かわいい

▶片方だけなのも似合ってる

▶自分で結んだんだ

 

「自分の尻尾なんだから、自分で結ぶでしょ。誰かに結んでもらう方が難しいよ。尻尾を触らせないといけないから」

 

▶飼い主に任せて

▶綺麗に結びます

 

「始まったばかりなのに、もうゲームと関係ない話をしないで。今日は『Pokémon Champions』をやります。配信では初めてだけど、ゲーム自体は配信外で少し遊びました」

 

ゲーム画面が切り替わり、ミコトのトレーナーが表示される。白を基調とした服装に猫耳を思わせる髪飾りを付け、全体的にミコト本人へ寄せた姿になっていた。

 

▶アバターもミコトだ

▶猫耳みたいな髪飾り

▶服も白い

▶何時間かけたの?

 

「そんなにかかってない。最初に選べる中から、一番僕に近いものを組み合わせただけだから。髪の色はもう少し白くしたかったけど、今はこれが一番近かった。衣装が増えたら変えるかもしれない」

 

▶ちゃんとこだわってる

▶楽しんでるね

 

「自分で動かすなら、好きな見た目にしたいでしょ。対戦中はほとんど見ないけど、勝った時に映るから大事です」

 

ミコトはメニューを操作し、使用するバトルチームを表示した。

 

・クチート

・リキキリン

・ガオガエン

・アシレーヌ

・モロバレル

・ガチグマ

 

「これが今日使うパーティーです。ダブルバトル用に作りました。基本はリキキリンでトリックルームを使って、素早さの低いポケモンから先に動かします。相手がトリックルームを警戒してきた時は、無理に使わないで普通に戦うこともできます」

 

▶クチートいる!

▶猫ポケモンいない

▶全体的に遅そう

▶クチートが好きなの?

 

「クチートを選んだのは、メガシンカした時の火力が高いからです。見た目で選んだわけじゃありません」

 

▶聞かれてないところまで答えた

▶好きなんだ

▶かわいいもんね

 

「……好きだけど、それだけで入れたわけじゃない。普通のクチートで相手の攻撃を下げてからメガシンカできるし、トリックルームの中なら先に動きやすい。タイプも優秀で、攻撃できる相手も多い。ちゃんと理由があります」

 

▶たくさん説明するね

▶一番好き?

 

「一番かどうかは決められない。ポケモンはそれぞれ違うんだから、無理に順位を付けなくてもいいでしょ。でも、クチートは昔から好きだよ。前を向いてる顔はかわ……格好いいのに、後ろに大きな口があるのがいい」

 

▶またかわいいって言いそうになった

▶今日は素直になろう

▶クチートと並んだらかわいい

 

「対戦を始めます」

 

ミコトは話を強引に終わらせ、ランクバトルのダブルバトルを選択した。

 

「今期はまだあまり対戦してないから、今日はできるところまで上げます。目標はとりあえず負け越さないこと。初めて配信でやるゲームなのに、いきなり連勝するって言って負けたら、みんながずっと覚えてそうだからね」

 

▶よく分かってる

▶負けたら切り抜くよ

▶何連勝できるかな

 

「勝っても切り抜いてください。どうして僕の失敗ばかり残そうとするの?」

 

マッチングが始まり、対戦相手が見つかった。

 

「来た。最初の相手だから、ちゃんと見せるね」

 

相手のバトルチームが画面に並ぶ。

 

・リザードン

・エルフーン

・ガブリアス

・サーフゴー

・ゴリランダー

・ミロカロス

 

「速いパーティーだね。エルフーンでおいかぜを使って、素早さを上げて攻めてくる形かな。リザードンはメガシンカするならどっちか分からないけど、こっちはトリックルームを通したい」

 

▶見ただけで分かるの?

▶選出は?

▶相手のリザードン怖い

 

「最初はリキキリンとガオガエン。後ろにクチートとアシレーヌを置きます。ガオガエンで相手の動きを止めながら、リキキリンでトリックルームを使う。素直に通れば、そのあとはクチートで攻めます」

 

残り時間を確認しながら、ミコトは4匹を選択する。

 

「モロバレルも使いたいけど、相手にサーフゴーがいるから少し動かしにくい。ガチグマは通れば強いけど、リザードンとミロカロスがいる。最初の試合は安定する方でいくよ」

 

対戦が始まる。

 

ミコトはリキキリンとガオガエンを繰り出し、相手はエルフーンとリザードンを選出していた。

 

「予想通りだね。相手はおいかぜを使いたい。でも、それをそのまま通してもいい。こっちはトリックルームで素早さの順番を逆にするから」

 

▶エルフーンを止めないの?

▶ねこだまし?

 

「ねこだましはエルフーン。おいかぜを止めたいというより、リキキリンへのちょうはつを警戒してる。リザードンは初手から大きく動かず、まもる可能性が高いと思う」

 

ガオガエンのねこだましでエルフーンの動きを止める。リザードンはミコトの予想通り、まもるを選択した。

 

「ほら、まもる。これでトリックルームが通る」

 

リキキリンがトリックルームを使い、空間が歪む。

 

▶全部当たった

▶読み通り

▶次はどうするの?

 

「ここでガオガエンをクチートに交代する。相手はトリックルームのターンを減らすために、もう一度リザードンを守らせるかもしれない。でも、僕はエルフーンを倒すより、リザードンへ攻撃するよ」

 

▶守られたら攻撃当たらないよ

▶エルフーン倒した方がよくない?

 

「守ると思わせて、攻撃してくる可能性もあるから。それに、エルフーンはトリックルームがある限り、今すぐ倒さなくても怖くない。相手にとって一番困るのは、リザードンを失うこと。だから守りたくなるけど、さっき一度使ってるから連続で成功する保証はない。ここで何を選ぶかを見る」

 

ガオガエンが戻り、クチートが戦場へ出る。威嚇によってエルフーンの攻撃が下がったが、相手の2匹はいずれも特殊攻撃を中心に戦うため、直接の影響は少ない。

 

「威嚇は今の2匹にはあまり意味がない。でも、後ろにガブリアスかゴリランダーがいたら交代しただけで役に立つ。こういう小さな得を重ねるのが大事なんだよ」

 

エルフーンがおいかぜを使う。しかし、トリックルームによって素早さの順番が逆転しているため、相手のポケモンはさらに動きづらくなった。

 

「おいかぜを使った。これでトリックルーム中は、もっとこっちが先に動きやすくなる」

 

クチートがメガシンカする。後頭部の大顎が2つに増え、画面いっぱいに力強い姿が映し出された。

 

▶メガクチートきた!

▶格好いい!

▶ミコト嬉しそう

▶尻尾揺れてる

 

「好きなポケモンが活躍するんだから、少しくらい嬉しそうでもいいでしょ。いわなだれ、当たって」

 

メガクチートが放った岩の攻撃がリザードンを襲う。

 

リザードンの体力が一気になくなり、そのまま倒れた。

 

「よし!」

 

▶一撃!

▶強い!

▶本当に倒した

▶今の声嬉しそう

 

「リザードンはいわ技がかなり苦手だからね。これで相手の一番大きな攻撃役を倒せた。エルフーンだけではこっちを倒せないから、かなり有利になったよ」

 

相手の3匹目はガブリアスだった。

 

「ガブリアスか。メガクチートならフェアリー技で倒せるけど、相手もそれは分かってる。素直に攻撃したら、まもるでトリックルームの時間を使われるかもしれない」

 

▶じゃあ隣を狙う?

▶読み合いだ

 

「うん。ガブリアスは守ると予想して、エルフーンを攻撃する。リキキリンはアシレーヌに交代。リキキリンはトリックルームを使い直すために残しておきたい」

 

ガブリアスがまもるを使い、メガクチートのじゃれつくはエルフーンへ向かった。

 

「合ってた」

 

エルフーンも一撃で倒れ、相手の残りは2匹となる。

 

▶また読んだ!

▶クチート強すぎる

▶ミコトも強い

 

「クチートが強いのは本当だけど、動かしやすい状況を作ったから強く見えるんだよ。トリックルームがなかったら、攻撃する前に倒されることもある。強いポケモンを入れるだけで勝てるなら、みんな同じパーティーを使えばいいでしょ?」

 

相手の最後のポケモンはサーフゴーだった。

 

「サーフゴーか。ガブリアスと並んだなら、どっちもクチートに強い攻撃を持ってる。トリックルームはあと2ターン。ここはクチートを守らせて、アシレーヌでガブリアスを攻撃する」

 

▶クチートで攻めないの?

▶倒されそう?

 

「ここで無理に2匹とも倒そうとしなくていい。相手が一番倒したいのはクチートだから、攻撃が集まる。だったら守らせるだけで、隣のアシレーヌが自由に動けるでしょ」

 

メガクチートがまもるを使う。

 

ガブリアスの攻撃も、サーフゴーの攻撃も、揃ってクチートへ向けられていた。

 

「両方こっちだったね」

 

アシレーヌの水の攻撃がガブリアスへ命中し、体力を大きく削る。

 

▶完全に読んでる

▶相手の攻撃が無駄になった

▶ポケモン対戦も上手いんだ

 

「まだ1試合目だよ。最後まで終わるまでは褒めないで。褒められると、勝った気になって変な選択をしそうだから」

 

次のターン、メガクチートがガブリアスを倒し、アシレーヌがサーフゴーの体力を削る。トリックルームは終わったが、相手に残されたのは傷ついたサーフゴーだけだった。

 

「ここまで来たら大丈夫。クチートが倒されても、後ろにガオガエンとリキキリンがいる。4匹残ってるから、急いで決める必要もないよ」

 

サーフゴーの攻撃でメガクチートの体力がなくなる。

 

「あっ」

 

▶クチート倒された

▶悲しそう

▶仇を取ろう

 

「悲しくない。役目は十分に果たしたから。リザードンとエルフーンとガブリアスを倒したんだよ? これ以上を求めたらクチートが大変でしょ」

 

▶優しい

▶好きなの隠せてない

 

「ポケモンを大事にするのは普通です」

 

ミコトはガオガエンを繰り出し、最後はアシレーヌとの集中攻撃でサーフゴーを倒した。

 

・WIN

 

「勝った!」

 

▶初戦勝利!

▶おめでとう!

▶選出から全部上手かった

▶解説分かりやすい

▶クチート大活躍!

 

「うん。クチートがちゃんと活躍できたのが一番よかった。最初にトリックルームを通せた時点で有利だったけど、相手がどこで時間を稼ごうとするかも分かりやすかったからね」

 

勝利によってVPを獲得し、ランクのゲージが伸びる。

 

「VPももらえた。これはポケモンを仲間にしたり、育てたりする時に使うから、もっと集めたい。使いたいポケモンがまだ何匹もいるんだよね」

 

▶次は猫パーティー作ろう

▶ニャオハを育てて

 

「猫パーティーは勝てる形を思いついたら考える。でも、見た目だけで6匹を決めるのは嫌だよ。せっかく使うなら、それぞれに役割を持たせたいから」

 

すぐに次のマッチングを始める。

 

2戦目の相手は、先ほどとは違って耐久力の高いポケモンが多いパーティーだった。

 

「今度はトリックルームを使われる側かもしれない。相手にも遅いポケモンが多いから、何も考えずにトリックルームを使うと、向こうを助けることになる」

 

▶同じパーティーでも戦い方が変わる?

▶クチートは出す?

 

「変えるよ。6匹全部を毎回使えるわけじゃないから、相手の6匹を見て、どの4匹なら一番動きやすいか考える。クチートは……出したいけど、今回は少し厳しいかもしれない」

 

▶好きなポケモンを信じて

▶クチート見たい

 

「好きだからって、苦手な相手ばかりの中へ出す方がかわいそうでしょ。今回は休ませます。僕は勝つために対戦してるから、そこはちゃんと決めるよ」

 

2戦目はガオガエン、モロバレル、アシレーヌ、ガチグマを選出した。

 

先ほどとは異なり、相手の攻撃を受けながら少しずつ有利な位置を作る戦いになった。ガオガエンで相手の攻撃力を下げ、モロバレルで攻撃を引きつけ、その隙にガチグマが力を発揮できる状態を整えていく。

 

「相手はガチグマを倒したいけど、モロバレルが攻撃を引きつけてるから簡単には触れない。ここで無理にガチグマを動かさず、まもるを使うよ」

 

▶攻撃しないの?

▶倒せそうなのに

 

「倒せそうな時が一番危ないんだよ。相手も、ここでガチグマを止めないと負けるって分かってる。だから大きな攻撃を使ってくるはず」

 

ガチグマがまもるを使った直後、相手の2匹が攻撃を集中させる。

 

「やっぱりね。このターンは攻撃できなかったけど、相手の狙いが分かった。次はガチグマをガオガエンに交代して、モロバレルで相手を眠らせる」

 

▶すぐに攻撃しないんだね

▶スト6の時と似てる

 

「少し似てるかも。相手が何をしたいのか考えて、その行動が一番強くなる瞬間をずらす。自分の技を押しつけるだけじゃなくて、相手の選択を利用できた方が楽しいんだよね」

 

ミコトの読み通りに試合が進み、最後はアシレーヌの全体攻撃が相手の2匹を同時に倒した。

 

・WIN

 

「2連勝!」

 

▶強い!

▶全然違う戦い方だった

▶説明しながら勝てるのすごい

▶もうポケモンも上位勢?

 

「まだ2回勝っただけ。すぐに上位勢って言わないで。僕より上手い人はたくさんいるし、知らない組み合わせもいっぱいあるから。ただ、対戦ゲームは好きだよ。相手が何を考えてるか分かった時が一番気持ちいい」

 

▶負けず嫌いだから?

▶どのゲームでも読み合いが好きなんだ

 

「負けず嫌いなのは認める。でも、勝つことしか楽しくないわけじゃないよ。負けても、自分が知らなかった戦い方を見せられたら面白い。次に同じことをされた時、どう返すか考えられるから」

 

3戦目のマッチングが始まる。

 

「次も勝ちたいけど、そろそろ簡単にはいかないと思う。連勝すると強い相手と当たりやすくなるからね」

 

相手のバトルチームを見た瞬間、ミコトの表情が少しだけ固まった。

 

「……このパーティー、強そう」

 

▶珍しく弱気

▶何が危ないの?

 

「選択肢が多い。速く攻めることもできるし、トリックルームも使える。どっちで来るか、今の時点では決めきれない。こういう相手が一番難しいんだよ」

 

選出時間が減っていく。

 

ミコトは何度も相手の6匹を確認し、自分のポケモンを入れ替える。

 

「待って。最初はリキキリンとクチートにしようと思ったけど、それだと相手のこの並びがきつい。ガオガエンから入って様子を見る。隣はアシレーヌ。後ろにリキキリンとクチートを置く」

 

▶結局クチートは入れるんだ

▶好きだから?

 

「後半なら動かしやすいと思ったからです。好きだからじゃありません」

 

▶両方でしょ

 

「……両方でもいいでしょ。もう時間がないから決定するよ」

 

3戦目が始まる。

 

序盤から相手の交代と守りに翻弄され、ミコトはなかなか思い通りに攻撃できなかった。

 

「上手いな、この人。こっちが攻撃したい方を毎回下げてくる。しかも、交代した先でも攻撃を受けられるようにしてる」

 

▶苦戦してる

▶頑張れ!

 

「大丈夫。まだポケモンの数は同じだから、焦らなくていい。相手はずっと正しい交代をしてるように見えるけど、交代したターンは技を使えない。こっちはその間に少しずつ準備できてる」

 

ミコトはリキキリンを場へ出し、トリックルームを使う。しかし、相手もそれを読んでおり、トリックルームを解除する技を重ねてきた。

 

歪んだ空間が、すぐに元へ戻る。

 

「……返された」

 

▶相手も読んでた

▶すごい試合だ

 

「相手は最初から、僕がどこかでトリックルームを使うと思ってたんだろうね。さっきまで使わせないように動いてたのも、このタイミングで重ねるためだったのかもしれない」

 

ミコトの尻尾の動きが止まる。

 

「でも、今ので相手が持ってる技は分かった。次は同じことをされないよ」

 

相手の攻撃でリキキリンが倒され、ミコトは先に1匹を失った。

 

「クチートを出す。トリックルームはないけど、相手の場にいる2匹なら素早さは負けてない。ここでメガシンカして、右を攻撃する」

 

▶左じゃないの?

▶体力が少ない方は左だよ

 

「左はまもる。さっきから、体力が減ったポケモンをすぐに倒させないように動いてるから。僕に左を狙わせて、その間に右でクチートを倒したいんだと思う」

 

相手の左側のポケモンがまもるを使う。

 

「合ってる!」

 

メガクチートの攻撃が右側へ命中し、一撃で倒した。

 

▶読んだ!

▶一気に同数!

▶クチート格好いい!

 

「これで3対3。まだ分からないよ」

 

相手は次のポケモンを繰り出す。

 

そこからは、1ターンごとに倒すか倒されるかが決まる激しい展開となった。ミコトは技を選びながらもほとんど話さなくなり、相手の残り時間とポケモンの体力を見比べている。

 

最後に残ったのは、ミコトのメガクチートと相手のポケモンだけだった。

 

どちらも次の攻撃を受ければ倒れるほど体力が減っている。

 

▶最後の1匹同士

▶素早さはどっちが上?

▶頑張れ!

 

「素早さは相手。でも、相手はクチートを一撃で倒せる技を持ってるはず。普通に攻撃したら負ける」

 

技の選択画面で、ミコトはふいうちにカーソルを合わせた。

 

「だから、先に攻撃する」

 

▶ふいうち!

▶相手も読んでそう

 

「うん。相手が変化技を使ったら失敗する。でも、相手も体力が少ないから、クチートの攻撃を受ける余裕はない。僕がふいうちを使わないと思って攻撃するか、ふいうちを警戒して別の技を使うか。最後は読み合いだね」

 

残り時間が減っていく。

 

ミコトは一度カーソルを別の技へ動かし、すぐにふいうちへ戻した。

 

「変えない。ここまでクチートで来たんだから、最後も信じる」

 

技が決定される。

 

メガクチートが相手より先に動いた。

 

「お願い!」

 

ふいうちが命中し、相手の最後のポケモンの体力がなくなる。

 

・WIN

 

一瞬の静寂のあと、ミコトの二本の尻尾が勢いよく持ち上がった。

 

「勝った!」

 

▶勝った!

▶3連勝!

▶最後のふいうち格好よかった!

▶すごい試合だった

▶クチートを信じて正解だった!

 

「危なかった……。相手が攻撃しない選択をしてたら、たぶん負けてた。でも、あの状況なら攻撃してくると思ったんだよ。クチートを倒せる時に倒さないと、次のターンは向こうが耐えられなかったから」

 

▶手震えてない?

▶緊張してた?

 

「少しだけね。技を決めたあとは何もできないから、見てるしかなかった。スト6なら最後まで自分で操作できるけど、ポケモンは選んだ技が正しいか、結果が出るまで分からない。その時間が怖いけど、面白い」

 

勝利画面からランクの表示へ切り替わる。3連勝によってゲージが大きく伸び、ランクが1段階上昇した。

 

「ランクも上がった!」

 

▶昇格おめでとう!

▶初配信で3連勝!

▶ポケモンも上手かった

▶クチートもミコトも格好いい!

 

「そう。今日は最後まで格好いいで終われそうだね」

 

▶リボン付けた尻尾はかわいい

▶勝った時の反応もかわいかった

 

「どうして最後に付け足すの!」

 

▶今日もかわいかった

▶クチートとお揃い

▶好きなポケモンで勝ててよかったね

 

「……それは、よかったけど」

 

ミコトは片方の尻尾に結んだ黄色いリボンへ触れ、ほどけていないことを確認した。

 

「好きなポケモンが活躍すると、普通に勝つより嬉しいね。パーティーを考えてる時は、クチートを外した方が安定するかもしれないって何度か思ったんだけど、残してよかった」

 

▶好きだから入れたんじゃないって言ってたよ

 

「好きなだけじゃないって言ったの。ちゃんと強いし、役割もある。その上で好きなんだから、一番いいでしょ」

 

▶素直になった

▶クチートへの愛を語る猫又

 

「愛を語ってない。活躍したから褒めてるだけ」

 

再びランクバトルの画面を開き、ミコトは次の対戦を探そうとする。しかし、時刻を確認すると手を止めた。

 

「もう3時間近くやってる。3試合しかしてないのに、思ってたより時間が経ってるね。パーティーの説明を長くしすぎたかな」

 

▶分かりやすかったよ

▶もっと見たい

▶次もやって

 

「僕もまだやりたいけど、今日はここまでにします。今の試合で綺麗に終われたから、このあと負けて機嫌が悪くなる前にやめた方がいい」

 

▶負けると思ってる?

▶連勝続けよう

 

「勝てると思ってても、負ける時はあるよ。それに、僕は一回負けたら取り返すまでやめられなくなるから。今から始めると、朝まで終われないかもしれない」

 

▶負けず嫌い

▶配信外で潜りそう

 

「配信を切ったあとに続けたら、みんなに見つからないでしょ」

 

▶やる気だ

▶ランクを確認しておくね

 

「確認しなくていい! 次の配信でランクが上がってても、少し練習しただけだからね」

 

▶少しで済むかな

▶次は別のパーティーも見たい

 

「別のパーティーも作りたい。今日はトリックルームを中心にしたけど、次は速いポケモンを使って、最初から攻める形も試してみたいな。VPも増えたから、新しく仲間にできるポケモンを見ながら考えます」

 

ミコトはゲーム画面を閉じ、配信終了用の画面へ切り替えた。

 

「今日は『Pokémon Champions』のランクバトルを見に来てくれて、ありがとうございました。3戦して3勝。ランクも上がったし、クチートも活躍したから、最初の配信としては完璧だったと思う」

 

▶全部勝った!

▶次回も楽しみ

▶目指せ最上位!

▶お疲れさま!

 

「最上位は簡単に言わないで。目指すならちゃんとパーティーを考えて、もっと対戦しないといけないから。でも、途中で諦めるつもりもないよ。やるからには、行けるところまで行きたい」

 

二本の尻尾が自信を表すように大きく揺れる。

 

「次までに、今日の3試合を見直しておきます。勝った試合でも、もっと安全に動けたところはあったと思うから。みんなも暇だったら、アーカイブでもう一度見てね。僕の読みが当たったところだけ切り抜いてもいいよ」

 

▶外れたところは?

▶クチートを出すか迷ってたところは?

▶かわいいところも切り抜くね

 

「当たったところだけって言ったでしょ! 特に最後のふいうちは絶対に入れて。あそこが今日一番格好よかったから」

 

▶分かった

▶尻尾が跳ねたところまで入れる

▶リボンも映しておくね

 

「もう好きにして。勝ったことが分かれば何でもいいです」

 

ミコトは少し頬を膨らませながらも、満足そうに笑っていた。

 

「それじゃあ、今日は終わります。次の配信にもちゃんと来てね。おやすみ」

 

▶おやすみ!

▶3連勝おめでとう!

▶次も応援する!

▶クチートとミコトかわいかった!

 

「だから、最後は格好いいで終わって!」

 

最後までリスナーへ言い返しながら、白妙ミコトの初めての『Pokémon Champions』配信は終了した。

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