槍の聖女の軌跡を超えて   作:アマシロ

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学院祭に向けて

 

 

 

 

 

 

 

「―――それでは、具体的な案を皆さんから募りたいと思います」

 

 

 

 

 というわけで来月は学院祭!

 委員長のエマと副委員長のマキアスが教壇に立って話を纏めてくれる。

 

 

 

 

「開催日程は10月23日、24日の2日間。出し物などの設置準備は前々日の午後からになります。当然、その前までにも入念な準備が必要になりますね」

「……まあ、その意味でも何にするかどうかは重要だろう。展示、イベント、ステージ……飲食店舗なども許可されている。そうでしたね、クロウ先輩?」

 

 

 

「ま、単なる展示ってのはどこもやらんと思うけどな。なんつーか、それをやったら学生として負けってカンジ?」

 

「まあ、まずはみんなでアイデアを集めていきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、みんな心ここにあらずな状態で。

 今ちょうど理事会が行われており、そこで今月の特別実習が行われるかどうか決定されるとあってそちらに意識が向いてしまっていた。

 

 

 

 とはいえサラ教官がやってきて特別実習が無事に開催されることが決定されたと伝えられ。ようやくみんなの心が学院祭に向き始めるのだった。

 

 

 

 

 まあ結局はリィン君が持ってきてくれたミニコンサートの案に決定するんだけど。

 

 

 

 

 

 うわああ……リィン君が手に入れてくれた去年のトワ会長の映像カワイイがすぎるんだが……。いや衣装が際どすぎる……よくあのトワ会長にこんなの着せたな。

 

 私にこれ着せようとしたらグランドクロスするぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 実技テストの相手はサラ教官。

 まあ私としては特段語る内容もない。

 

 前回もサラ教官ほぼ本気だったし。こっちも今回はリィンたちが勝ってるから遠慮なく勝たせてもらった。

 

 ……いや、リィン君やばいな。サラ教官も驚いていたが、これはもう達人級に片足突っ込んでるかもしれない。

 

 

 

 

 

 そして発表される実習地。

A班がルーレ、B班が――――オルディス! オルディス!? ブリオニア島の時に思いっきり通ったじゃんオルディス!

 

 

 今回はB班に割り振られているが、まあこのリィン君ならルーレくらいはそこまで危なくないだろうし別にいいか……。

 

 

 

 

 

 

 で。サラ教官の指示で出発日は朝9時に士官学院のグラウンドに集合ということで。

 ……あ。もしかしてアレか。カレイジャス!

 

 

 

 

 いやほんとに、原作知識も穴だらけになってるけど……。

 実際に見てみると感慨深いものがある。

 

 

 

 速い! でっかい! カッコイイ!

 やっぱり巨大メカは男心をくすぐるよね。

 

 カレイジャスはカッコ良かった……。

 今回の実習の感想はそれに尽きる。

 

 皇族の船で来たということで、カイエン公もある程度配慮せざるを得なくなり。それでもやっぱり貴族派の圧力は強くて。

 

 

 

 

 メタ的にも言うとリィン君がいないから特に何も起こらず。

 

 

 

 

 リィン達A班がザクセン鉄鉱山の事件を無事に解決したと聞いて安堵した程度である。

 でも“V”は宰相になりたてのオズボーンを脅しつける任務で猟兵団を皆殺しにされた“逆恨み”だと言ってたらしいけど、それってつまり猟兵に妻とリィンを殺された直後のオズボーンってことで……うん、まあ、タイミングがあまりにも最悪すぎる。

 

 そりゃあオズボーンもマジギレ案件だろう。全部黒いアレが悪いよアレが。

 

 

 

 

 

 

 

 とはいえ、その事件の解決と先月のガレリア要塞の件で皇帝陛下と皇妃殿下に拝謁した私たちは、ユミルへの慰安旅行に出かけることになり。ついにリィン君が初伝詐欺を卒業して中伝になりました。

 

 

 

 

 そんなこんなで色々あったけど、私たちには学院祭の準備が待っている。

 マキアスとユーシスのデュオ、エマのソロ曲、そして何故か追加される私のソロ。

 

 曲だけなら楽器より楽かな?と思ったけどエリオット鬼教官がそんなに優しいハズもなく。どう見てもノリノリのクロウと一緒にダンスのフリやらとんでもなく細かく指導されることになった。

 

 

 

 

 まあ母様の娘としてこのくらいは余裕なんですけどね! さすが母様スペック。歌も踊りも余裕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とかなんとかやっていたら、あっという間に学院祭の準備の日になり。なんだかリィン君が衣装を帝都までバイクで取りに行くので手伝ってほしいとのこと。

 

 ………リィン君や。それは貴重な好感度稼ぎポイントでは…? 私を誘ってどうするんだ。自分で言うのも何だけど、結社の使徒の娘だよ私。

 

 まあいいけど。

 もしリィン君が強くなったことでヴァリマールがオルディーネに勝ったらその時は――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイクのサイドカーで風を受けて、ライナの長い金髪が靡く。

 <槍の聖女>その人とも思える結社の使徒だというアリアンロードさん。その娘であるライナもまた、聖女と呼ばれてもなんら不思議がないほどに容姿が整っていて。

 

 けれどリィンにはライナが今はどこか、何かに悩んで苦しんでいるように見えて。

 

 

 

 

「リィンさん? いくらリィンさんでも、よそ見は危ないですよ」

「あ、悪い」

 

 

 

 

 

 勘違いなら、それでいい。

 確実に二人きりになる場面、この学院祭の準備の間はもうないかもしれない。

 

 

 

 

「なあ、ライナ。何か悩んでいないか?」

「―――――…さすがは八葉一刀流中伝のリィンさんですね」

 

 

 

 

 少し茶化したような言い方は、どこか誤魔化そうとするようにも思えて。

 踏み込むべきか迷っている間に、ライナは深くため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「はぁ……。リィンさんに見抜かれるなんて、と言いたいところですけど。リィンさん、そのあたり得意分野ですよね。ハイパー朴念仁のくせに」

「ハイパー朴念仁って……」

 

 

 

 

 かくいうライナこそ、他クラスの男子からよく告白されているのを見かけるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、そんなことはいいんです。………これまでの実習からも明らかなように、リィンさんの前途には多くの試練が待ち構えていると思うんです」

 

「嫌な予想すぎる……」

 

 

 

 

 

「私は……―――《結社》の使徒アリアンロードの娘です。この先の“激動の時代”で《Ⅶ組》の皆さんが選ぶ選択と、私の選ぶ選択―――それが重ならないことも出てくるでしょう」

 

「なんだ、そんなことか」

 

 

 

 

 

「そんなことって……私にとってはけっこう一大事なんですが」

「ユーシスだって公爵家の人間だし、マキアスだってお父さんが帝都知事として革新派の中枢にいる―――けど、ぶつかり合ってより強固になることだってある―――それこそこれまでの実習で明らかなんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 ライナはちょっと目を見開いた後、苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

「そうなるといいんですけど」

「ライナは俺たち《Ⅶ組》の大切な仲間だ。俺もそうだし、他の皆だってライナが苦しんでいるなら助けに行くし、迷っているなら連れ戻しに行くさ」

 

 

 

 

 

 心からの言葉だったのだが、なぜかライナからは冷たいジト目を向けられて。

 

 

 

 

「………リィンさんって、不埒ですよね」

「いや、なんでだ!?」

 

 

 

 

 

「ちょっとドキっとしました。こんなことを言って回っているなんて不埒以外の何物でもないですよ」

「言って回った覚えはないんだが……」

 

 

 

「本当ですか? エリゼさんに「そういうところですよ」って怒られてないですか?」

「………いや、まあ、確かになぜかエリゼに怒られることはあるけど」

 

 

 

「……ふむ。やっぱり有罪………と言いたいところですが、今回だけは勘弁してあげます」

「それは助かる」

 

 

 

 

 

「ですが、覚悟することですね。―――リィンさんが“壁”を乗り越えたその時は、私が立ちはだかります」

「いつまでもライナに負けっぱなしは悔しいからな。Ⅶ組の皆の力を合わせて、必ずライナを連れ戻すさ」

 

 

 

 

「そこは『俺の力で連れ戻す』んじゃないんですか?」

「ははは……さすがに弁えてるさ」

 

 

 

 

「ふふっ。仕方ないですね、合格にしておいてあげます」

 

 

 

 

 そうこうしているうちにバイクはヘイムダルに到着し。

 クロウ達が去年お世話になったというブティック《ル・サージュ》で。二人で荷物を受け取って外に出ると何故か現れるクロチルダさん。

 

 

 

 

 

「………って、何をしてるんですかヴィータ姉さま」

「騒ぎになっちゃうと困るから、今はミスティでお願い。それよりライナは……デートかしら?」

 

 

 

「流石にリィン君が相手でもデートするつもりはないですけど」

「ステージをやるので、その衣装を受け取りに来たんですよ」

 

 

 

「あら、そうなの? 通りで大きな荷物だと思ったわ。駆け落ちだったらどうしようかと思っちゃった」

 

 

 

 

「姉さま……計画バラしますよ」

「ふふっ、ごめんごめん」

 

 

 

 

「その、実は………」

「学院祭でコンサート! いいわねぇ! うーん、面白そうじゃない! 私もスケジュールが合えば見に行っちゃおうかしら」

 

 

 

「プロの方にお見せできるレベルじゃないですけど……」

「音楽はハートよ、ハート」

 

 

 

「母様も来てくれるといいんですけど……」

「あら。ライナが頼めばイチコロじゃない?」

 

 

 

「『できる限り行けるようにします』って」

「それ多分『絶対行く』って意味よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、帰りのバイクはサイドカーが荷物でいっぱいになる都合上タンデムで乗ることになるのだが。………むしろ平然と密着してくるライナに流石の俺も少し心臓が早くなってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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