―――――ライナ。
クラスメイトの中でも特に異質というか、特殊というか……な立ち位置にいるのが彼女である。
浮世離れした美しさとか、身の丈より大きな
(……まあ、それはこちらも同じなんだが)
“誰か”に似ている、奇妙な感覚。
エリゼとはまた違った意味で、“妹”っぽいというか、なんというか。それでいてどこか世慣れた雰囲気を出す時もあり、世間知らずな一面もあり。
なんというか、見れば見るほど変化する不思議な少女であった。
ただ、旧校舎で見せた圧倒的な破壊力の戦技―――“鬼の力”よりも凄まじいのではと思えるそれを完全に制御している姿には見習いたいと思うし、機会があれば指南してもらいたい――――いや、そういえば手合わせを頼まれていたか。
―――――――――――――――――
Ⅶ組って最初はギスギスしてたイメージあったけど、意外と大丈夫だった。
リィンが毎度のように地雷撤去に駆り出されるせいでギスギスしている印象だっただけで、纏まりが一切ない以外はフリーダムな感じで居心地は悪くない。
アリサもエマも優しいし、ラウラは手合わせで正面から粉砕したら仲良く?なった。
ガイウスもエリオットも人柄は保証付きだし、ユーシスもなんやかんやで面倒見がいい。マキアスはまあ諦めてる。フィーも現状フリーダムすぎる。
そしてリィンは―――――。
「弐の型――――疾風!」
独特の歩法と緩急から、まるで疾風のように移動する二の型。
視線で《見る》のでは間に合わないと判断し、《呼吸》を読んでランスの柄の部分で受け流す。
「なるほど、これは疾い。クロスベルの《風の剣聖》が強いと言われるのも道理ですね」
「はは……完全にいなされて面目ないが……初伝でしかない俺と比べるのは流石にな」
八葉一刀流を俺なんかを基準にされては心外だ、とでも言いたそうなリィン君だけど君あと数年したら剣聖になる超逸材だからね。なんなら八葉一刀流の後継者ポジじゃん。
「“理”で言えばリィンさんのその型も土台がしっかりとした良い技だと思います。足りないのは“恐れ”からか踏み込みが浅いからでは?」
度々作中で言及される“鬼の力”の制御問題である。
解決されるのは閃の軌跡Ⅱの中盤、自分だけでなく、自分を信じ、自分を支えてくれる人たちを信じることで制御できるようになる。
それだけリィンにとって、エリゼから避けられてしまった(勘違い含む)のは大きな事件だったのだろう。
まあ今はまだ無理だろうけど、カウンセリングは無意味ではないはず。
Ⅶ組の仲間として――――そして一人のファンとして、リィン・シュバルツァーを応援したい気持ちは本物である。
「リィンさんは“全力”を出すことを“恐れ”ている。しかしその“全力”――――果たして私に届きますか?」
「分からない。……いや正直なところ、あんなガーゴイルを吹き飛ばす時点でライナならなんとかしそうな気はするんだが………」
おや、思ったより高評価でなにより。
これでも母様に死ぬほどしごかれているので、戦闘力にはそれなりに自信がある。
と、内心でドヤっているとリィンは深刻そうな顔で自分の手を見つめて言った。
「“恐れ”――――そうだな。俺は、怖いんだと思う。俺の奥で眠っている“力”が、また誰かを傷つけたり、怖がらせてしまうんじゃないかって――――」
「“力”はあくまで“力”でしかない――――今のリィンさんにはそれだけでは不足かもしれませんが。……いえ、もしかすれば――――」
「ライナ?」
「こういう時、母様ならきっとこう言うでしょう。『私を乗り越えて見せなさい』と」
「猛烈に嫌な予感がするんだが―――!?」
「大丈夫です、手加減はします。――――さあ、耐えてみなさい!」
本気の闘気をリィンに向けて叩きつける。
さあ、これからランスでぶち抜くぞ、と警告するように。
極限の集中で、ゆっくりと動く世界でリィンの目を見る。そこにあるのは、驚きと、僅かな怯懦。
超高速で突きこまれたランスに辛うじて合わせられた防御をぶち抜いて、リィンはゴムボールのように撥ね飛ばされる。
土煙に覆われた旧校舎付近の森の中、木をなぎ倒して止まったリィンの闘気は―――感じない。気絶したのだろうか。否。
「――――笑止。この程度で何を守るというのですか?」
『―――――シャァアアアアアッ!』
あえて挑発するように呟けば、先ほどよりも更に速く、疾く、赤黒い闘気を纏った白髪のリィンが飛び出してくる。
なるほど、これがリィン本来の技の冴え――――かなぁ?
「動きが雑です」
読み合いとか手加減の問題もあって、何ならさっきまでの方が相手しにくかったかもしれない。
ランスの柄で軽くいなすこと数合、徐々にリィンの目に理性が戻ってくる。
なんとか制御を取り戻そうと―――回避しようとするリィンに向けて、叱咤を飛ばす。
「リィン、余計なことを考えないで! 貴方にできる最高の技を、私にぶつけてみせて!」
『ぐっオォオオオ―――――無茶を言う!』
暴れ馬を乗りこなそうとする、あるいは激流に逆らうがごとく、リィンの動きには無駄しかない。
手加減とは舐められたものである。
もう一撃、リィンごと木々をなぎ倒す。
「ならば、ここで引導を渡しましょう――――! 聖技、グランドクロス!」
『グ、ォォぉおおおおおおっ! 裏疾風!』
もちろん本気ではない。
撃つ“フリ”だけだが、それでも真に迫るものはあっただろう。
防御は無駄と割り切り、回避と反撃を試みたリィンの動きはまあ及第点と言ったところ。
わざと大き目の隙を晒したこともあり、一撃もらってしまったが――――まあ母様風に言うなら兜を割られたくらいの気分だろうか。
「ふむ。火力もそれなりですね」
『…………だ、大丈夫か!?』
「――――では、今度はちゃんとこちらも攻撃しますので。さあ、構えて下さい!」
『ライナ!?』
「身体で覚えてみせなさい――――《聖技・グランドクロス》!」
『うおおおおおっ!?』
―――――――――――――――――――――
「――――死ぬかと思った」
「怖かったですね。怒ったベアトリクス教官」
というわけで、リィンがけっこう大ダメージを受けたので保健室行き。
包帯ぐるぐる巻きでベッドに寝かされた姿は非常に可哀想。絆イベントやろうとしたら保健室行にされる主人公がいるらしいですよ皆さん。
「いやライナの技の方が怖かったんだが」
「それはリィンさんが怒られてないからですよ。リィンさんの鬼の力よりベアトリクス教官の方が怖いです」
「いやライナの方が怖いからな」
「まあそうでしょう。力はただ力――――無暗に振るえば人を傷つける」
「今回はライナに俺が傷つけられたんだが…?」
「ほらあれです、激流に逆らうのではなく身を任せることも時には大事だということです」
ジト目で見てくるリィンはちょっと新鮮かもしれない。
リィンにもこんな一面があったのだなぁ、と思わず笑ってしまうと、リィンは照れたように頬を掻いて視線を逸らした。
「とりあえず、もう叩きのめすのは勘弁してくれ……」
「ふふっ。善処しましょう―――とはいえ、最低限の制御はできていましたね」
まあリィンが敵味方区別なく襲ったことなんて無いので、そのへんの心配は一切していなかったのだが。鬼気で暴走してて操作不能でも、一貫して味方は攻撃しないからね。何この主人公。主人公だけど。
「……そう、だな。俺も“力”に流されるだけじゃない、のか……」
「もし味方を攻撃しそうになったら私が殴って止めますので、ご安心を」
「全く安心できないんだが……」
「ふふっ、冗談です」
「冗談に聞こえない」
「大丈夫ですよ。信じてますから、リィンさんならそんなことにはならないって」
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「大丈夫ですよ。信じてますから、リィンさんならそんなことにはならないって」
夕暮れの保健室。
ついさっきまで自分をボコボコにしていた少女が屈託のない笑みを浮かべる。
そこに浮かんでいるのは、深い信頼。
なぜ自分なんかをそんなに信じてくれるのか―――。
思わず問いかけると、ライナは笑みを浮かべて答えた。
「絶体絶命の危機にこそ、人の本質が見えます。つまりリィンさんは、絶体絶命でも暴走しそうでも相手に気遣ってしまう底抜けのお人好しだってことです」
「それ、褒めてるのか…?」
「割と褒めてます」
「そうなのか…」
しかし確かに、とんでもない荒療治ではあったが“力”を制御できる実感は少しばかり湧いてきて。
「けどライナ、もうちょっと穏便な方法で頼みたいんだが」
「……すみません、うちの母様がだいたいこんな感じなので。つい」
「つい」で出されていい火力じゃなかった気がするんだが。
けど、それでも。『絶体絶命の危機でも相手を気遣える』――――その言葉は、常に“力”への不安に囚われていた心に、スッと沁み込んでくるようで。
「……そうか。気遣えてたんだな」
「はい。私の百倍くらい」
「…………ライナはもうちょっと加減してくれ」
「え、えへっ? 母様の負けず嫌いが移っちゃいましたかね……」
リィンは『神気解放』を覚えた!
神気解放 CP100
己の中に秘めた“力”を解き放つことで、全能力向上(弱)およびクラフト強化(3ターン)。簡単に言うと『神気合一』の弱体化バージョン。
裏疾風 CP80
いつも便利な裏疾風。神気解放で使えるようになる。神気合一の時と比べて範囲が狭い。