槍の聖女の軌跡を超えて   作:アマシロ

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トリスタ決戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ガレリア要塞、消滅。

 

 

 

 まるで何かにくりぬかれたように消滅してしまった要塞。神機アイオーンと“幻の至宝”が起こした信じがたい事件から数日。

 

 エレボニア帝国はかつてない緊張に晒されることになった。

 クロスベルに帝国の機甲師団が侵攻してあっけなく返り討ちにあっただとか、宿敵カルバート共和国がクロスベルと手を組んだのではないかなどという噂まで。

 

 

 

 

 そんな騒動を受けて、サラ教官が持ってきたのはオズボーン宰相が今日の正午からドライケルス広場で声明を発表するを行うという話と、授業は中止になり今日は自習になるという連絡で。

 

 

 

 そしてクロウとミリアムがいないという報告。

 ミリアムはまあ普段通りとして、クロウはね…。

 

 

 

 

 

 

 というわけでクロウを除いたⅦ組全員でクラスに集まり、導力ラジオを聞く。

 

 

 

 

 

『まもなく正午……オズボーン宰相による声明が始まろうとしています。クロスベル独立という事態とガレリア要塞消滅という危機を受けて宰相がどんなメッセージを出すのか。まさに、これから出される声明が今後のエレボニアを左右すると言っても過言ではありません。それでは帝都、ドライケルス広場の実況レポーターに代わりましょう』

 

 

 

 

『はい、こちらヘイムダル。ドライケルス広場のミスティです』

 

 

 

 って、何してるんですかヴィータ姉さま。

 

 

 

 

『―――あ、いよいよ宰相閣下の演説が始まるみたいですね。それではみなさん、お聞きください』

 

 

 

 

『帝都市民、並びに帝国の全国民の皆さん―――御機嫌よう。エレボニア帝国政府代表、ギリアス・オズボーンである。――――諸君も、ここ数日の信じがたい凶報はご存じかと思う。れっきとした帝国の属州であるクロスベルが、“独立”などという愚にも付かない宣言を行い……あろうことか、帝国が預けていた資産を凍結したのである!』

 

 

 

 

『当然―――我々はそれを正すために行動した。それは侵略ではない。“宗主国”としての権利であり、義務ですらあると言えるだろう。――――しかし“彼ら”は余りに信じがたい暴挙に出た!』

 

 

 

 

『《ガレリア要塞》――――帝国を守る鉄壁の守りを謎の大量破壊兵器をもって攻撃……これを消滅せしめたのである!』

 

 

 

 

『諸君―――果たしてそのような“悪意”を許していいのか!? 偉大なる帝国の誇りと栄光を、傷つけさせたままでいいのか!? 否――――断じて否!』

 

 

 

 

『鉄と血を贖ってでも、正義は執行されなくてはならない!』

 

 

 

 

 

 と、そこでサラ教官がなぜかARCUSでどこかと通信しようとしているミリアムに問いかけた。

 

 

 

「ミリアム……? さっきから何をしてるの?」

「ん-…ダメだ。やっぱり繋がんないや。そりゃそうだよねー」

 

 

「どういうことだ…?」

「ん-、ボクが受けていた一番重要“だった”任務の話。でもまあ、クレアもレクターも、オジサンの読みすら上回ってたし。――――今回ばかりは、クロウの勝ちでも仕方ないよね」

 

 

 

 

「はぁ!?」

「どうしてそこでクロウの名前が出てくるの…?」

 

 

 

 

「なるほど。ミリアム、あんたの目的の一つは《C》の調査だったのね?」

「なっ」

「帝国解放戦線のリーダー…」

「死んだ男が一体」

 

 

 

「《C》の行動パターンから情報局がプロファイリングして導き出した“可能性”のうち……有力な可能性の一つが『トールズ士官学院の関係者』というものだったんだ。でも《C》は鉄鉱山の事件でメンバー全員と爆死しちゃったしその線は消えたハズだったけど……」

 

 

「でも甘かったみたいだねー。ハァ、《鉄血の子供達》の名前が泣くってもんだよ」

 

 

「まさか……」

「……あの時確かクロウは、助け出した鉱員を送っていって……」

「崩落に邪魔されたとかで、後から現れたんだったか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発した飛行船からした声の話なんかも出るが、サラ教官が録音と自動操縦でどうとでもなると発言。まさしくその通り。

 

 

 

 

「この調子じゃ、《C》はもちろん他の幹部も無事っぽいかなぁ?」

 

「だ、だったらクロウは今……」

 

 

 

 

「凄腕の狙撃手に、隙を見せたら終わり」

「もし鉄鉱山で、飛空艇を爆破したのがクロウなら――――」

 

 

 

「確かに、もう“間に合わない”わね」

 

 

 

 

 

 

『これは紛う事なき『国難』である! そして『国難』の前に、あらゆる対立は乗り越えられるべきものであろう。『革新派』に『貴族派』――――俗に言われるそうした名前の何と空々しいことか!』

 

 

 

『既に皇帝陛下からも、心強いお言葉をいただいている。このギリアス・オズボーン、帝国政府を代表し、陛下の許しを得て、今ここに宣言させていただこう! 正規軍、領邦軍を問わず帝国全ての“力”を結集し……クロスベルの“悪”を正し、東からの脅威に備えんことを―――――』

 

 

 

 

 

 銃声が響く。

 

 

 

 

 

『な、なんということでしょう。たった今、オズボーン宰相が狙撃されました! そのまま運ばれていきますが……うーん、大丈夫なんでしょうか!?』

 

『おっと、なんでしょうアレは! 南の空に銀色の“影”が見えます! ……と言っても音だけだとロクに分からないでしょうね。なら――――士官学院の皆さんには学院祭で愉しませてくれた“お礼”をしちゃおうかしら』

 

 

 

「な、なにを言っているんだ……」

「こ、これ……僕たちに語り掛けてきてるの……?」

 

 

 

 

 

『響け 響け とこしえに――――夜のしじまを破り 全てのものを 美しき世界へ――――』

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、士官学院のラジオの前にドライケルス広場の光景が映し出される。

 

 

 

 

「《蒼の深淵》の秘術―――『幻想の唄(ファンタズマゴリア)』!」

 

 

 

 

 

 そして映像はヴィータ姉さまと、その使い魔であるグリアノスに移り――――グリアノスが羽ばたく先に見えてきたのは空中飛行戦艦にして貴族連合の旗艦《パンタグリュエル》。

 

 そしてパンタグリュエルから投下されるのはまさかの巨大人型兵器――――機甲兵(パンツァーゾルダ)

 

 帝都を守備する装甲車、そして主力戦車アハツェンまでもがその前にあっけなく爆散していく。

 

 

 

 

 

「問題は宰相が狙撃されて、帝都が占領されたことだわ」

「あの巨大な飛空艇に、機甲兵という兵器。用意したのは間違いなく《貴族派》というわけか……」

 

 

「……わたしの身内も、あの映像に映っていた……。ずっと行方が分からなかったのに、こんなタイミングで……」

 

「最強の猟兵団《西風の旅団》、《帝国解放戦線》と同じように貴族派に雇われているみたいね」

 

 

 

 

 

『……校内に残った皆さん、どうか落ち着いて下さい。今しがた、ラジオ放送中に不思議な映像が映りましたが……そのことについて学院長からの連絡があります』

 

『――――学院生諸君。学院長のヴァンダイクだ。先ほど我々がみた映像は、恐らく本物の可能性が高い。だが、確かな情報はまだ何も判っていない状況じゃ。現在、確認を急いでおるのでどうかしばらく待機して欲しい』

 

 

 

「あの映像、他のクラスの皆も見ていたのね……」

 

 

 

 

 と、そこでサラ教官のARCUSに着信が。

 

 

 

 

「はい、こちらバレスタイン―――ナイトハルト教官、これから緊急会議ですか? …………………――――なんですって!? 当然、あたしも手伝います! ええ、ええ……それでは正門前で。少し出かけてくるわ。君たちは絶対に学院から出るんじゃないわよ」

 

 

 

 

 

 

 と、言われても大人しくしている我らがⅦ組ではなくて。

 

 

 

 

 

 

 ガイウスが何かに気づいて窓を開けると、フィーがトリスタの西側から接近する装甲車数台と例の人型兵器、機甲兵の駆動音がすると言い。

 

 

 

 

「ま、まさか……」

「帝都に続いてトリスタまで……というより、この学院を押さえるつもり!?」

 

 

 

「ん-。可能性は高いかも。貴族派、革新派の子弟とか、学院長みたいな重鎮もいるし。保護するか人質にするか……ま、どっちもありそうかな」

 

 

「も、もしかして教官たち、それを喰い止めるために…?」

 

 

 

 

 

「………相手は主力戦車すら凌駕できるほどの新兵器だ。いくら教官たちが強いとはいえ、限界があるだろう」

 

 

 

 

 

 そうだねリィン君。普通なら無茶ってもんだよ。

 

 

 

 

「俺たちの力がどこまで通用するか判らないが―――――みんな、せめて助太刀くらいはさせてもらわないか……!?」

 

 

 

 

 今のリィン君なら素でも戦力になりそうなのが恐ろしいところ。まあⅦ組も戦術リンクの恩恵なのか、全体的に底上げされている感覚はあるけれど。

 

 

 

「リィン……えぇ!」

「言うまでもない」

「ど、どこまで力になれるかちょっとわからないけど……」

「こうなった以上は、とにかく全力を尽くすだけだ!」

 

 

 

 

 うんうん、若さだねぇ……。

 危なそうだったら容赦なくグランドクロスするから安心して突っ込んでいこう。

 

 

 

 

 

 というわけでⅦ組出動!

 

 

 

 

 正門前にはトワ会長とジョルジュ先輩がいたが。

 リィンのこれからも学び高め合う場所、士官学院を守るためにという宣言で説得し。

 

 トワ会長からは『絶対に無理しない。絶対死んじゃダメだから』と念を押されてしまったが……。会長の優しさが沁みる。

 

 

 

 

 

 

「さ、さっきも言ったように無茶は絶対ダメだけど……だけど大切なものを守りたいって気持ちは痛いほどわかるから……だから……だからどうか頑張って……! 士官学院生として……何より君たち自身として!」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 

 

 

 

 学院を飛び出してトリスタの町に出ると、既に戦闘音が聞こえていて――――。

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な――――貴様ら、本当に人間か!?」

 

 

 

 

 

 トールズ士官学院教官陣、つっよ。

 ヴァンダイク学院長が超巨大な大剣?を振り回して装甲車を真っ二つにし。ベアトリクス教官もスナイパーライフルで装甲車を一台吹き飛ばし。

 

 トマス教官とマカロフ教官も高位アーツをブチかましている。

 

 

 

 

 

「まあいい、これ以上の損害は無意味だ――――化け物には、それ以上の化け物をぶつけるだけのこと……!」

 

 

 

 

 

 そして現れる機甲兵たち。数が……数が多い!

 5機か。

 

 それでも食い下がる教官たちだが―――。

 

 

 

 

 

「凄まじいくらいの戦いぶりだが……」

「厳しいかも。相手には余力がある。でも、サラ達には決め手がない」

 

 

 

「――――出るか」

「何とかして教官たちの突破口を開ければ―――!」

 

 

「ふふっ、それには及びませんわ」

「シャ、シャシャシャ、シャロン!?」

 

 

 

 

 出た! アリサの、というかラインフォルトの超万能メイドさん!

 

 

 

 

「ここはわたくしにお任せを。サラ様たちの突破口、必ずや開いてみせましょう」

 

 

 

 

 瞬間、飛び出すその速さは達人級のそれ。

 無数に操る鋼糸が一体の機甲兵をがんじがらめにし―――――しかし機甲兵が凄まじいパワーでそれを引きちぎる。

 

 

 

 

「さすがのパワー……新型エンジンを搭載しているだけはありますわね。ですが、それならば幾らでも封じようはあるというもの。縛られ、封じられ、雁字搦めにされる悦び……その甲冑ごしに味わわせて差し上げましょうか……?」

 

「フン……やっと正体を現したわね――――結社《身喰らう蛇》に所属する最高位のエージェント、執行者No.Ⅸ―――《死線》のクルーガー!」

 

 

 

「そちらの方は休業中です。今のわたくしはラインフォルト家の使用人――――背後に誰がいようと、お嬢様たちの居場所を守るだけですわ」

 

 

 

 

 

 シャロンさんが加勢したことで一時的に士官学院教官勢が優勢になる。が、まだ機甲兵の数は多く残っている。そして―――。ガイウスとフィーがトリスタの西側、反対方向からも物音がすることに気づき―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――状況開始。《Ⅶ組》総員、これよりトリスタ東口の防衛を開始する。まずは先頭の機体を狙うぞ!」

 

『ふふっ。本気でこちらに立ち向かう気みたいね。2機がかりじゃ大人げないけど――――《C》からも最大限に用心しろって言われてるの。悪いわね』

 

 

 

 

 

 

 !?

 な、なんですって………?

 

 

 

 まさかのここで原作崩壊とか……。

 本来なら機甲兵1機ずつの相手になり、先に《ドラッケン》を倒すことになるのだが……。隊長機《シュピーゲル》は負けイベントである。

 

 

 

 

 

――――ええい、仕方ない!

 

 

 

 

「リィンさん、隊長機は私が引き付けます―――先に前の機体を!」

 

 

「っ、分かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一気に前に飛び出し、前の量産機《ドラッケン》は無視して《シュピーゲル》の下へ。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――はぁああああっ!」

 

 

 

 喰らえ、全力のシュトルムランツァー!

 

 

 

 

 当たった瞬間、奇妙な感覚とともに衝撃が打ち消される気配がある、これがリアクティブアーマーか。だが―――。

 そんなもの無理矢理突破するまでのこと。

 

 凄まじい轟音とともに《シュピーゲル》がたたらを踏み――――私のランスも弾かれて身体が流される。

 

 

 

 

 

 

『―――っ、なんて破壊力……対戦車戦用のリアクティブアーマーを貫通するなんて、本当に人間!?』

 

 

 

 

 

 返しの攻撃――――スカーレットアクセルに対してアルティウムセイバーで迎え撃ち。

 

 

 

 

 

 

 ぶつかり合った衝撃で機甲兵用ブレードが半ばで圧し折れる。私も大きく吹き飛ばされて地面を転がるが、大したダメージはない。

 

 見たか、母様に貰ったゼムリアストーン製の馬上槍の威力を――――って、あっ!?

 

 

 

 

 

「――――ライナ!」

 

 

 

 

 

 ごめんリィン君、あとでリィン君が使うハズだったブレード圧し折っちゃった。

 目線で謝って再び《シュピーゲル》と向き合う。最早相手の動きに油断は一切なく。こちらも流石にこのデカブツ、リアクティブアーマーとかいう謎技術すら積み込んだ巨大人型兵器が相手だと余裕はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――来い、《灰の騎神》―――――ヴァリマール!」

 

 

 

 

 

 

 

 !?

 まだシュピーゲルの負けイベントどころかドラッケン倒してなくない!?

 

 

 リィン君どうした!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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