うわあああケルディックだああああああ!
賑やかな大市! 豊かな品物! ゼムリアにしては多い人混み! いやこれゲームとは比較にならないくらい人が多い! お店も多い! 果物屋! お菓子屋! アクセサリー屋! なんでもある! いっぱいある!
そんなわけでウキウキしていると、なんだかリィンたちの生暖かい視線を感じる。
「な、なんですか。その目は」
「いや、なんというか」
「ライナも年相応の面があるんだなって」
「ふむ。レグラムも美しさでは負けてはおらぬぞ」
「ラウラも張り合わなくても…」
結社も色々持ってるけど、こういう安っぽい……大衆的な? お菓子とかそういうのはあんまり充実してなくて。ちょっと不満が無きにしも非ず。母様が過保護だからあんまり出歩けたこと無いし。
「そんなに気になるなら、買ってもいいんじゃないか」
「………じゃ、じゃあ少しだけ」
リーダーのリィン君の許可も出た! セピス塊、つまりお金は割と腐るほどあるので(全部の商品を)少しだけ買っても財布は全然余裕!
うん、美味しい!
凄いぞケルディック! 焼き討ちされるだけの町じゃなかったんだ! さすが交易都市! 大市も店が見渡しきれないくらいある! 気分はディ〇ニーランド!
「すごい目が輝いてる……」
「というかよくあんなに食べれるわね」
アリサにちょっと引かれてるが、これは素の胃袋で食べてるわけではない。
気功術で消費カロリーを爆増させて好きなだけ食べてるのである。リィン君がめっちゃ引いてる気がするが気にしないと決めた。
その後は腹ごなしに手配魔獣を一蹴したり、大市でのもめごとがあったりしたがまあ些事である。後は窃盗犯と領邦軍がグルだったりしたが、クレア大尉が介入してくれて原作通りしっかり解決した。
グランドクロスしてやろうかと思ったんだけど。残念無念。
なんでかリィンとラウラに取り押さえられた私だけど、別にお暴力だけで解決するつもりじゃないからね!? ちょっと脅そうかなとは思ったけれども!
あれ、そういえばリィンとラウラがぎくしゃくするイベントがあったような気がするんだけど……回避できたのだろうか。まあ人たらしのリィン君なら平気か。
―――――――――――――――――
ルナリア自然公園―――。
「へへっ、何気にいい稼ぎになったな」
「これでも連中が陳情を取り下げなきゃもう少し稼げるってことか」
「ま、程々にしておけ。報酬だって用意されてるんだ、普段の稼ぎからしたら十分だろ」
「しっかしあいつ等、何者なんだろうな。領邦軍にも顔が利いてるみてえだし」
「さてな。何を考えてるのかさっぱり分からん男だったからな。まあいい、いつでもここを離れられるよう用意を――――」
「――――甘いな。いくぞ、皆!」
リィンの掛け声とともにラウラ、アリサ、エリオット、そして挟み撃ちにするようにライナが開けた広場に突入する。
「何!?」
「ちゃ、ちゃんと門に鍵をかけておいたのに――――突破してきたのか!?」
「うむ、その通りだ」
「それも、どうやら大市で盗んだものみたいだし」
「この場合、現行犯逮捕が認められる状況なのかしら?」
「最早逃げ場はありません。大人しく観念することですね」
一見すると小柄で与しやすそうなライナが巨大なランスを軽々と振り回し、地面に突きつけて衝撃と闘気が噴き出す。
が、残念なことに実力差が大きすぎて気づかないらしく。
「ハッ、やっちまうぞ!」
「所詮はガキどもだ、一気にぶちのめしてやれ!」
「い、いや、止めておいた方が――――」
「――――アルティウムセイバーッ!」
「「「「ぎゃあああああ!?」」」」
「ふむ。錆落としにも不足ですね」
「「「「うわぁ」」」」
ランスを振るった衝撃波で4人纏めて吹き飛ばし、綺麗にリィンたちの前に一人ずつ倒れ伏す。
「あれ、なんだろう……笛の音?」
「どうした、エリオット――――」
エリオットが何かに気づいた直後、凄まじい咆哮と共に巨大なサルの魔獣が駆けつけてきて―――――ライナと目が合い、咆哮が小さなくなり、怯えるように一歩下がる。
「ふむ。大きいですね。―――――退かぬのなら、耐えてみなさい!」
爆発する闘気、まるで光の柱のように輝くそれに、巨大な魔獣――――グルノージャは明らかに逃げ出そうとした。が、時すでに遅し。
「―――――聖技、グランドクロス…ッ!」
なんというか、爆散というのが相応しい最期だった。
巨大な穴をあけられ、セピスに変わったグルノージャはなんというか哀れですらあった。
「ふむ……これで大市で買い物をするのも悪くはないですね」
「「「うわぁ」」」
しかしここで警笛が鳴り響き、突入してきたのは領邦軍。
彼らは窃盗犯ではなくリィンたちを取り囲み、銃を構える。
「手を挙げろ!」
「抵抗は無駄だぞ!」
「なぜ、そこの彼らではなく我らを取り囲むのかな?」
「口答えをするな!」
「学生だからと言って手加減すると思うなよ…!」
「……領邦軍だから、手加減してもらえるとでも?」
「うわぁ、待って待って!」
「さすがに不味いってライナ!」
「ひ、ひとまず落ち着くのだ!」
ランスを構えるライナに、リィンとラウラが流石に不味いと二人掛かりで抑えにかかるが残念ながらちょっとした重石程度にしかならない。
「大丈夫です。リィン、ラウラ――――上手くやります」
「だからダメだって!」
「――――その必要はありません」
駆け付けたクレア大尉率いる鉄道憲兵隊によって事態は収束し。
リィンたちは安堵した。
逮捕されそうになったとかそういうことではなく、ライナがどこまで本気なのか分からなかったからだが。
「いや、ちゃんと穏便にやるつもりでしたよ…?」
「「「「………」」」」
「なんで無言で見つめるんです!?」
―――――――――――――――――
『―――――帝国の幻焔計画の担当は私なのだけれど……』
『……』
はぁ、とわざとらしくため息をこぼすヴィータ・クロチルダは。トールズ士官学院という自身の選んだ
蒼の騎神があれば流石に負けはしないと思うのだけれど。いきなりグランドクロスされたら騎神に乗る間もなくやられたり……絶対に無いとは言い切れない。
『おかしいですね。その点については、貴女も了承したはずでは?』
『――――仕方ないじゃない! エマとは違った意味で妹分みたいなものなの! あんな顔で頼まれたら<結社>のメンバーでも――――まあ一部除いて――――断れないわよ』
『初めてあの子が言った我儘なのです。できれば叶えてやりたい――――ましてや母として最低限のことすらしてやれぬ身です』
『婆様から少しは聞いているけれど――――不死者、ね……』
沈黙は重い。
この先に待ち受けている試練――――相克のその果てで、どんな結果に至ろうとも娘と共に過ごす平穏は有り得ないのだと、そう分かっているから。
『まあ、最低限あの子が大人しくしてくれていればいいのだけれど。誰に似たのか好奇心旺盛すぎるのが不安よ』
『それは父親似でしょうね』
<鋼の聖女>ではなく、一人の母親としての柔らかい声音。
どこか自慢げなその声に、ヴィータもまた目を細めて肩をすくめた。