というわけで、職人通りの宿酒場にて。
リィン、エマ、フィー、そして私とすっかり寂しくなってしまったメンバーでテーブルを囲む。
「――――突破口があるとすれば、まずはユーシスだろう。今回の逮捕だって絶対にあいつの本意じゃないはずだ」
「ええ、間違いないと思います。多分、お父さんである<アルバレア公>の独断ですよね…」
「でも、ユーシスは実家で動けなくされてるっぽい……昨日あったユーシス兄は頼れないの?」
「ルーファスさんか。マキアスにも友好的だったし、力になってくれそうだけど……帝都に行っているからいつ戻ってくるか分からない。この状況で頼るのは難しそうだ」
「……了解」
そうなんだよねー。
この時点では頼れるキャラだと皆が思ってたことだろう。ルーファス…。
「……だったらもう、私たちで直接奪還するしかないと思う」
「フィ、フィーちゃん……」
「直球だな」
「考えても見て。市内にある詰所ならまだ侵入できる余地もある。でも……もしマキアスが昨日の砦にでも移送されたら奪還の可能性は相当低くなるよ」
まあ私がいれば強引にオーロックス砦でも正面から奪還できるだろうけど……めちゃめちゃ大問題になるだろうし、秘密裏に奪還するなら今しかチャンスがないのは間違いない。
「それは……――――よし、腹を括るか」
「マキアスさんを奪還するにしても、なるべく秘密裏がいいですね。あくまでこっそり侵入して、いつの間にかいなくなっている……そんな形なら、元々冤罪ですし強く出られないのではないかと」
そうかな? そうかも…?
ちょっと怪しいけど、まあルーファスが戻ってくれば解決しそうではある。ほんと背後からの不意打ち以外は有能な男なんだよなぁルーファス……。
「そうだな……領邦軍は面子を重んじるらしいし……バリアハートから脱出できればなんとか追及をかわせるかもしれない」
「なら煙幕を使っての派手な陽動はナシか……」
「ならグランドクロスを使っての派手な突破もナシですね……」
「煙幕って……いやグランドクロスもだけど」
「フィーちゃん、そんなものいつも持ってるんですか?」
「乙女のたしなみ」
「絶対に違うだろう……」
「リィンさん、最近の煙幕トレンド知らないんですか? 乙女のたしなみですよ?」
「煙幕トレンド!?」
「煙幕にトレンドなんてあるんですか…?」
「ん。まあ確かにないこともない」
「あるんですか!?」
「「なんでライナが驚いてるんだ(ですか)……」」
とかなんとか話していると、どうみてもトヴァルさんな人が酒場のマスターと地下水道の魔獣について話しだす。もしかしなくてもサラ教官からのフォローなのだろう。
酒場のマスターに尋ねると、地下水道は貴族街まで繋がっており――――噂では公爵家の館にも繋がっているとの情報が。
「……タイミングよく手がかりが見つかったね」
「ああ……貴族街まで通じる中世の広大な地下水道か。マキアスが捕まっている領邦軍の詰所にも繋がっている可能性は高そうだ」
「ええ。あの建物自体中世のものみたいでしたし。上手く行けばこっそりとマキアスさんを解放できそうです」
「えっと。多少の魔獣くらいなら任せて下さい」
「よし――――行ってみるか。遊撃士が魔獣退治をしていたなら地下水道の入口がどこかにあるはずだ」
というわけで地下水道の入口を見つけて。
エマがヘアピンで解錠―――と見せかけて魔術?で開けたのだが、フィーはなんとなく違和感に感づいている様子。……ということは勘が鋭いリィンも多分気づいているけど、エマが気づかれたくないのも察してスルーしてるんだろうなぁ……。
気遣いの出来る男、それがリィン君。
とかなんとか地下水道を彷徨っていると、どこからか聞こえてくるユーシスの声。
ルーファスになんでか地下水道の構造を教わっているとのことだったのだが。ここにいるってことは一人でマキアスを助けにいくつもりだったんだなって。
4人で生暖かい視線を送るとユーシスは「心細くてベソをかいているヤツの顔を見るだけでも価値がある」と照れ隠し。
まあ雑魚魔獣くらいは大した問題じゃないのでサクサク倒して突破。
したのだが。
「まさか一方通行のゲートが用意されてるとは……」
「これは俺の太刀で斬るのも……」
「鍵穴もないなんて……」
視線が私に集まる。
はいはいはーい! 私やれます!
「では、失礼して。――――アルティウムセイバー!」
扉が開かない? 耐えられるなら耐えてみなさい!
というわけでなるべく静か目に吹っ飛んだ扉に他愛なし……と残心を決めていると、リィンが口を開いた。
「……ライナ。この際だから教えてくれるか? 君は一体何者なんだ?」
………あれ?
「思えば入学式の日も、君とフィーだけは床のトラップを回避していたようにも見えた。その圧倒的な身体能力、戦闘力に至ってはセーブしてるよな」
「……………」
あっ。これフィーが猟兵団にいたって話のヤツ!
なんでか私が問い詰められる流れになってるけど。なんで!? 教えはどうなってるんですか教えは!? あれか、扉壊したからか!? 呪われてるのかこの扉は!?
えっと、うんと…………まあ正直に話してもいいか!
「私も正直、自分が何者なのか分かっていないですが―――そうですね。強いて言うならば、結社<身喰らう蛇>の使徒、第七柱アリアンロードの
「結社…?」
「身喰らう蛇……?」
「アリアンロード………?」
「ちなみに結社はあのブルブランみたいな達人級の不審人物の集まりです」
「達人級の不審人物って……」
「そんな不審人物の集まり――――あ、母様は違いますよ。数少ないマトモな人です――――から世間を知りたいと無理を言って入れてもらったのがトールズ士官学院です」
「ちなみにその<結社>っていうのは何をする組織なんだ…?」
「女神の<至宝>に関することで色々してるらしい謎の組織です」
。
「所属している人間から見ても謎の組織なのか…?」
「所属している人間から見ても謎の組織ですね。まあ私は所属しているような、いないような微妙な立場ですけど」
「……ふーん。わたしと同じ感じかな」
「えっ、フィーちゃんも謎の組織に!?」
「……私は猟兵団だけど。微妙な立場ってところ」
「猟兵団……そうだったのか」
「聞いたことがあります。一流の傭兵部隊のことを、そのように呼ぶ習慣があると」
「死神と同じ意味だぞ」と驚くユーシスだけど、もしかしなくてもこれ私インパクトで負けてる? 物語も序盤も序盤なため、<結社>とか言われるより猟兵団の方がインパクトあるのか……。
と、ここでリィンが話を戻す。
「ゴメンな、ライナにフィーも。聞き出すような真似をして」
「いえ。結局上手く説明できなくてこちらこそ申し訳なく」
「とりあえずマキアスさんの救助を急ぎましょう」
―――――――――――――――――
「――――いったい何事だ!?」
「逃げ出しているぞ!?」
「し、士官学院の学生が―――!」
さすがはあのルーファスが(一応)面倒を見ているだけのことはあるというか。
思わぬ練度ですぐに牢屋に駆け付けた領邦軍――――。
「ええい、追え!」
「全員捕えてしまえ!」
立ちはだかるのは、小柄な少女。
淡い金色の髪に、蒼穹のような瞳。身の丈よりも巨大な馬上槍を構え、通路に陣取る姿に隙はなく。
伝説の<槍の聖女>の如き佇まいに、誰かが息をのんだ。
「あくまでも退かぬというならば――――此処こそが死地と知りなさい」
ランスの一振りで3人ほど纏めて吹き飛ばされ、しかし即座に立て直した領邦軍は導力銃での一斉射撃で対応。
それすらも軽々と振るわれるランスによって弾かれた領邦軍は、笛を鳴らして軍用魔獣を先行させ。
原作にあった展開だなぁ、と無理には引き止めなかったものの、的確に嫌な手を打ってくる領邦軍にライナは気を引き締めてランスを構えなおした。
「くっ、ルーファス様を相手にしていると思え! 並の使い手ではないぞ!」
「「「「了解!」」」」
―――――――――――――――――
一方、リィンたちは背後から聞こえる巨大な軍用魔獣の咆哮と足音に足を速める。
「――――ライナが突破されたのか!?」
「さすがに一人じゃ抑えるにも物理的に限度があるかも」
「かなり脚が速い―――追いつかれるぞ!」
リィンたちの退路を塞ぐように周囲を囲む2体の軍用魔獣――――カザックドーベン。
「くっ、退路を断たれたか!」
「君のところの軍隊はこんな魔獣も使っているのか!?」
「俺に言われても困る!」
「士官学院Ⅶ組A班―――全力で目標を撃破する!」
「「「おおっ!」」」
――――――――――――――――――――
「―――――馬鹿な」
10人が、まるで紙のように吹き飛ばされた。
20人が、藁人形か何かのように纏めて倒された。
50人が倒れ、まるで壁のようにうず高く積まれている。
そのいずれもが、まだ学生である少女が立つ通路を突破しようとしてできなかった数であった。既にまだ立っている人数よりも、倒された人数の方が多いという惨状。
対して、その少女は――――無傷。
多少のダメージは与えたハズだが、目に見える傷は無く。疲労した様子もない。
「ば、化け物か…?」
「いくら狭い通路とはいえ……!」
「た、隊長……このままでは」
「こうなったらここの突破は諦め、街の出入り口の封鎖を―――」
「――――その必要は無かろう」
颯爽と登場するのは、まあ予想通りというか。
ルーファスと、その後ろにはⅦ組A班の皆の姿もある。
「ル、ルーファス様!?」
「事情は一通り聞かせてもらった。ここは私が引き取る故、卿らは戻るがいい」
「し、しかし――――」
「父には話を通しておいた。この上私に、余計な恥をかかせるつもりか?」
そう言われ、慌てて退却していく(倒れてるのを抱えたりしつつ)領邦軍。
うーん。権力ってすごい。
私も一度くらいは権力を持ってみたいものである。………デュバリィたち鉄機隊に姫様扱いしてもらってたわ! 鉄機サーの姫です。対戦よろしくお願いします。
「なるほど。君が噂の――――ライナ君だったか」
「どうも」
<結社>関連の話も多分聞いてるんだろうなぁ。
「それなりに鍛えたつもりだったのだが――――不足だったかな?」
「いえ。兵士とすれば及第点でしょう」
そこそこの兵士が、母様みたいなのに束になっても敵わないのと同様。
領邦軍程度で止められると思ってもらっては困る。
「――――ライナ! 良かった、無事だったんだな」
「すみません、魔獣に抜けられてしまいました」
真っ先に心配してくれるのはリィン君。さすが主人公。
「……さすがにこの惨状で謝られてもちょっと複雑かも?」
「あはは………改めてとんでもないですね」
フィーとエマにはちょっと引かれた気がしないでもない。
何はともあれ、満足気なマキアスとユーシスの顔も見れて、私も久々に心からの笑顔で皆を迎えられた気がする。
うん、やっぱりギスギスしてないのが一番!
「お疲れ様です、みんな」
「「「「「お疲れ様!」」」」」