「さて――前から予告した通り、明日から《中間試験》になるわ。ま、基本は座学のテストだから、あたしには何の力にもなれないけど。一応試験官として温かく見守るから、せいぜい頑張ってちょうだい」
「完全に他人事ですね…」
「私たちの成績が悪かったら教頭に嫌味を言われるんじゃ?」
中間テストかぁ……。
数学とかはまあいいとして、軍事学とか歴史とか、けっこう面倒だったり。とはいえ、真面目に授業は受けているので心配はしていないんだけれども。
「ふふん、このクラスはけっこう成績優秀者が多いしね。せいぜい結果を楽しみにさせてもらうわ」
そんなこんなで、試験勉強である。
「えーと、ライナ?」
「はい、なんですかリィンさん」
「……なんで俺に付いてくるんだ?」
「リィンさんが試験のポイントを押さえてくれる予感がしてるので」
「どんな予感なんだ……?」
「というかリィンさんの人脈の広さを頼りたいです」
ゲームでなんか色々な人からコツを貰ってかなり好成績だった記憶が。
基本は抑えてあるから、あと必要なのは要点。
「そう言われると断れないが……ちょっとプレッシャーだな」
「大丈夫です、リィンさんはいつも通りにしていて下さい」
そんなわけで、学内を飛び回って試験範囲の総復習。
時に他のⅦ組メンバーの勉強会に加わり、全然違うクラスの勉強会にも顔を出し、トワ会長に政治経済を教えてもらったり――――トワ会長の教え方が分かりやすすぎる。これは教官になるのも納得である。
「……こうしていると、以前は妹がついて回っていたのを思い出すな」
ぽつりと、寂し気に呟くリィン。
いやでもリィンさんのシスコンも大概だけど、エリゼさんも大概のような。
「リィンさんの妹は光栄ですね。妹さんに嫉妬されちゃいそうですけど」
「ははは。色々あって、今はなんていうか、距離があるんだ」
そう言って寂し気に笑うリィンはなんというか……お労しい……。
「リィンさんの例の力ですか? ……一度ちゃんと話してみた方がいいかもしれないですよ。話を聞く限り素敵な方みたいですし。新しい妹志望が現れた~! なんて話題でもいいですから」
「そうかな。……不思議とライナにそう言ってもらうと何とかなるような気がしてきたよ」
そんなわけで、浅く広く、また色々なメンバーから要点を教わった私たちのテスト結果は見事なもので――――。
同率一位がエマとマキアス。三位が私。四位がユーシス。五位がパトリックで、リィンさんは八位という結果に。
………負けたぁ!?
そ、そんなバカな……自信あったのに……。
人生2回目なのに学生にテストで敗北する転生者いるらしいですよ。敗北者ァ……。
く、悔しい………。3点差! 975点、975点、972点…。
帝国史がやっぱり響いたか……? それとも芸術? 導力学…? いやけっこう転生関係ない科目多いな……。
あと3点取れていれば…。
なおクラス別の平均点はⅦ組がぶっちぎり1位を独走していて。
「いや~、中間試験みんな頑張ったじゃないの♪ あのイヤミ教頭も苦虫を嚙み潰したような顔してたり、ザマーみなさいってね」
「別に教官の鬱憤を晴らすために頑張ったわけでは……」
「ま、それはともかく。さっそく今月の実技テストを始めようじゃないの」
「はい」
「フン、面白そうなことをしてるじゃないか」
あれ、こんなイベントあったっけ?
実技テストに乗り込んできたのは白い制服―――貴族クラス、パトリック・ハイアームズを筆頭にしたⅠ組のメンバー。
「Ⅰ組の……」
「な、なんだ君たちは?」
「あら、どうしたの君たち。Ⅰ組の武術教練は明日のはずだったけど」
「いえ、トマス教官の授業がちょうど自習となりましてね。せっかくだからクラス間の“交流”をしに参上しました。最近、目覚ましい活躍をしている《Ⅶ組》の諸君相手にね」
…………あー、そういえばなんか、リィンが手を差し伸べてパトリックが払いのけるイベントがあったような……なかったような…?
パトリックって確かエリゼにどのタイミングだかで惚れるんだったよなぁくらいしか記憶にない。
「得物を持っているということは練習試合ということか……?」
「フッ、察しがいいじゃないか。僕たち《Ⅰ組》の代表が君たちの相手を務めてあげよう。フフ、真の帝国貴族の気風を君たちに示してあげるためにもな」
「フフン。なかなか面白そうじゃない。――――実技テストの内容を変更! 《Ⅰ組》と《Ⅶ組》の摸擬戦とする! 4対4の試合形式、アーツと道具の使用も自由よ。リィン、3名を選びなさい」
サラッと代表が確定しているリィンだが、そこはみんな文句はない。さすがの人徳である。
「えーと、じゃあアリサと――――」
「フッ。これは男同士の戦いだ。力で劣る女子を傷つけるのはこちらも本意ではない……」
「むっ……」
「……むかつく」
「リィンさん、グランドクロスしていいですか?」
「ダメです。……じゃあラウラは?」
「ま、待ちたまえ……! 女子は外せと言っただろう!? そちらも男子から選びたまえ!」
「(さすがにラウラの武勇は貴族生徒にも有名みたいだね)」
「じゃあユーシス――――」
「む……彼本来《Ⅰ組》に所属していた人間だ。帝国貴族の気風を示すという僕たちの趣旨にも反するだろう。悪いが遠慮してもらおうか」
「フン、細かいことを……」
じゃあこっちのメンバーはリィン、エリオット、マキアス、ガイウスしかいないじゃん……。エリオットとマキアスは戦闘向きとは言えないメンバーだし、ちょっとセコいのでは?
などと思っていた私の姿はお笑いでした。
「じゃあ双方とも、位置について」
「(あの男、小物の割に剣の腕はそれなりのものだ。取り巻き達も剣術の英才教育を受けたものが多い。くれぐれも油断はするな)」
「(分かった)」
と、ユーシスのありがたい忠告もあり。
「それでは《Ⅰ組》と《Ⅶ組》の代表による摸擬戦を開始する。双方、構え―――はじめ!」
「神気、解放――――秘技、裏疾風!」
「なにっ!?」
「速い…っ!」
「ぐわぁっ!?」
「グッ…!?」
「崩した――――マキアス!」
「ああ!」
いやあの……一人だけヤベー人が混じってるんですけど……。
パトリックは確かに剣の腕が立つようで、リィンの動きに反応できている。できているのだが―――そこが八葉一刀流の恐ろしさ。歩法と体捌きで巧みに幻惑を交えているので、反応できてしまうことで逆に隙が大きくなってしまっている。
必死に食らいつくパトリックだが、防戦一方。
それをカバーしようとする他のⅠ組メンバーだが、ARCUSの戦術リンクがあるⅦ組は互いのカバーという面でⅠ組の追随を許さない。
「ぐ、おおお――――っ!」
一撃受けてでも無理矢理攻勢に転じようとしたパトリックだったが、<螺旋>の動きで軽々と受け流され、そこから流れるように納刀。そして抜刀術、斬月。
パトリックの持っていた剣が半ばで真っ二つに断ち切られる。
か、格が違いすぎる……。
「ば、馬鹿な――――こんなはずは!?」
「――――はあああっ!」
リィンの一撃でパトリックが吹き飛ばされ。
さっきの<裏疾風>で体勢を崩されていた他のメンバーたちもARCUS頼りだけでないⅦ組の連携の前にあっさりとダウン。
「――――そこまで! 勝者、《Ⅶ組》代表!」
どこか誇らしげにも聞こえるサラ教官の宣言と共に、試合は終了し。
近づいて差し出されたリィンの手は、パトリックによって払われた。
「触るな、下郎が!」
「いい気になるなよ……リィン・シュバルツァー…! ユミルの領主が拾った出自も知れぬ“浮浪児”ごときが!」
「……ッ……」
「……おい!」
「貴方……!」
「ひ、酷いよ……!」
「ハッ。他の者も同じだ! 何が同点首位だ! 貴様ら平民ごときがいい気になるんじゃない! ラインフォルト!? 所詮は成り上がりの武器商人風情だろうが! おまけに蛮族や猟兵上がり、苗字すらない小娘まで混じっているとは……!」
「―――――はぁあああ!? 聞き捨てなりませんわァァッ!」
「あ、デュバリィ」
怒りのデュバリィが殴り込んできた!
いや一応部外者だし遠慮しようよ……。怒ってくれるのは嬉しいけど。
「ちょっと、何自然に不法侵入してるのかしら」
「すみません、うちのデュバリィが」
「我が主のご息女―――姫様はそれはもう、全員で平伏すべき高貴なお方で―――!」
「うんうん。分かったからとりあえず今日は帰ろうデュバリィ」
「姫様ぁああ!?」
ずるずるとデュバリィを引きずっていく。
ダメだよ、母様が立派なのは私もそう思うけど、時と場合を弁えないと。
…………ん? ご息女って言った?
…………………………うーん?
でもアリアンロードの相手と言ったらドライケルス大帝だけど、250年くらい前じゃなかったっけ。流石に無いなぁ。
カーシャさんが亡くなった後、とかだとタイミングが合わないし何より解釈違いだし。
いやでも、実子だとすると母様からの溺愛振りに納得はできてしまう……。
でもなぁ。母様に「父親誰ですか」って聞いて「拾った子なので分かりません」って言われるのも言わせるのもしんどいし……まあ今のままでいっか。