桂西王派閥との対立を収めたい。そのために必要なものはなにか。まずはそこから考えていく。真っ先に思いつくことは、こちら側……元条王派閥の、最初に飛び出した人間に対処することだ。しかし、それほどのことが思いつかないとは思わない。一応奏華さんに確認はとっておく。
〈最初に追求した者は、今どうなっているのでしょうか?〉
《わたしも気になって元条王さまに聞いたけれど、どうも今は自宅で謹慎しているみたいね。本人も反省しているとのことよ。》
〈なるほど、ありがとうございます。そうであれば、そちらに手を加える必要はなさそうですね。〉
さて、どうしたものか。奏華さんは元条王派閥のナンバーツーのような状態である。この状態で、桂西王派閥に「落ち着いてほしい」と声をかけたところで逆効果であろうと思う。たとえ「中の人」が奏華さんでなくわたしであっても。
そこまで考えてはっとする。そもそも、奏華さんが倒れた原因は何だったのだろうか?もしそれを解き明かすことができたなら、この対立は消滅するのではないだろうか。そこで、まずは奏華さんに聞いてみる。
〈ところで奏華さん、倒れた原因が何だったか、ということはわかっているのでしょうか。もしわかっていないなら、それを解き明かすことがこの問題の解決の鍵になると思うんです。〉
《暁どのには申し訳ないけれど、それは解決済みなの。どうも軽い貧血で倒れたみたい、と
〈そうでしたか、ありがとうございます。そこは気になりますが、それではあまり解決の助けにはなりませんかね。〉
空振りだった。しかし、貧血で数か月も倒れていたというのは気になる。というか、点滴もないのにどうやって生きていたんだろうか。そして、起きてすぐにこんなに活動できているのも不思議だ。とはいえ、転生がある世界なのだから、ルール無用なのかもしれない。覚えるだけ覚えておいて、一旦は目先のことに集中しよう。
そういえばではあるが、奏華さんは桂西王のことを「さま」をつけて呼んでいた。本人たち同士は決して関係は悪くないのかもしれないな、と思う。いつの時代もどの世界でも、きっと取り巻きが過激化していくというのはありふれたことなのだろう。その過激化した取り巻きを抑えるのはなかなか難しいものがあるのだよな、とかつての世界を思い出しながら考える。
かつての世界といえば、こういう時に役に立ちそうな言葉があった。あるクリエイターの言葉だが、「アイデアというのは、複数の問題を一気に解決できるもののこと」だそうだ。今まさに欲しいものだな。思いつけるかどうかは、また別問題なのだけれども……
これまたかつての世界の手法ではあるが、一つ頼れそうなものを思い出した。これならいけるかもしれない。ただ、これには元条王はもちろんのこと、桂西王や皇帝の協力も必要になる。けれどまずは奏華さんに同意してもらわないと、行動にも移せない。まずは奏華さんに相談しよう。
〈一つ案なのですが、桂西王の派閥にとって良い
《というと、どういうことかしら。》
〈例えばですが、桂西王を今より格の高い官位につけてしまう、ということがあります。適当な理由を用意して、元条王より格の高い官位に据えるのです。そうすれば、桂西王派閥は納得するでしょう。〉
《ええ、それはわかるわ。でも暁どの、それには重大な問題がある。元条王さまの派閥、というかわたしが納得しない、ということよ。そこはどうするのかしら?》
〈元条王には別件で功績を挙げられるような任務をもらってくる、という手があります。ほどよい時間がかかって、かつそれなりの功績のものだとよいですね。そうして、しばらくしてほとぼりが冷めたころにそれを理由に元条王も同格の官位にすれば、問題ありません。〉
《なるほど、それは一つの手段としてはありね。しかし、官位の任命は陛下の名のもとに行われるものだから、陛下にご同意をいただかなくてはならないわね。》
〈はい、ですから元条王を通して皇帝に奏上して、この作戦への同意を取り付けてもらいましょう。お願いできますか?〉
《構わないわ。けれど、わたしにできるのは元条王さまに奏上文をお預けするところまでよ。それ以降は保証できないわ。それでもいいかしら?》
〈ええ、それで十分です。よろしくお願いします。〉
《わかったわ。それはそうと、暁どのにひとつ言いたいことがあるの。》
〈はい、なんでしょうか?〉
《元条王さまも桂西王さまも、皇帝陛下もそうだけれど、ちゃんと敬意をもってお呼びになってくれるかしら?もしわたしの代わりに表に出ているときにその呼び方をしては、最悪わたしの命が危ういのよ?》
どうせ奏華さん以外には聞かれていないし、いいかと思ってしまっていたな。反省しよう。