【チラ裏】ムルタ・アズラエルは刻の涙を見る 作:d_chan
・宇宙世紀
人類が宇宙へ進出した後に使われている暦。本編現在は宇宙世紀0054年であり、一年戦争が始まるまでには、まだ二十五年もある。ガンダムもザクもジオン公国も存在しない平和な時代です。これからも平和が続くといいね。
・地球圏
地球、月、各サイドのスペースコロニーを、政治、物流、金融、通信で結んだ巨大な生活圏。ムルタは、この地球圏全体を一つの市場にして、戦争を始めれば全員が損をする仕組みを作ろうとしている。言い方を変えれば平和構想、さらに言い方を変えれば経済による世界征服である。
・地球連邦政府
地球圏を統治する巨大な政治機構。強大ではあるものの一枚岩ではなく、政府、官僚、軍、企業、地域ごとに利害が異なるため、一つの許可を取ろうとすると書類と担当部署が増殖する。腐敗した悪の帝国というより、責任の所在が広すぎて誰も全体を動かせなくなりつつある巨大組織。
・スペースコロニー
宇宙空間に建造された巨大な人工居住地。地面、空気、水、重力、朝日、夕焼けまで、すべてを人間が作り、維持し、代金を払い続けなければならない。究極の集合住宅であり、管理組合が仕事をしないと住民全員が死ぬ。
・サイド
複数のスペースコロニーを地域ごとにまとめた呼称。サイド1やサイド3という名前は、一つのコロニーではなく、地球上の地方名に近い。外から見れば同じような銀色の筒だが、中には都市、工場、学校、貧富の差、政治運動、住宅ローンが詰まっている。
・アースノイド
地球で暮らす人々の総称。連邦政府の高官も、巨大財閥の当主も、明日の食事に困る貧困層も同じ言葉へまとめられる。全員が宇宙移民を搾取していると、本気で思っているスペースノイドもいる。
・スペースノイド
月やスペースコロニーで暮らす人々の総称。サイドごと、コロニーごと、職業ごとに事情も考え方も違い、独立を望む者もいれば、政治に関わりたくない者もいる。一枚岩ではないのだが、演説では便利な複数形として活躍中。
★ スペース・グランドツアーの舞台
・スペース・グランドツアー
十二歳で大学を卒業したムルタのため、父ジョージが計画した数か月間の宇宙視察旅行。月、サイド1、サイド5、サイド3を巡り、産業と生活を学ぶ卒業旅行になる予定だった。
実際には、人材発掘、企業買収、工場改革、木星開拓、孤児保護、犯罪組織の摘発、政治家との会談まで詰め込まれた地球圏出張となった。旅行鞄より契約書と扶養家族の方が増えて帰ってきた。
・フォン・ブラウン
月面を代表する都市であり、ムルタが初めて本格的に宇宙社会へ触れた場所。宇宙開発の夢と、それを支える技術者が妻の出産費用にも困る現実が同居している。夢を語るにも、まず先立つものは金。
・グラナダ
観光都市のフォン・ブラウンとは対照的な、月面の工業都市。ムルタが工場事故へ介入し、メラニー・ヒュー・カーバインと本格的に競い始めた場所でもある。
アナハイム・エレクトロニクスとモルゲンレーテという、未来の産業界を騒がせそうな二社が、まだ比較的かわいらしかった時代。
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人類最初期のコロニー群。成熟した産業と文化を持つ一方、生活設備の老朽化という、ほかのサイドもいずれ直面する問題を先取りしている。
ビスト財団、木星開拓を夢見る少年、娘をムルタへ嫁がせようとする軍人など、設備以外の問題も豊富。投資先には困らない。
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造船、金融、保険、物流が集中する、地球圏でも有数の豊かな経済圏。しかし、その繁栄の足元にあるエンデュミオン旧居住区では、無登録移民、違法住宅、人身売買、児童労働が見えないことにされていた。
ムルタがムウ、ラウ、レイと出会った場所。なお、三人を拾った結果、帰りの船の教育費と食費と騒音が増えた。長期的な投資効果に期待したい。
原作1年戦争では壊滅するが、今回は若い中尉さんが奇跡を起こすかもしれない。
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月の裏側に位置する工業コロニー群。本編現在は、まだジオン共和国でもジオン公国でもなく、自治権拡大を求める政治運動が成長している途中である。
勤勉な工業地帯であり、反連邦感情の温床であり、同時に、普通の住民が今日の賃金や子どもの学校を気にして暮らす街でもある。まだ公国旗を振ったり、妙な軍服を着たりしてはいけない。
★アズラエル家とその周辺
・ムルタ・アズラエル
本作主人公。前世では十四歳から町工場で働き、三十歳の誕生日に過労死した日本人だったが、三歳のムルタ・アズラエルとして前世の記憶を取り戻した。
現在十二歳。個人資産十億ドル、大学を首席で卒業済み。人、物、金、情報の価値を見抜き、それらを結びつけて利益へ変える能力だけはニュータイプ級だが、本人は戦闘能力も操縦技能もニュータイプ能力もない純粋なオールドタイプである。
前世の原作知識は、ジオンが地球連邦と戦う、コロニーか石ころが落ちる、ガンダムという兵器がある、ギレンの野望というゲームがあった、という程度。
・ジョージ・アズラエル
ムルタの父であり、アズラエル家当主。八歳の息子へ百万ドルを貸し与える一方、事業計画、損失の上限、責任の所在まで説明させた、過保護な父親と冷静な投資家を両立させる男。
ムルタの計画を止められる数少ない人物だが、反対すると翌朝には問題点を修正した分厚い構想書が提出されるため、最近では止めるより条件を付ける方が早いと学びつつある。
・マリア・アズラエル
ムルタの母。環境保全基金と宇宙移民支援網を長年築き、国境や地球と宇宙の違いを越えて活動してきた人物。
ムルタが掲げるブルーコスモスの倫理的な土台は、だいたいこの人から借りたものである。息子が暗い方向へ進み始めた場合、札束より先に母を見せるとよい。たぶん止まる。
・ハワード
ジョージがムルタの旅行へ同行させた秘書。三十代で、漆黒の長髪をオールバックにした、極めて有能かつ我慢強い人物。
ムルタが道端の木、工場の廃材、孤児の教育、木星航路まで投資案件へ変えるたび、端末へ新しい仕事を追加している。転生特典を与えられたのはムルタだが、最も必要としているのは彼かもしれない。
・アレクサンドル・ゴップ
ジョージと親しい地球連邦軍大佐。軍事的才能と政治的才能を入れ替えたビュコック提督、というのが作者内のイメージ。
艦隊を率いて敵を沈める代わりに、会議室を泳ぎ、予算を通し、人材をつなぎ、地球連邦そのものが沈むのを防ぐ男。連邦の守護神やでえ。
・転生女神(仮)
主人公をムルタ・アズラエルへ転生させたらしい存在。オーロラのような光の中で若い女性の声を聞いた気がするものの、名前も頼み事も思い出せない。
主人公をうっかりオールドタイプへ転生させたため神託を届けられず、現在は意思疎通不能の怨霊めいた何かになっている。誰なんでしょうね。
★ 月とサイド1で出会った人々
・カノーラ・ハイタウン
フォン・ブラウン市長。よく歩き、よく話し、よく笑い、市民の名前と事情を驚くほど細かく覚えている。
人の価値と投資判断は分けて考えるべきだと、ムルタへ最初に教えた人物でもある。妙に若く、妙に強く、何年たってもほとんど老けないらしい。正体予想は随時募集中です。
実はメアリー・スー的存在。
・ロベル・ラミアス
月面の天才技術者。技術以外のすべてが不足していたところをムルタに発見され、研究資金、販路、経営人材をまとめて投資された。
研究費の計算はできるのに、自分と家族へ使う金の計算だけは盛大に間違える。娘の将来についても苦労しそうな名字だが、まずは妻と娘を大切にしてください。
・マリュー・ラミアス
ロベルの娘。ムルタとロベルが技術投資の交渉をしている最中に誕生した。
本人が何も知らないうちに教育資金の信託を用意され、父親が気づいた時には返却不能になっていた。初恋は、勝手に教育費を積み立ててくる十二歳上のお兄さん。
・メラニー・ヒュー・カーバイン
未来でアナハイム・エレクトロニクスの親玉になる男。本編現在は同社の取締役で、企業を生き残らせるためなら不採算部門と人員を切り離す、冷徹だが有能な経営者。
月面の産業、金融、政治を一つの卓へ集める壮大な企てを進行中。陰謀ではない、長期経営計画だ――と、陰謀を企てている人はだいたい言う。
実はユダヤ・ロビーで裏である計画を立てている。
・カーディアス・ビスト
十八歳のビスト家後継候補。家の力から逃げることで自由になろうとしていたが、ムルタと出会い、家の中へ残って変えるという選択肢を考え始めた。
ムルタからは、金ではなく本人へ投資された。
祖父と話すのが好きで、荒唐無稽な夢の話を好んで聞いている。箱? 弁当箱かな?
・サイアム・ビスト
ビスト財団を率いる老人で、カーディアスの祖父。人間が権力を持った時にどう変わるかを見続けてきた人物であり、ムルタの危うさも早い段階で見抜いている。
友人は大切にしろ、ただし相手が間違えないと思うな、とカーディアスへ教えた。とてもよい教えなので、本人も最後まで守ってほしい。
一つ目の巨人が地球へコロニーを落とす夢を見た。
・クラックス・ドゥガチ
木星へ行き、資源を採るだけではなく、木星圏へ新しい社会を作ることを夢見る少年。野心が強く、頂点へ立ちたいという欲望を隠さないが、現時点では仲間や反対意見の必要性を学んでいる途中である。
ムルタは、クラックスが善人だからではなく、間違えた時に止められる制度ごと作るという条件で彼へ投資した。ドゥガチに木星社会を作らせて大丈夫なのかって? 契約書は分厚くしてあります。
なお、最強のニュータイプになる素質がある模様。
・ライオネル・バジルール
地球連邦軍少佐。大声、おべっか、営業力、観察力を兼ね備え、ムルタがサイド1で歩くたびに新しい投資案件を持ってくる男。一見腐敗していそうだが、能力は一流である。
まだ生まれていない娘をムルタの嫁候補として推薦したが、即座に断られた。仕事はできる。仕事は。
・ナタル・バジルール
ライオネルの妻のお腹にいる、まだ生まれていない子供。父親の予定では女の子で、将来ムルタへ嫁ぐことになっている。本人の同意はもちろん、出生届すらまだである。
★ ムルタが救った人たち
・アーサー・ワイズマン
ムルタと同い年の十二歳。最初は礼儀正しい金持ちの子供を嫌っていたが、互いを名前で呼び合えば友達だという、かなり強引な理屈によって友人になった。
将来、子供が生まれたらムルタへ名前を付けてもらうという約束をしている。果たして息子の名前は何だろうなあ。答えはポケットの中へ入れておこう。
・メアリー・ワイズマン
アーサーの母。移住詐欺で財産を失いかけたところをムルタに救われ、生活設備工場の採用試験へ挑む機会を得た。
まだ試験には合格していない。ムルタの金で結果を買うことを断り、自分の実力で受験して、その結果を報告すると約束した。努力が報われるかどうかと、努力そのものに価値があるかは別の話である。
・ムウ・ラ・フラガ
旧名ムウ・ラ・ラメー。サイド5の旧居住区で、ラウやレイを守りながら生きていたガキ大将。
不可能を可能にする男になれるかどうかは分からないが、食事の取り分を増やす交渉には、すでに何度も成功している。初めて見た地球の海を巨大な貯水槽だと思った宇宙育ち。
・ラウ・ル・クルーゼ
旧名ラウ・ル・ルシエ。ムウの異母弟であり、病気のため父親から金のかかる子供として切り捨てられ、人身売買同然の契約へ巻き込まれていた。
静かに大人の言葉を聞き、その矛盾を見つけるのが得意。仮面はまだなく、世界への憎しみより先に、安心して眠れる場所と自分を心配する家族を手に入れた。
ちなみに、仮面をかぶると豹変する。
・レイ・ザ・バレル
旧居住区で名前すら持たずに生きていた少年。何も持たない「零」から始めるという意味でレイという名を自分で選び、姓はムルタが用意した。
誰かの予備でも代用品でもなく、レイ本人として育つ機会を得た。果たして、この違いが未来をどれほど変えるのだろうね。
・スベロア・ジンネマン
十歳。アーサーの舎弟ではない。勝手についてきて兄貴と呼び、工具鞄を持ち、客へ飲み物を出し、困っている人間を放っておけないだけである。
将来は大きな貨物船を任せたくなる少年。重要な役割を果たすことになる。
★サイド3の人々
・サザーランド少尉
ゴップがサイド3へ送り込んだ案内役兼護衛。よく見る目と、余計なことを言わない口を持ち、連邦とサイド3のどちらかを単純な悪者へしない現実的な軍人。
ムルタが「ニュータイプ」という言葉へ反応したことも見逃していない。サイド3の目と耳になることは約束したが、アズラエル家の私設諜報員ではない。とってもきれいなサザーランドである。
・ジオン・ズム・ダイクン
サイド3の自治権拡大運動を率いる思想家。人類は宇宙へ出ることで古い距離感を越え、互いを理解できる新しい人間へ変わる可能性があると説く。
理想家である一方、ムルタの資本がすでに政治を動かしていることも見抜く現実的な運動家。ムルタは、この人が将来ジオン公国を作って王になるのだと予想している。原作知識が少ないって怖いね。
・デギン・ソド・ザビ
サイド3の工業界で大きな影響力を持つ実務家。止まった貨物を前に会議を始めるのではなく、代替倉庫、輸送経路、費用負担を決めて、まず荷物を動かす。
現在はダイクンを心から支持する盟友であり、彼の理想を産業と制度へ変える役目を担っている。王の隣に立つ者。ただし、この場合は「隣」という位置がとても大切である。
・ギレン・ザビ
デギンの息子。名前を告げただけでムルタ・アズラエルを三秒間停止させた少年。2歳年下。
数字に強く、計画書の二重計上を見抜き、自分の計算が間違っていれば修正前の資料まで残せる、素直で好奇心旺盛な秀才である。ムルタへ送った最初の質問は、「あなたが間違えた時、あなたの金を止められる者は誰ですか」。
立派な少年ですね。現在は。ちなみに、眉はある。