巌と一馬を所長室に案内して、応接のソファに座る。
出されたお茶に口をつけて一心地ついてから巌が切り出した。
「秋人くんは元気ですか?」
「はい。すっかり」
「それは、よかった。それで相談というのは?」
初回のことがあるので、一馬は無言で身構えている。すっかり苦手意識を持たれているなあと薫は内心でため息を吐いた。
薫にはあまり
正直なところギルドを挟まずに
「実は、秋人の進路のことなのです」
「高校受験ですね」
「はい」
薫は腕を組んだ。
「私も彼もあまりそのあたりの事情に詳しくないですし、中学校の方も
「
一馬が尋ねる。
「名前は出たんですが、先生はあそこは
「賢明な先生で助かりましたね」
巌と一馬は大きく頷いた。
「そこ分からない先生が多いんですよ。我々も時々苦労しています」
一馬がため息をついた。
「神崎先生はあまりご存知ないかもしれませんが、我々のように一族もろとも
「はい」
「そして、そういう家の子は割と小さい頃にダンジョンでジョブを得ているんです」
「えっ」
薫は思わず声を上げた。
「秋人みたいな子供が沢山いるんですか!?」
「いえいえ、彼のように
「…ああ、そういうことですか」
「はい」
苦く笑う名門の
「
「なるほど」
「しかし、これは残酷なことです。ほんの小さな頃に将来が決まってしまうのですから」
赤城はこの判定の儀式で、
しかし、反面、彼が名家の出身にも関わらず相応しいジョブを得られなかったことで、屈辱的な扱いをされていた一面もあったと後の調査で判明した。
そういう部分が疎かになっていたと朽木の当主は告げた。
「我々のような家では
「訓練校ではないのですね」
「はい。訓練校のレベルはとうに習得済みですので、行っても意味がないのです。」
「あ、なるほど」
薫は頷いた。そうして高度な訓練をおこなっている名家の
「それに、どれほど
一馬は言う。
「正直なところ、精神的、身体的理由で辞める者も多い世界です。しかし、訓練校しか行ってないものはその後の人生がかなり厳しいのが現実です。我々はできるだけ一般常識を身に付けるために、普通の高校や大学に通うように指導しています」
「朽木家はそういう引退者の就職を斡旋したりもしているんですが、やはり
一般常識と
「ですので、朽木家は最低でも中学、高校は普通の学校に通わせているんですが、まあたまに例外的にどうしても
巌がため息交じりにそう告げる。
「例えば、今一馬の子供は9歳ですがね、私と一馬がもしもダンジョンで死んだ場合、朽木の家を継ぐために、筆頭でダンジョンの征伐に向かわなければならないのです。そういうようなシチュエーションの場合、学生でも
名家の跡取りも大変だなと薫は思った。
「なので、そういう事情をある程度飲み込んでもらえるように、朽木家の者が理事として入っている学校がいくつかあるわけでして」
巌がおもむろにアタッシュケースからPCを取り出した。
「こことか、こことかですね。あと、この辺りも」
リストをさっと取り出すと、データを薫のアドレスまで送信してくれた。
「どこを受験するか教えていただけましたら、事情を上の方に通しておきますので、秋人君が
「ありがとうございます。助かりました」
薫は素直に頭を下げた。薫と秋人の悩みはあっという間に解決してしまった。
薫「相変わらず秋人の強火ファンですね」
巌「朽木家は全員末端の構成員に至るまで如月秋人を推して参る所存です」
薫「重い」