【書籍化】3S探索者の代理人   作:かんだ★

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本日から第十五章開始です。
今章はちょっとだけ長めです。


第十五章 代理人、高校生と二度目の春を過ごす
1.  恋敵


 新学期、秋人が懸念していたクラス替えが行われず、1ーBはそのまま繰り上げになった。おかげで春から緊張して過ごす必要がなくなって、秋人はご機嫌である。

 

「おはようございます!」

 元気よく部室のドアを開けると、美香の近くに見慣れない男子生徒が立っていた。

「おはようございます?新入部員ですか?」

 と秋人が尋ねる。ごふっと誰かが笑いを堪えるような、吹き出す声がした。秋人がそちらを見ると壁際に、1学年進級し3年になった鳥本華と佐藤輝美が立っていた。

 こっちにこいというジェスチャーをするので秋人は大人しくそれに従う。

 

「あれは、サッカー部の部長でJリーグからも声がかかっているという、スーパーアスリートの元宮敬人という3年生だよ。イケメンですごく人気あるんだけど聞いたことない?」

「はあ、3年生ですか。すいません。まったく興味がなくて」

 秋人が心の底からすまなさそうに頭をかく。

「ああ、ダメダメ。如月君はイケメン見すぎてるから、そんじょそこらのイケメン見ても感動しないっしょ」

 華の言い分に輝美も苦笑を返した。

 そもそも、本人が並外れた美形だが、加えて秋人の保護者がアレである。あの保護者と住んでいれば元宮程度のイケメンは単なるモブだ。

 

 新入生扱いされた元宮は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、気を取り直して改めて美香に向かい合った。

 

「工藤さん、何度も言ってるけど、俺君のことが好きなんだ。付き合ってくれないか?」

 秋人がぎょっとして元宮を見る。美香は困ったように首を傾げた。

「ごめんなさい。何回もお付き合いできませんって言ってるんだけど」

「前、他に好きな人がいるって言ってたよね?その人とはどうなったの?もし、ダメだったなら俺はどう?自分で言うのもなんだけど俺、かなりお買い得だと思うよ」

 

 元宮が美香の肩に手をおこうとした瞬間、

 ペシン

 と乾いた音がして、その掌が払い落とされた。元宮が驚いて相手を見ると、さきほど部室に入ってきた2年生がいつの間にか傍に立っていた。

 

「美香の好きな人は僕です」

 にっこりと秋人が微笑んだ。しかし目が笑っていない。完全に頭にきているオーラが漂っていた。

 それはそうだろう。彼氏の前で彼女が口説かれているのだ。平気でいられるはずがない。

「ちなみに、僕たちお付き合いしているので、金輪際美香に変なこと言わないでくださいね」

 秋人はさらに畳み掛けた。

 元宮は無言で美香を見つめたが、美香は頬を染めてはにかみながら頷いた。

「そうなの。この前のバレンタインの後から付き合ってるの」

 そう悪びれもせず宣言した。

 

「美香って割と容赦ないよね」

「あのタイミングで言っちゃうんだ」

 華と輝美が外野でツッコミを入れている。

 

 元宮は屈辱で震えていた。

 工藤美香は、同じクラスだが以前は美人でスタイルもいいが、愛想がなく澄ました女だと認識していた。しかし、最近雰囲気が柔らかくなり仄かな色気さえ感じるようになった。

 

 元宮はこれまで落とせなかった女子はいないと友人たちに豪語してきた。なので、高校生活の最後を彩るガールフレンドに美香を選んだのだが、これが悉く拒絶され続けた。そうなると闘争心が湧いてくる。

 何が何でも落としてやろうとあれこれ口説いたり、誘ったりしてみたが彼女は一向に靡かなかった。

 挙げ句の果てに、とうとうバレンタイン前に「他に好きな人がいる」と振られたのだ。

 

 自分はサッカー部のエースでキャプテン、Jリーグからも声がかかっていて大学の推薦の話もきている。そんなハイスペックな自分を振るほどの男とはどんなヤローだと憤慨していたが、なんと2年生。というか、バレンタイン時には1年生だったではないか。

 

「あり得ない!この俺を振ったのがこんな年下のヒョロガリの為だなんて!工藤さん、男を見る目がないよ」

 元宮は興奮してそう叫んだ。美香は目に見えてムッとした。しかし、秋人はにっこりと微笑んで言い放った。

「いやあ、僕もそう思います。美香は男の趣味が悪いなって。でも…」

 一歩前に出る。それから、ぞっとするような鋭利な笑顔を向けた。

 

「美香が好きなのは僕なんですよ。残念でした」

 

 元宮は何かいい知れない恐怖を感じて一歩下がった。アスリートとして築いてきた闘争心が本能的に危険を感じたのだろうが、そんなことを知る由もない元宮は、自分が秋人の迫力に押されたことに苛立った。

「今度ゆっくり話そう」

 という捨て台詞を吐いて部室から逃げ出した。

 

 去っていく元宮のことなど、秋人と美香は眼中にないようで、美香は秋人の顔を覗き込んだ。

「秋人くん、私は男の趣味は悪くないわよ」

「そうかな?」

「そうよ。世界一だと思ってるわ」

 美香がそう自慢げに宣言すると、秋人は幸せそうに微笑んだ。

 

 

 存在を忘れられている部員たちが、呆れたようにその様子を見ていた。

「部室が桃色に染まって辛いです!」

「部室であんまりイチャイチャしないでくださーい」

 外野からの声に秋人と美香は赤面して俯いた。

 

「しかし、まあ美香はちょっと気をつけた方がいいかもよ」

 華が少し複雑な表情で腕を組む。

「え?何が?」

 美香が不思議そうに尋ねると、輝美も難しい顔になった。

「元宮くんってさ、確かに人気あるんだけど、悪い噂もあるのよね。女の子に対してすごく不誠実だとか、遊んでるとか…やることやったらポイとか、狙った獲物は逃がさないとか男連中に話してたりもしてるみたいだし」

「うんうん。プライド高そうだし。気をつけるに越したことないよ」

 二人の親友にそう言われると、美香も不安になった。

「わかった。気をつける」

 美香の返事を聞いて、秋人は黙って難しい顔をしていた。




秋人「それでね、クラス替えがなかったからすごく安心してるんだ」
薫「へえ、そうなんだ。そりゃ、助かったな(ギルドから朽木家にお願いがいって校長のとこまで話が行ったんだな。うん、あとで酒でも届けとこう)」
秋人「ラッキー。でも、智輝が僕のことコミュ障って言うんだよ。酷くない?」
薫「・・・・・うん、ひどいな(棒)」
秋人「・・・・・ひどい」
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