【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人 作:かんだ★
当夜の魔力の痕跡を探して、秋人たちは園内を猛スピードで駆け抜けていた。何かよからぬことが進行しているのは理解しているギャラリーが、慌てて避けていく。
「秋人、帽子」
「あ、そうだ!」
冬由の指摘に秋人は走りながら帽子を被る。これで盗撮されても大丈夫だ。まあシャッタースピードより速く動いているのだが。
結界のドームからふわふわとモンスターが発生し出した。一般人の悲鳴がこだまする。駆け抜けざま秋人は軽々とモンスターを屠っていく。その姿は圧巻で、冬由も聖夜も思わず見惚れてしまった。
「秋人さん!!」
少し大きめの遊具のところに遊馬たちが一般人を守りながら待機していた。遊馬はどうやら持参していた収納魔道具に入れていた竹刀で近づいてくる小型のモンスターを防いでいる。彼の後ろには莉音もいて、一般人の救護に当たっていた。
「え?遊馬くん!君、もう
驚いて秋人が声をあげるも、遊馬は笑って首を振った。
「いえ、この竹刀は家宝でして。魔法が付与されてるので、
とはきはきと説明してくれたが、それだけではとうてい説明できない。普通の少年はモンスターに攻撃されたら逃げるだけだ。それなのに、遊馬の背中には複数人の大人が庇われていた。
「遊馬は、毎日朝5時に起きて鍛錬をしてから学校に行って、帰ってきてからも筋トレとか精神修養とかたくさん修行してるんですよ」
と聖夜が秋人に説明する。照れたように遊馬が鼻を擦った。
「まだまだです。でも、僕いつか秋人さんと一緒に探索に行きたいなって」
だから修行中ですと少年は太陽のような笑顔で笑った。しかし、知った顔が迎えにきたからだろう、安堵のあまりヘナヘナと地面に座り込んでしまった。強がってはいたが、やはり怖かったらしい。小刻みに膝が震えているのを、秋人は気が付かないフリをした。
「もう、大丈夫」
ぽんと秋人が肩を叩くと、遊馬はふにゃりと笑った。
「当夜と音々さんは?」
と秋人が尋ねると、遊馬は上をさし示した。
「結界を壊すから場所を特定するって、あの上に」
彼が指差したのはユニバーサル・フィルム・ジャパンが誇る魔法学校の尖塔だった。
当夜が音々を抱き上げて尖塔のてっぺんまで連れてきた。
「音々さーん、この結界って術師いる方っすか?」
「たぶん結界石やと思う。術師にしては範囲が広すぎるし」
「だよね」
当夜が頷く。あまり魔力探知系は得意ではないので、音々にも来てもらったのだ。早く戻らないと遊馬だけでは心許ない。
「あ」
自分たちがいるのと反対側で盛大な稲妻が走った。
「あー、先生あの辺かあ」
当夜が頭を掻いた。ここからかなり距離がある。ということは秋人もあのあたりにいるのだろうか。と、そう思っていると
「当夜!」
という声とともに秋人がやってきた。
「あれ?秋人!先生は?」
「結界を壊しなさいって」
ぎゅっと秋人が唇を噛む。
「秋人は
秋人の眉が切なげに歪む。本当は心配で仕方なかった。
「や、さっき
「うん」
秋人が頷くと、音々が南の方を指した。
「あっちが怪しい。少しだけ結界の威力が強い。たぶん結界石だと思う」
「わかった!ありがとう!!」
秋人は
「陽が翳ってきたから、私あんまり起きてられへんかも」
音々の言葉に当夜は慌てた。
「待って!こんなところで寝たら俺困るっすよ」
当夜は音々を抱き上げて、昇るよりは幾分慎重に塔を降って行った。
秋人は園内の建物から建物へ飛び移るように直線コースでひた走る。駆け抜けた先に確かに結界の結び目を発見した。おそらく周囲に結界石を置いた要の部分がここなのだろう。音々は流石に勘が良かった。
「ここだ!」
秋人は駆け抜けると同時に展開していた双剣を持って結界に切りつけた。
しかし、勢いよく跳ね返される。秋人だからなんとか無事に済んだが、普通の
「え?魔力を跳ね返した?」
秋人が驚きに声をあげる。結界石は結界の外に設えてる。結界をまず少しでも破壊しないと石まで力が届かない。その破壊に魔力が使えないというのは考えていなかった。
秋人は魔力がなければただの非力な少年にすぎない。
「考えろ、考えろ…」
早く薫のところに行かねば、匠を救い出さねば…そう思うのに空回りして焦りだけが募る。取り出した一番大きな実剣で結界に切り込んでみたがびくともしなかった。
「秋人くーん、たすけてええええ」
と情けない声が聞こえてきて秋人が振り返ると、小型のモンスターに追われている小金井を見つけた。慌てて秋人がモンスターを倒すと、彼は肩で息をしてぐったりとしていた。
「小金井さん、遊馬くんたちと一緒にいたんじゃ?」
あそこには冬由と聖夜が詰めてくれているので、よほどのことがない限り安全なのに。
「いやあ、君が南に向かったって当夜くんに聞いてさ」
もじもじする大人に秋人はかなりドン引きだ。
「君の活躍をこの目で見ないで、なんの記者か」
と胸を叩いたが、秋人は厳しい顔をした。
「バカなことを言わないでください!あなたを追いかけていたモンスターは確かにさほど強くはないかもですが、一般人がどうにかできる物ではないんですよ!殺されたらどうするんですか!!」
「そうさ、死んだ人は生き返らない」
小金井は頷いた。
「君の力になりたいんだ」
真摯な顔だった。
「俺の故郷は新潟だ。新潟第五ダンジョンのあった場所だ」
小金井の言葉に秋人ははっと息を飲んだ。
「君のおかげで妹は助かった。だから、俺はなんとしても君の助けになりたい」
彼は「妹は」と言った。ということはそれ以外はダメだったということだ。秋人は唇を噛み締める。
先ほど万年筆を見せてもらった時に聞いた話を思い出した。あの時は気が付かなかった。彼が父親を偲んでいたことに。
自分はいつだって赤城に言われるまま、ダンジョンを攻略するだけだった。その行為には何の意志も志もなかった。それなのに、そんな自分に恩を感じてここまでやってきた人がいるのだ。
「苦戦してる?」
「はい、この結界は魔力を通さないみたいで」
秋人は自分が魔法剣士なことを小金井に伝えた。魔力を弾くのでいつもの威力の半分しか出せないのだと。
「魔力のないすごく硬いものを、もの凄い力で投げたら穴開いたりする?」
「たぶん」
秋人が頷くと、小金井は懐から例の万年筆を取り出した。
「これは筐体が全部アダマントなんだ。親父が作っただけだから魔力回路は備わってない。もらった時は何でバカなもんをって思ったけど、これならいけるんじゃ無いか?」
メタリックの筐体がキラリと光った。
「だめです!そんな大事な物」
さっきの話ならこれは形見のはずだ。秋人は断ったが、小金井は首を振った。
「誰かの命には代えられないだろ」
小金井はにこりと笑う。笑顔が泣いているように見えて秋人はグッと言葉に詰まった。
能天気で喧しい、無遠慮な人だとずっと思っていた。薫の邪魔ばかりすると。なぜ薫は彼を買っているのさっぱり分からなかった。今ならよく分かる。
「君は今まで俺たちを助けるためにたくさん犠牲を払ってきたはずだ。それなら、俺たちも同じものを返さなくてはならない」
静かで美しい視線だった。手渡されたそのペンは今まで感じたことがないくらい重かった。
秋人は帽子が邪魔なので、収納にしまった。
万年筆には魔力は込めない。身体強化のみで突破する。フォームは智輝を参考に。
あのエース様は今年は甲子園まで行ったのだ。1回戦で敗退して悔し涙を流していたが。秋人は学校からバスで応援に行った。負けるなんて思ってなかった。秋人もすごく悔しかった。
ちりりっと秋人の手の中の力が跳ねる。小金井の家族の仇を討つのだ。
「いけええええええ」
気合いとともに万年筆を投げる。豪速で投げられたそれは結界の一部を破り、さらに結界石まで破壊した。
「あ…」
秋人が思わず呟く。
ガラガラと石が崩れる。それと同時に結界もはらはらと剥がれるように消えて行った。
「しまった!」
秋人が叫んで結界石の残骸のところまで駆け出した。石まで届かせるつもりはなかったのだが、ぶつけてしまったらいくら頑丈でも流石に壊れてしまう。力加減が分からなかったのが災いした。
「すみません」
秋人は項垂れて頭を下げた。ひしゃげて砕け散った筐体を拾い集める。小金井は年相応にしゅんとしてる秋人を見て少しだけほっとした。
彼が少年だと知ってから色々と調べられる限りのことを調べた。人間国宝にまで会いに行った。彼が薫に出会うまでの生活がかなり悲惨だったことを知って胸が痛かった。
でも、こんな風に年相応の顔をして狼狽えている彼を見て、今彼が普通の生活をしていることが知れて心の底からほっとした。
「いいや。いいんだよ。だって俺だって君の役に立てたってことだろう?」
小金井はにっこりと微笑んだ。
「昔から言うじゃないか。ペンは剣よりも強しってね」
大人の笑顔で小金井が笑う。秋人はそんな小金井の笑顔を見てほっとして少し笑った。
ギャラリーA「なあ、あそこになんか人影おらん?」
ギャラリーB「え?どこどこ」
ギャラリーA「ほら、塔の先」
ギャラリーB「なんか猫耳生えてへん?」
ギャラリーA「え?ニャンタって関西出張ありなん?蓬莱の豚まんとか食べるんかな?」
ギャラリーB「助けてくれたらたこ焼きも奢るわー」
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