【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人 作:かんだ★
大善の病室には冬由が緊張した面持ちで構えていた。
「あの、もしも失敗したらかなり酷い苦痛があるかと思うのですが」
冬由がおずおずと大善に切り出すも、彼は鷹揚に頷いた。
「なあに、ダメならダメでしゃーない。お嬢さんの師匠にもう一回頼むだけや」
「でも、私、欠損は治せたことなくて」
躊躇う弟子の肩をリサはポンと叩いた。
「何度も言ったでしょ。それはあなたにまだ欠損を治せるだけのメンタルが備わっていなかっただけだって。技術は十分、魔力も万全。あなたに足りないのは自信と度胸よ」
師匠の言葉に冬由は難しい顔をした。分かっているのだが踏み切れない。
冬由はもう誰かを傷つけたくはないのだ。
そんな弟子の心情がわかっているのだろう。リサは優しい笑顔で彼女を励ました。
「いいこと、冬由。よく聞きなさい。欠損を直すのは回復魔法の最高技術だけど、それだけじゃないの。いかに相手を思いやるかよ。この人に治ってほしい、無事過ごしてほしいって気持ちが大事なの。別に当人じゃなくてもいいわ。間接的にでも構わない。この人が治らなければ私の大切な人がどんなに悲しむだろうって、そういうのでも構わないの」
リサは静かに微笑んだ。
「大切な人…」
その言葉に冬由の頭の中には何故か1人の人物が浮かんだ。
情けなかったり、皮肉屋だったりと思えば唐突にとんでもなく優しかったりする青年の美しい顔だった。
ぐっと冬由は目を瞑る。
「やります
【
冬由の掌から見たこともない美しい光が大善の肩の上に注がれていった。
◆◆◆
「師匠!!!」
バンと音を立てて病室のドアが吹き飛んだ。リサは驚いて飛び上がった。
「あっぶないわねえ。治療中よ!もう少し早かったら大失敗になるとこだったわ」
リサが眉間にシワを寄せて抗議する。回復魔法師の欠損再生術は繊細で体力も気力も奪う大技なのだ。彼女は弟子のファーストミッションを邪魔されてすこぶる機嫌が悪かった。ぎりぎり治療が終わった後だったからよかったものの、もう少し違っていれば大惨事だった。
しかし、飛び込んできた人物にとってはそんなことはお構いなしだ。
「バカヤロウ!死んだらどうする気やったんや!俺を置いて死んだら、化けてでたるからな!!」
大善の袖を掴みわあわあと大声で泣き叫んでいるのは匠だった。元気に自分の足で駆けてきた弟子の姿を見て大善の涙腺が緩む。
「お前の方こそ、ヘマしおって。何が化けて出てやるや。こっちのセリフや」
大善は復活した利き腕を使って匠を抱きしめた。
其の時、ようやく秋人がフラフラになりながら病室にやってきた。
「リサさんごめんなさい。僕止めたんですが、間に合わなくて」
秋人の言葉にリサも苦笑を返す。
「3S
と肩をすくめた。
「冬由、できたんだね」
大善の腕を見て、秋人がにこりと笑う。彼の妹は汗まみれで肩で息をする状態だったが、誇らしげに笑って見せた。
そんな兄妹の姿を微笑ましく見ながら、
「うん、術式も問題なしね」
リサが頷く。罵り合う師匠と弟子の合間を縫って大善の腕を丁寧に確認した。
「まあ、でもまだ何かあるかもしれないから二、三日入院はしてね」
という彼女の言葉に、流石に匠と大善は慌てて頷いた。
「冬由ちゃん、ありがとな。ほんま…俺、なんて言ったらいいか…!!」
匠が全身全霊の感謝を込めて冬由に頭を下げた。新大阪の駅で見た人とあまりにも違っていて彼女は戸惑いを隠せない。
「よかったですね」
と冬由は何とか言葉を振り絞ると、匠は小さく笑って頷いた。
「薫は?」
と秋人が周囲を見ながら尋ねる。いるはずだと思った人がいなくて眉を寄せた。
「うん、なんか750万円回収してくるって出かけた」
と冬由が答えた。
「エリクサーって500万円じゃなかったっけ?」
とリサが首を傾げていると、
「俺の手数料だよ」
と笑いながら薫がやってきた。
「あ、冬由ちゃん、無事に治せたんだね。よかった」
との薫の声に冬由は不意にさきほどのリサの言葉のあとに薫の顔が浮かんだことを思い出して、いい知れない気恥ずかしさを感じてふいっと顔を背けてしまった。いつものそっけない態度と思った薫はさして気にはしなかったが、秋人は「あれ?」と首を傾げた。
気を取り直して、秋人が薫に尋ねる。
「回収できたの?」
「ああ。久宝家の債務整理が始まりそうだからな」
先に貰ってきたと薫は頷く。
「なんでまた。お金なんて別に薫そんなにいらないでしょ」
との秋人の言葉に、薫はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。
「綾さんは金にものすごく執着してたからね。だから金払ってもらった方が嫌がらせになるだろう。ま、当初はそんな話は知らないってごねたけど、俺は審議官だからね。映像見せたら渋々払ってくれたよ」
どうやら嫌がらせだったらしい。
「兄貴たちはどうなるんや?」
匠の問いかけに薫は少し困ったように笑った。
「色々と罪状があってね。久宝家に対するものだけでも横領罪、傷害罪、文書偽装罪、特別背任なんかも可能性がある」
薫の言葉に匠は悲しそうに眉を寄せた。
「でも、ユニバーサルでの行為が一番問題だろうな。おそらく実刑は免れない」
「・・・・・・・」
匠は俯いてしまった。大量虐殺も視野に入れたテロ行為だ。探索者の能力を使った計画犯罪は、通常の罪より厳しめに判決が出る可能性が高い。
「久宝家は解散するとお父さんは言ってる」
「そっか…」
匠の声は震えていた。大事に守ってきた久宝家の終焉だ。くるものがあるのだろう。秋人は心配そうに匠を見つめた。
「ところで…匠君」
薫はひらりと一枚の書類を取り出した。
「勝手なことをして申し訳なかったが、気になったから優くんに再確認した。君とお父さんはちゃんと親子だったよ」
「え?」
匠が目を見開く。
「種無しの鑑定も、父子鑑定も優くんが差し替えたらしい。君と綾さんは正真正銘章氏の子供だった。どうする?お父さんの跡を継ぐかい?」
匠は薫の手の中の書類を呆然と見ていたが、その紙をさっさと丸めてゴミ箱に捨ててしまった。
「いや、俺は親父の子供ちゃう。あんなクソジジイの老後の面倒みるなんて真平や」
大善がびっくり目で弟子を見ている。その決断と強さに驚いた。
「親も兄姉もいらん!金なんか自分で稼げるわ」
と勢いよく啖呵を切った。それから、ふっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ま、師匠の老後くらいは俺が面倒見たってもええで」
とニヤリと笑う。大善の目が再度溢れてきた涙で真っ赤になった。
「俺もそれが一番いいと思いますよ」
と薫も笑って頷いた。秋人も冬由もリサも笑顔になる。
「じゃ、思い切りやっちゃいましょうね」
と薫は恐ろしく美しい笑顔で宣言し、病室内にいる秋人以外の全員を凍りつかせた。
薫「あ、金子?お疲れ様。事件解決しそうなんだけど、美味しい話があるんだ」
金子『お前の旨い話は金にならんからな』
薫「ところがどっこい!今回はたくさん金になる!」
金子『詳しく!!』
秋人「金子さんって、もうお金あんまりいらないんじゃなかったっけ?」
当夜「なんか、もう癖というか習性みたいなもんらしい」
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