【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人   作:かんだ★

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26. 帰京

 一同は新大阪から新幹線に乗り込んだ。東京行きである。

 

「あーあー、京都行かれへんかったなぁ」

 と嘆く莉音に冬由は困った顔をした。

「ごめんね。私がばたばたしてたから」

「いやあ、ちゃうし!絶対冬由ちゃんの所為ちゃうし!!久宝のバカ息子どもが悪いんや!」

 莉音の言葉はもっともで、音々もそれに異議はない。

 因みに久宝のバカ息子は匠のことではなく、優のことである。

 

 優は警察に捕まった後も、精神に異常をきたしたのか、ろくな証言ができなかった。なので、薫が駆り出されたわけだが、後から回ってきたSランク探索者(シーカー)の報酬額を見て警察庁が頭を抱えたとか。

 

 綾は綾でこれまでの悪行を訴えられて多額の賠償金を請求されている。彼女が頼りにしていたお金に逆襲される形になった。

 ブランドバッグや高額なジュエリー、夜毎の高価な食事やワイン、セレブな生活の全てが彼女の手から滑り落ちた。今は借金取りから逃げ回る日々らしい。

 

 章は精神病院に突っ込まれていたが、落ち着いたので退院した。しかし、もはや当主としての威厳もなく、付いてくる一族もない。金目のものを根こそぎ奪われた家で、ただ1人鬱々と過ごしているらしい。

 彼の手には薫から手渡された正しい父子鑑定の書類が握られていた。しかしもう、そこに記載のある息子は彼の手の内にいない。彼は絶縁を宣言したし、薫が法的にも処理してしまった。

 

 匠の新しい苗字は「竹山」である。

 

 

「結局、あの人何がしたかったんだろうな」

 と当夜がため息を吐く。出来の良い兄を持つもの同士、匠の気持ちは分かっても優の気持ちは理解できない。

「まあ、そうだね。結局自分はできるってことを証明したかったんだろうけどね」

 と聖夜はほろ苦い笑顔を浮かべた。彼は自分と裏表の関係だ。聖夜がもしも当夜の才能に嫉妬し、彼を排除しようと動いていたら…というもう1人の自分だ。

 

「ま、俺の兄ちゃんはあんなバカじゃないからな」

 と当夜が鼻高々に宣言する。冬由が呆れた顔でそれを見ていた。

 

 

 薫と一緒に座っていた秋人は匠からのメッセージを読んでいた。師匠と一緒に東京に移住すると書いてあった。あっちで美味いものが食える店を紹介しろと書いてあったのだが、秋人が知っている美味しい物の店は主に甘味中心だ。

 

「薫、匠は僕と一緒にケーキ屋さんを回ってくれるかな」

「うーん、どうかなぁ」

 薫は笑って誤魔化した。

 たぶん違うと思うと思っていたが、すごく楽しみにしている秋人に言い出しにくいのだ。側で聞いていた聖夜と巌は2人とも

「今言わないと後で傷口が広くなるぞ」

 と目で訴えていたが、薫はあえて無視した。もしかしたら匠が西の甘味王かもしれないじゃないか、探索者(シーカー)なんだしと心の中に言い訳をする。

 

 

 久宝家は壊滅した。

 もともと優の動かしていた商売で保っていたような家だった。彼が逮捕され動かす人がいなくなるとどうしようもなかった。優に味方していた親族は会社の利権をめぐって醜い争いを行っているらしい。

 まともな探索者(シーカー)はそんな彼らを見放し、離れて行った。中には巌にコンタクトを取って家族ごと抱えてもらうよう交渉してきた片伊勢家のような家もあった。

 

「私はよい取引ができましたよ」

 とニコリと巌が微笑む。秋人を虐待してきた一族ということで風当たりが強い部分もあったのだが、そこは今回の活躍でかなり払拭できたらしい。

「…だからですね」

 派手なパフォーマンスでニュースを賑わせたのだろう。

「これでも、一企業の元トップですので」

 としれっと答える祖父に尊敬の視線を向ける遊馬であった。

「僕、探索者(シーカー)としては秋人さんみたいに強くなって、経営者としてはおじいさまみたいに賢くなる」

 と理想に燃えていた。

 見習ってほしくないところは見習わないでほしいなと薫は苦笑を浮かべた。

 

「そういえばさ…」

 秋人が唇を尖らせる。

「薫、なんで僕に巌さんが来てるって教えてくれなかったの?」

 秋人は別に終始知っている人の魔力を感知しているわけではない。なので、園内に彼がいることを把握していなかった。分かっていればあんなに断腸の思いで薫を残していかなくてもよかったのに。

 

「ああ、だって…」

 薫が困ったように笑う。

「秋人ババ抜きまだ全然だめだからなぁ。巌さんが来てるって顔に出さないようにできないでしょ」

 との薫の答えに秋人はがっくりと肩を落とした。確かにあの時の秋人と薫のやりとりがあったからこそ、優は巌の存在に気が付かなかったのだが…けれどでもである。

 

「納得いかなーい!!」

 本当にすごく辛くて悲しい気持ちだったのにである。ニコニコ笑っている薫の笑顔が小憎らしい。

 そうして秋人が憤慨していると、グリーン車のドアが開いた。

 

「っす!お邪魔しまーす」

 と元気な声とともに黄色いブルゾン姿の小金井が入ってきた。

「また君ですか」

 薫の表情がすんとしたものになる。

「またまたーそんなこと言わんでくださいよー」

 へへへと彼は笑って誤魔化した。

 

「インタビューさせてくださいよーねーねー、東京まで2時間だけ!ね?」

「だめですー」

 と2人のやりとりを見ていた秋人は一つうんと頷いた。

 

「小金井さん」

「はい?何かな秋人君!」

 小金井が満面の笑みを浮かべて秋人を見る。

 

「取材を受けます。あなたが聞いてくれるなら」

 秋人の言葉に小金井は固まった。

 

「あ、もし俺の万年筆を負い目を感じてるなら、あれはそんなつもりじゃなかったからいいんだよ、気にしなくて!!」

 と小金井が慌てたが、秋人は大きく首を振った。

 

「あなたは信用できる人だって思いました。僕の話を聞いてくれますか?」

「・・・・・・・・・・・っ」

 小金井の目に一瞬涙が浮かんだ。慌ててそれを乱暴に拭う。

 

「よろしくお願いします!!」

 小金井が90度角度のお辞儀をした。

 

 薫はその2人を優しく見つめていた。秋の足音が聞こえてくるような残暑の一日が終わった。




小金井「えっと、東京に帰ったらでもいい?心の準備が」
秋人「構わないですよ」
薫「そんな先に伸ばすと気が変わったりして」
小金井「え!?いや、でもしっかり準備して万全の体制で臨みたいです」
薫「よい心がけですね」
小金井「(やっべー、今の完全に試験だったじゃん。飛び付かなくてよかったあああああ)」

というわけで、第十七章終わりです。いよいよ次章は奴がきます。(と思ってたら次の章長くて二つに分かれました)

もうちょっとです。ここまで書けたのも応援してくださった皆様のおかげです。
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