【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人 作:かんだ★
1. インタビュー 1
「本日はスペシャルゲストをお迎えしています」
「こんにちは」
「お名前を」
「如月秋人です」
「年齢をお聞きしても?」
「十六になりました」
「高校二年生?」
「はい」
「……というわけで、本日のスペシャルインタビューのゲストは3S探索者の如月秋人さんをお招きしています」
「よろしくお願いします」
……側で聞いていた薫が苦い顔をしている。
「編集ありですよね?」
「ありです」
厳かに薫の横の人物が頷いた。
「文字媒体しか認めませんよ」
「分かってます。一応、何かの時のための念の為の動画撮影です。ちゃんと契約は守ります」
薫の横に直立不動で立っている東都新聞の編集長と社長が大真面目に頷く。
「契約違反だとあなた方のクビが飛びますからね」
「……肝に銘じます」
このクビは肉体的な首のことだと悟った社長は青くなったが、編集長は大きく頷いた。どうやら編集長は覚悟があったらしい。インタビューは続く。
「学校には普通に通ってるの?」
「はい。高校の普通科です」
「得意な科目ってある?」
「美術が得意です。美術部に所属してます。学科はそれなりです」
「あ、あっちで弁護士先生が首振ってますよ」
「……えっと、本当は成績は割といい方だと思います」
「みたいですね」
クスリと笑って小金井は薫の方を見た。薫は大きく頷いている。秋人の成績がいいことは確からしい。小金井は気をとり直して質問した。これはぜひ聞いてみたかった質問だ。
「彼女はいたりする?」
「!……はい。います。素敵な人です」
秋人がはにかみながら答える。チラっと小金井が薫の方を見ると大きくバツを出している。この話題はこれ以上はつついてはいけないということだ。秋人もそれを見てほっとしているようなので、小金井は話題を変えた。
「さっき美術部って言ってたけど、運動部には入らなかったの?」
「はい、運動部は考えてませんでした。
「あ、そっか。そういう規定があるんだね」
「でも、実は一年の時のスポーツテストのソフトボール投げで失敗しちゃって。結構やばい記録を出してしまってすごくしつこく野球部に誘われました」
「あー……、それは、知らない人からしたらそうなるよね?ていうか知らなかったんだよね?」
「はい。その時は僕が探索者だってことは秘密にしてたので『一緒に甲子園に行こう』ってすごく誘われたました。もうすっごく弱りました」
「それは、大変だったね? それでどうしたの?」
「僕は生まれてはじめて同級生と喧嘩しました。あ、もちろん口喧嘩です」
「そりゃそうだ。それで?」
「今はもう和解して、すごく頼りになる友人です。僕のことも話しました」
「そっか」
小金井が胸を撫で下ろしたので、秋人は小さく笑った。
「でも、僕スポーツってやったことも見たこともなかったから、最初は何がそんなに楽しいのかよくわからなかったんです。でも彼はすごく野球が大好きで、寝ても覚めても野球のことばっかり考えてて、毎日練習しててすごいなって思うようになりました。他にもサッカーとか陸上とかに打ち込んでる友人がいて、皆すごいな、偉いなって」
「君もすごく修練したんじゃないの? その…探索者として」
「はい」
小金井の質問に秋人は素直に頷く。
「それはもう毎日。10歳で両親が死んでからは、生きるために必死でした。弱ければ死ぬだけだったし、父と母の仇を討つまでは死にたくなかった。だから毎日魔法と剣は暇さえあれば鍛えてました」
「うん」
「でも、それって僕が自主的に選んでやったことじゃなくて、それしかなかっただけなんです」
秋人は微かにため息を吐いた。
「僕はあの頃、赤城さんに騙されて両親にものすごく負債があって、それを返さないと死んだ後でも有罪で裁かれるって教えられてました。今にして思えば、死んだ人間を有罪ってどうやって?ですよね。子供ながらに地獄みたいなところに両親が連れて行かれるみたいな、そういうふわっとしたイメージを考えてしまったんですが、そんなの人間にできるわけがないんです。でもその時の僕は物知らずで、すっかり騙されてしまった。負債とか有罪とかの難しい単語に震え上がってしまって思考を放棄してしまった。正しいことを知るのはとても大切なことです」
「10歳の子供にそれを求めるのは酷だと思うよ」
「そう言っていただけると、ありがたいです」
秋人が赤城の言葉を信じてしまったもう一つの理由は母の最後の言葉だった。
『お父さんとお母さんが全部悪い』
その母の言葉が引き金だったのだが、それは秋人は言わなかった。今もこの言葉の真意、あの新宿第六ダンジョンで何があったのか、はっきりとは思い出せていないからだ。
「秋人くんのご両親もSランクの探索者だったんだね?」
「はいそうです。如月春彦と夏実と名乗っていましたが、実際の本名は不明です」
「え?」
小金井が目を丸くする。
「両親は
「そ、それは…」
小金井がチラリと薫を見やる。聞いていいのか?とその顔が尋ねていたが、薫は無表情に頷いた。
このことを表に出すのは神崎家、さらにはギルド、政府も通して議論したが、結局後からあちらに発表される方が傷口が大きいという結論になった。春彦と夏美が
「父と母はその組織から何かの任務で日本にやってきていて、ダンジョンの大規模な変異に巻き込まれて瀕死の重傷を負ったようです。そこを如月四季という
「それは、秋人くんはご両親から聞いたのかい?」
「いえ、日記を見つけまして。母のものです。そこに書いてあったので、全部が真実とは限りません」
秋人は素直に事実だけを答えた。
「両親は四季さんの元で、自分たちの価値観や倫理観、常識などがいかに歪んでておかしいか気が付いたみたいです。生まれてからずっとそんな中にいたんだから、気づいた時はきっと大変だったんじゃないかなと思います。僕みたいにたった五年だけ世間から外れてただけでも、社会復帰は結構大変だったのに、人生まるごとですからね」
秋人の言葉はしみじみとしていて妙に説得力があった。
「それでご両親はどうして
小金井が尋ねる。
「両親は組織に帰りたくなくて、見つからないように四季さんの元に身を寄せていたようです。四季さんはダンジョンの研究家だったのでその手伝いをしていたと書かれてありました。でも、ある日四季さんが大きな怪我をして、両親はその治療費を稼ぐために
「そう…」
「残念ながら、四季さんはその傷が元で亡くなったみたいですが、両親はそのまま
「ああ、それで」
小金井は前回の記者会見を思い出して頷いた。
「僕のジョブは魔法剣士です。通常魔法剣士って魔法師と剣士のどちらにも経験値が配分されるので、成長が遅いジョブで器用貧乏とか言われるんですが、なにしろ物心ついた時からダンジョンにいたので、そこは普通の人より経験値は稼いでいたかなと」
「それに、君は10歳から毎日ダンジョンに潜らされていたしね」
「はい。なので、僕は魔法も剣も使えるけど普通の
小金井が首を傾げる。
「ってことは、もしかして魔法剣士のジョブもちは人よりたくさんダンジョンにいけば、強くなれるってことかい?」
「そうですね。たぶん」
へーと小金井が感心したように声を上げた。
「でも、普通の
「あはは、だよねー」
小金井は苦笑するしかなかった。それができれば苦労しないと言うやつである。
「10歳からの話を聞いてもいい?」
「はい、どうぞ」
秋人は静かな表情で頷く。小金井はチラリとそばに控えている薫を見た。その顔には心配そうな表情が浮かんでいる。あまり酷い話にもっていかないのようにしなければ……と小金井は肝に銘じた。秋人はまだ16歳の少年だということを忘れないでほしいと薫から言われているのだ。
小金井「今日はよろしくお願いしまっす」
秋人「お手柔らかに」
薫「下手なことしたら明日から君は毎日足の小指を箪笥にぶつけることになるからね」
小金井「え?それ契約っていうより呪いかなんかなんじゃ・・・」
あと2章くらいかなって思ってましたが、想定以上に十八章が長くなったので、おそらくこの章を含めてあと3章で終わります。