【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人 作:かんだ★
荒木リリカは都内のカフェやスイーツを扱う雑誌の記者だ。ここのところ雑誌の売れ行きがかなり悪いので、今回の企画には社運をかけていた。
ずばり「イケメンスイーツ男子特集」である。都内のカフェのウェイターやパティスリーの店員など、めぼしいイケメンをピックアップして店と一緒に掲載する企画である。
中でも「パティスリー・アルフレド」は目玉の一つだった。
リリカは元々このパティスリーのファンだ。ケーキの味も見た目も文句はないのだが、店主に今ひとつ花がないというか推しに欠けるので、なかなか雑誌掲載に繋げられなかった。しかし、最近一つの変化があったのだ。
学生アルバイトが一人増えたのである。
どうやら高校生らしく、まだ少年の面影を残すなんとも中性的な子なのだが、これが非常に華やかなのだ。澄ましている時はクールビューティーなのだが、笑顔になるととたんに可愛らしくなる。すでにファン層が構築されつつある現状だ。
おまけに、彼の知り合いなのかやたらとイケメン男子が買いに来るようになったのも注目だ。わんこ系からアスリート、インテリ眼鏡にロマンスグレーな紳士、ちょいワルヤンキーまで幅広いが、中でも特にやばいのが一人いる。妖精か天使かというほどの美貌の主だ。どこかで見たことがあるので芸能人かもしれない。
とにかくリリカはそのバイト君をなんとか雑誌で取り上げたかった。うまくいけば芸能プロダクションの目に留まり、そのまま芸能界入りなんかしたりして、「リリカさんは僕の人生の恩人です」などと言われるのではないかという妄想まで繰り広げていた。
そんな矢先のことだった。
「おい!荒木!ちょっとこい」
編集長に呼ばれてリリカが向かうと、彼は非常に難しい顔をしていた。
「お前の『都内ドッキリ★イケメンスイーツパラダイス特集』だがな」
「編集長、そのサブタイトルは私が考えたんじゃありません。ださいので変えたいんですが」
リリカは顔を顰める。おっさんのセンスでつけられた特集サブタイトルにはうんざりだ。
「ああ、もうそれはどうでもいい。この企画はなしだ」
「え!?」
リリカは驚きの声をあげた。それなりに予算を使って取材しているところだ。
「な、なんでですか?どこかからクレームが?」
リリカは己が少し強引に取材を取り付けたうちのいくつかを脳裏に思い返していた。
「覚えがあるんだな…」
リリカの表情の変化を見た編集長が巨大なため息を吐く。
「お前、芸能部からこっちに飛ばされた理由忘れてないよな?」
「いやでも、そこまではしてません!ちょっとだけ強引だったかもですが、お店は皆喜んでくださってて…」
リリカの返答を黙って聞いていた編集長はジロリと彼女を睨んだ。
「取材対象に未成年がいたよな?」
ギクリとリリカの肩が震えた。一番目玉の彼はまだ高校生だ。
取材の話に店主は一度もいい顔をしなかった。強引に話をまとめようとしたが、ガンとして頷いてくれなかったのだ。
「彼の保護者から苦情がきている」
「ええ?」
リリカは青くなった。
「かなり強引に約束を取り付けようとしたみたいだな。動画が添えられていたが、訴えられたらアウトな類だぞ」
「そんなぁ…」
リリカは眉をよせたが、ふと気になった。
「編集長!おかしいですよ!私ちゃんと監視カメラの位置は確認したんです!撮られるようなヘマをしてません!」
「お前なぁ…」
「きっとAIの捏造ですよ!それならこっちも出るところ出るぞって脅せば取材できるんじゃ…」
リリカが嬉々としてそんなことを言い出すと、編集長はまた大きくため息を吐いた。
「彼の保護者は神崎薫だ」
「かんざきかおる?」
リリカが鸚鵡返しにその名前を呼んだので、編集長は今度ははっきりと顔を顰めた。
「新聞くらい読め」
「ええ、私社会部とかあんま興味ないです」
リリカはぶすくれて頬を膨らませた。
「神崎薫は弁護士だ」
「弁護士が動画捏造しやがったんですか?」
「してない」
「じゃあ、どうやって」
リリカが不満げに反応すると、哀れなものを見る目で編集長は一つの球体を取り出した。
「なんっすか、これ?」
「記憶映像」
「は?」
リリカが目を大きく見開く。
「神崎薫は弁護士でSランクの
「・・・・・・・・え」
リリカの顔色が変わった。
「店主の記憶から取り出した映像だそうだ」
編集長がちょいとその球体を突くと、そこから映像が投影された。かなり強引に女の武器を使ったり、泣き落としたり、乱暴な振る舞いをしたりと、やりたい放題なリリカが堂々と記録されていた。カメラがないことを確認してからの行動だったので、一発アウトな振る舞いである。
「へ、編集長…これはその…」
しどろもどろでなんとか言い訳しようとしたリリカだが、彼はさらに大きく首を振った。
「お前はさっぱり勉強してないから、これがどういうヤバいネタかまだわかってないよな?」
彼は非常に重い表情でリリカを見た。
「神崎薫はとある少年の保護者だ」
「はあ…」
それはさっき聞いた。
「つい先日、その少年についての記者会見があった。そこで公開になった情報は広く世間には知らされていないが、マスコミ関係には粛々と共有された」
「・・・・・あ、なんか聞いたような、聞かなかったような」
何とかの契約がうんたらかんたらで、社会部の連中がみなお通夜みたいな顔になってたやつである。
「少年の名前は如月秋人。16歳」
「へえ、あの子きさらぎあきとくんって言うんですかあ」
リリカはその名前を舌の上で転がし、そしてふと気がついた。
「え?」
「もう一度言う。少年の名前は如月秋人、16歳。3S探索者。現役最高の探索者にて日本の至宝、最後の砦にして最強の盾」
「え、でもでも…あの子、普通の高校生でアルバイトくんだし…」
「ようするに、ギルド案件だ。あのイケメンの少年はSランク
「うそでしょおおおおおおおお!!!!」
リリカの叫び声が虚しく響いた。
◆◆◆
リリカはとぼとぼと歩いていた。編集長には厳重注意を食らったし、三ヶ月の減俸までさせられた。なんとか訴えないでほしいと先方に泣きつくのに、リリカの処分が必要だという理由からである。
しかし、リリカは納得がいかない。もともと彼が如月秋人だということを知らなかったのだ。知っていたらやらなかったし、取材もしようとは思わなかった。Sランク探索者のプライベートは厄ネタなのだ。下手なことをしたら雑誌ごと潰される。彼らの安寧と保護は国防の類なのだ。抗いようがない。
「あんまりだあ」
リリカは情けない声を上げた。結構カードローンが溜まっているのだ。三ヶ月も1割削減されたら干上がってしまう。
「あ!」
リリカは目の前にその元凶を見つけた。黒いトレンチコートを着た長身の人物。リリカが目をつけた如月秋人少年の元に時々買い物にきていた美貌の主。
「神崎薫!!」
リリカは叫んだ。何か文句を言ってやらねば気が済まない。そう思ったが、リリカは思わず立ち尽くした。彼の片手にぶら下がっているのは何だろう。彼の足元に広がっている液体は?
くるりと振り向いた彼がニヤリと口の端を上げる。その恐ろしい美しさにリリカは恐怖のあまり絶叫した。
薫「おそらく取材はもう大丈夫かと思います」
店長「ああ、いや・・・えっと、それはその、おめでとうございます?」
薫「?もし、また何かお困りのことがありましたらこちらの名刺のアドレスに連絡をいただけましたら、すぐ私が対応しますので、秋人のことをよろしくお願いいたします」
店長「ひゃ、ひゃいい!喜んで!!」
長野「店長、テンパリすぎだよ」
秋人「薫の顔、至近距離で見ると攻撃力高いからなぁ」
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