【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人 作:かんだ★
「反対!反対!はんたーーーーーい!!」
絶叫が教室に響いた。委員長の作原が顔を顰める。
「聞こえてる。発言は一回でお願いします」
「反対です!!」
ほぼ女子の半数が手を挙げての大合唱である。作原はうんざりした顔になった。
「なんでだよ。絶対儲かるじゃん」
「儲けなくていいです!」
「いや、喫茶店だろ?儲けなくちゃ持ち出しになるじゃないか」
委員長は守銭奴だ。一円たりとも余分な金は使いたくない。
「でも、だからって『執事カフェ』は良くないと思います!!」
強火秋人ファンの笹川和音を先頭に女子の大反対が起こっているのは、今度の文化祭での出し物を決めるホームルームでの出来事だ。
二年生からは模擬店の出店が許可される。今年の出し物が喫茶店なのは満場一致で決まったのだが、コンセプトで大揉めである。
「普通の喫茶店でいいんじゃね?」
と智輝が突っ込むと、女子の大半と作原に鬼の形相で睨まれ口を閉ざした。
「いいか、智輝。アイデアを施さない喫茶店が勝てるほど世の中甘くないんだぞ」
「ただでさえ喫茶店出店多いからなぁ」
町田がのんびりと説明すると、智輝も「ああ、まあそっか」と頷いた。
「俺のコンセプトはずばり執事カフェだ。正装した男子が『お帰りなさい、お嬢様』と出迎えて笑顔でサービスしてくれるのだ。絶対女子ウケ間違いなしだ」
黒板に大きく書かれた『執事カフェ』の文字を見て秋人を除く全員が「いや、男子じゃなくて秋人だろ」と心の中で突っ込んだ。
「そりゃ、確かに女子ウケは良さそうだよな」
うんうんと智輝が頷く。
「だめです!認めません!」
笹川が叫んだ。
「私は女装メイド喫茶を推します!」
笹川和音が挙手しながら宣言する。
「えええええ。女装メイド喫茶!? いや、普通に女子のメイド喫茶でいいじゃん!」
と智輝が抗議すると作原がメガネのフレームを押し上げた。
「今年から女子のミニスカートは禁止になったんだ。『公序良俗に欠ける出し物は禁止』と上からのお達しだ」
「ミニスカートじゃないメイド喫茶じゃ集客力は低いか」
智輝がうーんと唸った。
「その点、男子のミニスカートは問題ありません。ゲテモノ扱いなのでOKです。生徒会にも確認をとりました」
と笹川が胸を張る。ぱちぱちぱちと女子から拍手が起こった。
「げえ」
秋人を除く男子全員ドン引きだ。
「ミニスカートは辞めろよ!」
「足の毛は剃ればさほど見苦しくないでしょ」
「セクハラだ!」
と怒号が飛び交う中、秋人は一人無関心にノートに落書きをしている。最近はパラパラ漫画にはまっているらしい。隅っこにとんでもない圧のイラストが描かれている。ちょっとしたアートだ。
「お前、何他人事みたいな顔してんだよ。ミニスカートはかされる瀬戸際だぞ」
と智輝が文句を言うと、秋人は肩を竦めた。
「流石に僕は今年の出し物参加は無理だよ。これでも美術部副部長だからね。クラスの方は列整理とか、裏方にして」
とあっけらかんと秋人が告げる。
「そうだった!」
と智輝は「絶望」という名前の絵画のような顔になった。
しかし、
「ふ」
と委員長が不適な笑みを浮かべて首を振った。
「如月秋人くん。それは杞憂というものだ」
「え?」
秋人がノートから顔を上げる。
「そんな君の事情はよくわかっているから、俺はちゃんと美術部に許可をとった」
「ええ!?」
秋人の口から思わぬ声が出た。
「三年の先輩方に智輝の半裸スケッチモデルを生贄にして、君の初日の三時までと、二日目の午前中の時間を俺は勝ち取ったのだ」
「いや、何やってんの。委員長。僕は断固拒否だよ」
秋人は美香以外の女性に愛想を振り撒くのはもう御免なのだ。バイト先での騒動の件もある。正直勘弁してほしい。
「おい、今サラッと聞き捨てならん生贄が捧げられてなかったか?」
智輝が抗議するもしっかり無視である。
「美香と一緒に過ごせる最後の文化祭なんだから、僕はイヤです!!」
三年生の美香は今年卒業だ。割と利己的な理由でがっつり秋人が珍しく自分の意見を述べたが、にやっと作原は笑った。
「じゃじゃーん。美術部部長工藤美香様からの許可証です!」
「え!?なんで!!」
慌てて秋人が作原の手からその紙をひったくる。確かに美香の筆跡だ。
「クラスの出し物も楽しんでねとの女神は仰せでした」
秋人の手から紙を再度ひったくり返し作原が厳かに告げる。
「さ!おれと一緒に執事カフェでボロ儲けしようや」
作原が秋人の肩を抱いてぽんぽんと叩いた。秋人はじっと恨みがかしい目で作原を見た後
「・・・僕は女装メイド喫茶でいいです」
と冷たい声音で告げる。
「え?」
と作原と智輝が一緒に聞き返した。
「執事カフェだと女の子の相手しなくちゃいけないけど、メイド喫茶ならしなくていいでしょ。だったら僕はメイド喫茶の方がいいです!!」
ヤケクソの秋人の言葉に委員長は「しまった!」という顔をした。我が意を得たりと女子が多数決を取り出す。
「ちょ、おまえ!俺は嫌だぞ!将来大リーグのスーパースターになった時に、絶対その写真出されるじゃねーか!」
と智輝が叫ぶ。クラスのアスリート枠のメンバーは全員、この中で一番プロで食べていけそうなのが誰かということはわかっている。才能とは残酷なまでの格差があるものなのだ。
「あ、じゃあ俺もサンセー」
と織田が手を上げる。
「そだね、僕も〜」
と町田も続いた。
「お前ら!!」
智輝が叫ぶも、女子全員にプラスして男子のスポーツ枠の智輝以外が手を挙げたので、無情にも2―Bの出し物は女装メイド喫茶に決まったのだった。
◆◆◆
放課後の美術室で、秋人は不機嫌を隠そうともしないでぶーたれている。
「ひどいよ、美香。何あの許可証」
「うふふ。でも準備はあんまりしなくていいってことにしてもらったから、ゆっくり作品描けるでしょ。秋人くんはバイトもあるし、去年より作品作る時間が少ないかなって」
美香の答えに秋人はがっくりと肩を落とした。
うっかり忘れていたが、美香は秋人の絵の強火ファンなのだ。発表当日より前準備を重要視するのは当然である。しかし、それだけじゃない事情があった。美香は少し照れながらぼそりと囁いた。
「それに、秋人くんの執事姿見たかったし」
「え?」
美香の言葉に秋人はさっと顔色を変えた。
「違うの? 作原くんは『2―Bの出し物は執事カフェだ』って言ってたけど」
きょとんとしている美香に秋人は小さく
「多数決で女装メイド喫茶に変わったんだ」
と告げる。己の一押しの件は黙秘することにした。
「まあ、秋人くんが女装するの?」
なぜか嬉しそうな美香と、さらに背後から先輩二人が飛び込んできた。
「ええ!? まじ? それいいじゃん。執事の格好は大人になってからも出来るけど、メイドは少年体型の今ならではよね」
と早々とスケッチブックを構えている輝美と華の二人に秋人は盛大に引いた。
「だって、執事だと他の女の子にサービスさせられそうだったから、嫌だったんだ」
と秋人がぼやくと、美香は
「嫌だって言えたんならよかったわ」
と笑った。秋人はちょっとだけ自分の成長を噛み締めるのだが、若干失ったものの大きさも気になった。
華「これは是非記録せねばなるまい」
輝美「お父さんの一眼レフ借りてくる」
美香「二人とも…」
華・輝美「えー、ダメえ?」
美香「いや、あの…写真撮ったら私もください」
華・輝美「お任せください、ご主人様」