リアンがワートリ世界に行ったらってだけ   作:teoto1303

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設定とかも正直固まってない部分があるからどうしようかなといったかんじです。案外見てくれる人がいるからもっと固めてからやればよかったなと後悔してます


2話

2

迅はその後、私にある場所に行くといいと教えてくれた。

 

名前は玉狛支部というらしい

 

ボーダー本部から枝分かれしたもので近界民と仲良くしようとする派閥だそうだ

 

どうやらボーダーというのは一枚岩ではないらしい

 

近界民と明確に敵対する形を取る者と、協力、対話の姿勢を見せる者もいる

 

玉狛支部はもちろん後者だ

 

迅が言うには

 

「リアンさん、ぱっと見じゃ分からないけど近界民にかなり近い…ぶっちゃけ同じようなもんだから正体バレるとあんまし良くないんだよね〜」

 

と言っていた

 

口調こそ軽かったが、冗談には聞こえなかった

 

近界民という存在にはっきり嫌悪を示す者も少なくないこと。そうでなくとも最大限の警戒の対象であることを私に忠告してくれた

 

故に私はその忠告を素直に聞き入れ、玉狛支部へ向かっている最中だ。他に特段やることもない

 

迅に渡された簡易な地図と目印を探しつつ見慣れない街を歩く

 

整然と並ぶ家々

 

手入れされた庭

 

道路脇には細い水路があり、水が細かに流れているのがわかる

 

先ほどの廃墟と比べると一目瞭然だ

 

都市と違い、明日をかけてひとかけらのパンを争うこともない

 

平和がこの世界の普通なのだろうな

 

そうして歩みを進めていると遠くに異質なものが目に入る

 

先ほどまでは周囲の建物で見えなかったものだ

 

台形のような形をした無機質で存在感のある建物

 

装飾などはなく、ただ実用性のみを追求しているように思える

 

そして圧倒的なまでの重厚感

 

都市の翼が保有していた建物と比べて大きいといったことはない

 

だがあまりにも異質で突出している

 

あれがおそらくボーダーだろう

 

先ほど迅にボーダーについて聞いた時に教えてもらった特徴と一致する

 

だがボーダーという組織の大元があの建物だけなのだろうか

 

足を進めながらその規模を測るように眺める

 

近界民というのがどういった存在でどういった方法でこちらに来るのかすら検討もつかないが、警戒区域の広さを考えるにあの規模では少し小さく感じる

 

近界とやらから来る近界民は小規模なのだろうか

 

それとも、少数精鋭故にそれで十分なのか

 

あるいは、純粋に人手が足りていないのか

 

外から眺めるだけでは判断できない

 

内部が地下へ広がっている可能性もある

 

都市でも、外見と内部の規模が一致しない施設など珍しくなかった

 

いずれボーダーと関わることになれば、自然と分かることだろう

 

前に視線を戻すと二人組の少年が歩いてくるのがわかる

 

1人は猫のような目に下がり眉、ストレートの髪を靡かせている

 

もう1人は黒髪に切れ目が特徴の…中学生くらいだろうか?

 

小柄ではあるが二人とも歩き方に無駄がない

 

それに妙に落ち着いた雰囲気だ

 

二人とも特段珍しい格好をしているようには思えない

 

しかしただ者ではない。もっと言えば戦闘慣れしたような雰囲気を感じた

 

「…」

 

「…」

 

互いの視線が交差する

 

が特に何かが起こるわけではない

 

二人が私の顔を見る

 

ここで私は仮面を付けていることに気づいた

 

つまり彼らはこの片方の目だけを隠した仮面に興味を惹かれていただけと推測される

 

スーツ姿に仮面。この世界の常識はよく知らないがおそらく珍しいのだろう

 

二人の横を通り過ぎる

 

後ろから視線を感じるが振り返りはしない

 

敵意がない以上私から余計なことをする必要はない

 

スーツに仮面を付けた男の背中が見えなくなるまで彼らは一言を発さなかった

 

猫目の少年――菊地原は、僅かに首を傾けながらその背中を見送る

 

仮面の男が角を曲がり、完全に姿を消したところで、隣を歩く風間が口を開いた

 

「…どうやらあれがそうらしいが。何か変わったところはあったか?菊地原」

 

「明らかに普通の人間じゃないっすね」

 

菊地原は即答する

 

「音がなさすぎる。生きてる人間であそこまで音を出さない人は初めて見ました」

 

人間は生きているだけで何かしらの音を発する

 

歩く時の靴音

 

服の擦れ

 

呼吸、鼓動

 

意識せずとも音はなる

 

だが先ほどの男からはこの目で見なければそこにいることが分からないレベルで音がしなかった

 

意識的なのか無意識なのか。どちらにせよ只者ではない

 

菊地原は本業暗殺者かなんかじゃないですかと碌でもないことを真顔で言う

 

冗談めかした言葉だがあながち間違いでもないのかもしれない

 

「まあ聞いてた話と一致してますし、とりあえずあれで間違いないっすよね」

 

「ああ。2人いる外見ではないしな」

 

スーツ姿に顔の半分を覆う白い仮面

 

これが二人いるはずもない

 

今から数時間前のことだ

 

警戒区域内の民家で巨大なトリオンが検出された

 

最初は誤作動を起こしたものと判断され、エンジニアによる簡易なメンテナンスを経て、事は終わると思われた

 

しかしその反応が再び現れる。加えて、その場所は警戒区域でなく外のコンビニであった

 

本部は一時騒然となった

 

もう測定器の故障で片付けることはできない

 

もし民間人に被害が出ればもうすぐそこに迫っている遠征の予定が頓挫する可能性すらある

 

至急近くの正隊員に指示を飛ばそうとしたところでS級隊員 迅悠一からの連絡が入る

 

この反応で危険性はない と

 

詳細は語らなかったが、未来を見通す迅に多くを追求するものはいなかった

 

だが城戸司令は違った

 

その反応があったコンビニが偶然ボーダーのスポンサーだったのだ

 

城戸指令の指示で急遽連絡を取り、監視カメラの映像を提供してもらう

 

そこに映っていたのが謎の仮面の男と迅であった

 

仮面の男が武器に手をかける様子も見てとれた

 

しかし戦闘には至らず最後には二人でその場を離れている

 

そこで再びその映像について迅に対する簡易的な取り調べも行った

 

だが 悪いやつではない そのうち紹介する と曖昧な言動を繰り返すのみでこちらに情報を渡す気はないようだ

 

そしてその後の動向を監視カメラで追うと一つの推測がたった

 

おそらくこの男は玉狛支部に向かっている

 

迅と接触していること、この世界の人間にしてはあまりに異質な仮面

 

この男は近界民ではないか

 

そう結論に至るまでそう時間はいらなかった

 

そこでその仮面の男を探るべく急遽駆り出されたのが、A級3位風間隊の隊長、風間蒼也と隊員の菊地原だった

 

だがあくまで戦闘はやむを得ずの状況を除いて極力避けろということも伝えられていた

 

そのため、警戒されないために生身での調査に至った。もちろん、ポケットの中にトリガーを忍ばせいつでも起動できるようにはしていた

 

すれ違う際も仮面の男の手の位置、重心に最大限の注意を向ける

 

幸い、そこで敵意を向けられることはなかった

 

ここで菊地原が口を開く

 

「てかこんなことするより迅さんに直接事情聞いたほうが早かったんじゃないっすかね」

 

後頭部で手を組み、不満そうに言う

 

休日に駆り出されたのが余程気に食わなかったようだ

 

「いや、もう聞いたらしいがその結果が芳しくなかったから俺らがこうして仕事をしているわけだな。それにだ。奴に聞いたところで本部側に有利な情報を落とすとは思えない」」

 

風間は短く息を吐く

 

迅悠一

 

少なくとも俺は最も敵に回したくない男だ。何を考えているかもわからん

 

どこまでを把握しているのだろうか

 

ここで俺と菊地原が仮面の男に接触することさえ知っているのかもしれない

 

仮面の男が向かった方角に目を向ける

 

既にその姿はない

 

「何はともあれ、任務は達成だ。この方向に来たということは目的地も割れたも同然だ。これ以上の追跡はリスクが高すぎる。結果は本部に俺が報告しておこう。お前はどうする?」

 

「俺はパスでお願いします。ただでさえ休日潰されてその上本部まで行くなんて嫌ですね」

 

一切迷わず答える

 

あまりに予想通りの返事に風間は何も言わない

 

無理に付き合わせ、機嫌を損なわれても面倒だ

 

「そうか。じゃあまたな」

 

「はい。お疲れ様です」

 

そういうと2人はその場を後にした

 

 

最後に二人組の少年とすれ違ってから十分ほど歩いただろうか。

 

川の流れる音が聞こえる

 

都市ではほとんど耳にすることのなかった音だ

 

耳障りではない

 

むしろ心地いいとすら思えた

 

そして川ということは目的地も近い

 

その地図には川の上に建つ建物が玉狛支部だとある

 

目の前には川の上にポツンと建物が立っている

 

最初は間違いかと思ったが、こう実物を目にした以上何も言うまい

 

岸からは橋が伸び正面の入り口に続いてる

 

防衛という面ではこれ以上ない立地だ

 

しかし利便性という面を考えればここに建てる理由がいまいち分からない

 

何があったらそうなるのか気になるがまあいいだろう

 

迅が示した場所、特徴と一致している以上間違いはないはずだ

 

橋を渡る

 

足元から水の音が聞こえ、水面に光が反射している

 

近づいて改めて見るとただの家にしか見えず、ボーダーとの違いがより一層際立つ

 

入り口の前に立つ

 

扉の横に呼び鈴がある

 

迅から特にこの家について聞いているわけではないが、さすがに連絡は通してくれているのだろう

 

呼び鈴を鳴らす

 

(ピンポーン)

 

イマアケマース

 

女性の声が聞こえた

 

しかし数秒もしないうちにしーんと静まり返ってしまった

 

返事をした後で別の用事を始めたのだろうか?

 

一応もう一度鳴らしておこう

 

(ピンポーン)

 

イマアケルッテイッテンデショ!

 

また同じ声が聞こえた

 

少し怒っているように聞こえたがさすがに気のせいだろう

 

しかし今度はちゃんと開けてくれるみたいだ

 

どたどた慌ただしい音が聞こえてくる

 

扉が開かれる

 

「はいはい。どちらさ…ま?」

 

現れたのは小柄な少女だった

 

鮮やかな髪を靡かせ、私の顔を見た瞬間に言葉を止まる

 

「迅の紹介でここにきたんだが、私のことは聞いていないのか?」

 

「いや聞いてない…わね」

 

少女は顎に手を当て考えるような素振りを見せる

 

記憶を探っているんだろうか

 

そしてどうやら別のものを掘り当ててしまったらしい

 

「てかアンタ、人様の家に2回ピンポン押すってどういう神経してんのよ⁈」

 

思い出したかのように先ほどの行為について咎められる

 

なら一度の呼び鈴で出てほしいものだが

 

どう返すか思案していると、私の後ろから落ち着いた声が聞こえてきた

 

「小南先輩。ピンポン2回押すのは目上の人へ敬意を示す時によく使うマナーですよ」

 

そこには買い物袋を持った黒髪の青年が立っていた

 

表情は真面目でどう見ても冗談を言っているようには見えない

 

少女は驚いたような顔で私を見る

 

「えっ…そうなの⁈なんだ…無礼な人なのかと勘違いしゃったじゃない!ごめんなさい気を悪くしないでくれたらいいんだけど」

 

声の調子まで柔らかくなり、私に少し頭を下げる

 

先ほどとは真逆の態度に困惑する

 

感情の切り替わりが速すぎる

 

どう返答すべきか迷っているうちにその必要は無くなった

 

「嘘です」

 

「え?」

 

少女の表情は凍りつく

 

何を言われたのか理解できずに目を瞬きさせる

 

「ですから、ピンポン2回はただの無礼です」

 

一瞬の静寂

 

それを切り裂いたのは少女の怒号だった

 

「っっっ〜〜!だ〜ま〜し〜た〜な〜あ〜っ!」

 

そういって小柄な少女は拳を振るう

 

軽い

 

手加減しているのもあるのだろう

 

にしても軽い

 

都市の人間であれば子供でさえもっと重い拳を振るう

 

己が命を守るため

 

だからだろうか

 

少し肩の力が抜けた

 

「こんにちは、リアンさん。迅さんからお話は聞いてます」

 

「よろしく頼む。ここにいたのが彼女だけじゃなくて本当に良かった」

 

「むしするなぁぁぁぁっ!」

 

彼女は怒る。自分自身の尊厳のために

 

「それで2人はなんと呼べば良い?」

 

二人に尋ねる。これから少なからずお世話になることは間違い無いのだから名前は聞いておくべきだろう

 

「俺は烏丸京介です。上でも下でも好きな方で呼んでください。でも下で呼ばれることが多いですかね」

 

「小南桐絵…アンタはリアンさんだっけ?後輩なんだから私には先輩つけて敬語だからね」

 

小南は腕を組み直し、こちらを指差しながらいう

 

どうやら先ほどのついた嘘(私ではない)の恨みがまだ続いているようだ

 

「とりあえず、立ち話もなんですし中に入ってください」

 

そう言われ中に案内される

 

中は清潔で埃一つないように見える

 

リビングにはソファがいくつか置かれており、来客用だろうか。中央の机にはお茶菓子が用意されている

 

見る限りダイニング、キッチンもそれなりに広く、部屋の数も多いことからそれなりの人数がここにいるみたいだ

 

ソファに腰掛け、京介にお茶を入れてもらったところで本題に入る

 

「早速本題に入りたいんだが、迅からはなんと聞いている?」

 

そういうと小南は京介のほうをみる

 

どうやら私について聞かされているのは京介だけみたいだ

 

その判断は正しいだろう

 

「とりあえず衣食住の一時的な提供とボーダー入隊の手続きなんかも手伝ってやるようにと言われてます」

 

京介は淡々と答える

 

思った以上に彼らには迷惑をかけることになるようだ

 

そして何より迅は私が玉狛支部に来ることを疑っていなかったみたいだ

 

そこまで見通していたのだろう

 

「今日はボーダー入隊云々は置いときましょう。部屋に案内しますね」

 

京介が先に階段を上がる

 

小南の不満そうな顔をスルーしつつ後に続く

 

そして部屋に通される

 

「ここで当分は過ごしてもらうことになると思います。もちろんリビングは自由に行き来できますし、外出する時も声掛けとかは大丈夫です」

 

監視の目を付けるわけではないらしい

 

よくよく考えれば私という部外者を招き入れ、個室まで与えるあまりに無防備ではないか

 

それとも私…あるいは迅がそこまで信用に足る人物だということだろうか

 

「ありがとう。助かるよ」

 

素直に礼を述べる

 

「いえ、お礼は迅さんにお願いします」

 

あくまで謝意を受け取る気はないようだ

 

その仕草はただ頼まれたからしているだけだというのが見て取れる

 

「ああ、そうするよ」

 

「では夕食の時間に呼びに来るんでそのころにはこの部屋かリビング辺りにお願いします」

 

京介はそれだけ言うとその部屋を去る

 

静寂がその部屋を支配する

 

窓の外から微かな川のせせらぎが聞こえる

 

階下では食器がぶつかる音が聞こえる

 

人の生活する音だ

 

緊張が解けたからか眠気がリアンを襲う

 

まだ夕食までは時間がある。それまで仮眠を取ろう。今日はあまりに多くのことがありすぎた

 

体は疲れているわけでは無い

 

しかし心が休息を求めている

 

そうしてリアンは硬いベッドの上で意識を手放した

 

 

〜ボーダー本部〜

 

そしてその頃

 

ボーダー本部では、一人の仮面の男についての会議が始まろうとしていた

 

ブラックトリガー

 

そして迅悠一による保護

 

それは決して無視できる組み合わせではなかった

 

画面に映るは仮面の男と迅が接触している映像

 

武器を手にかける姿、異常なトリオン数値

 

このトリオン数値は現状ではブラックトリガーと断定できるものだ

 

重苦しい空気の中、城戸指令の声が会議室に響く

 

提示されたのはブラックトリガーの奪取、そして

 

所持者の排除

 

「ほうブラックトリガーの奪取ですか」

 

会議室の角に座る顎鬚を生やした青年は不敵に笑う

 

未知の埒外のトリオン量を誇るブラックトリガー

 

それを扱う仮面の男

 

その二つの要素が揃って尚、興味が勝つらしい

 

「ああ。秘密裏に進める任務故、少数精鋭での作戦となる。 

 

「日程は決まってはいないが遠征前に必ず行う」

 

顎髭を生やした青年は楽しげに笑ってこう言う

 

「なるほど。じゃあ今夜にしましょう。今夜」

 

冗談を言っているような声だった

 

しかし、その目は本気だった

 

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