アグネスタキオンと冬月、あと提督兼トレーナー 作:AIのタンクもどき
灰色の雨雲が関東の空を重く覆い、時折突風が窓を叩く荒れ模様の朝。普段、Tと冬月が西日本の鎮守府へ移動する際には、鎮守府が運用する連絡機を使用するのが常であった。しかし、本日の関東上空は強い低気圧の影響で荒れ狂っており、小型の連絡機を飛ばすにはリスクが大きいという判断が下された。そのため、予定を変更して東京駅から東海道新幹線を利用し、呉鎮守府へと向かうことになったのである。
継ぎ目のないレールの上を走り抜けるのぞみ号。指定席車両の三人掛けシートの窓際にはTが座り、その隣の中央席には背筋を伸ばした冬月が腰掛けている。そして通路側の席には、私服姿で上機嫌そうにしているタキオンの姿があった。
「……どうしてこんなことに」
窓の外、関東地方を抜けて晴れた空が広がる景色を見つめながら、Tは頭痛を堪えるように深々とため息をついた。
「いいじゃないか〜。私のような優秀な担当ウマ娘が、出張に赴く君の体調管理のためにわざわざ隣の指定席を確保して同行してあげているのだよ?感謝こそすれど、ため息を吐く筋合いはあるまい!」
「頼んだ覚えはこれっぽっちもない。というより、呉鎮守府に部外者のお前を連れていけるわけがないだろう。広島あたりで適当に観光でもして時間を潰してくれ」
「冷たいねぇ!」
相変わらずの調子で饒舌に喋り続けるタキオンに対し、冬月は冷ややかな横顔を崩さず、手元のスマートフォンで予定を確認していた。
「相変わらずだな。列車の車内なんだ、あまり騒がしくしないでくれ」
「おや冬月君。君こそそんな仏頂面で仕事ばかりしていては、せっかくの長旅が台無しじゃないかい?」
タキオンは自分のスマートフォンを見ていると、ふととある企画の告知が目に止まった。それは現在JR東海が展開している鎮守府とのコラボレーション企画で、新幹線の車内で限定の特別音声コンテンツ「艦娘Radio」が聴取できるという。
「ほう……『艦娘Radio』ねぇ」
ニヤリと口元を歪めると、冬月の前を横切るように身を乗り出し、Tの肩を叩く。
「トレーナーくーん。イヤホンとか持ってないのかい?」
「わかったわかった!持ってるから!」
そうしてタキオンはTから拝借したイヤホンを耳に装着した。
「一般放送しているわけではなく、車内限定のデータストリーミングか。なるほど、広報の一環というわけだね。退屈しのぎに、君たちの同胞がどのような番組を披露しているのか、拝聴させてもらおうじゃないか」
スマートフォンを操作して再生を始めたタキオンは、そのまま座席に深く身を沈めた。イヤホンから流れるトークや音楽に耳を傾け、一人で満足そうに目を閉じている。
(これでしばらくは大人しくしてくれるだろうな……)
冬月は小さく安堵の息を吐き、視線を再び手元のスマートフォンへと戻した。
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ひと通り音声コンテンツを聴き終えたタキオンはイヤホンを外すと、感心したように息を漏らした。
「ふむ……普段私の目の前にいるのは君ぐらいのものだが」
タキオンは冬月へ向けて、面白そうに語りかけた。
「実に興味深いやりとりだった。艦娘たちも個性的な面々が集っているらしいが、そうすると鎮守府もトレセン学園のように、さぞかし賑やかなのだろうねぇ。冬月君、君から見」
意気揚々と感想を述べ、議論を吹っ掛けようとしたタキオンの言葉が、途中でピタリと止まった。
「……って、おーい」
通路側から隣を見やると、中央席の冬月は腕を組み、浅い呼吸を繰り返しながら静かに瞼を閉じていた。さらにその奥、窓際のTもまた、首を少し傾けて心地よさそうに寝息を立てている。タキオンがイヤホンをつけている間に、仮眠を始めていたのだ。
タキオンは腕を組んでむくれつつも、特にやることが無かったので一緒に仮眠することにした。