アグネスタキオンと冬月、あと提督兼トレーナー 作:AIのタンクもどき
新大阪を過ぎ、列車が新神戸駅を発車する頃には、指定席に並んだ三人は自然と目を覚ましていた。Tは軽く肩を回し、冬月は再びスマートフォンで予定を確認し、通路側のアグネスタキオンはあくびを噛み殺している。
車内に穏やかな空気が流れていたが、いきなり車内チャイムが鳴り響いた。
<<お客様にお知らせいたします。ただいま、山陽新幹線、福山〜新尾道の間で倒木が発生しました。線路が塞がれ、架線が断線しているとの連絡が入っております>>
スピーカーから流れる車掌のアナウンスに、車内が一気にざわめき立つ。
<<このため、この列車は岡山駅止まりとなります。また、山陽新幹線は全列車の運転を見合わせます。倒木の撤去および架線の復旧作業にはかなりの時間を要する見込みで、現在のところ運転再開の見通しは立っておりません。ご利用のお客様には大変ご迷惑をおかけいたします>>
Tは思わず額に手を当てた。
「再開見込みが立たない、か……関東の荒天を避けて陸路を選んだというのに、こちらでも問題が起こるとは」
隣では冬月も眉をひそめながら、予定の組み直しについて思案し始めている。
「……困ったな。代わりの交通手段を探さないといけないか」
一方タキオンは座席の背もたれに体重を預け、どこか面白そうに口元を歪めている。
「自然の猛威というものは実に気まぐれだねぇ……途中下車して、観光でもするかい?」
「観光してる場合じゃないだろ。呉鎮守府でもやることがあるんだ。あまり遅れるわけにはいかない」
列車が岡山駅に到着し、運転打ち切りを告げるアナウンスが響く中、一行は人の波に押されるようにして改札口へと降り立った。混雑する構内の隅でTはスマートフォンを取り出し、関係各所へと矢継ぎ早に連絡を入れた。
「……もしもし、■■だ。岡南飛行場に、連絡機を緊急で回せないか?」
タキオンをこのまま岡山に置いてでも、冬月と共に一刻も早く呉へ直行する算段であった。スマートフォンを握る手に汗が染み始めるTだったが、苦い顔で息を吐き出した。
「……そうか。わかった」
通話を終えてスマートフォンをポケットに収めるTに、冬月が歩み寄る。
「飛行場は使えないか、提督」
「ああ、ドクターヘリの広域合同訓練で、今日は終日使えないらしい。こうなれば在来線で行くぞ」
「かなり時間はかかるが……致し方ないか」
「おや、ローカル列車の旅路かい?風情があって良いじゃないか!」
当然のように同行する気満々のタキオンに、Tは諦め気味に行動の方針を伝える。
「長丁場になるぞ。次の列車まで少し時間があるから、駅弁でも買っていこう」
一行は中央改札近くの店舗へと立ち寄った。Tと冬月は駅弁とペットボトルの麦茶を手に取る。タキオンは棚に平積みされていた岡山銘菓・きび団子を珍しそうに眺め、弁当と麦茶と一緒にレジへと差し出した。
「糖分補給に使えそうだねぇ」
階段を下りて在来線ホームへ降り立つと、新幹線のホームや首都圏の駅とはまた異なる、活気に満ちた光景が広がる。新型の特急電車、ディーゼルエンジンの駆動音を力強く響かせる気動車、キャラクターラッピングが施された列車に、通過していく貨物列車。東西南北それぞれに向かう列車が発着するターミナル駅の様相を呈していた。
「ほう!まるで鉄道車両の標本箱だ」
「ほら、見とれてないで乗るぞ」
Tが促し、一行は普通列車へと乗り込む。ボックスシートに並んで腰掛けたTと冬月、そしてその向かいに何食わぬ顔で座るタキオン。ドアが閉まり、列車は岡山駅を出発して西へと向かい始めた。